第2話 『知美』


「一平さんに言われて来たものの、本当にその子に何かあるのか〜って」
「はぁ〜でも父の話ですと、一応用心にこした事はないと〜」
「だからって、わざわざ知美を衣緒のウチに住み込みさせなくたって…
 って言うか、むしろウチに来て欲しいね〜役立たずが多いからさー」
「浩一!何か言った」
「いや…な〜んにも」
男の名は羽山浩一、現倉木家の当主であり倉木家の次女鈴菜の許嫁である。
倉木家とは葉月達の東家の宗家であり、莫大な資産を持つ日本でも有数の名家である。
羽山の隣りに居る一見葉月に似た女性が(女性と言ってもまだ20歳であるが)倉木鈴菜
もう一人鈴菜と同じ姿をした女性(むしろこちらは少女と言うべきか)が鈴菜の双子の姉、水菜
そして羽山達のお付のメイド服に身を包んだ女性が春川知美である。
知美の容姿は本の世界で登場したリツコに瓜二つである…が。
なお、現在羽山は鈴菜と水菜と3人で東京のマンションに住んでいる。

「は〜〜ふ〜〜ん」
「何?お姉ちゃん?」
「ソフトクリームが食べたいって…う〜ん
 知美悪いけど水菜に一つ…」と羽山
鈴菜が私にも〜と言う表情を浮かべ、羽山の袖を引っ張る
「はいはい…2つね…知美も食べるか?」
「私は〜そんなには」
鈴菜の双子の姉、水菜は言葉を話す事ができず、とは言えこれは初美とは異なり
幼少期から倉木の山の地下に幽閉されていた為である。
だがそんな水菜の意志は羽山と鈴菜には通じ合っているのであった。
どーやらこの3人は特別な絆で結ばれた関係の様だった。

「あの〜すみません〜ソフトクリーム3つ頂けますか〜」
「はいっお嬢ちゃん〜可愛い服着てるね〜今流行りのメイドってヤツ?」
「はぁ〜」
知美はソフトクリーム屋から3つ買って行くのだが…
「ちょーーと〜〜コゲちび待ちなさいよーーーー
 ってはらはらはら〜〜〜」
ドガンっ
とろくさい知美は見事走ってきた伊織ちゃんに激突される
「あいたたたたたた…
 ってちょっとあんた!普通どけるでしょーに!」
ひゅるるる〜〜べちゃ
空に飛んでいったソフトクリームが見事伊織の頭の上に命中する
「ぶっちゃげありえない…ありえないわよーーーもーーー」
「あの〜大丈夫ですか〜??」
「……ってあんたリツコ!…じゃなかった知美!」
「あら〜伊織さんじゅないですか〜お久しぶりです〜」
「おいしおいし〜」くちゃくちゃと落ちたソフトクリームを食べるコゲちび
「あら〜ちっちゃい妖精さん」
「ってあんた?コゲちび見えるの??」
「コゲちびちゃんって言うんですか〜可愛いですね〜」
「……じゃなくてーー普通は見えないのよーーー」
「?はぁー?じゃど〜して見えてるんでしょう?」
「いや、こっちが聞きたいんですけど」

