空は暗雲が支配していた 人々は空を見上げ神に祈る だが、絶望が降り立つ 「ははははは さあぁ僕の復讐劇が始まるのさ イヴよ、己が育てた愛しの者の手にかかって 永遠の苦しみを味わうがよい!」 「初美いっちゃダメなの〜 あいつ初美を虐めるなの〜」 「大丈夫よミルカちゃん 私は大丈夫だから…」 「アベル お姉ちゃんを放しなさい」 「あぁ、こんなカスにはもう用は無い」 「大丈夫お姉ちゃん」 「おでこちゃん…あんた 葉月を葉月を助けてあげて」 「うん、わかってる必ず葉月ちゃんは取り戻してみせるわ」 「アベル お姉ちゃんと葉月ちゃんをよくも好きかってしてくれたわね ただのお仕置きじゃ済まないわよ」 「また僕を虐めるのかい? また僕を凍らせるかい? また僕を何万本の針で串刺しにするのかい? また僕の血肉を喰らい楽しむのかい? また僕を殺すのかい? はははははは あーははは もとはと言えばイヴ、キミがいけないんだ このボクの愛をズタズタに切り裂いたんだからな!!」 「ちびちゃん…」 「うん合体〜」 初美は輝きに満ち、ヤミの姿を取り戻す 「アベル所詮貴方は失敗作 母の手で今、終わりにしてあげる」 アベルとイヴの間にはこれ以上無い旋律が走る… ヤミと帽子と月影の少女 第12話『セイレン』 「ん…ここは何処だ…ボクは」 葉月は見渡す限り暗闇が支配する世界の中に居た 「ボクは確か…そうだ、リリスの帽子を被らされて」 「そう、ここはジョウ・ハーリーの意識世界の中」 葉月に囁きかける声がした 「…お前は、アーヤ 何故ここに?」 「僕はね、唯一ジョウの中に入れる存在なんだ ジョウとは古くからの友人でね ほら、葉月の中のジョウも帰りたいって言ってるよ」 「ボクの中のジョウ… これは…コゲち…いやちびは居ない コゲた布の切れはしだ」 葉月の中から出て来たのはコゲちびの被っていたコゲコゲに良く似た物だった 「彼もまた、ジョウの一部なのさ」 「何故それがボクの中から出てくるんだ?」 「それは過去に葉月が一度死んでるからさ」 「ボクが一度死んだ???」 葉月は自らの深層心理の奥に閉ざされた扉の前に来た 「開けるよ、これが葉月の真実」 キーンと言う音と共に、今まで堅く閉ざされていた扉が開く おんぎゃぁおんぎゃぁ 赤子が二人か…だが残念ならが片方は死んでしまっている 残念なが…これは? どーしました一平先生?看護士が訊ねた 死んだ赤子が生き返った… 先生大変です!脳波が…脳波が どう言う事だ…あれはもう一人のボク初美だ…でも そう、初美…葉月の双子の姉は本当はキミだったんだ葉月 本当に死んでたのは葉月の方なんだ 手術によって双子を一人の人間にする事で生き長らえさせた でも本当は二人とも死んでたんだよ 死んだ葉月の脳を取り除き、双子の肉片の塊として生まれた初美の 唯一機能してた脳を葉月に植え付けた でもそんな事したって人間は生き返りはしない 人間はつぎはぎしたって生き返りはしないんだ 魂が無ければね じゃあボクは何故生きてる!ボクは本当は誰なんだ!? 奇跡だ…奇跡が起きた 双子の姉初美は倉木の当主の命令で焼かれずに地下に埋葬された 初美の脳を移植し生き返った葉月は、 由利子の命で東家の長女として育てられる事になる もっとも、拾われたイヴの化身である初美と再び名づけられた少女を引き取る事で次女として育つ事になるんだけどね。 ボクは一度死んだ…ボクの脳は初美の脳? ボクの体は死んでた赤ん坊の物… ボクは誰なんだ? 何故生き返ったのか?