Page.6『救いの光〜黒き野望〜』
エピソードかえるの王国・後編:イリス
2004年9月22日更新



町ではダムから流れ出た水により辺り一面が大洪水に見舞われていた
ラミアの住む高地からも、その酷い状況は確認できた
「皆さんお力をお貸し下さい」
ラミアは葉月達に加勢を頼み町へ向った

「まずはダムを何とかしなくては」
リツコは錬金術を使い、ダムに再生力を注ぐが…
「あまりにも機材が足りなさ過ぎて、全然間に合わないわ」
リツコが生み出す壁も次々に破壊されて行く
「ここは僕に任せてください
 え〜〜いフリージングコキュートス!!」
ドロッセルハウストの冷気の魔術が炸裂した
「おっ止まったか」
葉月がそう言うと、ドロシーはどんなもんだい〜と言う表情をした
が、次の瞬間、氷は砕かれその破片がさらに被害を拡大していく
「…って余計悪くなってるじゃん!!」
葉月の突っ込みに、リツコの後ろに隠れるドロシー
「だって僕まだ修行の身だしぃ〜」
「…とりあえず、此処はボクが何とかする
 リツコさんとドロシーはラミアと協力して
 人々の救出に向って」
葉月は二人に指示を出した
「本当に大丈夫なの?」
リツコは葉月を見つめた
葉月はコクんと頷きリツコも分かったと頷き
その場を後にした

「さて、何処まで出来るかは分からないが
 やってみるか」
葉月は大きくジャンプをし、突き出ている建物を足場に
ダムの前までやって来た
葉月は刀を抜刀し水面に向かい刀を振るう
すると大地は悲鳴を鳴らし大きな水柱をあげる
そうなのだ、葉月は大地に裂け目を作り出し
水をそちらに流し込もうとしたのだ
だが、溢れ出る水の流れを完全に止める事は出来無い






「さぁみなさん、高い所に早く逃げ込んでください」
ラミアは魔術で流される人々救い出していた
「どうやら少しはおさまったみたいね…」
リツコはそう言うと錬金術を駆使して人々に船を作り救出を手伝う
「葉月は任せていったけど、本当に大丈夫なのかなぁ」
ドロシーは葉月の心配をした
「大丈夫よ、あの子には凄い仲間がついてるから」
リツコはドロシーにそう言うと、あっちの方で誰か助けを呼んでる
そっちに向ってと指示を出した





「おやぶん〜どーしましょ」
「どんどんみんな死んでいっちゃいますよ〜〜」
「うんがーー(涙)」
3人の僕達は高みから見物するガルガンチュアにすがった
「これこそが私の狙い
 そうさ、これを止めるためヤツはあの魔術を使うはずだ
 しかし…妙だな
 水の勢いが弱まっている
 これといって強い魔術反応は感じて居ないが」
ガルガンチュアは僕達を尻目に考え込んでいた
「なんだあれ〜なんか光った」
「光…?いや魔術反応も錬金術の反応でもない一体何が」
そう言うと、ガルガンチュアは背中から翼を生やし
その光の先へ向う


「でぃえいや〜〜〜〜〜〜〜」
葉月はダムの中心から出来るだけ長くの地面を掘り進んでいた
「はぁはぁ…
 とりあえずは、これで水は何とかなった筈だ」
流石に息を切らした葉月であったが
「!!殺気!誰だ!」
葉月はガルガンチュアの気配に気づく

そう、これが葉月とガルガンチュアの長き渡る運命の出会いであった

「お前がこれをやったのか」
ガルガンチュアと葉月は睨みあう
「お前一体…!そうか、お前だなダムを決壊させたのは!」
葉月は咄嗟にガルガンチュアの力を感じ取り
刀を向けたその時だった
「なんだ!」
「うぅこれは」
葉月の刀と、ガルガンチュアの持つナイフが輝き出す
その時、葉月が瞬時にそのナイフが初美に関連する何かと気づいた
「お前!それはイヴから授かった物だな!」
「イヴ?
 …くっ頭が…頭が割れる」
葉月の言葉に苦しみ出すガルガンチュア…だがそれを止めるかのように
ガルガンチュアの中から黒ずんだ影が姿を現す
それと同時にガルのナイフが死神のカマへと姿を変える
「ククククお前もイヴから力を得た存在か
 だが、今はまだ闘う時では無い
 遠い未来、或いは遠い過去において再び会う事になるだろう
 その時、お前が持つイヴのアイテムを頂く
 それまでせいぜいがんばってくれたまえ」
ガルの中から出てきた黒き存在が葉月に言うと姿を消す
「待て!!キサマ一体…
 くそっ逃げられたか…」
葉月には、それが何を意味するのか分からなかった
「イヴのアイテム?
 未来、過去…だと」