「お〜い知美ーって…おいおい」
遅いから知美を迎えに来た羽山だが、
そこには頭に見事ソフトクリームが突き刺さってる伊織ちゃんの姿が…
「くっくぷぷぷぷ」
「ってあんたっ!見ず知らずの人間捕まえて笑うこたないでしょっ!!
 いくら色男だって、伊織ちゃん許さないんだから〜っね」
笑いを堪えながら羽山が言う
「伊織…そーかキミが東伊織か…確かに初美に何処と無く似てる感じもしないでもない」
「??って言うか、知美この人だれよ」
と、ソフトクリームの後始末を偉そうに知美にさせながら聞く伊織
「この方は倉木の新当主様である葉山浩一さまです〜」
「羽山?浩一…どっかで聞いた名前ね…
 って確か、おでこちゃんが言ってたあの色男ねっ」
行き成り羽山にすりより始める伊織ちゃん…お約束やな
「ごほんっ
 そうそう、伊織は確か知美とは面識があるんだよな
 じゃ分かりやすく言うと、知美がそちらのお宅付きになったんだ」
「は?言ってる意味が意味不明」
「はい、伊織さん今日から葉月お嬢様のお世話をさせて頂く事になりました
 改めて自己紹介させて頂きます、春川知美で御座います〜」
「…葉月の?」
一同頷く
「……何故に葉月のなのよーーー
 葉月のお世話は伊織ちゃんの仕事なのよーー
 って言うか、確か知美あんた分家の人間でしょー
 東家も分家なんだから、葉月の事お嬢様って呼ぶの変じゃないのよさー」
ぽりぽりと頭をかき、羽山が答える
「まー色々事情があってな…まーそう言う事なんでよろしく」
「よろしくじゃないっ、
 って言うかー普通わざわざメイドを預けるのに当主様が出てくるの変じゃないのよー」
「あー確かに、今イイ事言った〜そうなんだよな〜一平さんあぁ見えて当主使いが荒いんだよね〜」
「申し訳御座いません旦那様、ウチの父がご迷惑おかけして」
ちなみに、羽山の言う一平なる人物は知美の実の父であり、倉木家の分家春川家の人間であり
倉木家専属の医者であった。まー事実上、倉木家を取り仕切ってる訳だが。
今回倉木から知美が葉月の世話役として出向して来たのは、この一平の差し金であり
東家に起っている不穏な影を突き止める為であり、
同時に突如東家に入り込んだ伊織の監視も含まれていた。

「ふ〜ん…あはっ」
行き成り現れた水菜が伊織に抱きつく
「って何よこの子…」
「はーーふーーー(ニコニコ)」
「(お?おでこちゃん??いや違う…けど、似てる)」
「ちょっとーお姉ちゃん〜〜」
遅れながら鈴菜が現れる…鈴菜は伊織を伊織は鈴菜を見て唐突に
二人「こいつ嫌い」
互いに指を刺し合い、はもる…
羽山「オイオイ(汗)」と…



所変わって東の家
「でっ、知美がボクのお世話役として来たんだ
 じゃ伊織は用済みだね」
「って葉月〜〜さらっと怖い事言わないでよ〜〜〜」
泣きつく伊織だが、その先約に水菜が葉月に抱きついてる
水菜は葉月が大好きなのだ
「って水菜ー離れないさいよーー」

「あ〜いらっしゃいませ〜」
と初美が客間に顔を出すが
「あ〜お茶入れますね〜」
「ってちょっと待てーーーあたしが入れるから、おでこちゃんはココに座ってなさい」
初美がお茶を入れると言い出すと伊織が間髪入れずに自分がやる言い出す…
流石にお客にあのまずい物は出せないと
「あ〜伊織さん〜私が代わりにやります〜」と知美
「いいから、あんたはあのバカ(鈴菜)の相手しててちょうだい」
「はぁ〜」

「久しぶりだね葉月、元気そうで」
「こちらこそ、こないだ春休みの時はお世話に成りました」
葉月は春休みの時に一家で倉木家へ長男衣緒に会いに行っており、
葉月と羽山達とはその時から面識がある。
「ところで、何でボクに知美を?」
「う〜ん、話せば長くなるんだけど…出来れば二人で話したいんだけど?」
「ボクは構いませんよ、喫茶店にでも行きますか?」
「あぁ、そうしてくれると助かる」
「ちょっと〜〜葉月〜〜男の人と二人きりなんて〜伊織お姉ちゃん許可出せないわ〜」
「…じゃ、初美少ししたら帰って来るから、それまで水菜の事お願いね」
「ってあたしの意見は無視かいっ!!」
ばいばい〜〜と初美と水菜が仲良く手を振る

「知美」と鈴菜が
「はいお嬢さま何か?」
「今回の事だけど、本当の所どーなの?何か浩一のヤツ隠し事してるみたいだし
 知ってる事は全部話しなさいっ」
と、何時もの様に知美に言う事聞かせ様とする鈴菜だったが
ドカドカドカーーー
「春川さん…ハァハァ…何時こっちについたの…」
そう、東家長男衣緒のお出ましである
衣緒はこの秋からこっちで役所勤めとなったので、実家に帰って来てたのである
流石に数ヶ月知美と会えなかった寂しさからか、知美の顔を見るなり涙を流す衣緒…
この後、知美が東家でお世話に成る事をすごい勘違いで喜んだ事は言うまでも無い
(自分の嫁さんに来たんだと勘違いし)


