Page.9『魔王と創造主』
エピソードアルカディア:ガルガンチュア
2004年10月12日更新


「なにがトロピカ王国だよ
 単にリリスが楽しみたかっただけじゃないか!」
不思議な本を旅して帰って来た葉月はご機嫌斜めだった
「て言うか、あたしだって全然楽しくなかったわよー
 牢屋に入れられるわ、裁判にかけられるわで!」
「…ホント、ボクが助けてやんなかったら
 間違い無く死刑になってたね」
「うぅ…て言うか〜葉月助けるならもっと早く助けてよねー」
「ワテなんて、後少しで丸こげにされる所やったんやで」
ともあれ、何とか図書館に帰って来た葉月達だったが

「葉月ー何してんの?」
リリスはトロピカ王国から帰って来てから数日間
一心不乱に本を読み漁る葉月を心配していた
「調べ物」
葉月はそう言うと、リリスの持って来たコーヒーを
一気に飲み干し、作業を続ける
「…リリスちゃんつまーんない
 て言うかー葉月その本読めるの?」
「何となくだけど、意味は分かる」
「ふーん
 て言うか、普通の人間じゃ読める訳ないんですが
 …
 はぁ〜リリスちゃんも本読もうかな〜」
リリスがその時手に取った本こそ
大昔リリスがガルガンチュアに与えた世界
アルカディアの本であった
「あの腐れ錬金術師は今どーしてるかしら〜」
その時、葉月がおもむろにリリスに話しかける
「そーだ、リツコの世界で出会った
 あの変な男、あれ誰だったんだ?」
「え・・・ガルガンチュアの事
 うーんそうねー
 聞きたい?」
「あぁ
 あいつには何か特別な物を感じた
 そう、ボクに近い何か…を」

葉月はリツコの世界を経て少し考えが浮かんでいた
今まで感じていた違和感
自分は必ず初美に出会えるという自信
いや、直感か
いずれにせよ、ただ探すだけではダメなのだと感じていた
それが今まで感じていた違和感を拭う方法なのだと
それにはまず、あの男の言っていたイヴのアイテムを見つけるべきであると葉月は考えていた。

 ボクの旅の目的、それはイヴに連なる謎を明かす事
 そして今度こそ初美を連れ帰る事…
 今度こそ…だと
 ボクは一体

葉月の疑問が解けるとき、物語は終焉を迎える事となる
連なりし連鎖、その鎖を断ち切る刃を得る
それが葉月の旅の目的となる






-----------アルカディア
「お前達!!何度言ったら分かるんだ!
 未だにイヴの影すら見つけれないとは何事だ!!」
アルカディアの主、ガルガンチュアは3人のバカな下僕を
今日も怒鳴り散らしていた
「すみません、ご主人様ー」
「いやーイヴが居た世界は〜何度か見つけたんですよ〜
 でも〜結局消滅しちゃってたみたいで〜〜」
「んがーー」
「イヴが消滅してた…だと…」
ガルガンチュアは思考を空へと向けた

そう、イヴはある一定量の年齢に達すると膨大なソーマを放ち消滅する
それはガルガンチュアも「ジル」で経験していた
しかし、その年齢に至るまでの間、イヴは力を抑えている
恐らくは言葉を話さないのはそれが原因だとまで推理は進んでいた
イヴの去った世界には微量だがソーマが残留する
ガルはそのソーマを感知し
3バカ共をその世界へと派遣する
だが、イヴに連なるアイテムの消息は未だつかめない

「くそっ、この私が直々に赴けばまだ可能性はあるのだが」
そうなのだ、ガルガンチュアはこの世界「アルカディア」の維持の為
この世界を出る事が許されないのだ
前に一度違う世界に足を踏み入れた瞬間
アルカディアは大崩壊を迎えた
それを再生するのに半世紀もの時間を要した

ガルガンチャアは既にこのアルカディアにおいて
数百年の時を過ごしていた
アルカディアは全てガルの想像した世界
あらゆる物を生み出す事出来た
そう、あのジルさえも
だが、作り出したジルを愛せば愛するほど
本物のイヴへの渇望が募る

「あぁジルよ未だ本物のキミを見つけ出すことが出来無い
 キミはどんな声を出すんだい
 私はキミの全てが知りたい
 全てが欲しい
 ジル!いや、イヴよ
 答えてくれーーーーー」
ガルの苦しみすら、作られたジルには分からない
そう、ただ笑顔で微笑むだけ
ガルガンチュアは毎晩ジルを愛し続けた
しかし、満たされる事などない
それはただの幻想による一人よがりに過ぎない
ガルガンチュアは積る孤独に絶望すら感じだして居た

「そうだ、全てはあの女との出会いからだ
 あいつを信じたばかりに私は…私は
 マリエル…キミの魂を捧げた結果が
 この永遠の孤独なのかーーー
 答えろ!
 答えろリリスーーーーー!!!!」







------------再び図書館にて
「そうね〜何から話しましょうか」
リリスは葉月にガルガンチュアとの出会いを語り始めた











----------錬金術師の世界〜かえるの王国〜
マリエル姫が毒による自殺を計り数日が経過した
ガルガンチュアはかえるに魂を封じたマリエルを持ち
魔の森と呼ばれる迷宮を彷徨っていた
「もう何日が経つのだ…もうこの馬も使い物にならないか」
すでに疲弊しきったガルガンチュアであったがその時
目の前が深い霧に被われた
「この魔力!来たのか暗黒の魔王よ」

