Page.2『静寂の出会い〜誘い人〜』
エピソード図書館世界:リリス
2004年8月26日更新

ボーンボーンボーン
ここは無限に広がる巨大図書館の世界
大理石の結晶が空に浮かび、その薄暗い光を放っている
静寂の世界に大きな時計の音が不気味になり響く
ここは出口の無い迷宮
恐らく常人ならば、1週間と持たずに精神が崩壊するであろう
無数に並べられるその本1冊1冊が1つの世界だと言う

時間を忘れた世界

時間から外れた世界

時間を司る世界

はたして、本当の姿はどれなのだろうか…

これだけの広い世界に住人はただ一人
そう、ヤミと呼ばれる存在のみが
この世で唯一この世界に住める者
例外はヤミ同様、世界から逸脱した存在のみ

この世界が一体何なのか
恐らく我々人間が知る事は永遠に叶わないだろう
アカシックレコードそのものであり
世界の終焉の世界であり
世界の始まりの世界である
或いは世界なぞ最初から存在すらしていないのかもしれない
此処は無限であり、静寂と記憶の世界…

朝も夜も来ない世界
そこに住む少女リリス
大きな禍々しい瞳を持つ巨大な帽子を被るその姿を
人々はヤミと呼び恐れ、崇め、崇拝した
世界の歴史すら、彼女ヤミの気持ち一つで変わるのだ
世界を支配する存在
世界を自由に変える事の出来る存在
世界を終わらせる事の出来る存在

今日もリリスは妹であるイヴの帰りを待ち
忙しく図書世界の管理に勤しむ…


パチンパチン!
花火のなる音がする
「こら〜〜コゲちびまたやったわねーー」
「きゅるるる〜〜〜」
静寂の世界で唯一にぎわう場所
それがコゲちびとリリスである
「まったくもーここは図書館なのよ〜
 火気厳禁なんだからー」
ヤミと呼ばれる少女リリスは最近コゲちびの悪戯に困らされていた
とは言え、退屈しのぎには丁度良いらしいが…

「あーあつまんないなぁ〜
 最近コゲちびの悪戯も飽きてきたし
 はぁ〜リリスちゃんも何処か遊びに行こうかな〜」
毎日毎日同じ事の繰り返し
いかに永遠の命を持つと言っても、この退屈ばかりはどうにもならない
「ふ〜?」
リリスはふと目にした本を手にとった
リリスは暇を持て余すため、たま〜に適当にとった本に読み耽る事がある
最近お気に入りの本があった
それが何時の時代なのか、どこの世界なのかは関係無い
セーラー服を着て、黒い長い髪をなびかせ
刀を携えるその少女は、リリスの乙女心を熱中させた
「はぁ〜カッコいいな〜こんなステキなお姉さまが
 リリスちゃん迎えに来てくれたらどんなにステキな事か〜」
リリスは本の中の主人公の少女に恋心を抱いていた
そして、リリスはその本にのめり込み読後感に浸っていた
「はぁ〜この本も最後は一人ぼっちになっちゃうんだよね〜
 もしも〜リリスちゃんがこの探してるお姉ちゃんだったら
 絶対主人公を捨てたりしないのに〜
 …あ、そうだ〜
 ニヤニヤ
 リリスちゃんが〜ハッピーエンドの物語を作ってあげればいいんだ〜」
リリスは事もあろうか、その本の最後を書き換え始めた
「これがこうなって〜
 こうなってーそうなってーー
 う〜んイイ感じになって来た〜〜
 やっぱり、リリスちゃんも出さないとダメめ!」
リリスが本の書き換えに夢中になってるその時だった
ピカ!!!

「なななな何ーーーリリスちゃん何もしてないよーー」
リリスが持っていた本が輝き出した
その時だった

眩い閃光の中
セーラー服と長く美しい黒髪をなびかせ
日本刀を携えた少女が本から出現したのだ

「憧れのお姉さま…」
リリスはまるで夢を見ているかの様だった
なぜなら、そこには憧れ恋焦がれた女性が立っているのだから

「ここは…何処だ?」
本から現れた少女は何が起こったのか分からない
「つきましたで〜此処が図書館世界
 リリス姐さんが待つ、イヴの嬢さんを探す起点と成る場所や」
少女の名は東葉月
16歳の誕生日に突如姿を消した最愛の姉、初美を探しに
この図書館世界にやって来た本の旅人…
そして、道案内役の太った鳥のケンちゃん
「太ったわ余計だわドアホー」
バコン
リリスはケンちゃんを弾き飛ばし葉月の元へ擦り寄った
「あ〜んリリスちゃんの憧れのお姉さま〜
 はじめまして〜リリスちゃんです〜
 ずっと貴方が迎えに来て下さるの待ってたんです〜
 さぁリリスちゃんを此処から連れ出して〜」
リリスはおもむろに葉月の手を引くと走り出す
「ちょっと待て、お前誰だよ
 それに此処は何処だ!
 初美は此処には居ないのか!?」
その時リリスの足が止まる
「…リリスちゃんじゃダメなの?
 リリスちゃんなら、貴方を捨てたりしない」
「何言ってるんだ
 ボクはただ、初美を探しに!
 …待てよ
 何故だ、何故かボクは此処が何処か知ってる
 そう、ここは図書館世界
 初美が生まれ育った…
 くっ頭が痛い
 あれ?ボクは今何を?」
葉月は自分の記憶が曖昧になっているのに違和感を覚えた
過去に何度も此処に来た事がある
だが、そんな事はある筈が無い
何故なら、初美はついさっきまで一緒にいたのだから