その答えがこれさ アーヤはコゲコゲをひょいと摘み上げた これがキミの体に入り込む事で新しい命を得たんだよ もっとも、そのせいでコゲコゲはキミと同化してしまったんだけどね それは…その布きれがボクの正体だと言うのか… それは違うよ、葉月は葉月だよ 彼はきっかけを与えただけに過ぎない ボクはボクは… 「ふふふヤミと言ってもジョウ・ハーリーの無いヤミが何になるって言うんだい?イヴ」 嬉しそうに叫ぶアベル…だが 「あんたは一人じゃ無い!」 蓉子が叫ぶ、そしてイヴの元に駆けつける葉月の仲間達 「ウチらもいるでぇー」 「うわ〜ルラウ様と一緒に闘えるなんてレイラ感激〜」 「レイラ、そう言う問題じゃないだろっ」 「貴方が葉月様の言ってた、姉君様ですか 葉月様は出会えたんですね…」 「僕達も微力ながら助太刀するよっ」 ドロシーはイヴにウィンクした それは少しだけ兄である衣緒の精神が残ってる証拠だろう 「みんな…」 「イヴ…これが葉月の力よ」 「うん、お姉ちゃん 今度は私達が葉月ちゃんを助ける番よ」 「ふんっザコが何人来ようが同じ事! 出でよ、世界喰いたるバグよ!!」 アベルの呼びかけにより天空より炎を纏った龍が飛来する 「あ…あれは!バグ」 リリスの驚愕があたりに響く 「バグって何〜」 レイラがおろおろしながら叫んだ 「レイラお久しぶりです 赤ちゃんは元気に育ってますか」 「その声はララ!何でその事を…って言うか何処にいるのララ!」 「私はここですよレイラ、そしてラムロ」 「ララ…その姿は」 「あーそれは、ルラウ様の本…」 「はい、私達を守ってくれてた本です 今私はこの本と同化して生き長らえてます もっとも、コンピューターである私が生きてると言うのは少し違いますが」 「ううん、ララは生きてるんだよ そうだララ…お母さん、ララがレイラのお母さんを演じてくれてたんだね」 「ごめんなさい、隠すつもりは無かったのです」 「ううん、ありがとうララ 今はあたしも母親になったんだよ だから分かるんだ、ララの気持ちは 本当に有難うララ また逢えて本当に嬉しいよ」 「レイラ…さぁヤツが来るぞ!話は後だ」 「はい、貴方!」 「ひゅーひゅー新婚さんの愛だね〜」 「こら狐娘!茶化すな来るぞ」 「ララこう言う形だったけど、逢えて良かったね」 「はい、リリス だからこそ、この世界を私達で守るのです」 「了解、ゲートを開けばいいのね」 「はい、リツコの反応が近いです 彼女なら、いえ彼女達なら或いは」 イヴはとても嬉しかった、葉月が自分を探す為に出会った仲間達が こんなにも世界のために、何より葉月の為に一緒になって闘うなんて 「葉月ちゃん必ず取り戻してみせる! ラスカレス!」 イヴの命を受け、ラスカレスが今までに無いソーマを放つ そして太陽の剣でアベルに斬りかかる 「ウガーーーー」 バグの攻撃が、アベルに届く前にラスカレスに襲い掛かる 「水の精霊よーー」 クィルの水の壁により事なきを得るラスカレス 「不味いわね…やっぱり力が足りない」 イヴは舌打ちをした 「ふはははは まだリリンはヤミに覚醒してないが、バクでも十分お前達を苦しめよう」 「くっ、こいつマジで強い」 流石の蓉子から弱音が出る 「魔法が全てキャンセルされてしまうんです、打つ手が無い」 魔法の達人ドロッセルハウストもなす術が無い 「リニアレールガンシュート!!」 ズガガガガーーーーー 知美の放つリニアレールガンもバグに飲み込まれてしまう 「どーやらエネルギーを食べてしまうようですね」 相変わらず知美は冷静に語った 「あーんラムロ〜全然効かないよ〜」 「くそっ俺達じゃ勝てないのか!?」 