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第12話『過去』




…………


ミミ「……」
目を覚ますと、見慣れない木製の天井が見える……体の至るところが痛い……頭もボーッとしていて、何故ここにいるのか、どうしてここで寝ているのか…>そもそもここはどこなのか、わからなくなる。が、すぐに何があったのかを思い出す
そっか、あたし…あのザックっていう傭兵に負けたんだ……じゃああたし、死んだのかな…?でも、身体中痛いから生きてる…のかな…?

とりあえずここから出て、仲間に会おうと思って体を起こそうとした。
ミミ「…いっ…」
身体中が痛いため、体を起こせない…
まいったなぁ…これじゃあロクに動けない…クライヴ達、無事かな……ていうか、本当にここ、何処なの…?





「やっと目が覚めたか、お前」
ミミ「…!」
聞き覚えのある声が聞こえた。その方向を見れば…



















ミミ「ザック…っ!!」
そこには、こちらに背を向けて椅子に座っているザックの姿があった。起き上がろうとしたが
ミミ「いった…!」
ザック「無茶すんな、傷口が開くぞ。その様子なら、明日には少しは動けるように…」
トスッ

ザック「……」
ザックの後頭部に軽くナイフが刺さっている。ミミが投げたものだろう
ミミ「ナイフを投げるくらいなら、この体でもできるよ…!」
ザック「……」
後頭部に刺さっているナイフを抜いて、手に持ったまま振り返る
トスッ

今度は額に軽く刺さる。それも抜いてその二本のナイフをその辺に捨てて、ミミの近くまで来て恐い顔でミミを見下ろす
ザック「隠してるナイフ、全部出せ」
ミミ「もう無いよ」
ザック「嘘つけ、それで俺が後ろを向いたら投げるんだろ」
ミミ「だから、もう無いって。しつこいな」
ザック「…………」
今の発言にイラッときた様子。
ザック「出さないなら、俺が無理矢理取り上げる。」
ミミ「え、いや、ちょ…!本当に無いってば!」


〜しばらくお待ちください〜
















ザック「なんだ、本当に無かったんだな。」
ミミ「だから……さっきから言ってるじゃん………」
ザック「悪かった、調べたことは謝る。」
反対側を向いてるミミに謝る。ミミはザックの方を向いて、少し赤くなった顔でこう言った

ミミ「いや!謝っただけじゃすまないよ!」
ザック「お前もさっきナイフ投げてたろ、二本も。それでおあいこだ」
ミミ「くそぅ…目を狙えばよかったぁ…」

少し落ち着いたところで、ミミはザックに話しかける
ミミ「…あんたが助けたんでしょ?あたしのこと」
ザック「…あぁ」
ミミの近くの椅子に座ってるザックが、軽く頷く。

ミミ「なんで…?あんた、盗賊が嫌いなんでしょ?」
戦う前に言っていたことを思いだして、普通あの状況ならトドメを刺されてもおかしくなかった……何故ザックは、盗賊である自分を助けたのか……
ザックは少し間を開けて、口を開いた

ザック「…気が変わったんだよ……」
そう答えた。更に、続けて話す
ザック「お前と戦ってた時……お前の言ってた「傭兵を恨んでる」っていうのと……お前の目………なんか、俺と似てるような気がした…」
ミミ「……」
ザック「なぁ…お前。何で傭兵を恨んでる?何のために、盗賊をやってる…?」
ミミ「……」
ミミはザックから視線を外して、天井を見ていた……

ザック「…俺も話してやる。何のために傭兵やってて、何で盗賊を恨んでるか…」
ミミ「………わかったよ…」
天井を見たまま、自分の過去のことを話し始めた…
























…あれは、あたしが7歳の時だった……

あたしは、ある町の孤児院に引き取ってもらっていた。あたしの両親は、物心つく前に亡くなってる……そこであたしを見つけた孤児院の人は、あたしを引き取ってくれた…
そこには、あたしと同じ………親や身寄りのない子供達ばかりだった。
正直言って、この孤児院は貧乏だ。でも、不思議と辛く感じなかった…

ミミ「………」
当時のあたし……この孤児院の窓から外を見ていた。すると、その孤児院のシスターがあたしに近づいて、隣でしゃがんであたしを見た
シスター「ミミちゃん、どうしたの?お外を見て…みんなと遊ばないの?」
あたしは窓から外を見たまま、口を開いた
ミミ「もうちょっとで、来るかな…」
シスター「…?」
その発言に首をかしげていたが、すぐにその意味が理解できたシスターは
シスター「どうでしょうね…」
そう言った

少し経つと、孤児院の入り口に……見覚えのある人が…
ミミ「…!」
その人は門を通り、孤児院の中に入った

「こんにちはー!」
その声は、孤児院中にというわけではないけど、子供やシスターが反応した。子供達やシスターは、入り口に向かった。当然、あたしも

シスター「おかえりなさい、リリー」
子供達「おかえりなさい!」
リリー「ただいま、みんな!」


そこには、緑色のローブを着た女性がいた……過去ではない、現在のあたしより少し年上くらいだと思う。リリーは宝が入った袋をシスターに渡した

シスター「いつもごめんね?リリー」
リリー「いいっていいって!恩返しというかさ…ほら、私もここで育ったからさ!」
子供「ねぇリリー!あそぼー!」
子供達がリリーに集まって、遊ぼうと言う
リリー「お、遊んじゃう?それじゃあ、向こうで遊ぼっか!」
子供達「うん!」

彼女は「リリー」、盗賊をやっている女性だ。彼女も身寄りがなく、この孤児院の人に拾われて、ここで育った。何故盗賊をやっているかというと、こういう貧しい場所があるのに、お金持ちの人達は助けてくれない…だから、そういう貧乏な場所に盗んだものを渡して、少しでも裕福な生活をおくってほしい…そういうなんだと思う。当時のあたしは、そんなことはわからなかった。

リリー「じゃあみんな隠れてー!10秒数えるからね〜!」
かくれんぼをするようだ、子供達は孤児院のあらゆる場所に隠れていく。あたしは、リリーに近づいた
リリー「どうしたの?ミミ、隠れないの?」
ミミ「ねぇ、リリー。なんで、盗賊をやってるの?」
リリー「なんで盗賊をやってるか、かぁ……そうだね、それは…」
立ち上がって、親指で自分を指差して、ニッと笑った

リリー「それはね、わたしが正義の味方だからだよ!」
ミミ「せーぎのみかた?」
リリー「そうそう、困ってる人を助けるんだよ!なんか、ほっとけなくてさ〜」
ミミ「!」
ミミの顔はパッと明るくなった

ミミ「あたしも大きくなったら、盗賊やる!それで、リリーみたいに困ってる人を助けてあげるんだ!」
リリー「お、あたしみたいになるか〜!ミミならきっとなれるよ!」
リリーはしゃがんで、笑いながらあたしの頭を撫でた。すると隠れていた子供が出てきて

子供「ねぇ〜!まだ〜!?」
リリー「おっと、そうだった!ほら、ミミも隠れちゃって!」
ミミ「うん!」

これが、あたしの盗賊になろうって思った時だった。
そして、もうひとつの目的ができるまで……そう長くはなかった…

つづく
16/02/10 18:44更新 / 青猫
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