---羽山と葉月
「で、話とは?」
「実は伊織についてだけど彼女は」
「彼女はボク達の姉です…」
「いや、それは知ってる…だがそれは」
「知ってるならそれ以上は聞かないで欲しい」
「その顔は彼女の秘密を何か知ってるって解釈していいのかな?
 一応、倉木家の当主として答えて貰う権利はあるんだが…まーいい」
「伊織は…伊織はボク達の姉です、それ以下でもそれ以上でも無い
 ボク達の大切な…人なんだ」
「ふぅ〜ん、彼女が何者か、実は察しついてると言ったらどーする?」
「!?まさか、本の世界の事も知ってるのか!?」
「……?はぁ?葉月?(何言ってるんだ思いつつ、本題に入る羽山)
 彼女は穢れの具現体ではないかと、我々は考えている
 故にキミらも伊織と言う少女があたかも今まで一緒に暮らして来たかのような
 錯覚に陥っているんだ…
 思い出して御覧、こないだ倉木に来た時、彼女は一緒だったかい?」
羽山は1年前、死んでいた筈の百合子さんが生きていた様な記憶を
植え付けられていた、山の人々の事を思い出しながら話す。

「…一つ、勘違いしてますよ、羽山さん
 その何とかの何とか体ってのじゃ無いですよ、伊織は
 それに、羽山さん達初美が喋れる様に成った事に気づいてない」
「喋れる?…(はっ)そーだ…何で思い出せなかった…
 …と言う事は、やはり初美も穢れの具現…」
「先に言っておきますが、ボク達に構わないで欲しいんです
 あなた方の考えてる様な事は決して起らないし、起きるようなら
 それはボクらが解決しますから」
「…う〜んどーやら、キミの方が俺達より情報を掴んでる…って事か
 随分見ないうちに大人の表情する様になったんで少し驚いてるよ…
 流石は百合子さんの…おっと」

「こないだの事件覚えてます?」
「こないだの事件?あーあの岩から落ちてってやつ」
葉月は春休みに倉木家に行った際、
水菜と遊んでいる最中に岩山から水菜が落ちるのを助けようとして
岩山から落下すると言う事故に合った
だが、不思議な事に二人共怪我一つ無く無事に済んでいたのだ。
「そう、あの時は分からなかったんですが、あの時水菜から出た光、
 あれはソーマだったんじゃ??」
「ソーマ?…う〜ん面白い表現するね
 まーソーマと言うか、発剄と言うか、エナジーと言うか、
 まー表現は国によって異なるけど、人が本来持つ力ってやつかな
 俺達3人は、それを人一倍強く操る事が出来る…まーそん所か
 でも、それが穢れを呼ぶ原因にもなるんだが…」
「誰しも持ってる…いや違うっソーマを持つのは、イヴの洗礼を…」
葉月はふと思い出していた、本の世界で出会ったクィルの事を
彼女の話によると、人間の先祖は皆一人の女性から生まれたと言うのだ
現代で言う所のミトコンドリア=イヴ説となるのだが。
葉月が原始時代の本の中で見た壁画で、間違い無く初美のイヴの姿を見た
その事から、人類は皆イヴの洗礼を受けているのでは?とこの瞬間答えが出た気がした

「羽山さん…さっき初美もその何とかの化身みたいな事言ってたけどそれは?」
「初美は倉木の山で発見され、東家に預かってもらっているの知っての通りだが
 彼女に関しては様々な推測が飛び交っていてね。
 それを確かめる為に、此間来てもらったんだが…結局何も分からず終いさ
 まー水菜が言うには大丈夫だよって事みたいだけど…」
「そうか、水菜が…」
葉月は少し嬉しかった、葉月は水菜に初美の姿をだぶらせていたので、そんな水菜が
初美を受け入れてる事に喜びを感じていたのだ
「それで…伊織は?
 そーか、知美は伊織の監視役として」
「…まー察しの通りさ
 だが、俺はもしも伊織に何かあるとすれば、それは初美にも…」
ジャンジャジャンジャジャンジャー羽山の携帯が鳴ると同時に葉月の携帯も鳴り出す
「何?穢れが現れただと!!まさか伊織かっ!
 おい鈴菜っおい!!」
「羽山さんっ御免」
葉月は羽山の腹に一撃を入れ気絶させる
「なっ…はづ…」意識を失う羽山だが


