Page.8『再会〜千年美女〜』
エピソード錬金術師の世界:マリエル
2004年10月07日更新

Page.8『再会〜千年美女〜』
エピソード錬金術師の世界:マリエル


キャハハハ
ここはかえるの王国の庭園
そこではこの国の姫であるマリエルと
その専属教師であるリツコが今日も楽しそうに勉強をしていた
「マリエル姫、ここは笑う所ではありませんよ」
リツコが優しくマリエルに言うと
マリエルはつまらなさそうにリツコに甘えた
「だって可笑しいじゃありませんか
 何万ものかえるが堤防になって国を救ったなんて」
「もしかしたら、かえるではなく
 それは人間達が力を合わせて洪水から国を守ったのかもしれませんね」
「まるで見てきたかのような事を仰るのねリツコ様は」
マリエルの婆やがリツコに言う
「でも、リツコの言う方がよっぽど真実味がありますわ
 この国はなんでもかんでも、カエルカエル
 もう嫌になってしまいますわ」
マリエルはリツコに甘えながら嫌そうに婆やに言った

「ですが、マリエル姫
 かえるは国の象徴
 つまりは人民を指すのですよ
 一国の姫たる者、人民の気持ちを理解して
 初めて偉大な指導者に近づけるのです」
リツコの胸の中で甘えながらマリエルはリツコの教えを聞いていた
「リツコの胸の中って本当に温かい
 もし、お母様が生きていればお母様の胸の中も…」
その時マリエルの頬には涙が流れていた
リツコはそれを優しく拭き取ると
マリエルはリツコの大きな胸に深く抱かれこう言った
「でも、今はリツコが居るから
 リツコは、マリエルのお母様だから」

そんな二人を見て婆やも涙を流した


ラミア…貴方が命を賭して守ったこの国を
今度は私が守るわ…
それがきっと、何百年も生きた私の使命だから
そうでしょ…ジル




マリエルの16歳の誕生日が近づいていた
それは同時にマリエルの婚約者探しのパーティーをも意味していた
マリエルはこの国の風習である、かえるの姿
つまりは男性が全身緑色のタイツに身を包み
城の中をゲコゲコ飛び回るイベントが嫌で堪らなかった



そんな折、マリエルとリツコは街へお忍びで遊びに出かけていた

「いけませんよ姫
 そんなにはしゃいでは」
「こう言う時くらいは、全てを忘れてぱ〜っと」
マリエルがリツコの言う事を聞かずはしゃいでた時だった
数人のチンピラ風の男達にマリエルが囲まれる
「なんですか
 貴方達は
 離しなさい、無礼であろう」
「クククこの嬢ちゃん、どっかの金持ちの娘か
 エライベッピンさんやないか」
「ククク早くやっちまおうぜ」
「嫌ーーーー」
マリエルの悲鳴を聞きつけたリツコだったが
そこには、チンピラ風の男達が倒れていた
「一体何が?」

「あの…貴方は…」
マリエルは男達から自分を助けてくれたマントの男に乞う
「大丈夫ですか?美しいお嬢さん
 いえ、私は名乗るほどの者では御座いません」
そう言うと、マントの男はリツコの方に向かい去って行く
その時だったリツコはその男の顔を見た瞬間
背中に電気が走った
ガルガンチュア!
リツコはそう思った…
だが、声に出す事が出来なかった
リツコはマリエルから事情を聞き
城へと帰るのであった


深夜、リツコは夜空に見上げ考え込んでいた
貴方はガルガンチュアなの
でもそんな筈はない、だってもうあれから100年以上経つんですもの
私がこうして生きてる事自体奇跡なのに…
そうでしょ…ジル
リツコはジルのリボンを握り締め
大切にしてるペンダントの写真を眺める
そこには、ジルとガルの姿があった…



