第9話
早朝、妖怪の山にて
紫「…で、データは採れたのかしら?」
にとりの元に、紫と幽香がいる。紫に頼まれていたことをにとりがして、幽香は紫に声をかけられたのだろう…
にとり「はい、これが結果です。」
2人に2つのデータを見せる。何も知らない人が見ても、危険な状態とわかる程だ……
紫「…やっぱりね。まぁでも、手遅れになる前に間に合ってよかったわ…」
にとりが、ある物を2人に渡す。カプセル状の物体…針もついている。
にとり「これを打てば、元に戻ると思いますけど…」
紫「ありがとう。あとは私達でやるわ。」
2人は受け取って、にとりの元を離れた。
紫「まさか、この幻想郷に……"存在してはいけない能力"を持ってる人が、2人もいたなんてね……」
さっきのデータを見ている。具体的に何の能力までかはわからないが、2人とも持ってることは確実だ。
幽香「………」
紫「……思い出す?椿ちゃんのこと…」
幽香「…えぇ。」
幽香が頷く。
紫「…あの戦いがあってから、半年ってところかしら……もう、何年も会ってない感覚ね…。今頃、どうしてるのかしら……」
遠くを見るように、そう呟く。すると幽香は
幽香「心配ないわ。」
と言った。
幽香「きっと、また何事もなかったかのように帰って来るわ…必ず。帰って来るって、信じてるもの。」
ニッと笑みを見せて、そう言った。紫はそれを見てクスッと笑い
紫「あなた、変わったわね。椿ちゃんと会ってから」
幽香「そう?まぁ、ともかく…今は、できることをするだけ。」
先ほど渡された装置を見る。
幽香「あんなことになったから、わかる…だから、同じ思いをさせたくないもの。」
紫「そうね……それじゃあ、ここからは手分けね。私は、あっちに行くわ」
幽香「えぇ……」
そう返事すると、紫はスキマを出現させ、その中に入り移動する…
メア「あーーーーー!!!!!!あーーーーーーー!!!!!……a」
アリス「うるさーーーーーい!!!!!!」
さっきから叫んでるメアにアリスは怒鳴る。
アリス「何さっきから大声出してるの!近所迷惑でしょ!」
メア「近所なんてないでしょ?」
アリス「やかましい!!」
いつものやりとりである。
アリス「それより、何大声出してるの」
メア「あ、そうでした!聞いてくださいよ、こっちをつけようとすると、こっちがぽろっと取れちゃって、こっちをつけようとすると、今度はこっちがぽろっと取れちゃって……」
実際にやって見せて、取れるたびに「フォーーー!!!」と叫ぶメア。
アリス「…はぁ…仕方ない、手伝ってあげるわよ。」
そう言ってメアの隣に座るアリス
メア「え、いいんですか??」
アリス「いいわよ。今日は暇だし…で、どこをどうやったらいいの?」
メアはにこりと嬉しそうに笑う
メア「えっと、ここを押さえててください。こっちをつけるので」
アリス「えぇ、わかったわ。」
そう言って、言われた通りにして作業を手伝うアリス。
メア「いやぁ、助かりました!これで、うまくいきそうです!」
アリス「別にいいわ、このくらい」
そう言って、機械の下に入って作業をしてるメアを、座ったまま見てるアリス。
メア「にしても、意外ですね…アリスが手伝ってくれるなんて。いつもなら「またこんな危なっかしい物を作って!」って怒るのに」
アリス「ま、まぁ…今日くらいはいいわ。」
メア「ふふ、許しが出て嬉しいです!いや、一番嬉しいのは…誰かと一緒に、こうやって機械をいじることかもしれません。」
機械をいじりながら、話し続ける。
メア「私、前の記憶がありませんけど…薄っすらと覚えてるんです。こうやって、誰かと機械をいじってたのを……多分、その時も楽しかったのかもしれませんけど…今は、もっと楽しいです。…アリスと、一緒にできたからでしょうか?」
アリス「……」
メア「…私、アリスと一緒にいれて、本当に嬉しかったんですよ。こんな得体の知れない私を、家に置いてくれて…毎日毎日、迷惑ばかりかけて、アリスが怒って…それでも、今日までずっとここに置いてくれた。毎日が、すごく楽しい……私は、幸せ者ですね。」
機械の下から顔を出して、笑顔を向ける。
メア「アリス、ありがとうございます!」
と、お礼を言った。
アリス「…いいわよ、それくらい……これからもずっと、ここに置いてあげる……これから、もっと楽しい思い出を作ったらいい……だから…っ…!」
アリスのスカートに、大粒の涙が落ちる…
アリス「そんな…っ……最期みたいに言わないでよ…っ…!!」
メア「………」
機械から出て、アリスの隣に座る。
メア「アリス…やっぱ、気づいてましたか………」
俯きながら、話を続ける。
メア「…私はもうすぐ…私じゃなくなります。私も、気づくのが遅すぎましたね……もっと早くに気づいていれば、拉致さ…にとりさんに直してもらえたかもしれません。」
アリス「今からでも間に合うわ…行きましょう…」
メアは静かに首を横に振る。
メア「恐らく、もうその時には…私では無くなります。…機械の体ってのも、不便なものですね…機械に乗っ取られるんだから……だから。」
メアはアリスの方を向く
メア「だから、今は…1秒でも、アリスと一緒にいた…」
突如、メア目掛けて光線が放たれる。それにいち早く気づいたメアは、急所を避けるように避けた。
アリス「メア!!」
「その子に近づかない方がいいわよ」
メアに近寄ろうとしたアリスに、聞き覚えのある声が聞こえる。その声がした方を見ると…
アリス「幽香…!」
幽香がいた。恐らく、さっきの光線は幽香のものだろう。
幽香「…逃げられたわね」
先ほどまでいたメアが、もういなくなってる。
幽香「どこに逃げたのかしら…」
アリス「待って!」
メアを追おうとしている幽香を止める。
アリス「なんで、こんなことを…!メアはもう、気づいてたのよ!?」
幽香「…残念だけど、もうあの子は、あの子じゃないわ。」
ポケットから先ほどの装置を取り出す。
幽香「あの子から、わすがだけど…殺気を感じた。本気であなたを殺そうとしてたのよ……」
アリス「そんな…嘘よ…!メアは、まだ……まだ、メアのまま…!!」
幽香「何と思うのは、あなたの勝手よ。あの子のためにはならないけど…私は、今からあの子を止めに行く。どうするかは、自分で考えなさい…」
そう言って、幽香はメアを追った…
つづく
17/07/09 01:12更新 / 青猫