Page.4『ジル〜向日葵の谷〜』
エピソード太陽の孤児院:リツコ
2004年9月06日更新


そこは辺り一面向日葵に囲まれていた
空気は美味しく、流れてくる川の水も透き通っていた
「美味しいね…ここの水」
都会で育った葉月は生まれ故郷である倉木の山を思い出していた
「葉月は都会育ちだったのかしら」
リツコは優しく葉月に語りかける
「うん…生まれた所は山に囲まれた自然がたくさんある所だったんだ
 そう、初美もあの山で見つけられたんだ…」

リツコは葉月の話を聞いてジルの事を思い出していた
リツコは服を脱ぎだし葉月の服も脱がし始める
「何するんだ」
葉月は拒むも
「川で水浴びしましょ
 昔ね、ジルとここでよく水浴びしたのよ」
リツコのその言葉を聞き、自ら服を脱ぎだす葉月
葉月とリツコは一糸纏わず川で戯れる
「葉月…綺麗な体してるわね」
リツコは葉月の体にいやらしく触り始める
「リツコさんだって…」
葉月はリツコが本当に60を越えた女性だとは信じられなかった
「あら、葉月男の経験あるのね」
いきなりリツコは葉月の女性器に指を奥まで入れた
「な…そんなのあるわけ」
葉月は恥ずかしながらも体は敏感に反応する
「フフフ、でも肉体関係はほとんど無いみたいね
 自分で開発しちゃったのかしら
 いけない子ね
 お姉さんが、もっとたくさん教えてあげるわ」
リツコはそう言うと葉月の体を弄び始める


「ドキドキドキ
 は…葉月ーーー」
草陰から見守るリリスとドロッセルハスト
「へぇ〜葉月ってまだ子供だと思ったケド
 結構いい女なんだぁ〜」
ドロシーは冷静にその状況を見守っていた
「ドキドキドキ
 あー葉月がリツコさんに〜〜あ〜〜ん
 リリスちゃんも混ぜて欲しいのに〜〜」
「だったら混ざればいいじゃん」
ドロシーは簡単に言う
「そんな事できたら苦労しないわよー」
「…僕は混ぜてもらおうかな〜」
その時だった

「お前達!そこで何してるんじゃ」
よぼよぼした老人がリリス達を叱る
「いや〜〜〜ん」
「ご…ごめんなさいっ」
「まったく最近の若いものと来た日にゃ…」
老人はその時川でHに勤しむ葉月達に視線が行った
「ジル…いや、リツコか」

「はっ殺気!」
葉月は裸のまま刀を構える…が
「お爺さん?」
葉月は老人の姿をみて刀を納める
と同じに全裸である恥ずかしさから服を取り、その場を逃げ出す

「リツコ…じゃな」
老人は全裸の女性、リツコを眺める
「あなた…レイバン?」
「おぉやはりリツコじゃったか
 会いたかったぞ〜」
レイバンと呼ばれる老人は川の中に入りリツコに抱きつく
「あの時と変わらない、何て美しさじゃ…」
「貴方はもう、よぼよぼのお爺さんね
 しかたが無いわね、もう60を越えているのですもの」
その時老人は我に帰り、リツコから離れる
「お前さんは、やはり魔女じゃったのか」
「…えぇ、ただしくは錬金術師だけどね」
「錬金…そう言えば、あのガルガンチュアも風の噂で
 錬金術師になり、世界を回ってると聞いた事が」
「なんですって、その話詳しく聞かせて!レイバン」
リツコは動揺を隠せない…

そして一行は既に廃墟と化した孤児院に向った

「リリス!今度覗いたりしたら承知しないよ」
葉月はさっきの一件を隠れて見てたリリスを責めた
「まーまーでも、葉月凄く綺麗だったよ」
ドロシーは笑顔で葉月に言った
「うぅ…見られた(赤面)」
葉月はその時、ドロシーのリツコとの行為を思い出し
再び恥ずかしさでいっぱいになった

向日葵の丘に立つ孤児院
今はもう使われては居ない
リツコとジルが育った場所
思い出の家…

「ねぇリツコ、ここがこの世界の初美…ジルが育った場所なんでしょ
 よかったら聞かせて欲しいな…ジルの話を」
葉月は無邪気にリツコにせがんだ
「ほれ、お前らさんがたもこれを飲みなされ」
老人は葉月達に紅茶を入れて持ってくる
「レイバン…ありがとう
 貴方がここを守って来たのね」
リツコは廃墟でありながら、綺麗に整頓されてる建物を見て
これはレイバンが守ってきたんだと思った
「わしには他にやれる事はなかったからな
 それに、あれ以来ジルの消息はつまめず終い」
リツコあの事件をレイバン達孤児院の人間には話していなかった
「…そうね、少し昔話をしようかしら
 そう、あれは今から60年前の話…」
リツコの話に耳を傾ける葉月達