「まずいな、この気はもののけか何かか?
 そうか、さっき言ってた何とかってヤツが動き出したのかっ」
葉月は穢れがソーマを求めて動き出した事を察していたのだ




----東家
「って何よコイツわ〜〜〜」伊織が叫ぶ
「やっぱり正体を現したわね〜やっぱり伊織っあんたがこいつの」
鈴菜はすごい煙幕で伊織を睨みつけるも…
ドカドカドカーーー
「あーーーー」
「お姉ちゃ!!」
水菜が化け物に捕まってしまう…同時に衣緒も
「助けて〜春川さん〜〜鈴菜〜〜伊織〜〜」
情けない衣緒の声が家に木霊する
「(まずいわね〜ここじゃ変身出来ないし…うーーー)」
うごうごガシャガシャと鳥篭のデブインコが救助を求めてる
「チャーンス〜ケンちゃんアイツを外におびき出すのよ」
「って又ワテかいーーーー」
デブインコケンちゃんがすごむのだが…それを見た鈴菜が…
「イ…インコがしゃべ…」
はらはらはら〜と気絶する
ちなみに、既に衣緒は怪物に締められ意識は遠のいでいた
「よしっ作戦成功!!」
「お姉ちゃん後は任せたよ〜私は物陰に隠れてるから!!」
ガッツポーズで物影に隠れて応援する初美…さすがだ…ちゅーか、お前がなんとかせいっ
とは言え、現在完全にイヴの力を失ってる初美は完全に普通の人間なのだが

「まーいいわっ行くわよコゲちび!!」
「きゅるるる〜〜〜合体〜〜〜」とコゲちびが伊織の体の中に入ると…
ぴかーん!!
「ふふふふふはぁはははははーーー
 天から降ったか地から湧いたか三千世界を乱すヤツ
 この正義の美少女女神ヤミが来たからには!!」
「あの〜〜伊織さん?」
「何よ知美ーー今いいところ…
 ってあんたの存在忘れてたーーーーって言うか、
 見た?見たのね??」
「はぁ〜見ましたけど?何か?」
「いや…何かと言われても困るんだけど…
 ん?そーか、知美あんたの体借りるわよ!
 出でよ聖典テスタメントイヴ!!」
リリスちゃんは異空間から巨大な本を取り出す
「リリス今回はどーしますか」本の主ララが喋る
「ページ錬金術師の本!197−リツコ
 光より出でよ汝リツコの魂よ、寄り代知美の肉体に宿りし、我に力を貸し与えよ」
ピカーン!!
知美の体が光り輝き出す
そう、これこそがリリスちゃんの召依魔法である
本の世界の魂を別の世界の波長の合う人間の体に降霊する事により
異能力を操る僕(しもべ)とする事が出来るのだ
「久しぶりね〜リツコ」
「ええ、リリスも元気でなにより」
「あの〜〜どーして私こんな怪しい姿にされてるんですか〜」
一同唖然
「ちょっとまってよーーー
 知美…あんた意識あるの??」
「はい?至って普通ですが…強いて言えば、このブラがきついのですが」
「まいったわね〜私の体の持ち主どーやら、完璧に意識あるようよ」とリツコ
「うぅ…まーとりあえず、リツコお願い
 衣緒のバカ泡吹き出してるし」
「了解
 古より眠りし不動なる霊よその姿槍とかせ!」
リツコの錬金術が怪物の両腕を切断する
「大丈夫でっか〜〜綺麗な姉はん」
ケンちゃんが地面に顔面から落ちた衣緒を後目に水菜を助ける
「あんぎゃーーーーー」
怪物がさらに大きさを増す!!
「リリス、このままでは物質をさらに吸収し、この建物ごと崩壊します」
「ララー簡単に言わないでよ〜〜
 リツコーーー」
「ダメだわ、さっきの錬金術を浴びあせたせいか、物質を取り込んで
 実体化し始めてるわ…私の術じゃ逆にアイツを大きくさせるだけ」
「あの〜それでしたら〜水を被せたらどーでしょうか〜」と、もじもじしながら知美が言う
「はぁ?水?」
「その手がありまっせ〜〜水を被せて、ヤツの肉体を水にしてしまえば」
「後は蒸発させればいいって訳ね〜
 流石は、私の子孫の事だけあるわ〜」と知美の作戦を関心するリツコ
「いや…ちょっと待って…それってすごい水の量使うわよね…
 うぅ〜そん事したら〜せっかく毎日リリスちゃんが米の伽汁で洗物して節約してる
 水道代が無駄になるじゃないのよ〜〜〜」
……一同ムシ
「さてやるわよ〜〜」リツコがホースを怪物に向け水を撒き散らす
「ってーーー誰が掃除するのよーーそれーーー」と、また論点がずれてるリリスちゃん

