第10話『メイコ』



「その時ウチらの前に現れたんはっ!」
「石〜焼イモ〜イモイモ…
 ってなんで石焼イモやねん(棒読み)」
「…だーダメダメ!!
 伊織姐さんホンマやる気あるんかいなっ!」
流石にヤル気を微塵も感じない相方伊織に腹を立てるメイコ
そう、彼女が今回の主人公橘メイコである
彼女はエセ関西出身のお笑い芸人志望であり、
当然お嬢様学校である聖・フェミニン女子学院に相方が勤まる人間なぞ居る訳もなく、
何となく誘った葉月の姉伊織が現在その相方を務めていた
メイコは葉月が本の世界で出会った妖狐メイリンの生まれ変わりであり
葉月が守るべき者の一人であった。
そんな護衛の意味も含めて、伊織を相方に推薦したのも葉月であった
「だって〜伊織ちゃんってー
 お笑いって言うより〜アイドルって感じ〜」
「あーダメやダメダメ!アイドルなんて寿命が短いモン目指してもしゃーない
 時代はお笑いやー
 えぇか〜姐さん、お笑いちゅーんはなー
 時代を超えて語り続けられる話芸なんよー
 そんな甘い考えでは勤まりませんでホンマっ」
何時ものメイコの説教が始まった
伊織はこれが始まると何時の間にかトンズラするのであったが、
今回は何故か?最後までその話に付き合っていた
「でなって!
 姐さんまたどっか行きはったん…
 って居るしーーー」
「あーメイコ〜今の一人ボケ突っ込みちょっと面白いかもー(パチパチ)」
「あらやだわ〜
 姐さんに褒められるなんて〜照れくさいやん〜
 …って相方に褒められてどないせゆーねんっ!」
「(メイコって、絶対普段の方が面白いと思う…)」

「はぁはぁ
 で、ウチらのこれからの未来をやなー」
息を切らせながらメイコの演説は続くのだが
「ギャハハハハハ」
それを見ながら腹を抱えて笑うのは葉月の姉、初美であった
「おでこちゃん笑い過ぎー」
「だってお姉ちゃん達のシュールな芸風が面白いんだもん」
それを隣りで心配そうに見つめるのは我らが東葉月
「いや、初美…
 こいつらの場合、シュールと言うか、意味が無いと言うか
 すでにお笑いじゃ無い部分に笑ってるし」
「葉月…それはきっと運命よ運命」
当然葉月ある所ミコトありって感じで葉月の隣りで相づちを打つのは親友ミコト

「う〜ん…流石は葉月姉さんとミコト先輩やわ
 おもろい…」
メイコは普通に感心していた。
「あのねっ葉月っお笑いって難しいのよ
 あんまり素人に口挟んで貰いたくないわね〜」
何故か不機嫌な伊織…多分おでこと仲良くしてるのが気に食わないらしい
「…分かったよ伊織
 だったらボクら3人のショーを見てくれ
 初美っミコトやるよ」
「ラージャー」とミコト
「え?本気なの葉月ちゃん…」と心配そうな初美

そして3人のトリオ漫才が始まった
「いけないわ葉月〜だって私達女の子同士なのよ」
「何を言うんだミコトっ
 ボクはミコトを愛してるんだ
 ミコトを抱きたくてしかた無いんだ」
「いいわ葉月
 私を好きにして…」
「じゃぁ〜これ着て欲しいんだ〜
 スクール水着〜だってミコト何時も競泳水着だろ〜
 スクミズマニアのボクとしては、こっちの方が萌えるんだよね〜」
「酷いは葉月ちゃん」
「げっ初美…何時からそこに」
「さっきからずっと
 て言うか、気づけよバカ女
 て言うか、言語道断?」
「初美それボクのネタ」
「葉月酷いわ〜私は初美さんの代わりなのねっ」
「だから違うって
 ボクは本気で…本気でミコトの事が…
 す…」
「す???ドキドキ」
「素っ頓狂なヤツだと思ってた…」
「…
 葉月のバカーーーーーーー!!」
ミコトのパンチが葉月の顔面に炸裂する
「可愛そうなミコトちゃん
 お姉さんが慰めてあげる」
「あ〜ん初美お姉さま〜」
「ってお前らがレズかよーーーーーー」

「ありがとう御座いましたー」



「なんや…なんや分からんが…めっちゃ面白いやん」
メイコは葉月達3人の日常お笑いに感服していた。
「って言うか、何時もと同じじゃ無いのよさー」
伊織は当然認めるものかーと凄い形相で怒るも誰も相手はせず

「ボクは知っている
 日常の中にこそ、真のお笑いは存在する」
凛々しく葉月が語るも
「まー日常って言うか、いわゆるオナニーショー」
「ボクはオナニーなんかしないっ
 むしろ、五月蝿い黙れ!」

