Page.5『二人のリリス〜崩壊の序曲〜』
エピソードかえるの王国・前編:ラミア
2004年9月14日更新


「あんたが有名な錬金術の先生ガルガンチュアさんかい?」
黒いフードをかぶった怪しい男がガルガンチュアに問いた
「あぁ私が漆黒の錬金術師ガルガンチュアだ」
ガルガンチュは黒マントに身を包み威風堂々としていた
「礼金は弾む、あの女の持つ不老長寿の秘術を手に入れて欲しい」
男はガルガンチュアにその欲望をぶつけた
「…了解した、ただし礼金では無くある物を頂く」
「ある物?まー手に入るものならなんでも出すが」
「安心したまえ、今キミが持っている物だよ
 フフ…フフハハハハハ」
そう言うとガルガンチュアは夜の闇に消えていった
「たのみますぜ先生、あのラミアと言う女魔術師から
 なんとしても不老長寿の秘薬を手に入れて下さいよ」





さて、舞台は葉月一行に移るのだが
何故か?葉月とドロッセルハウストの二人は
リツコとリリスとはぐれてしまった様である

「な〜ドロシー本当にこんな路地裏に初美が居るのか?」
葉月は歩き疲れたのか、ドロッセルハウストにくだを巻く
「まーその初美って人かは分からないけど、天才魔術師が
 この近くに居るって噂は聞いた事があるんだ」
ドロッセルハウストはマイペースに語った

葉月達はリツコの紹介である魔術師を探しに
西の国へと来ていたのである。

「はららら〜〜えいっ」
謎の少女がカエルを追いかけていたのだが
ドカ!
「いたたたた
 ちゃんと前向いて歩けよな」
「あうぅ〜ごめんなさい〜〜」
その少女は見事に曲がり角で葉月と激突
「…リリス、お前こんな所に居たのか」
葉月はぶつかってきた少女に言い放つ
「ふえ??…えーと?」
少女は不思議そうに葉月を眺める
「あーそうだ、そんな場合じゃない〜
 あの〜今急いでるんで〜ごめんなさい〜〜
 あーん、待って下さいかえるさ〜〜〜ん」
少女は葉月に頭を下げ、一目散に逃げたかえるを追いかけた


「…待てリリス!初美は見つかったのか〜」
そう言いながら少女を追いかける葉月
一人置いてけぼりを食らうドロシーであったが
「うーん、あれはリリスじゃないと思う、似てるけど」



さて、追いかけっことなった葉月と少女だが
「くそっすばしっこいな、リリスのくせに
 何でだろう、逃げられると追いかけたくなるのは人間の性か?」
などと意味不明な事を言いながら追いかける葉月だが
いかんせん少女が追いかけてるのはすばしっこいカエル
そのトリッキーな動きで流石の葉月も予想だに出来無い

「あ〜〜ん…はぁ〜ダメ疲れた」
少女は行き成り地面に座り込むんだ
「…おい、あのカエル捕まえればいんだろっ」
「へ?…えーと、はい」
葉月は少女に言い放ち、カエルを今度は葉月が追いかけた

「相手はカエルなんだ、すばしっこくても頭は悪い」
葉月はそう言うとカエルを誘導するかのように行き止まりに向わせた
!!行き止まりに戸惑うカエルに
葉月は回りの角材を斬りつけ瞬時に檻を作り出した
次にカエルに刀を投げつけ、交す軌道を計算し
見事に檻の中に捕まえたのだった

「お見事です〜〜ありがとう御座います〜」
少女は何気に後ろから追いかけて来たらしく、葉月に感謝する
「そんな事よりリリス、このカエルが初美と何か関係があるのか?」
葉月は捕まえたカエルを檻ごと少女に渡すが
「…あの〜私を誰かとお間違えしてませんか?」
葉月は少女にそう言われると、少女を嘗め回すように見る
「何処からどーみてもリリスだろ、ふざけてるのか?」