「冷たいーーーって知美ーー何水遊びなんかして…」
水を浴びた鈴菜が目を覚ますも…皆が後ろ後ろと指差すと
「はらはらはら〜〜」
怪物を見て再び気絶する鈴菜
「ふわ〜よく寝た…えーとココは?」と衣緒くんも目を覚ますが
ガコーン!!ケンちゃんのフライパンの一撃で再び眠りに付く衣緒
「あ〜春川さん〜そんないやらしい姿でボクを誘ったら〜〜ふにゃららら〜」

全身が水化した怪物だったが、事もあろうか鈴菜の体に入り込み
「ってちょっとーーー何て事を〜〜」
「お嬢様〜〜〜」
「あんぎゃーーーー」と鈴菜を盾に襲い掛かる怪物だが
シャキーーーーン
「アギャ?」
怪物の霊体のみ切り裂かれる
「ぎやるりゅるるーーー」
そう、我らが葉月たんの登場である
「葉月ーーーーー」
「あ〜〜にこにこ」と水菜
「大丈夫、後はボクに任せて」
「葉月相手はソーマを取り込んだこの世界の邪念体よ」とリツコの助言
「知美?リツコか…そーか、リリスが呼んだんだね
 分かってる、多分倉木の山に居たあいつだ…」
「葉月ちゃん、鈴菜さんを助けてあげてー」と初美が叫ぶ
「大丈夫だよ、ボクが皆を守るから
 いくぞー!!」
「ぐゃるるるーーーー」
怪物の伸ばす触手(水の)を全て掻い潜り本体に
一閃二閃三閃


葉月が刀を鞘に収める音が響いたと同時に怪物が浄化されていく
「今だリリス」
「あっはいはい、ララ」
リリスは本を開き、ソーマの邪念体を吸い込み回収する。
「はいっこれで一件コンプリート〜〜葉月〜〜〜」
と抱きつこうとするリリスをすらっと交わす葉月
「リツコ、また会えて嬉よ」
「ええ、葉月も元気そうで…
 渡してくれた様ね、ジルにリボンを」
「うん、約束だったしね」
ニコっと自分のリボンに手を当て笑顔を見せる初美
「じゃ、ジルも葉月も、又どこかで逢いましょう」
「うん、じゃねリツコ…ガル達にもよろしく言っておいて」
「ええ、きっと喜ぶわ」

「なんかさ〜リリスちゃんが一番活躍したのに〜
 どーして一番…って言うか、後片付け誰がするのよーーー」
と心の中で叫ぶリリスちゃんだったが、声に出せない悲しさか(笑)
「リリス、又逢えるよね」と葉月が
「ええ、直にでも会えるわ…じゃ葉月〜まったね〜」
とリリスちゃんが伊織に戻るの
当然わざとらしく、誰がこんな事したのよーーーと叫ぶ伊織だが

「さて、衣緒、鈴菜」
がこんっと、気絶した二人をムリクリ起す葉月
この二人に対してはかなり乱暴だが
「初美、水菜〜二人とも大丈夫だった〜」
この二人に対してはめちゃめちゃ優しい葉月であった



「あー腹いてー
 葉月のやつ…くそーどーなってるんだ」
「お帰り浩一」
「鈴菜…お前…何があったんだ!?」
「さーそれが私もよく覚えてないのよ〜
 なんかインコが喋ったり〜変なオバケが出たり…もーなにがなんだか」
「…はぁ??
 で大丈夫だったのか??」
「う〜ん、お姉ちゃんの話だと〜何か怖い話してて〜それでオバケがどーこーって」
「う〜ん…謎だ」