「何やっ第2幕が始まったんやなっ」
葉月とミコト「それ違うしっ!」ビシッ

「ふむふむ
 葉月姉さんには
 オナニーネタと決めセリフがお茶の間の人気なんやな」
「メイコ…だからボクはオナニーなんかしないって」
刀をメイコの首に当て、恐ろしい形相で睨む葉月…
「あははは
 もーいややわ〜冗談やん冗談〜
 もー学園の一番人気、東葉月先輩がオナニーなんかする訳
 無いじゃあらしまへんか〜〜」
とメイコは葉月をよいしょするも
「ガビーン
 うー凄い自己嫌悪…いいんだボクなんてボクなんて…」
何故か凄く暗くなる葉月…
「メイコちゃん
 葉月にフォローはダメよ、ブルーになるから」
ミコトがメイコに小さい声で言った

「さて気を取り直して
 ボクが思うにキミ達には欠落してるモノが多すぎる」
「何よ葉月ー今日は何時に無くハイテンションじゃない!
 変なクスリでも決まったの」
「まー媚薬あたりがって違うだろー
 ピルなら毎日飲んでるが
 おじ様ったら毎日激しいし〜〜(ここ笑う所)」
一同葉月のギャグを鵜呑みにし、マジっすかーと言う表情をするも
お前ら今の笑うところだろーと葉月の怒りを買い、縮こまる…

「まーいい
 そんな事より伊織とメイコに欠落してるモノ!
 それはっ」
「それは!」
「それは…(て言うか何も考えて無かった)」
「だから葉月それは何よっ」
「…これだっ!」
葉月が取り出したのは、狐耳と二股のしっぽ
「葉月姉さん…それは」
「メイコ!いいか良く聞け!
 キミに足りないのは萌え要素だっ
 むしろ狐ミミと尻尾の無いメイコに誰が萌える!
 少なくともボクは萌えはしないっ!
 だからつけろ!命令
 むしろ、義務
 て言うか、最優先事項」
「葉月それリツコのギャグ」
「五月蝿い黙れ」
葉月の流れるようなお笑いに感動するも、
何故にそんな物つけないと行けないのか疑問の残るメイコであった

「なんや〜ウチ似合うやん〜」
「うわ〜可愛い〜メイコちゃんバッチリねっ(キラン)」
初美が偉く喜んだ
「初美が喜ぶとボクも嬉しいよ」
「この変態姉妹がっ」
と伊織が突っ込みも
「伊織何か言った?」と睨みつける葉月
「いえいえ何も…チッ」と伊織
当然これも見て感心するメイコはお約束

「だがしかし、これじゃ何も変わらない
 ボクには分かる
 間違いない」
「(葉月ちゃんそのネタもう流行ってない)」
と突っ込みを入れたい初美だが触れないでおこうと思った
それは愛、きっと愛、多分モアイ
…だから違うって
ちゅーか、このネタ誰も分からんだろっ
流石初美…歳バレバレ
バレテーラ(違っ)

「そこでだっ伊織!キミには腹話術を使ってもらう」
「何でそうなるのよーって言うか、出来無いわよっんな事」
「大丈夫、伊織のDNAが任せてくれと言っている
 ボクには分かる
 そう、ボクは知っている
 伊織の中に流れるお笑いの血を」
「葉月っ今日は何時に無くハイテンション!イカスわっ」
と隣りで感激するミコト
それを見て初美が横を向き凄い表情で(我々の方向にカメラ目線で)
「て言うか、オナニーのし過ぎでハイテンションなんだろっどーせ
 昨日も夜遅くまで何回もバカみたいにしてたしなっ」
「初美〜何か言った〜」
ニコニコ顔で初美に言う葉月
当然初美は慢心の笑顔で、何でもないよ〜葉月ちゃん(チュ)
とお約束をかますも、それを見落とさないメイコは更に感心していた。
ちゅーか、このネタってテキストだと難しいな〜と思う今日この頃

さて、葉月が伊織の欠落している物として伊織に腹話術をさせようとするが
そこで取り出したのが、ケンちゃんとロッカーちびリリス(笑)
と言うか、どっから持って来た?と言いたいが…
「この2体を使って腹話術をするんだっ」
「て言うか!こいつら自立して喋るしーーー」
葉月は小声で伊織に
「(だーかーらー伊織はこいつらが勝手に喋るのを腹話術
  として扱えばいいんだよ〜)」
「(な〜る程(ポンと手を叩く))」