葉月達の元にドロシーが遅れて姿を現す
「やっぱり貴方が天才魔術師のラミアさんだったんですね
 僕はドロッセルハウスト
 黄昏の錬金術師マスターリツコの所で弟子をやってる見習魔術師です
 こちらは異国から来られた東葉月さん」
ドロシーはマイペースに自己紹介を済ませる
「ちょっと待て、だってこいつリリスだろ?」
葉月はドロシーの言ってる意味が理解出来ない
「違うよ、魔術師のラミアさんだよ、僕らが探してる」
「…どーみてもリリスじゃん」
納得出来ない葉月に、ラミアは魔術を見せてみた
「えーと、これなら信じて頂けますか〜
 えいっ」
ラミアは行き成りドロシーに魔法をかけ、カエルの姿にしてしまった
「…ちょっとマテ
 いや、キミがリリスじゃ無い事は良く分かった
 で、まさかさっき追いかけてたカエルって」
葉月は大きな汗を流しながらラミアに質問した
「はい、そろそろ元の姿に戻ります」
ドロン
そうラミアが言った瞬間に檻の中でカエルが猫の姿に戻っていた
当然ネコにはその檻は狭すぎて窮屈そうにしていた
「…えーと、葉月さん?
 お礼もしたので〜どーぞウチにお越しください
 狭くて汚い所ですがお茶くらいなら」
そう言うとラミアは葉月達を自宅へと誘った


「狭いと言うか、汚いと言うか…」
葉月はラミアのそのあまりにも狭く汚れた、
まるで掃き溜めの様な部屋を見て驚いた
ラミアの部屋は汚い掘建て小屋に4畳半の畳?
真ん中にちゃぶ台の回りはかろうじて整頓されているが、
その回りはもう何がなんだか…
「あのさーお風呂とかどーしてんの?」
「はい、毎日銭湯通いです、今夜は一緒にどーですか?」
「…なんでこんな所でこんな風景見る事になるんだか」
葉月は頭を抱えた

「うわ〜〜凄い、これ伝説の魔術所ネクロノミコン
 こっちは、凄いまだ発見されてない死海文書!!(爆笑)」
ドロシーはそのラミアの部屋に散らかされた本の山に感動していた

「ところで、ラミアこの人知らないか?」
葉月はそう言うと、ラミアに携帯の待ち受け画面の初美を見せた
「あっ…イリスちゃん…
 どーして葉月さんがイリスちゃんを?」
ラミアがそう言うか言わないかの刹那
「やっぱり初美を知ってるんだな!
 今何処に居るんだ?もう16歳になったのか?」
葉月はラミアに次々と質問をした
「えーと、イリスちゃんはもうこの世に居ません
 200年程まえに行方不明になっちゃったんです」
「それは16歳の誕生日?」
「…はい
 イリスちゃんは私の双子の妹でした
 二人で魔術を学び
 イリスちゃんは天才魔術師でした
 私は未だに16歳のイリスちゃんに追いつけないんです…」
ラミアはそう言うと涙を浮かべた
「ごめん…そうか、もう200も前に…
 って!200年????」
「はい〜私こう見えても〜216歳なんですよエヘ」
ラミアは笑顔に戻り葉月に微笑んだ

「…リツコは60を越えてあの外見…
 ラミアに至っては既に人間の寿命を越えてる…」
葉月は困惑した…そこにドロシーが
「魔術師なら200年くらい生きてる人結構いますよ
 僕もこう見えて40超えてますし」
ドロシーは葉月に微笑みかける
「40を越えてる…」
「うん、魔術師の世界だと〜50歳越えないとまだ半人前扱いなんだよね〜」
葉月はその言葉に頭を抱えた
「どーなってるんだこの世界は…
 あれ?待てよ、リツコの幼馴染は普通に老人だった
 魔術師だけが歳をとらないのか??」
葉月は少し解決の糸口を見出したかに見えたが
「いや〜僕は特別若く見えるからだけど、魔術師でも
 普通に歳をとって行くんだよ
 リツコさんにしたって、ラミアさんにしたって
 (ここだけの話、多分魔術で若く見せてるだけだと思うよ)」
最後の言葉だけ葉月の耳元で小声で話すドロシー