「(…そう言う事か…)」
リリスは何かに気づいていたようだ…









太陽の孤児院
ここは戦争孤児達を育てる施設である
その建物の回りには、一面の向日葵が咲き乱れていた
ここは土地柄か、常に暖かく年中向日葵が咲いていた
それから人々は、ここを太陽の孤児院と呼ぶようになった

ここにはたくさんの子供達が暮らしていた
その中にあり、一際輝きを放つ少女が居た
その長い金髪の髪は人々に幸福をもたらし
その美しい瞳は、人々に愛をもたらし
そのふくよかな胸は人々に安らぎをあたえた
まるで女神が降臨したかのようなその美しい容姿から
人々は彼女を向日葵姫と呼び称えたと言う

「ねぇジル〜〜遊ぼう〜よ〜〜」
「ずるいよリツコ〜ボクがジルに遊んでもらうんだ〜」
その美しい少女の周りには、何時も子供達が集まっていた
ジルと呼ばれるその美しい少女は言葉を話す事が出来無い
でも、何故か子供達にはジルの言葉が分かった
ジルは喋る時、手で独自のジェスチャーをするのだが
この国にその様な文化はなかった
子供達は、何時もジルの優しさの中に居たのである
しかし、その中にあって
孤独な少年が居た
名はガルガンチュア
後にジル…いや、イヴを探し世界を駆け巡る者






大きな木の下でリツコは小鳥と戯れていた
「わ〜綺麗な声の小鳥さん〜
 小鳥さん、もっとリツコにお歌を聞かせて〜」
バン!
「小鳥さん
 またガルね、どうしてこんな酷い事を」
リツコはガルガンチュのゴム銃で撃たれた小鳥を手のひらに乗せ
ガルガンチュアを責め立てる
「弱いからいけないのさ」
ガルガンチュアはぼそぼそ喋る…
「あ…ジル
 小鳥さんが死んじゃったの〜」
その場に現れたジルにリツコは泣きついた
その時、ジルは小鳥に手を翳すと
小鳥の傷は瞬時に癒え、羽ばたいて行く

「魔法…」
ガルガンチュアはその場を逃げ出した
「あの女やっぱり魔女なんだ
 くそーー」







夜になり、ジルたちは食事を済ませていた
その時ガルの姿が無いのをジルは気づいていた



夜中の礼拝堂にガルガンチュアは忍び込んでいた
ガルガンチュは母を思い出し
マリア像の指にしゃぶりついていた
その時、人の気配を感じ逃げ出そうとするガル
しかし、床につまずき転んでしまう
そこに駆けつけたのはガルを心配して
探しに来たジルであった

ジルがガルの傷に手をかざし血を止める
そして自分のハンカチを巻きつける…
「なんでこんな事するんだよ
 僕はお前の事が…
 うぅ」
ガルはジルの元を逃げ出す…
ジルには母を失い傷ついたガルの気持ちが
痛いほど分かっていた




木漏れ日を背に大きな下でジルとリツコが今日もお勉強をしていた
「すごいジル〜〜」
ジルは魔法の本を開きリツコに魔法を教えていた
ジルはリツコの持つ微風の力を伸ばしてあげたいと考えていた



「やっぱり魔法なんだ」



ジルは自分のリボンの片方をリツコの髪に結んであげる
「ジル…リボンくれるの?」
「コクン」
「わ〜〜ありがとうジル〜一生の宝物にするね」



「なんで僕じゃないんだ…」

それを見ていたガルガンチュアの嫉妬の心は燃え上がる
だがそれは、ジルに自分だけを見てもらいたいと言う、
幼い恋心である事をその時はまだ気づいてはいなかった


見つめ合うガルガンチュアとジル…
「ジル必ず僕だけのモノにしてやる」




深夜にて
「ねぇガル〜ジルってお母さんの匂いするよね」
「あんなやつお母さんなんかじゃない」
「ガルはジルの事嫌いなの?」
「あんなやつ…」
ガルはリツコに背を向け、ジルのハンカチの匂いに浸っていた



ガルはその日、ジルの寝床を訪れた
「??」
ジルは忍び寄るガルに気づいた
「なんで…なんで僕だけのモノになってくれないんだ
 うぅうぅ〜〜〜
 僕だけを見つめて欲しいのに
 僕だけを愛して欲しいのに…」
ジルはガルを抱きしめ優しく包み込む
「ジル…僕…ジル…お母さん…」
ガルはジルの胸に抱かれ安らぎを感じる
「ジル…愛してる」
「コクン」
ジルはガルの唇にキスをする
「ん…!!う…」
初めてのキス
初めての感触
そして二人は…

その時だった
「ジル〜ガルガンチュアが居ないの…
 え?ガル?」
愛し合う二人の前に現れたのはリツコであった
「ガル…ジル…嘘…ウソ」
ふるふるするリツコにジルは腕を開き
飛び込んで来なさいと意思表示する
「ジルは渡さない!」
ガルガンチュアは手にしたナイフを構え、リツコに襲い掛かる
だがその時

グサ!!