「ここはウチの出番やーーー」 「はーーーー」 藤姫の渾身の術が一瞬バグを止めるが…瞬間に解除される 「姫様の力も効かぬのかっ!!」 「…ってウチの出番が…」 「どーやら来たようです」 ララが言った 「ん?空間に歪みが? まぁいい、誰が来ようが同じ事、バクよ先に歪みに放射するのだ!」 アベルの命令でバグは歪んだ空間にブレスを吐いた 「あちーーー」 「あちーーっすよ〜〜」 「んがーーーー」 「どうやら、着いた様ね」 「それは良いがリツコ、バリアを張るなら我々も守って欲しいのだが」 ガルガンチュア達はブレス攻撃により頭髪がパンチパーマに… 「ガル似合うわよ…くぷっ」 「リツコ〜〜今笑っただろーーー」 「あの〜それ所の問題じゃ無いみたいですよ〜」 マウは冷静に言うものの、バグは目の前までやって来ていた 「怖いよ〜〜〜ひーーー」 3馬鹿達はガルガンチュアに抱きつき震えた 「えぇ〜いっうっとうしい! マウ、確かこやつは」 「はい〜玉藻の前様のペットのバグちゃんです〜」 「何故それがこんな所に?」 「えぇ〜〜い問題は後だー逃げろーーー」 マウの時空船パオちゃん13号は一目散に逃げ出した 「ってあいつら役にたたないじゃん!!」 リリスが地面に足をガンガンやりながら地団駄を踏んだ 「そうでもないよ、お姉ちゃん バグの気を反らしてる、今ならアベルは一人」 「そうか!皆突撃〜〜〜」 だが、アベルの前に全員がなぎ倒される 「馬鹿かお前達は、バグが居なければ僕を倒せるとでも思ったのかい?愚かな」 「アベル!!覚悟!!!」 イヴはラスカレスから渡された太陽の剣でアベルを一突きする…が 「キミがこう来る事は最初から計算済みさ」 そう言うとアベルはイヴを抱き寄せキスをする 「んぐ〜〜〜」 放せ放せとバタバタするイヴだが 「おでこちゃんが男からの強引なキスを嫌がるなんて初めて見た… じゃなくてーーーイヴ〜〜〜」 「その手を放せ!!!」 ガルガンチュアの拳がアベルに向かい放たれる…が 簡単にカウンターを喰らい吹き飛ばされる 「ガルガンチュア!! 大丈夫…ガルガンチュア…」 「ジル〜あ〜ジルだ…私のジルだ」 「ガルガンチュア…」 「ってあんたら何時までやってんのよー」 アベルは自分の胸に刺さった太陽の剣を引き抜く 「馬鹿なヤツだ自分から私にこれを渡すとは… ククククハハハハハ」 「お命頂戴!!」 知美の薙刀がアベルの背後からアベルの首を凪斬った アベルの首は宙を舞う 「やったなの〜〜〜ミルカの後ろからバッサリ作戦成功なのー」 「ってミルカの作戦かいっ」 「確かに手ごたえは有りました…ありましたが」 首を狩っておきながら冷静な知美 「ふふふ人間にしてはやるね〜 まさかそんな不意打ちが来るなんて思ってもみなかったよ はーーーーーっ!!」 アベルの生首から振動波が知美を襲う 「春川さーーーーーーん」 その瞬間ドロセッルハウスト、いや衣緒が身を呈し知美を庇う 「東くん…衣緒くんしっかりして…」 「春川さん…僕はじめて春川さんの役に立てたね… 僕はもう…はるかわ…さ」 「衣緒しっかりしないさい!」 知美の大きな声が辺りに響いた 「春川さん?」 きょとんとした顔の衣緒 「東くん、ダメよこんな所で挫けてちゃ 今は貴方の妹を助け出さなければいけないの それをだた一人の兄がしっかりしないでどうするの」 「その通りよ!