「うーん、まーいいや
 とりあえず、ラミアよかったらイリスの話を詳しく聞かせてくれないか?」
葉月はラミアにそう言うと、ラミアは嬉しそうにイリスの話を始めた
それを嬉しそうに聞く葉月
そして葉月も初美の話をすると嬉しそうに聞くラミア
後ろで見たことも無い魔術書を片っ端から読み込むドロシー達は
既に時間を忘れていった…






「完璧迷ったわね」
リツコはめがねを光らせ冷静に言う
「迷ったわじゃないわよ〜〜あーん葉月会いたいよ〜〜
 リリスちゃんおなか空いた〜〜
 あーん、こんな事ならケンちゃん連れてくればよかった〜
 あれなら、いざとなれば焼き鳥にして…」
そう言うとリリスはよだれを溢していた
「時にリリス、前に話してた事だけど
 あなた…」
リツコはそう言った瞬間
「ふえ?」
「隠れて」
リツコはただならぬ殺気を感じ、咄嗟にリリスと二人で物陰に隠れた
「なによ〜」
「しーー」

そこには3人の黒ずくめの謎の男達が町で暴れだし
ラミアと呼ばれる魔術師を呼んで来いと叫んでいる
だが、そんな事よりもリツコはその後ろに居る
フードで顔を隠した男から放たれる禍々しい殺気に恐怖を憶えた
「とりあえず、リリスここは離れた方がいいわ」
「…まー厄介ごとはごめんだしね〜」
そう言うと二人はその場を去った

「お前達、もういい」
黒ずくめのフードの男は3人の僕達に言った
「しかしガルガンチュアさま〜〜早くしないと〜日が暮れて…」
「ってバカ、もう夜中だボケ」
「んがー」
3人の僕達はガルガンチュアの怒りを受け
頭にたんこぶを作り、その場を去った
「まぁいい、この近くに生贄に相応しい輩が居る事は分かった」
ガルガンチュはそう言い残すと闇に消えた



深夜を回り出すと急に激しい雨が振り出した
その雨は風を呼び、雷を鳴らした…


「って〜〜宿も無いしどーすればいいのよ〜〜」
リリスとリツコは激しい雨の中、軒下に逃げ込むのがやっとであった
「とりあえず、この家の人に泊めてもらえるか聞いてみましょう」
リツコがそう言うとリリスが
「えー泊めてもらうなら、こんなおんぼろじゃなくて〜〜
 豪華なディナー付きの高級ホテルがいいの〜〜」
リリスが駄々をこねてる最中リツコは家を訊ねていた
だが、その扉の向こうから現れたのはリリスそっくりの…
「しかたないな〜〜リツコ〜一人で行かないで〜
 って」
そう、偶然にもリツコ達が訊ねたのはラミアの家であった
そして鉢合わせするラミアとリリス…

「リリスちゃんがもう一人いる〜〜」
「…そうですか〜貴方が葉月さんの言ってたリリスさんですか〜」
「へ?葉月さん?」
「あれ?リリス遅かったじゃん」
「葉月…ドロシーまで」
「リツコさん〜〜びしょびしょじゃないですか〜〜
 今暖かいコーヒーお入れしますね〜」

と言う事で、4畳半に5人でちゃぶ台を囲むのだが
リリスはラミアから可愛い洋服を着せてもらい
双子気分満喫状態であった
「しかし、見れば見るほどそっくりだな〜
 …あっ並んで分かったけど、ラミアって瞳が赤いんだ
 (そうか…初美と双子なんだもんな)」
葉月はそんなラミアの赤い瞳に見惚れていた
「って葉月〜〜さっきからラミアばっかり見つめて無いで〜
 リリスちゃんも見つめてよ〜〜」
「いやだね」
「あ〜〜葉月〜〜〜」
「二人は仲がよろしいんですね〜羨ましいです」