マリエルの誕生パーティーが近づいた頃だった
リツコとマリエルは王宮に呼ばれた
「おぉ〜来たか、マリエル、リツコ
 紹介しよう、彼が天才錬金術師と名高い
 ガルガンチュア殿だ」
リツコは王が口にしたその名と
目の前に居るその男を見て驚きを隠せない
「ガルガンチュア!!」
「おぉ知り合いだったのか
 そうさな、同じ職業柄知り合いでもおかしくはなかったか」
「いえ…はじめまして
 私は黄昏の錬金術師マスターリツコです」
「貴方があの有名なマスターリツコでしたか
 私は漆黒の錬金術師マスターガルガンチュアと申します
 以後、お見知りおきを
 そして、美しきお嬢さん
 いえ、マリエル姫
 再び会えた幸運、神に感謝します」
「おぉ〜ガルガンチュア殿はマリエルとも知り合いだったか〜
 これはよきかなよきかな
 ガーハハハハ」
マリエルはガルガンチュアをうっとりした目で見つめていた
ガルガンチュアもそれに答える様にマリエルを見つめていた
ただ、リツコだけは目の前のガルガンチュアを未だに信じられないで居た


ガルガンチュアはマリエルの願いもあり
誕生パーティの出席の為しばらく王宮で暮らす事となった
マリエルはガルガンチュアにべったりで
リツコの入り込む隙は無かった

ある日一人になったガルガンチュアにリツコが迫った
「貴方は、本当にあのガルガンチュアなの?」
リツコがそう言うと、言い返すようにガルが言う
「あいかわらずだな、リツコ
 100年以上経った今でも、言いたい事の一つも言えないで居るとはな」
「では、本当にガルガンチュアなのね
 ではやはり私達は、ジルにより不老不死の力を得たんだわ」
「ジル??
 誰だそれは…うぅ」
「貴方がジルの事を忘れる筈は無いわ」
リツコのその言葉に苦しみ出すガルガンチュア…

 コロセ、ヤツをクラウンダ
 サスレバ、オマエはもっと強大なチカラを得る
「ダマレ!」
ガルは心の声を伏せた
「ハァハァ…私は…私は」
苦しむガルガンチュアの元へマリエルが駆けつける
「ガルガンチュアさま!
 リツコガルガンチュア様に何をしたの
 さぁガルガンチュア様こちらへ」
マリエルに連れられその場を去るガルガンチュア


ガルガンチュア…貴方本当にジルを憶えてないの…
リツコは胸騒を感じていた
これから良からぬ事が起る…と




川の辺にて
「大丈夫ですか、ガルガンチュアさま」
「あぁ忝い…
 もう大丈夫です、マリエル姫
 リツコとは、古い友人でして…」
「二人は恋人だったのですか?」
「…恋人
 いや、もっと深い関係だった
 かもしれませんね」
「今でもリツコを愛してるんですか?」
「…マリエル姫」
「私はガルガンチュア様を愛しています
 お願いです、
 マリエルはいつでもガルガンチュア様の物になる覚悟は出来ています」
「…(ニヤリ)マリエル姫…」
ガルガンチュアはマリエルに深い口付けをすると
一つの約束を交わした







フフフあと少しだ
あと少しで手に入るぞ、私が待ち望んだ
暗黒の神との契約の時が!!
その時、ガルガンチュアの影に潜む悪魔は高笑いをしたかに見えた







マリエル姫の誕生日前夜
マリエルはガルガンチュアとの約束通り
森へと来ていた
「お待ちしていましたよ、マリエル姫」
「ガルガンチュア様…此処は?」
「儀式ですよ、貴方が私の物になる為の儀式です」
二人は森の深くに作られた人工の岩場の奥へと入っていった
そこには巨大な魔法陣が書かれており
その焚かれた火が何かの儀式をマリエルの意識に強調させた
「さて、マリエル姫その美しい体を頂きますよ」
ガルガンチュアが呪文を唱えると魔法陣が光だし
マリエルの意識が飛ぶ
同時にガルガンチュアはマリエルの服を破り捨て
その美しい裸体を眺めていた
「生贄に必要なのが処女でなければ行けないのが
 この儀式の悲しい所
 まぁ良い、世界が手に入ったならば
 その様な低俗な欲望など幾らでも叶えられる
 さあ、マリエル姫よ
 今こそ暗黒の神にその身を捧げるのだ!!」
ガルガンチュアが呪文を唱えると
魔法陣中心のマリエルに複数のイバラが絡みつく
イバラはマリエルの肢体をそのトゲと触手で絡みつき
マリエルの股間には太い触手が食い込み
その処女をズタズタに切り裂いていた
「何度見ても素晴らしい!
 この瞬間こそが、我が幸福の一時」