知美」 「鈴菜お嬢様…それに水菜お嬢様旦那様…千賀子さん」 「俺達もついてるぜ」 水菜が衣緒の側に来て衣緒を癒す 「あ…体から傷が消えていく…」 倉木軍団全員集合である 「さて、リリスどーやらアイツが今回のラスボスみたいだな」 エニアとなった千賀子がリリスに問う 「まーそんな所ね 厳密には、今回のと言うより、一連の事件の って言うべきかしらね」 そう言ってる間にアベルが飛んだ首を体に戻していた 「化け物…か」 羽山はアベルに恐怖を抱いた 「お前達なんてヤツと闘ってるんだ」 知ってるかい葉月 ヤミの帽子ジョウ・ハーリーは無限の存在 その分身である狩人の数も無限 そう、ジョウとは宇宙その物 狩人とはその小さな世界その物 人は世界であり、宇宙でもある 昔ね、葉月と同じく死んだ人間が蘇った事があるんだ そう、あれは錬金術の世界での事だった そう、コゲコゲにより永遠の命を得た存在 確か名前は… 「さて皆さん、そろそろ死んでもらいましょうか」 アベルの号令によりバグが口に巨大な炎を纏う 「鬼さんこちら〜手のなる方へ〜」 ガルガンチュアがバグの気をそらした 「五月蝿いハエめ…まずはお前からあの世に送ってやる! いけ!バグよ!」 バグはアベルの命令でガルガンチュアに襲い掛かった …が 「バーカ 私はこっちだ」 バグが追いかけたガルガンチュアはガルの作り出した人形だった そしてバグが向った先は… ぴかーん バグが突進した空間は実は亜空間を絵で隠した所だった 「はいっ鬼退治終了」 亜空間に飲み込まれるバグ… 「あんがーーー〜〜〜〜〜〜〜」 悲痛な叫びを残し姿を消すバグ 「ふふふ正義は必ず勝つのだ」 「流石ご主人様〜悪の親玉って感じ〜」 「バカっそれを言うなら黒幕だろ!悪の」 「んんがーーー」 「…お前達ーーー今私は正義の味方と言ったのだぞーー」 ガルの怒りは3馬鹿に向かれた(汗) 「ジル」 「リツコ…有難う」 「ジルが無事で何よりよ」 「空間を…そうか、そっちの小娘がやったのか」 アベルはマウを睨んだ グリュエールはマウを守る!とばかりに大きな体を盾にした、その時 「あは〜ん男気溢れるねぇ〜 流石はマウが選んだだけの事はある〜」 「玉藻の前様〜〜〜」 「あはんっマウ〜久しぶり〜寂しかったんよ〜 あんたがおらんと寂しゅ〜て寂しゅ〜て」 「玉藻の前…だと」 流石のアベルも玉藻の前程の大物の登場には驚いた 「だがしかし、玉藻の前 お前は世界に干渉する事は禁じられてる筈」 「ま〜ね〜でもなー あんさんが勝手に世界を壊そうとするのを黙ってみてる ちゅ〜のんも、嫌なんでなぁ 悪いが、加勢させてもらうさかいよろしゅ〜に」 「ちっ だが、まぁいい ジョウ・ハーリーがこちらの手にある限り、僕は無敵なんでね 来い!暗黒の狩人達よ!!」 「不味いはねー ジョウ・ハーリーが無ければ狩人は呼び出せない 今回はマジやばいかもよ、イヴ」 「…(葉月ちゃん)」 世界がボクでボクは世界… 葉月はジョウ・ハーリーの中で世界の真理に触れていた そうか、ボクも世界の一つだったのか ボクは自分は特別だと思ってた ボクは何でも出来た、人の出来無い事でも何でも 運動は自然に身についたし 勉強は勝手に頭に入ってた 人の見えないモノだって見えた ボクは完璧だった だから世界はつまらないと思ってた そう、初美以外は その初美も狩人が主であるイヴを求めた感情をボクが受けてたからなのか ボクの初美への思いはボクの物じゃなかったのか… それは違うよ葉月 だってほら、今コゲコゲが体から抜けた今どうして葉月は生きてるの? ボクはまだ生きてるのか? 葉月の足元に地面が現れ世界が広がる これはボクの記憶? そう、葉月の記憶 ここにはたくさんの初美への思いが積ってる これをキミは嘘だと言うのかい? 違う!