「知美…とりあえず、何かあったら直に報告してくれ」
「はい、旦那様」
ニコリと微笑む知美の笑顔に安心した羽山達は自分達のマンションへと帰って行くのであった



「知美…その何だ、リツコから全部聞いたんでしょう」
「はい」と笑顔で答える知美
「その…出来れば黙ってて」
「伊織さんは伊織さんです」
「知美…あんた」
「今日から葉月お嬢様の為に二人でお役に立てる様に頑張りましょ〜」
「いや…お役にって言うか、伊織ちゃんは葉月のお姉ちゃんなんだしぃ〜」
「貴方は、マリエル姫の魂を解放してくれました…今ではマウと名乗って皆で
 楽しく暮らしてるそうです」
「…そーなんだ…」
「私は貴方は悪い人じゃないって知ってます
 倉木の方には伊織さんは何の関係も無いと報告しておきます
 それよりも…葉月お嬢様の回りに不穏な影が見え隠れしてます
 それが穢れなのか、ソーマの邪念体なのか分かりません
 でもそれから葉月お嬢様をお守りできるのは、ヤミである貴方だけなんです」
「はははは…と言うか、葉月はほっといても大丈夫な気もするけど…」
「伊織さん、葉月お嬢様の力になってあげて下さい、お願いします」
「…まー言われなくても、その為にリリスちゃんはここに居るんだしねー
 と言うか、知美さー何で葉月の事お嬢様って呼ぶの??」
「え?葉月お嬢様は葉月お嬢様ですし」
「何か…意味深な…」
その後伊織は葉月の出生の話を知る事になるのだが、それはまた別のお話



「は・・・はっ・・・はっくしょん
 うぅ〜〜風邪かな〜何かすごい寒気が〜う〜ぶるぶるぶる〜
 春川さん看病に来てくれ〜はーくしょん」
水浸しのまま放置されてた衣緒は当然風邪引いてるのだが…
「あんたも不憫なお人やな〜」
「はっ!今何処からか声が」
きょろきょする衣緒だが…まさかケンちゃんが喋ったとも知らず
ちなみに、衣緒の後頭部のフライパンで出来たコブが直ったのはその1週間後だったと言う
「うぅ〜風邪は治らない〜後頭部はガンガン痛いし〜春川さんは葉月にべったりだし〜〜
 誰かボクに優しくしてよ〜〜〜」
衣緒の悲痛の叫びが木霊する…



----------------次回予告
リリス事伊織ちゃんは家事にヤミの仕事に忙しい毎日を送る
そんな中、なんとあの美女が伊織の前に姿を現す!!
「待っていたのよこの時をっ!リリス今回こそ観念しないさいっ!!」

次回は少し〜ほのぼの路線か?
はたまた百合爆裂か!!
ヤミと帽子と月影の少女〜第3話〜「ミコト」に乞うご期待






おまけ
東葉月春休み倉木の山にて
東葉月のHP天使のホットケーキより抜粋
1週間ぶりの更新です
倉木の山から帰って来ました。
今回は色んな事があり過ぎてもーなんだかな〜って感じです。
由利子さんのお墓参りしてきました。(ボクの大好きだった叔母様です)

今回は新しい倉木の当主を紹介されると言う事で、少し緊張したんだけど
と言うか、あの鈴菜(鈴菜ってのは、性格悪い本家のお嬢様)の婚約者って言うんだからビックリだけど。
なかなか好青年って感じだった。
今回はかなり遠縁から呼んだらしい。
本来はウチの兄が鈴菜と婚約する筈だったんだけど、訳ありで流れたらしい。
前に一度だけ鈴菜と取っ組み合いのケンカした時、彼女の本音を聞いた事が有る
まーケンカの理由が、鈴菜があまりにもボクの兄をバカにするから、ボクがキレちゃって
鈴菜のその時聞いた本音が、本当は衣緒(ボクの兄)と結婚してもいいかな〜と思ってたらしい
でも、衣緒は知美の事が好きで、その上頼りない…
だから尚の事鈴菜は衣緒に当たってたらしい
少しでも強い男になって欲しいからと
だからって、あんたが(ボクの事)男だったら良かったのに、は無いだろ。
ボクだってお前みたいなおてんばは嫌いだ
むしろボクは初美の様な上品(かは不明だが)な子が好きなんだ

うぅそうそう、初美今回はボクの事徹底的に無視…(涙)
なんでだよーミコトの事正直に話したのに怒るなんて酷いよーー
だからって、これ見逃しに羽山さんにべったりはどーよっ!
鈴菜も鈴菜だよっ、お前の婚約者なんだから少しは怒れよなーー
とは言え、鈴菜は何故か?初美に弱いんだよね
何か前に聞いた話によると、初美見てると懐かしい何かを感じるって
まーそれは今にして思えば、鈴菜の双子の姉の水菜の事だったんだけど。