ナイフから血が滴り落ちる
「ジ…ル…」
リツコを庇ったジルにナイフが突き刺さる
「ジル…いやーーーーーー」
気を失うリツコ…
「いやだ…いやだ
 ジル死んじゃ嫌だーーーーーー」
その時だった、ジルの体から眩い光が発せられる
その光と共にジルは砕け散る…

「ジルーーーーーーーー」




「なんでだよ…なんでなんだよ」
ガルガンチュアは手にしたナイフで自分の心臓を貫いた
「僕もジルの元へ行く行くんだ…」






ガルは目を覚ます
心臓にはナイフが刺さったまま
「なんで死なないんだよ」
ガルはナイフを抜き、何度も何度も自分を体にナイフを突き立てる
「どーして死ねないんだーーーーーーー」


「ククク死にたいのか?お前」
黒い布切れがガルガンチュに語りだす
「マテよ、俺はお前の仲間だ
 死ねないんだろ?だったら楽しい事しようぜ」
「誰がお前なんかの話を聞くか」
「ククク聞くさ、だってお前は
 もう人間じゃないんだからな」
「人間じゃない…人を捨てればジルを取り戻せるのか?」
「あぁイヴともう一度会いたければ俺と一つになれ
 なぜなら俺は、元々イヴの一部だったんだからな」
「あぁ分かったよ」
その瞬間、ガルはナイフを黒い布切れに投げつける
「ククク待ってたぜ、その時を」
布切れに刺さったナイフが姿を変え
大きな死に神の鎌となる
「それから、自由に動くには人間の体が必要なんだ
 もらうぜ、そのソーマを浴びた女の体をな!」
黒い布切れはリツコに襲い掛かる
「やめろーーーー」
その時だった、ガルの体は黒い布切れに支配される
いや、融合と言った方が正しいか

「ガル…わたしを助けてくれたの?」
ガルは手にした鎌をリツコの首に当てる
「お前を殺しても何の特にもならない
 そうだ…人間の血が…人間の血が…
 ハハハハハ!!」
ガルガンチュアは背中から黒い悪魔の羽を出現させ
夜の月明かりに消えてゆく…
「ガル…ガンチュア…」



それから10年の歳月が流れた
私は錬金術を本格的に憶える為、孤児院を去った
あの時私を助ける為に悪魔に取り込まれたガルを救い出すために…
ジル、貴方のリボンに誓うわ
必ずガルガンチュアを取り戻してみせる
その時私は既に気づいていた
自分の体が死を失った体になって居た事を…




「リツコや…またいくのか?」
「えぇ、まだガルガンチュアは見つからないから」
「また、寂しくなったらここに戻って来ておくれ
 ワシは…ワシはお前さんが…」
「いいえ、私は永遠を生きる女
 貴方との若かりし頃の思い出は忘れないわ
 貴方は、私の初めての男だったのですから…」
「リツコ…」

「おじいちゃ〜ん、またここにいたんだ〜
 おばあちゃんが早く帰ってこいだってさ」
「ケン坊…」

「お孫さん?」
「ああ…」
「そう」
「あの〜お姉さん誰?」
「ワシの…いや、錬金術師の先生じゃよ」
「凄い〜錬金術って、凄いんでしょ〜〜」






「ジル…か
 ジルは間違い無く初美だ
 でもこの世界にはもう居ない…」
葉月は刀を握り締めていた
「じゃ次の世界に行く?」
リリスは嬉しそうに言う
「あぁ…ここには、知りたくない思い出が多すぎるようだ」


「待って、西の国に強い秘術を持つ女魔術師が居ると聞くわ」
リツコは去ろうとする葉月達を止めた
「その人がイヴかどうか調べてからでも、遅くないと?」
リリスは笑顔でリツコに訊ねた
「えぇ」
「その人が初美かもしれない…
 行って見る価値はありそうだね」

「決まりですね」
ドロシーが3人に笑顔を見せた
「西の国は僕の出身国ですからね〜案内しますよ〜」
ニコニコするドロシー

そして一行は西の国に旅立つ







さよなら、ジル
また貴方を感じる事が出来たわ
そして、貴方の匂いのする葉月と巡り合せてくれた
いつか、必ずガルガンチュアを取り戻してみせるわ
それまで、私を導いてジル

リツコはジルの形見のリボンを握り締め誓うのであった






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