嘘なんかじゃない! ボクは初美をお姉ちゃんが本当に好きなんだ お姉ちゃん… 葉月の記憶は更に過去に遡る…その時 又葉月の前に扉が現れた これが最後の扉 葉月が閉ざした心の扉 触れてはいけない心が生み出した扉 どーする開けるかい?それとも永遠に封印するかい? この先に何があるんだ…ボクが忘れた記憶 思い出?… ボクはボクが知りたい、本当のボクが誰なのかを! 葉月は重い扉を開いた 初美は喋れないながらも母親に葉月を救ってくれと泣きついた そう、葉月は初美が交通事故に合う瞬間初美をかばって引かれてしまった 輸血の血液が足りません!!医者の声が響く 初美は自分の血を使ってと訴える 母親は止める、この子は葉月と血液型が違うんです だが初美は続けさせた…その時、初美の血液型が葉月と同じ血液型に変わった 葉月は一命を取り留めた だが、その記憶は失われていた それまで体の弱かった葉月はその後見違えるように元気に成長していった ボクは…初美におねえちゃんに 葉月は涙が止まらなかった…お姉ちゃん お姉ちゃん 葉月、行こう 皆が待ってるよ、葉月の仲間達が葉月を助け出そうと闘ってるんだ ボクはボクは東葉月だ!誰でもない!東葉月なんだ! ボクは皆を仲間を守る!ボクはその為に生きてる! 行くんだね葉月 これはボクからのささやかな贈り物 ケンちゃん はないなー 我が眷属ケンダッパに命じる!東葉月と共にアベルの悪事を食い止めろ! アーヤ…お前 な〜んてね えへっ ケンちゃんは輝く巨大な鳥の姿となり葉月を背に乗せヤミの空間から飛び出す 葉月…キミは皆の希望 人間の世界のボクら神々のそして、キミのお姉ちゃん達の希望 アベルの呼び出した暗黒の狩人達に次々に倒されていく仲間達 唯一知美は互角以上の戦いをしていたが、リリスやイヴ達を守るので精一杯だった 「お嬢様方…流石に弾薬が底を尽いて来ました…」 そう言う知美は再び薙刀を手に豪快に狩人達をなぎ倒す… その時羽山は思った「こいつだけは怒らせたらいかんな…」と 「イヴ…こうなったら奥の手しか」 「奥の手なんて、お姉ちゃんには無いでしょ」 「あんさんら、こう何か方法あらへんのか〜こう数が多くちゃ」 と、玉藻の前すら愚痴を溢すその時 「ん?お〜〜リリンよ目覚めたのか」 「あぁ…おかげさまでな お前の悪事のお陰で目が覚めたよ! こい無限の狩人達よ 我の元へ集え!!」 葉月のいや、4代目ヤミの号令で狩人達が無限に出現する そしてアベルの暗黒の狩人達を喰らい尽くす 「なっ何故正気を保っているのだ!? バカな何故人間にジョウ・ハーリーが使いこなせるんだ!」 「さーね それはボクも元狩人だからだろ ってそっちの狩人じゃなくてな」 アベルが昔大人気だったグループの物真似をしたが瞬間否定した葉月 「葉月!葉月!は〜づ〜き〜〜」 仲間達の葉月コールが始まった 「皆…」 葉月は慢心の笑顔で答えた 「さてアベル」 葉月は狩人を使い、アベルの手にした太陽の剣を奪い取らせた そして葉月の刀を展開 「リリ〜〜〜ス これをお願い」 葉月はジョウ・ハーリーをリリスに渡した 「葉月…いいの?」 「ボクにはヤミの仕事は手に余すよ やっぱり、ヤミはリリスじゃないとね 決着はボクがつける」 「葉月…あんた…」 「はははははバカかお前は ジョウ・ハーリーを使えば僕を倒せたかもしれないものを」 「倒せるさ だってボクは東葉月だからね そう、ただの一人の人間 東葉月だからね!」 葉月は葉月の刀と太陽の剣を天に向かい重ね合わせる その瞬間強大なソーマが集まり2つの武器は1つの巨大な剣へと姿を変える 「イヴの剣…か」 「ケンちゃん!」 