「ククク魂がまだ足りん…ん?」
「おやぶ〜〜ん」
3人の下僕達が船をこいでやって来る
その時だった
「丁度良い、お前達の魂頂くぞ」
ガルガンチュアの中の黒い影はガルを支配していた
そして3人の首をはね、その魂を喰らう
だが、それによりガルガンチュアは目を覚ます
「!!これを私がやったのか!
 私が…私があーーーーーーーーー」
その時、ガルガンチュアにリツコの姿が目に映った
「リツコ…何故此処に
 私は…嫌だ〜〜〜〜〜〜〜〜」
 ガルガンチュアの悲鳴が夜の空にこだまする



「はづき〜〜〜」
たる〜い声で、リリスが葉月の元へ駆けつける
「も〜葉月ったら一人でいっちゃうんだから〜」
「…今まで何してたのさ」
葉月がリリスを睨む
「えーと、えーと…
 そうそう、困った人たちを〜助けていたの〜
 (本当は図書館に戻って調べてたんだけど)
 そう、それでね〜分かった事があるの〜〜〜
 知りたい〜」
リリスは葉月に甘えるように近づくと、葉月はそれを嫌がり離れる
「何が分かったのさ」
「ふふ〜ん、そ〜れ〜わ〜」

「大変だーーーー大津波が〜〜」
遠くから叫び声が聞こえる
「津波だと?此処って大陸の中だろ」
「そーねー海は無いわね〜」
二人は顔を見合わせると、頷き何かを察した
「間違いない、さっきのアイツの仕業だ」
「間違い無いわ、別の本から津波を呼び寄せたんだわ」
二人はそれぞれの考えを確かめに激流の中心へ向った

「どーなってるんだ」
葉月達が見た光景は町の中心が競り上がり
そこに大勢の人間達が集まっていた
葉月はリリスを抱きかかえ、少ない足場をジャンプでつなぎ
その競り上がった大地に向った

「あっ葉月さん、ご無事だったんですね」
ラミア達が葉月達の元へ駆けつけた
「ラミアこれは一体」
「住民達を助ける為に3人で協力して
 一部の大地を船代わりに浮かべたのよ」
リツコが説明するなか、ヘトヘトのドロシー

「とりあえず状況は分かった…」
葉月が頷くも
「でも、これじゃこの町だけじゃないわね被害にあってるのは
 て言うか、この浮島自体どこに向かってんだか」
リリスの悪態が回りの住民をいらつかせる

その時だった大きな爆音が響く
皆が空を見上げると、そこにはまるで悪魔の姿をした存在が浮いていた
「ヤツか!!!」
葉月は爆音の方へ向う
「いけない、このままだと島が分解して皆流されてしまう」
ラミアの心配の通り、島には亀裂が走り何人もの人間が振り落とされる
「一体何が起こってるの」
リツコは既にどーすれば良いのか分からなくなっていた
「ジル、皆を守って」
リツコがジルから貰ったリボンに念を込めると
リボンが輝き出す
「ジル…分かったわ葉月の元へ行けばいいのね」
そう言うとドロシーとラミアを残しリツコは葉月の元へ向った
「あーリツコさんっ」
「ドロッセルハウストさん
 力を貸してください」
「え・・・ラミアさんでも僕はまだ見習だし」
「大丈夫です、自分を信じて下さい」
ラミアがそう言うと、ドロシーに作戦を説明する





「お前が!お前がやったのか!!!」
葉月はその悪魔に向かいソーマの衝撃派を打ち込む
リリスはそれが何かに気づいていた
「間違いないわね、あれは狩人の一体
 でも誰が??」

「くそっあぁ高い位置に居られては」
葉月が舌打ちした時だった

その時、葉月の元にリツコが駆けつける
「葉月!」
リツコが葉月に合図を送る
葉月は頷き、刀を鞘に収め居合のポーズを取る
「行くわよ葉月!!」
「了解した!」
リツコは長い呪文を唱えると、地面に向かい錬金術を発動した
すると葉月の足場が空に向かい伸び始める
「お前はボクの剣先を見て自分の姿を霧にする
 だが、霧になる前の実体を斬れば同じ事」
悪魔に向かい伸びる大地の柱
その先端の葉月はそこからさらにジャンプをし
悪魔の懐に入り込んだ瞬間
1閃2閃3閃
得意の抜刀術を叩き込む
霧に姿を変える前に切り刻まれた悪魔は煙と共に
コウモリの姿に戻りその場を逃げ出した

