第3話 『ミコト』


「知美〜コショウ取って〜」
今日も今日とて伊織ちゃんは愛する葉月のため家事に勤しむ
「だめデスよ〜伊織さんっフライパンはもっと熱してから使わないと〜」
伊織に説教するのはリリスの分身体の1体である、メイドちびリリス
メイドちびリリスは知美と気が合うのか、最近ではよくリリスから分裂し姿を見せていた
「あ〜伊織さんどーしましょう〜マヨネーズが切れてます〜」
このとろとろ喋りが葉月の為に倉木の山からやって来たメイドの知美である。
「え?マヨネーズなら昨日の買出し…
 はーまたね…おでこちゃん」
「はぁ〜初美さんがどーしましたか〜」
「おでこちゃん、また夜な夜なマヨネーズかじってたんだ…
 あの子昔っからマヨネーズちゅぱちゅぱするの好きなのよね〜
 まーしゃーない伊織ちゃんが買ってきてあげるー
 知美〜後お願いね〜」
「はい、伊織さんお願いします〜後、テッシュペーパーが
 減ってきてる様なので買ってきて下さい〜
 あ〜葉月お嬢様の分はよくなくなるので、カシミヤテッシュ買って来て
 下さいね〜デリケートな所に使うものですから〜」
何故に葉月のテッシュが直なくなるのか、カシミヤなのか疑問に思う伊織であった
もっとも皆様ご存知の通り〜その理由は〜〜〜


「はーーー解放された〜〜」
「なんでっか〜姐さんっそりゃサボリと解釈してええんでっか?」
何時もの如く、リリスのお目付け役であるケンちゃんはリリスと行動を共にするのだが
「サボリも何も、こんなにいっぱい買い物頼まれれサボリも無いでしょーに
 って言うか〜知美のヤツリリスちゃん使いが荒いのよーー」
ちなみに、伊織は葉月達が居ない場合は本来の名である、リリスちゃんね〜の一人称となる

「ん?あそこに居るのは〜」
「ラスカレス〜〜待つなの〜〜
 キャ〜冷たいなの〜〜ラスカレス〜次はミルカの番なの〜〜えぃ〜〜」
「ガルルル〜〜〜(嬉しそう)」
川原で遊んでいたのは、近所に住むお金持ちの一人娘のミルカと、
そのペットである、座敷虎のラスカレス
ラスカレスは白い虎であり、座敷虎の種類としては珍しいとされている。
なお、座敷虎と言ってもその体長は野生の虎と変わりはなかった。
この近所はミルカの親が地主なので、ラスカレスは無礼講が許されていた。
(本来座敷虎は外出が規制されている)
「ミルカさま〜もう少しでお昼の時間ですよ〜」
ミルカを迎えに来たのは美しい水色の髪をしたそれはそれは美しい女性だった
「あ〜セイレンが迎えに来たなの〜
 ラスカレス〜お昼ご飯の時間なの〜〜」
「セイレン?どこかで聞いた事が有る様な〜無い様な〜」
リリスは聞き覚えのある名とは思ったが思い出せない
「姐さん…あんた最低やな」
飽きれ返るケンちゃん
「あれ〜あそこに居るのは伊織と変な鳥さんなの〜〜」
「変な鳥さん!!ここに来てもワテの扱いはかわらないんかーー」
嘆くケンちゃんだが
「伊織?…」はっと目を見開く美しい女性
「ひさしぶりね〜リリス!いや、今は伊織と名乗っているんだったかしら」
美しい女性は伊織に突っかかって来る
「はぁ〜何方さんでしたっけ〜〜〜えへ」
可愛いそぶりで誤魔化す伊織だったが
「ふんっあんたならそー来ると思ったわ
 でも甘いわね、私だってただのセイレンじゃないのよっ!!
 今の私はミルカさまの教育係り件、聖フェミニン女子学院高等部の教師なのよ!!」
と、ムネをはって勝ち誇るセイレンさんだが
「はぁ〜ウチの学校の先生でしたか〜
 そりゃどこかであった事ありますよね〜
 でも御免なさい〜伊織ちゃん学校は通信制なの〜〜えへ」
「我慢よ私ーアイツのあぁ言う性格は私が一番良く知ってるんだから」
眉間にシワをよせ、こめかみに血管浮き上がらせ怒りを抑えるセイレン
「セイレンと伊織はお友達なの〜〜??」
と頭を少し横に倒し、人差し指を口の前に持ってくる仕草をしながらミルカが訊ねる
「ミルカさま〜私がこんなバカ!(ここを強調)と友達な訳ないじゃないですか〜」
さすがのバカ発言に少し怒る伊織ちゃん
「あの…先生、ステキな髪型ですね〜あーでも枝毛が〜年は誤魔化せませんねぇ」
と反撃に出る伊織ちゃん
「ムカっ!!ここで怒ってはダメよ私!このバカのペースに巻き込まれちゃダメなのっ
 あら〜東伊織さん〜中々制服が似合ってるわね〜
 まるで、なんちゃって女子高生みたいよ〜〜」
勝ち誇るセイレンさんに爆発寸前のリリスちゃん
「セイレン(怒)…あんたねー言ってイイ事と悪い事があるでしょーに!!」
「(あー姐さん気にしてる事言われてキレてまんなーとは言え、確かに姐さんの
 そのセーラー服に白のハイソックスは二世代前のファッション〜それにスカートも
 長いしな〜そりゃ、おばさん女子高言われても反論できんわなー)」
影でぶつぶつ言うケンちゃんを伊織は掴みセイレンに投げつける
「ってちょっとマテーなワテは凶器やあらしまへんってだから投んなーーー」
ぶちゃ
見事にセイレンの顔面にヒットしたケンちゃんだが…見事に口と口が重なり
「あ〜セイレンはん〜むちゅ〜〜〜」いやらしい表情で喜ぶケンちゃんだが
がばっとケンちゃんを鷲づかみにして伊織に投げ返すセイレンさん
ボカっ今度は伊織ちゃんとキスするケンちゃん
だが、今回は自分から離れて
「ゲホゲホーーなんてこったーーリリス姐さんえげつない唇をうげーー気持ちわるー」
ピクピク…ケンちゃんあんたねーーー拳に怒りマーク炸裂な伊織ちゃん
「乙女の唇奪っておいて何よその言い草はーーーもう帰ってくんなーー!!」
リリスちゃんホームランがケンちゃんにヒットする
「あーーれーーーワテ今回出番こんだけ〜〜〜〜」
星になるケンちゃん
ちゅーか、伊織何処からバット出したんだか