「でわ〜伊織ちゃん腹話術いきまーすっ」
「何やっやっとワテも世間様に後ろ指刺されず喋れる日がきたんやな〜
 あーワテ感動〜〜」
伊織の腹話術と言う事で、お喋りが無礼講となったケンちゃんが感動する
「ヘイヘイヘイ
 ミーはっロッカーちびリリス〜世界一のロッカーさー」
何故か後ろにバンドの音が響く…多分他のちびリリスの仕業だろう
「へぇ〜ロッカーなんだ〜
 って事は〜開けると、中からいやらしい下着とかが〜」
「姐さんそれロッカー
 こっちは、ロッカー」

「あの葉月姉さん…ウチの入り込む余地が無いんですが…」
「…(そこまで考えてなかった…)
 大丈夫だよメイコ
 キミには未来のお笑い女王の未来が待っている
 ボクには分かる、そうそれは」
「葉月…それしつこい」
ミコトがさらりと突っ込む

「ウチも何時か、こん人達の様になれるんやろか〜」
と本気で感心するメイコだったが
葉月たんは普段のままだと言う事なのだが
むしろそれが問題か…ヒトとして


事実上一人漫才となってる伊織・ケンちゃん・ロッカーちびリリスの漫才は続く…
既に誰も見てないが…









----------お笑いライブショー当日
「葉月姉さんに言われるまま、こんな変な衣装着てきはったけど〜
 大丈夫やろか〜」
メイコは葉月に言われるまま、キツネミミと二股のしっぽ
それに変テコな着物を着ていた。
そう、本の世界のメイリンのまんまのコスプレをさせたのだ
当然その衣装を作ったのはミコトと初美である事は言うまでも無い。
「じゃんじゃじゃーん」
「姐さん…それ」
メイコの前に現れたのは相方である伊織ちゃん…
その服装と言うか風体はヤミそのものであった
そう、既にめんどくさいからリリスに変身していた
「何か知らんが気合入りまくりやんか〜
 いける、これなら行けるで〜〜〜」
「ワテの事も忘れといてーな〜」
ケンちゃんもおめかししてるのか、クビに蝶ネクタイをしている。
「今日は頑張ろうな〜ケンちゃん」
でも…この鳥どう見ても本人喋ってるよなー
それにあの小さいSD人形…どー見てもいきてる様にしか見えへんし…
むしろ、姐さんと同時に3人とも喋るなんて腹話術の域越えてるやん
と深い事を考えるメイコはまだ見込みがあるのかもしれん
突っ込みとしてのな
だがメイコはボケ担当…ダメやんっ
ちゅーかこのコンビ、ボケ×ボケだったんじゃ…

そしてメイコ達の出番がやって来た
「見せてもらよ、メイコ
 キミが生きて来た13年間をぶつけるんだ!
 そして、伊織と見事デビューを果たし、ボクを裕福にするんだ」
葉月さん…それが狙いですか…恐ろしいヒトだ

順調にネタを続けるメイコと伊織
と言うか、どかからどう見てもリリスとメイリン
だが、その時にもメイコを狙う不吉な影が迫る
それを察したか葉月は舞台の後ろに回りこむが…

「ギュルル」
「待ってたよ、
 メイコが輝きそのソーマを一番放つ時を待ってたんだろ」
「グギュグュギュギュー」
葉月はメイコのソーマを狙う化け物と対峙していた。
「今回はリリスは居ないんだ
 悪いが即行でやらせてもらうよ!」
葉月の刀が空を斬る…が
「ギャルルル」
「むっ
 こいつら、日増しに力が増してる…どう言う事だ」
「ぎゃーーーー」
「チッ
 不味いな、このまま暴れ続けられたら
 せっかくの本番が台無しになる」
その瞬間空間を切り裂き、ガルのナイフを展開させたラスカレスが
葉月の援護にやって来る!
「ガルルル!」
「ラスカレス!
 遅いよ…(ニコ)」
葉月はラスカレスとアイコンタクトを取り
二人は絶妙のコンビネーションで怪物をホール屋根上まで誘導する

「ここなら心置きなく闘えるね」
葉月はラスカレスから受け取った太陽の剣を翳し
葉月の刀と太陽の剣の二刀流で一瞬にして怪物を倒す
そしてその怪物の魂をラスカレスが喰らうのだった

葉月はガルのナイフに戻した太陽の剣をラスカレスの首に戻してあげ
ラスカレス今日もありがとう
と、ラスカレスにキスをするのだった
ラスカレスも顔を赤らめ凄く嬉しそうだった

「あー葉月が居ないーきっと戦いにいったんだー
 あービデオ撮りたいーーでもライブも取らなきゃいけないしーー
 あー葉月ーー私の居ない所でバトらないでーーー」
ミコトは葉月のバトルを撮影するのが一番の趣味としていたが
最近遭難するやら、色々な悪状況が続き撮影が出来てないのであった
…役立たずだな