「ほいな〜〜葉月はん行きまっせ〜〜」 「みんなの力をボクに貸してくれ!」 葉月のイヴの剣に仲間達のソーマが集まる…そして 輝き眩い光を放つ巨大な鳥は葉月を背に乗せ大空に羽ばたく 「うわ〜あれがケンちゃん…なの」 「うん、そーみたいだねー」 リリス姉妹はぼけーと口を空け大空を見上げながら言った 「ここなら誰の邪魔も入らない、決着をつけようかアベル」 「ふふふ本気で勝てるつもりでいるのか!人間風情が!!」 「知らないのかい、最後に勝つのはただの人間なんだよ!!!」 眩い閃光が天空で何度も何度も炸裂する そしてその瞬間今までで最大の光が放たれる 「キサマ!一体何者なんだー」 「だから言っただろ!ただの人間さ! これで終わりだアベル!仲間の居ないお前にはボクは倒せない!」 カッ!!!! 葉月の渾身の一撃がアベルの存在を打ち砕く… そして空からアベルが降ってくる… ドカーーん 地面に激突するアベルだが… 「はーはー僕は負けない イヴ貴方を手に入れるまで僕は… 何故なんだ 何故僕じゃないんだーーーイヴ 何故人間の女の方を選んだんだ 僕はもう何万年と貴方を思い続けたのに どーして僕を捨てたんだ 帰ろうイヴ…僕達の過ごしたエデンの園へ」 ボロボロになりながらアベルはイヴに言い続けた その姿を見た葉月は涙が止まらない だってそこにあるのは自分と同じただ初美をイヴを思う一人の 小さな存在だったのだから ボクも同じだ、ボクだって初美を失えば… 「帰ろうイヴ…帰ろうイヴ」 そう言いながらもイヴに抱きしめられるアベル だがもう、イヴの声も温もりも感じる事は出来無い 「バカな子ね… ホントバカなんだから」 その時姿を現したのは、セイレンであった 「ってセイレン!あんた今まで何やってたのよー みすみすミルカをさらわれたりしてー」 「五月蝿いわね、こっちにはこっちの事情があるのよっ それに、もうセイレンじゃないわ、カイン…カインよ」 「セイレン…アベルはもう」 葉月はセイレンに訊ねる 「多分もう助からないわね でもそれはこの子が望んだ事だから」 「望んだ事?」 「知ってたのよ、自分がイヴの気まぐれで作られた存在だって事に そう、私がリリスに気まぐれに作られて忘れ去られてたのと同じにね 私は単純に復讐しようとしたけど、この子はイヴを憎みきれず… だからイヴの創った世界を壊そうとした 過剰な母親に対する愛情の裏返しね…」 「憎む事も、許す事も出来なかった その末路に…」 「そう、自分と同じ不運を辿る筈の葉月 あんたに殺してもらおうとしたのよ」 「筈?」 「そう、人間がイヴを捕まえる事は出来無い永遠にね でも葉月あんたはイヴを捕まえた アベルが何千何万年かかっても出来なかった事をあんたはやったのよ そして今、ヤミの称号すら得た… と言ってもあんたの事だから、糞喰らえでしょうけどね」 「セイレン…御免あたし何も知らなくて」 「いいのよ、あたしはもうあんたの事恨んでも憎んでもないから そうでしょお母さん… なーんてね」 「セイレン」 リリスはお母さんの一言に涙腺が緩みセイレンに抱きついた 「いいわ〜あたしが一生可愛がってあげる もう放さないんだから〜ねっ」 「ってリリス気持ち悪いわねー放しなさいよ! 