「伊織大ホームランなの〜〜凄いなの〜〜」



--------放課後
「葉月〜今日少しショッピングしてこうか〜」
「あ…うん、いいよ」
今日も仲良しの葉月と親友のミコト
「でさ〜昨日の隠密奉行朝比奈がさ〜…葉月?どーしたの?」
心配そうに葉月を見つめるミコト
「あ…うん、そー言えばミコトの誕生日近いね…
 今日はミコトの誕生日プレゼント選んじゃおうかな〜って」
「ふふふそれは楽しみね〜でもー私結構高い物求めるわよ〜」
「あ…少しくらいなら、いいよ」
「なーんて、その気持ちだけでも嬉しいな〜って
 最近さ〜葉月、初美初美って言わなくなったな〜と思って
 初めて会った時なんてず〜っと初美さんの話しかしてなかったし〜」
「え?そーだっけ…覚えてないな〜」
この二人が出会ったのは二人が3年生に上がる3月の頃だった
ミコトが北海道から転向してきたのが丁度東家の近くだった
近くの公園で偶然出会った二人は意気投合〜葉月から見れば、
姉である初美に似ているミコトの存在は大きかった様で、
ミコトはと言うと知り合いが葉月とネットの知り合いだったらしく、
そのつながりで自分と同じ趣味を持つ葉月の存在は知っていた。
元々ミコトが葉月と同じ学校を選んだのにはそう言う経緯があったのだった。
ちなみに二人の共通の趣味と言うのが時代劇であった

二人はショッピングを楽しんだ後、ミコトは着替えた後葉月の家に行く約束をしていた
が…何時まで経ってもミコトが家に来る気配がなかった
ミコトが来るのを玄関で待ってた葉月だったが、
ミコトの携帯に繋がらないのを不信に思いミコト宅に行ったのだが…
玄関で幾ら呼んでもミコトの返事が無い
ミコトの家は葉月の家同様両親は仕事で家を空ける事が多かった
その時だった
タクシーで急いで帰って来たミコトの母親が息を切らせながら
「葉月さん大変なのミコトが…」
「おばさんしっかりして!ミコトがどーしたのっ」
「誘拐されたの」
しばしの沈黙
「誘拐!!だってついさっきまで…」
「私がいけないの、あいつらの要求を聞かなかったばかりに」
「どー言う事なの!詳しく聞かせて」
ミコトの母はある一味から脅されていたいたらしく、
それに屈しなかったが為、今回の誘拐に繋がったのだと
「とりあえず、知ってる情報全てボクに教えて、それと警察にはこの事は言わないで」
「でも」
「ボクが必ず助け出すから」
半ば強引にミコトの母から情報を得た葉月は片っ端から調べ尽くす…
だが当然見つかる訳もなく…