ガルガンチュアの前に大きな黒い帽子
黒いマントに身を包んだ美しい少女が立っていた
「生贄の魂、確かに頂きました」
少女はそう言うと、かえると化したマリエルを手離す
「何時の間に…
 あなたが、ヤミ」
ガルガンチュアは目の前の少女にお辞儀をした
「貴方の望み、何でも叶えてあげましょう」
少女がそう言うと、ガルガンチュアは言い放つ
「永遠の命!そして全ての世界の支配者と私はなる!」
「よろしい
 では、儀式を行います
 と、その前にその疲れた体を癒すのが先ですね」
少女がそう言うと、霧は晴れ
見たことも無い世界がガルの目の前に広がる
「これは…夢でも見ているのか?私は」
「我が名はリリス
 36の魔界に君臨する大魔王
 そして、全ての世界の全知全能の神、ヤミ」

ガルはリリスに連れられ、小さな小屋で一晩を明かす

「さあ、貴方が世界を手にする資格があるか
 見極めてあげるわ」
リリスはそう言うと、睡眠薬で眠っているガルの
深層心理に潜り込む

ジルの記憶
失われた過去
全てのガルガチュアの封印された記憶を解き放つ
「なる程、彼もまたイヴの力を授かった存在
 そして、狩人に支配された魔なる者…」
「何をした!何をしたんだ!!」
その記憶回帰により覚醒するガル
「貴方の失われた記憶を解放したわ
 何の事はない、貴方はただ、イヴをジルと呼ばれる少女を
 再び抱きたいだけなんじゃない
 初体験の女が忘れなれないなんて
 とんだお子ちゃまね」
リリスはクスクス笑いながらガルガンチュアを見下した
「私はお前に生贄を、マリエルを差し出したんだ!
 四の五の言わずにさっさとジルを渡せ!」
「本音が出たわね
 まぁいいわ
 はい、これあげる」
リリスはガルに1冊の本を渡す
「なんだこれは…何も書いて無い無字の本じゃないか」
「当たり前でしょ
 そう、それは貴方の世界
 貴方が望む全てを生み出す事の出来る世界」
「世界…だと
 本が世界だとでも言うのか!!」
「まー百聞は一見に何とやら
 さー行きましょう、あなたの世界へ」
リリスがそう言うと、その本が輝き出す
「うわーーーーー」



ガルが立つのは真っ白な世界
「なんだ此処は、帰せ!もとの世界へ帰せ」
ガルが大声で叫ぶも
「おかしな事言うのね〜
 貴方は世界の主になりたかったんじゃないの??」
リリスは不敵な笑を浮かべる
「想像してみないさい
 貴方の望む世界を
 さすれば、この世界は貴方の思い通りになるのよ
 ジルを生み出す事も、永遠の楽園にする事すらも」

私が望むのは…

ガルは目を瞑る
そして想像する
だが、それは空中に浮かぶうすくらい島にそびえる城
だが、その城の庭には向日葵が咲き乱れる
「なる程…故郷を思ってる訳ね」

リリスとガルは城の中へと進む
「なんだあの怪物は」
そこには、手を振る3人の下僕達が居た
「怪物って、あれも貴方が想像…いえ、創造したのよ」
「私が生み出した…だと?」
その時ガルガンチュアは思い出していた
100年前、孤児だった3人の子供を拾い育てた事を
そして、彼らを狩人に支配されていたとは言え
この手で葬った事を
「そうか…あいつらが帰って来たのか」
その時だった、ガルガンチュアの中で何かが弾けた

ガルガンチュアは薔薇を咥え
怪しい踊りを踊り出した
「私はイヴを妃とする
 そして、この世界を全ての世界の頂点へと君臨させる
 私は支配者となるのだ!」
その時、ガルの影には再び暗黒が宿っていた…

「バカな男
 貴方はこの世界を出る事は許されないのよ
 せいぜい頑張ってイヴを探して頂戴
 見つけたその時は、このリリスちゃんが奪ってあげるから」
 





---------図書館世界にて
「ククク、このリリスさまの為にせいぜい働くがよい」
リリスは怪しい喋り方で力説していたが…
「ふにゃふにゃ〜初美〜」
「って!葉月寝てるしーーー」
「どーやら、葉月はん徹夜がたたったのか疲れがどっと出てきたようでんな〜」
リリスはケンちゃんを摘みあげる
「何?それは、リリスちゃんの話のせいだとでも言うの?」
「ちゃいますーー
 ってやめてーーーなーーーーー」
リリスはコゲちびに丸めたケンちゃんを投げつけた

「まったく葉月ったら
 フフフ、葉月貴方ならきっとおでこちゃん見つけれるわ
 だって、リリスちゃんがついてるんだから
 だから、今日はお休み
 明日から、また旅が始まるんだから…」
ふら〜っとした葉月はリリスによしかかる
「えええ?葉月」
リリスの邪な考えが過ぎった時だった
「お姉ちゃん…」
その声にはっとなるリリス…
葉月は寝ぼけながらリリスに甘えてきた
「葉月…しかたないな〜
 今日だけだぞ」
リリスはそう言うと、葉月を膝枕で寝させた
「会えるといいね、貴方のお姉ちゃんに
 おやすみ、葉月」






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