別に今更あんたにどーこーして欲しいとは思わないわよ」 「でもアベルはそれでもイヴに愛されたかった」 葉月は自分とアベルを重ね合わせ呟いた… アベルはイヴの胸に抱かれながらその長い生涯を終えていく 体が少しずつ消えていく… 葉月はアベルの手を取った 「東葉月か…私も生まれ変わったら お前の様に純真な心でイヴと出会えるだろうか」 「あぁ大丈夫、必ず会えるさ」 「有難う…葉月 これを…僕が唯一お母さんを感じれたもの」 アベルが葉月にエクスカリバーを手渡す 「アベル…お前は…お前はボクだボクはキミだ」 「かあさん…愛してる 愛してる」 そしてアベルはイヴの胸の中で無に帰った ひらひらひら〜 そこには1枚の絵が残った そう、アベルはイヴが幼い頃描いた絵から生まれた生命体であった 絵から生まれたアベルが絵に戻ったのだ… 「初美…それは」 イヴはその絵を抱きしめながら恐らくは初めてアベルの為に涙を流したのだろう 「ごめんね…ごめんね…」 「初美…その絵 とても良く描けてるね 愛情が凄くたくさん篭ってる ボクには分かるよ、初美のアベルへの思いが」 「葉月ちゃん…うわ〜〜ん」 初美は葉月の胸で大声で泣いた まるでその姿は幼い子供の様だった… 「セイレン…帰るの」 「まーねーここにいても、もう用事も無いしね 葉月…ミルカさまをお願いね」 「ああ」 「ミルカさま〜わがままいって葉月を困らせてはだめですよ〜」 「セイレン行かないでなの〜ミルカも一緒に行くなの〜」 「ミルカ…セイレンはしなければ行けない事があるんだ だからミルカを連れ行く訳にはいかないんだよ」 「葉月…葉月〜〜」 ミルカは葉月に泣きつきセイレンを送った 「伊織…いや、リリスいいのかい?」 「あーん まーね セイレンにはセイレンの事情があるんだし」 リリスのセイレンを見送る目がとても葉月には悲しそうに見えた 「あのさ葉月」 「何伊織?」 「いや、いいや明日言う明日…明日がだめなら明後日」 「そうだね、時間はたっぷりあるんだしね」 違うよ葉月…時間はもう無いのお別れの時間は… 「さて、葉月」 「って行き成り!アーヤっ」 「イヴのアイテムが全て揃っただろ」 「え?そう言えば…まーそうかなー」 「葉月ちゃん…」 「初美…どーしたの?」 「葉月、全部出してごらん」 「あっアーヤ、それはさーまだ今度でいいじゃない また何かあるかもしれないしさー」 リリスは慌ててアイテムを出すのを止めた 「そうならない為の儀式だろ」 「儀式?」 葉月は少しひっかかったが、全てのアイテムを出す 葉月の刀と藤姫のクシ 包帯と懐中時計とペンダント アベルの剣と、ガルのナイフ そして、宝物のうさぎのぬいぐるみ 初美は二つのリボンとコゲちびを 「あれ後1つは?」 「絶対渡さない!!」 リリスがテスタメント・イヴを抱きしめ、駄々を捏ねる 「伊織〜せっかく全部揃ったんだからさ〜」 「葉月は知らないのよ!それがどう言う事か!」 リリスは葉月の顔を真剣に睨んだ… 「まさか…それって」 「そう、お別れよ葉月ちゃん」 ---------------次回予告 最終回『葉月』 あの本の世界でボク達は、はじめてケンカしたね ボクは最初変なヤツって思ったんだよ 伊織はいつもボクの為に頑張ってくれたよね 伊織は何時だってボクを思ってくれたよね 覚えてる、あの世界でボクがキミにキスした事 キミは寝ていたから覚えてないよね たくさんたくさん旅をしたね ボクが初美だけを求めてた だけど、分かったんだあの時 キミが身を呈してボクを守った時に ボクにとってキミも大切なお姉ちゃんだったって事 今なら言えるよ ボクは 葉月とリリス そして初美との別れ ボクはもう逃げない! ボクはキミを愛してる!! そして葉月のもう一つの旅が終わる ヤミと帽子と月影の少女 最終回『葉月…そして』 さよなら、お姉ちゃん |