「そうだ、ラミア…ボクと一緒にイヴを探さないか?」
葉月は、ラミアにイヴ探しを一緒にしないかと持ち出す
「そうですね…はい、葉月さんのお役に立てるなら喜んで」
「ありがとう、ラミア」
葉月はそう言うと、ラミアの手をとっていい雰囲気に
後ろでは、リツコとドロシーがいやらしい感じになり
「って、リリスちゃん一人にしないで〜〜〜」

そんなこんなで外の雨は次第に激しさを増していくのだが…
その時だった突風と共に、3人の男達がラミアの家を奇襲する
「お前がラミアだなーー不老長寿のクスリを出せ!」
「しかし狭い部屋に住んでるな〜貧乏なのか?」
「あんがーーー」
と、その瞬間葉月の刀が、ドロシーの魔術が、
そしてリツコの錬金術が3人の男達を襲う
「おぼえてろ〜〜必ず奪ってやる〜〜」
「ひぃ〜〜〜〜」
「まっでーーー」
3人の男達は去っていき
壊された窓をリツコが錬金術で直す


「は〜まったくなんだったんだか〜
 ねぇ〜葉月〜リリスちゃん眠たくなってきちゃった〜〜」
リリスはまるで何事も無かったかのように葉月に甘え出すが…
「そう言えば〜お布団二組しかないんですよ〜〜」
ラミアがそう言うと
「うんじゃ、ボクがラミアと一緒で
 ドロシーとリツコさん
 これでいいだろ」
葉月が嬉しそうにそう言うと
「はい」
ラミアが慢心の笑顔で答える
「ちょっと〜〜リリスちゃんは〜〜〜」
リリスの叫び虚しく川の字に横になる4人…
「ぐすん…葉月ひどいの〜でも、そんな葉月が好き」
リリスは隅っこで体育座りをして
さっき即興でラミアが作った葉月人形を抱きしめ、いじけた…









「すみません、おやぶん
 あの魔術師、どーやら双子みたいで」
「その上、凄腕の用心棒を3人も雇ってるんですよ〜
 一人は変な服来た剣士で〜
 一人はショートカットの可愛い女の子の魔術師で〜
 一人は、めがねかけての錬金術を操る女でした〜」
「んがーーー」
ガルガンチュアの元に逃げ帰る3人の僕達
「全く役立たずな…まぁいい
 まだ方法はいくらでもある
 (錬金術師…まさか…な)」
ガルガンチュアがそう言うと、雨で増水した川を遡り
堤防を錬金術で破壊した
その瞬間破壊された堤防からは水が押し寄せ
町に被害が襲う…






「大変だ〜〜〜ダムの堤防が崩れた〜〜
 みんな逃げるんだ〜〜〜」
町はパニック状態に陥った

ダンダンダンダン
「魔術師の先生〜〜助けて下さい〜〜〜
 子供が子供が〜〜〜」

ラミアの家は町から離れた高地にあり
川の氾濫は免れていたのだが
「わかりました、私に出来る事があれば」
「こう言う状況をほっておけないしな」
「こう言う時の為に僕は魔術を学んでるんです」
「…えぇ力になりましょう」
葉月が、ドロシーが、リツコがラミアと共に立ち上がる
その時リリスは疑問を感じていた

「…おかしいわね
 たしかこの本…こんな事は起らない筈なのに…
 何かあるわね、裏が」











ガルガンチュアは溺れ死ぬ人間の魂を集めていた
「フフハハハハ
 もっとだ、もっと苦しめ愚かな人間達よ
 そして私を暗黒の神へ誘うのだ〜
 ハーハハハハハ」
崖の上から町を見下ろすガルガンチュア…
その伸びた影には、死神が住んでいた…








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By よっくん・K