そうそう、今回はその倉木の当主羽山さんともう一人、隔離されてた鈴菜の双子の姉水菜の正式な倉木家入りもあったらしいのだ。
と言うか、隔離してたって何よっ
うん、水菜は確かに雰囲気とか仕草とか凄く初美に似てる。
水菜は初美の様に口が聞けないのでは無く、言葉を知らない(教えられてない)らしく、そんな所も似てる
確かに、鈴菜が初美に失ってた姉を求めてた気持ちも分かる気がする。

と言う感じで、何故か倉木の屋敷に滞在中ボクが水菜の面倒見る事になった。
水菜は基本的には手はかからないのだけど、行き成り突拍子も無い事したりする
行き成り電球の球取ろうとして、熱いからってイスから落ちそうになったのは参った…
まー何でも精神年齢は3歳らしいからし方無いのかもしれないけど

で、ボクは水菜と一緒に寝る事に
と言うか、お風呂に一緒に入った…ボクは嫌だったんだけど(基本的に人に肌見られるの嫌い)まー水菜だしな〜と思い。水菜は鈴菜の双子だけあってスタイルは良い。まー胸は小さいけど
でも水菜…やたらとボクの胸触ってくる…鈴菜が風呂に入る前に、チチ吸われるから覚悟しろーとは言ってたケド…まさか本当に吸われるとは思わなかった(汗)
でもなんだろう、嫌な感じはしなかった
布団に入って眠るも、ボクは目が冴えて眠れない…
そしたら水菜が行き成りボクの頭を撫でてきて、今度は自分の胸にボクの頭を寄せてきて…
ボクは気づいたら寝てた
そう言えば昔、夜が怖くて眠れない時よく初美が同じ事してくれたよな〜と
水菜の胸はとても温かくて、凄く居心地が良かった…

そんなこんなで、ボクは神社に連れてこられた
そして、何かスゴイ薄い着物着せられて…
あの儀式だ
ボクがまだ小さい頃、1年に一度倉木の山に連れてこられて、魔払いとか言ってこの着物を着させられ大衆の前に半全裸の様な姿で清められる…ボクはそれが嫌で嫌でたまらなかった。
ちなみに、ボクが人に肌見られるのが嫌いのはこの時のトラウマから
その時は決まって初美は母さんと家で留守番
だから初美はこの事を知らない。
ここ数年は呼ばれなかった。
と言うか、倉木の山に来るのは数年ぶりだった、そうその時が由利子おばさんとの最後の別れだった
ボクは何故か由利子おばさんのお葬式には行かされなった
と言うか、教えて貰えなかった
それを知ったのは、1年前に衣緒が帰って来た時だった
その時の衣緒は少し変だった
まー羽山さんが来たのがその頃らしい
何かよく分からないんだけど、衣緒の話だと由利子さんはその時まで生きてたとか何とか…ちょっとした集団催眠にかけられたとか何とか。
そして何故か?知美とその羽山さんだけ、催眠にかからなかったとか。
その1年前が、倉木家にとって重要な儀式の当日だったらしい。
ちなみに、その儀式の為に水菜は幽閉されてたとの事。
だからから、ボクは由利子おばさんが死んでたのって未だに信じられない…
会いたいな、由利子おばさんに…また

そうそう、水菜は由利子おばさんの実子なだけあってやっぱり雰囲気とか似てるんだよね〜
実は、鈴菜じゃなくて初美と水菜が姉妹なんじゃ?と
いや、でも何かやだな〜実は衣緒と鈴菜を結婚させなかったのは、実は鈴菜は東家の子供で、水菜の影武者だったとかってオチだったら…と言うか、そうなるとボクと鈴菜が姉妹に!絶対嫌!!!
同じ姉妹なら、水菜とがいいよーーー
とまぁ、こう言う話を一平さん(知美の父親)にしたら、鈴菜は正真正銘由利子さんの娘だよと。
だって、鈴菜と水菜を取り上げたのは他でも無い、自分なんだからって。
あーちなみに、一平おじさんは倉木家の専属医。ちなみに春川家の人間ね。
おじさんは厳しい人だけど、ボクと初美には優しいんだよね