「どーしょう、もしミコトになにかあったらボクは…」
その時葉月の刀が反応する
「…これは?」
現在葉月の刀は本の世界で出会った藤姫から譲り受けたイヴの忘れ物であるクシと融合していた。
ミコトは藤姫の生まれ変わりである、そう確信している葉月は刀を天に掲げ
かすかなミコトの気を探り出す
その時葉月は思い出していた、以前ミコトが話してくれたミコトのおばあさんの話を
ミコトのおばあさんは16歳と言う若さでこの世を去ったという
そしてミコトが見せてくれたおばあさんの写真は、そうイヴそのものだったのだ
つまりミコトはイヴの孫にあたると言う事だ
ならば、少なからずそのソーマを持つ筈だと

「ミコト無事で居てくれ…!!」
かっと目を見開いた「居た!」
葉月はミコトの気を探り当てると高速の速さで現場まで向った
なお、当然ミコトを探し始めた頃からすでにバトルモード展開中だった
人間は急いでいる時ほど本能的に走って現場に向う傾向があるらしい
車に乗るよりも走る、急いでいるからこそ走るのだ
もっともこの時の葉月の速さと来たら、100mを5秒切るくらいの勢いだったと言う

「ミコトーーーーー!!」
現場に辿り着いた葉月が扉を蹴破り、チンピラ達の前に姿を現す
「あーん!?よくもここが分かったな〜」
「ミコトを放せ!さもなくばどーなるか分かってるだろうーなっ!」
葉月が威嚇するも、人質を持つチンピラ達には知った事では無い
「お嬢ちゃん状況が分かってないみたいだねぇ
 ほーら、一歩でも近づいてみな〜この子の顔にキズがつくぜ」
ミコトにナイフを突きつける
「葉月私に構わないでこの人達を…」
ミコトは羽交い絞めにされながらも懸命に叫ぶ
「甘いなボクならナイフが届く前に斬れる!」
バキューン
銃声が響く
「おいおいお嬢ちゃんそんな物騒なものこっちによこしな」
葉月は銃をミコトに向けられた為、渋々刀を捨てる
「ボクが変わりに人質になる、だからミコトを放せ!」
「おーおーいい心がけだねぇ〜
 まったくこんな玩具の刀でヒーロー気取りかいお嬢…
 なっ重っ…これ本物か?」
と刀に意識が飛んだ瞬間を葉月は見逃しはしなかった
最初にケリで拳銃を吹き飛ばし、刹那の瞬間で3人組をぶちのめす
刀を突きつけ葉月が言う
「相手が悪かったな、ミコトは返してもらうぞ」
「葉月〜〜怖かったよ〜〜葉月〜〜〜」
泣きながら抱きつくミコト
「大丈夫だよミコト、ボクが側にしるから」
ミコトを強く抱きしめる葉月だったが…

「はぁはぁ…このアマーこーなったら、お前ら合体だ!!」
このチンピラ達、実は別の本の放浪者だったのだ
よくよく見たらその外見は、ガルガンチュアの下僕の3人に似ていたが
恐らくは同族か何かなのだろう
合体と言った瞬間彼らの肌の色はにごった緑色に変色した
「ぐぎゃーーーー!!こーなったら暴れて暴れて暴れまくってやるぅ〜〜」
合体巨大化したチンピラ達が暴れ出す

「葉月!ここの人達一体!!」驚くミコト
それもムリは無い、現代日本にこんな怪物が現れたのなら誰だって驚く
「そうか、正体を現したのなら好都合だ
 リリス、来てるんだろっ」
「ははは〜バレてた〜〜だってカッコイイ葉月を見てたかったんだもん〜」
物陰にこそ〜り隠れて事の次第を観ていたリリスちゃん
「リリス、ミコトを安全な場所に!早く」

「あの…伊織さんですよね?
 葉月といい、伊織さんと言い…どーなってるんですか?」
「う〜ん(ポンと手を叩き)あんたも葉月の力になりたわよね〜」
とおもむろにミコトに聞くリリス
「え?…葉月の助けになるなら何でもします」
「ふ〜ん、ララ出番よーー」
リリスは空間から巨大な本を取り出す
「分かってますよ、リリス、藤姫ですね」とララが言う
ララとは巨大な本の主である。
「その通り〜いくよーん
 ページ竹取物語!1588−藤姫
 後〜略〜〜〜」