リツコは何かを感じ取っていた
マリエル姫!今行きます




「ガルガンチュア!!何を!!」
儀式の中へ飛び込んできたリツコだったが
既にマリエルの体の半分は魔物に侵食されていた
「何てことを」
「おや、リツコ遅かったね
 その分だと何も知らない様だね
 何故私がマリエル姫をターゲットに選らんだのかも
 私は全て知っていたのさ
 マリエルは本来は既に死んでいた事を
 それをリツコ、キミが生き返らせた事も
 定期的にマリエルの体にソーマを送り込み
 肉体の腐敗を防いで居た事も
 そう、マリエル姫なんて物はこの世には既に居ない
 なぜなら、此処に居るマリエルはリツコ
 キミが作り上げた偽りの存在
 動く人形なのだからね!」
ガルガンチュアは影を伸ばし
その狂気を狂わしていた
「違う、マリエル姫はマリエル姫は…」
「何が違うと言うんだい
 それが証拠に、ほらリツコのソーマを感じ取り
 魔物がこんなに集まってるじゃないか
 ハハハ
 ハーハハハハハ
 愚かだよリツコ
 所詮、お前は神にはなれないのさ
 そう、神になるのはこの私一人で十分なのさ!!!」
ガルガンチュアの呪文がリツコを襲う
リツコも錬金術を唱えるも、その力の前になす術が無い
そして地面から湧き出た触手により、身動きの取れなくなるリツコ
「美しいね、リツコ
 惚れてしまいそうだよ
 今までその美しい肢体で何人、いや
 何百人と言う男を食い物にしてきたんだい
 答えれないならいいさ
 体に聞くだけだからね!!」
ガルの一声で触手はリツコの体を嘗め回すように吸い付く
「ジル…力を貸してジル!」
リツコがその名を口にした時だった
「うぅ…またその名を
 その名を口にするなーーーーー」
ガルと共に全ての術が一時的に停止する
「マリエル姫、今お助けします
 ジルもっとパワーを!
 北と南に金の天使
 東と西に銀の天使を擁きたもう
 いざ、舞も戻れや彷徨い人よ
 我が召還した大天使の導きによって!!」
リツコの呪文がガルを圧倒する
「キーーーこれは!イヴかイヴの力なのかーーー」
ガルの中の狩人は断末魔の叫びと共に闇へと還る

「ガルガンチュア!これで終わりよ!!」
カッ
リツコの力によりマリエルは解放され
魔物に侵食された肉体も元へと戻っていた
「マリエル姫…
 ガルガンチュア…悲しい人」








「リツコよどう言う事なのだ!!」
国王は再び病に倒れるマリエルを尻目に
リツコへと当る
「マリエル姫は命に代えてもお救いします
 どーか、今だけは…」

マリエルはリツコにより一命は取り留めた…が
リツコは国王の怒りに触れ地下に幽閉される事になった




王宮の湖の辺のマリエルは立つ
手には毒薬を持ち…
「お父様、マリエルはもう生きてはいけません
 この体の半分は魔物のものに成り果てました
 心まで魔物になるのなら
 いっそ…
 さようなら、お父様
 リツコに咎はありません
 さようなら、お父様
 愛しています
 愛して…」

その数日後マリエルの遺体が湖の辺で発見される
だが、その体は既に魔物と化していたそうだ



マリエルの死を聞いたリツコは国王に願い出る
自分を永遠に地下に幽閉して欲しいと
この様な悪夢を二度と起さないように…と




その後、数百年に渡りリツコは永遠とも思える時間を
地下牢で過ごす事となる…
だが、その姿は何時までも美しかったと言う
そして人々は彼女の事をこう呼んだ


千年美女…と







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