「さて、こっちは片付いたが…」

「やっぱりね…でも一体誰が…」
遠くで葉月の活躍を見守るリリスだったが





その頃、島が分離を始め路頭に迷う人々
「聞いて下さい、ドロッセルハウストさん」
ラミアはドロシーにある大魔法のサポートを頼むため
その説明をはじめた

ラミアがまだ子供だった頃、ラミアの双子の妹である
天才魔術師イリスが大洪水から人々を救うため
人々をかえるの姿にし、皆で協力して町を救った事があった

ラミアはその時のイリスの魔術の研究をしていたのだ
ラミアは大魔術陣を発動させ魔力を増幅、一定空間の人間全てを
一度かえるに変身させる魔術を使用する作戦に出た

「ラミアさん、本当にいいんですね」
ドロシーは何時になく真剣な眼差しでラミアを見つめた
ラミアは頷くと、大魔術陣を天空に描く

遠くからそれを感じたリリスは、
葉月とリツコを遠くの高い足場にまで瞬間移動させる

「いきます!!!」
ラミアの掛け声で術は発動、同時に浮島は崩壊を始める
「うぅ、イリスちゃん力を貸して」
ラミアは力を振り絞り、術を見事に発動させる
「やりましたよ、ラミアさん成功です
 みんなかえるに変身して無事のようです
 …ラミアさん
 ラミアさんの命無駄にはしません」
ドロシーはそう言うと、杖に念を込め
かえるに変身した人々を導く


高場からその異様な光景を見つめる葉月とリツコ
「ラミア達がやったのか?」
「恐らく…」
その時リツコは思った
これ程の魔術を発動させるには…
それを思いリツコはその光景を目に焼き付けた
きっとこれは歴史を変える出来事になるであろうから





葉月はガルガンチュアの一件をリリスに話した
リリスの話によると、相手は葉月同様にイヴのソーマを浴び
イヴのアイテムを持っているのだと
そして葉月が持つ、刀はそのイヴのアイテムの一つだと教えてくれた
同時に、イヴを探すのはそのアイテム探しの旅でもあるのだと







朝日が昇る
かえるに姿を変えた人々は、高台に上がると人の姿にもどった
人々がかえるの姿になる事により、被害は最小で収まった

それを見つめていたリツコは一つの決心をした
自分はこの地に残り、人々を導こうと
そうする事をきっとジルも望んでいる事であろうと…

ドロシーが空から降りてくる
そして葉月にラミアから与かった人形を渡す
「葉月、これラミアさんから」
「ボクに…これは」
葉月はラミアの作った初美の人形を抱きしめる
それが何を意味するのか葉月には分かっていた






「行くのね、みんな」
この場に残る決心をしたリツコは3人を見送る
「僕リツコさんの事忘れません
 一人前の魔術師になったら、リツコさんを迎えにきます
 その時はボクのお嫁さんになって下さい」
ドロシーは真剣な眼差しでリツコを見つめた
「…えぇ楽しみにしてるわ」
リツコはそう言うと、ドロシーの額にキスをした
「えーー口じゃないんですか〜〜」
がっかりするドロシー
そうなのだ、この二人は生殖行為は何度も行ってきたが
キスは一度もしていなかったのだ

「じゃリツコ、ボクらは行くよ」
葉月は寂しそうにリツコにさよならを言う
「見つかるといいわね、お姉さん」
「あぁ リツコも探してる幼馴染と会えるよきっと」
二人は抱き合いお互いの誓いを結んだ
「じゃ、リツコさん、ドロシー
 ばいばい」






---------------図書館世界にて
本から帰って来た葉月達をケンちゃんとコゲちびが向かえた
「いや〜姉さん達居ない間にた〜くさん、本つくろって置きましたで〜」
「そんな事より疲れた〜早くお茶にして〜」
そう言うとリリス達はテラスでくつろぎ出す

葉月はラミアの形見の初美人形を取り出すと
リリスもラミアの作った葉月人形を取り出す
二つの人形に仲良く並べ
テラスに飾る二人

そして葉月は寝床につく
「明日は初美に会えますように
 おやすみ、初美」






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