葉月の攻撃を何とか退ける怪物
中々にやるようである。
「くっボク相手に1分以上生きてたのはキミが初めてだ!」
「ぐぎゃぎゃぎゃーーーぎゃー
 こいつエラクツエェ〜〜〜逃げるが勝ちだぎゅるる〜〜」
逃げようとする怪物
「待てーーー」
その瞬間強い威圧感のある声が響く
「お待ちなさい」
美しい金髪をなびかせ美しい着物を身にまとう、正に天女と言うべき美しさを持つ
藤姫のご登場である。
「藤…姫…そーかリリスが…」
「お久しぶりです、葉月さま〜
 今度は私が葉月様をお助けする番です」
藤姫は印を結ぶと怪物の動きを止める
「今です、葉月様」
「うんっ有難う藤姫」
葉月の一閃が輝く
次の瞬間合体が解除されるチンピラに戻る一行
「さーて、ララ〜〜このオバカさん達の回収ねぇん」
「はい、リリス」
チンピラ達はララの本の吸い込まれ消滅する。

見つめ合う葉月と藤姫
「葉月様、またこうして出会えるとは思いませんでした…
 私は葉月様…貴方の事が…」
「藤姫…ボクもキミが…」
「ってーーーーあんたらね〜〜いい雰囲気だしてんじゃ無いわよーー
 それに藤姫〜〜時間〜〜長い事そのままだったら、ミコトがもたないわよー」
「やはりミコトの体に藤姫が…」

「藤姫」「葉月様」
二人は最後に熱い口付けをする…
顔を真っ赤にするリリスちゃん「はははーーーはふーーー」
バタンと倒れるリリスちゃん
「あっリリスーーー??」一応心配する葉月
「葉月様、ミコトさんをよろしくお願いしますね…私はそろそろ…」
「藤姫…あの時は有難う、今度、今度また藤姫の世界い遊びに行くよ!」
「はい、葉月様」
「約束…約束するから」
そしてミコトの体から藤姫は消えた
同じくして、リリスも伊織の姿に戻ってる

目を覚ますミコト
「葉月!無事だったの…私…あれ私どーしたんだろう」
ミコトは藤姫の記憶は無いが、唇に残る感触に浸っていた
「帰ろうか…ミコト」
「あっうん…有難う
 あいつらに捕まった時、葉月が助けに来てくれるって信じてた」
「うん、どんな事があってもボクはミコトを守るよ」
「うん…有難う葉月…本当に有難う
 そして…だ〜〜〜い好き〜〜〜〜」と抱きつくミコト
だがその為伊織を掴んでた腕が外れ、見事に地面に顔面に打ち付ける伊織…
「ミコト…ボクも大好きだよ」「愛してる葉月〜〜」
見事に二人の世界を作り出してる二人だった
「なんでよーーなんで何時もあたしばっかこんな目に合わなきゃいけないのよーー
 きーーーームカツク〜〜〜〜〜〜」
伊織の叫びも虚しく、葉月とミコトのラブラブはその後1時間は続いたとか



---------フェニミン女子学院高等部1年6組HR
「さて、今日からあなた方の担任の先生の産休の為私がしばらくこのクラスの担任になった
 聖・蓮(ひじり・れん)よ、よろしくね〜〜
 特に、東姉〜貴方の事は担任からよく聞いてるわよ〜
 私が来たからには、毎日学校に来てもらうから、そのつもりで」
そう、久々に登校して来た伊織の前には、あのセイレンが担任教師として現れたのだった
「何故よーなんでよーーどーしてよーーー
 あ〜〜ん伊織ちゃんって世界一不幸な美少女〜〜〜」
「おねえゃんファイト!」初美がガッツポーズをとるんだが
「え?私の今回の出番これだけ…」見事オチまで取られた伊織ちゃんだった



----------------次回予告
リリスの持つ巨大な本の主、ララは思考する
あの子達は元気でやってるのだろうか…
ララは分かれた移民船の子供達が元気でやってるか心配していた

現代に生まれ変わっていたレイラは陸上部のエースだった
しかしそんなレイラの身に…
「レイラ、貴方は私が守ります」
ララとレイラ運命の再開となるのか…

次回ヤミと帽子と月影の少女〜第4話〜『麗羅』乞うご期待

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By よっくん・K