まーそんなこんなで、今回のボクの清めの儀式も終了
と言うか、しかた無いんだけど、そこに同席してたおじさんはイイとして、羽山さんに全裸に近いボクの体見られた…うぅ何か凄く恥ずかしい…と言うか、羽山さんの「中学生の裸見て欲情する程、俺は餓えてないゼ」あの一言はマジむかついた!くそーそれはそれで腹立つ!
こう見えてもスタイルには自身あるんだぞっちくしょー
あっ、勘違いしないでね、別に羽山さんに男を感じたとかそんなんじゃ絶対に無いから!
と言うか…ボクが初めて見せるなら…その貴方だけにだから…
うぅボクは何言ってるんだ!
くそっバカ鈴菜がやたらと、男の話振ってくるから…うぅ
だからボクは初美が好きなんだーーーーー
と言う訳で御免、適当に彼氏って事にしといた、スマン(誰に言ってるんだ)

しかし、どーでもいいけど、衣緒と羽山さんって危ない関係か?
何かホモの匂いがぷんぷん(笑)
でも、絵になるから怖いんだよな〜あの二人
やたらと初美が喜んでた初美はホモマンガ愛読者(笑)
ちなみに、ボクはそんなモン読まない

まーそんな事はどーでもいい。
ボクはスゴイ体験をしてしまった
(初体験じゃ無いからねっ!ボクは結婚するまで大切にする派…ぅって結婚なんてしないよっ)
水菜と遊んでる最中水菜が崖から転倒、それを助けようとボクととっさに飛び出したんだけど
多分普通なら死んでたと思う
地面に付く瞬間、青白い光に包まれた
そして一瞬誰かの声が聞こえた気がした…
いや、あれは由利子さんの声だったのかもしれない
ボク達は由利子さんに助けられたんだと

初美にその事話したら、凄く優しく聞いてくれた
やっぱり初美は初美だ〜大好きだよーーー
で、その事がきっかけで初美と仲直り♪
でも変なんだ、そんな事あったら普通鈴菜ならバカにしたり、からかって来たりするのに
今回ばかりは、だんまりだった。
衣緒も含めて、皆だんまり…まるで、何か隠してるみたいな
結局この事件に関しては誰も口を割らなかった
何だかボクだけ蚊帳の外でいや〜な感じだった。

最終日、羽山さん達も一緒に東京に帰る事になった
初美とボクと羽山さんと水菜とオマケの鈴菜の5人で少し東京めぐりを楽しんだ
何でも水菜がボクと一緒に回りたいと言ったらしくて。
何故か?羽山さんと鈴菜は水菜の意志が分かるらしい
と言うか、この3人ってなんて言うかテレパシーみたいなので繋がってるのか?と思う程、息が合ってる。
まるでボクと初美みたいだ〜と言いたけど、少し微妙

たま〜に水菜に会いに遊びに来て欲しいと言われたけど、気が向いたらね〜と答えた
なんだか、水菜と居ると、心を奪われそうになるから
ボクは初美一筋で居たいから
最後に羽山さんが何を言いかけたんだけど…



今回の本家帰りは色んな意味で疲れた〜
でも楽しかったかな。
そー言えば、衣緒と全然話してないやー
むしろ衣緒も帰ってくればいいのに…まー知美が向こうに居る限り帰ってこないか(笑)

ただ、やはりあの事件の事が凄く気になる…
その話をよっくんおじ様(笑)してみた所、何か色々うんちく並べてたけど、多分どれも違うな〜と。と言うか、科学的に解説されても困る…と言うか、よっくんには悪いが、ボクはあれは霊的現象だと思ってる。
こう言う時科学マンセーのよっくんと会話が合わないと思うんだよね。
ただ、少し気になったのは、水菜に何か関係してるんじゃないかと
ボクは水菜に関係してるって全く考えなかった、よっくんの話だと、水菜の幽閉されてたのが何かしらの秘密に繋がるんじゃないかと…
とは言え、多分これは一生分からないまま終わるんだろうな〜
まー幽霊とか、やっぱりそっちだと思う
ボクはやっぱりあれは、由利子さんが助けてくれたんだと信じてる。
東葉月のHPに興味持たれた方こちら

と言うか、ヤミ月ネタ満載です(笑)

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By よっくん・K