そしてメイコ達のライブは終わった
最後の方しか葉月は見れなかったが、メイコの熱い思いは伝わっていた
「メイコ、キミの熱い情熱見せてもらったよ」

観客の大爆笑の中、何故か初美だけは不機嫌だった
「面白く無い」
何故かシュールなネタには笑うのに、本当に面白いネタには笑わない
東初美は天邪鬼であった…
「あの子達後でダメだしねっ」




ライブショーの結果は審査員特別賞と言う微妙な結果だったが
それでもメイコにとっては凄く充実した一時だった








「メイコ〜
 これで伊織ちゃんとのコンビもお終いね」
行き成り伊織がメイコにコンビ解散を言い渡す
「なんでやーこれからがいい所なんやないかっ
 どないして…ウチが足を引っ張るから…
 ウチには姐さんしか居ないんよー」
メイコは必死に伊織に泣きつく
「あのねメイコ…
 伊織ちゃん、もう少ししたら〜
 海外に帰らないといけないの…」
「海外…ウチもついてく!」
「ダメっ
 メイコは…この日本でお笑いを極めるの!」
「なんでやー姐さんの居ない日本でお笑い王になっても
 意味なんか無いんよー
 ウチは姐さんと一緒だからここまでやって来れたんよ」
「強くなりなさい、メイコ
 伊織ちゃんは遠くから見守ってるから…何時までも」
「姐さん…もう何言ってもダメなん…」
コクリと頷く伊織
「ウチ…姐さんに負けないくらいの相方見つけて
 ぐ…うっ…うっ
 姐さん〜〜〜」
堪えきれずにメイコは伊織の胸に泣きつく
「うえぇ〜〜〜〜〜〜姐さん姐さん〜〜〜」
よしよしとする伊織のその表情はお姉さんその物だった
(御免ねメイコ…最後まで付き合ってあげられなくて
 でもね、リリスちゃんにはもう時間が…)

最後に涙を拭き
「姐さん、ウチ姐さん帰って来るのずっと待ってるから
 それまでウチはピンで続ける!
 何時姐さんが帰って来てもネタ出来る様にネタ作っとく
 だから…
 だからさよならは言わない
 ウチの相方は姐さんだけだから!」
「えぇ…メイコ約束よ」

夕日の中、未来を誓うメイコであった
















--------図書館の世界
「やっぱり動き出したのね…」
リリスは巨大な存在の動きを今まで探っていた
「どーやら、リリス達が葉月の世界に居られる時間も残り少なくなって来たね」
アーヤが言う
「あと1週間ってトコね…
 おでこちゃんもソーマを取り戻しつつあるし…」
「葉月にお別れ…ちゃんと言うんだよ」
優しくアーヤが言った
「…言わないよ
 言ったら二度と逢えなくなる気がして…
 それに、リリスちゃんとしては〜いつでも葉月に会えるんだし〜」
「一方的に…だろ」
そう、アーヤの言うとおりリリスは葉月の本を開けると何時でも葉月に会える
だがそれはリリスが一方的に葉月を見守るだけ…

「後1週間…伊織として悔いの無い時間にするわ…」
リリスの決心は変わらない様だ

その後、図書館世界をも含む全ての世界を左右する出来事が起こるのだが
それは…













-----------次回予告
ヤミと帽子と月影の少女、第11話『ミルカ』

長い眠りについていた図書館世界を生み出したヤミ・ヤーマが目を覚ます
次期ヤミである四代目ヤミに相応しい存在を求め葉月の世界に降臨する

イヴの目覚め

リリスは世界を守る為ヤミ・ヤーマと対峙する
「この世界を創り直すなんてさせない」

「リリス…世界は闇に満ちている
 ボクらが望んだ理想郷とは程遠い…
 だからまた、創り直すんだセカイを」


「勝手な事言うな!またボクを一人にするのか!お姉ちゃん!」
葉月の初美と伊織との別れ
「葉月ちゃん…貴方はもう一人で生きていけるは…」

「お前がヤミ・ヤーマかっ
 お前は、ボクが倒す!!!」
葉月はヤミ・ヤーマと対峙する
その瞬間…
葉月に起った事とは?
「さあ、目覚めるんだ4代目ヤミ…リリン・カルディナス」

「どーやら私の出番の様だな、行くぞ皆の者」
「あいあいあさーーー」

風雲急を告げるヤミ月ラストステージ
今クライマックスが迫る!



「はづき…さよならなの〜」
「ミルカーーーーーー!!!!」

次回ヤミと帽子と月影の少女、第11話『ミルカ』

ヒトは何時か死を迎え、新たな世界へと旅立つのだろう…永遠に

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By よっくん・K