「(しまったーさっき変に書き換えたのが悪かったのかなー
  くそーこんな事になるんなら、リリスちゃんとラブラブに
  なるように〜)」
「おい、お前」
「はい」
リリスはブツブツ言っていた時に呼ばれたので驚いて返事をした
「初美が何処に居るか知らないか?
 そうだ、この人がボクの探してる人なんだ」
葉月は携帯電話の待ち受け画面の初美をリリスに見せた
「…おでこちゃん
 …どこをどーみても、おでこちゃん」
リリスは葉月と顔を合わせると問い詰められた
「知ってるのか!初美を初美は今何処に居るんだ
 知ってるなら答えてくれ!」
葉月は半べそをかきながらリリスに迫った
「えーと…
 …あのーひょっとして〜探してるお姉さんって
 あのおでこちゃんの事なの」
リリスは確信に迫った
それもその筈だ、憧れ続けた女性が事もあろうか
一番許せない女を愛していたのだから
「ちょっと待て…
 お前何なんだ
 さっきから、初美はボクのお姉ちゃんだけど
 ボクは一度もそんな事言ってない
 それに捨てられるって何だよ
 お前…お前何なんだよ」
葉月の既にパニック状態だった
恐らく目の前に居る女が全てを知っている事を何故か知っているからだ

「ごめんなさいっ
 でも、リリスちゃんなら貴方のお役に立てます
 信じて下さい」
リリスは葉月に媚びへつらった
「信じろって…何を信じろって言うんだ
 それに、初美を知ってるなら今何処に居るんだ
 答えろ!」

「それは分からない…
 リリスちゃんも探してるの
 貴方の探してるお姉さんはイヴ
 リリスちゃんと同じこの世界の住人
 そして、突然リリスちゃんに全てを押し付けて居なくなった」
「…イヴ?
 あの鳥が言っていたイヴの事なのか
 イヴって何なんだよ
 初美は初美じゃないのか!?」
「それは、恐らく初美って人はイヴの借りの姿」
「仮の姿…ならイヴでもいい
 何処に居るんだ」
「分からない…リリスちゃんも探してるけど見つからないの」
「…分かった
 ボクは初美を探し出す
 そして必ず連れ帰る」
葉月はリリスを背にして去ろうとした

「待って
 リリスちゃんも連れて行って
 貴方の力になりたいの」
「何故?」
「…貴方を愛してしまったから」
「…冗談は嫌いだ」
「待ってよ〜〜本気なの
 もうリリスちゃんには貴方しか居ないの
 だって、リリスちゃんも貴方と同じで
 イヴに捨てられたから…」
「…お前も…だと」
葉月は泣きじゃくるリリスを見て
自分と重ね合わせていた
何時も初美は自分が泣いていると手を差し伸べてくれた
何故か葉月はその時リリスに手を差し伸べた
それは初美への憧れからだったのかもしれない
「連れて行ってくれるの?」
「…ボクはただ初美を探したいだけだ
 でも、あんたは…」
その時リリスは葉月の胸に抱きつく
「暖かい…それに優しい匂いがする
 ヤミ・ヤーマ…パパと同じ匂いだ」
その時葉月は思わずリリス頬を優しく撫でていた
「初美…」
葉月はおもむろにリリスの唇に迫った…
「お姉さま〜むちゅ〜〜〜」
リリスが唇をむちゅ〜した時だった
パンパン
「痛いって言うか熱いーーー」
リリスの衣装に花火から移った火がついていた
ぎゃーーーとわめきながら水のある事に走り去った

「…ボクは何をしようとしてたんだ???」
葉月はあんな女と一瞬でも初美を重ねた事に自己嫌悪していた
「姉さん姉さん、あん人がこの図書世界の管理人の
 リリス姐さんや」
ケンちゃんは、葉月の頭に乗っかり言った
「リリス…」

「はーまったく後少しでキス出来たのにーー
 このバカのせいでーー」
リリスはコゲちびを摘み上げると指で虐めていた

「さて、改めて自己紹介しまーす
 ヤミことリリスちゃんでーす
 ちなみに3代目よ」
リリスは明るく右手を上げながら葉月に自己紹介をした
「ボクは東葉月、中学3年生」
「あーん葉月〜〜愛してる〜〜」
行き成りリリスが抱きつく
「うっとうしいな!離れろ、気色悪い」
「あーんさっきまでの情熱は何処にいったの〜〜
 ねぇ〜〜キスしてぇ〜〜」
「五月蝿い黙れ」
抱きつきリリスを腕を伸ばし引き離す葉月

「まーとりあえず、イヴ探し行きましょうか〜
 ケンちゃん、とりあえず〜めぼしい本探してー」
「あいあいさー」
ケンちゃんは早速探しに走った

「ところでリリス
 前にどこかであってるよな…
 キミにも、この子にも」
コゲちびは葉月の肩に乗り、既に懐いていた
葉月は子供の頃よくみた暗闇の妖精を思い出していた
ひょっとしたら、自分はあの時行けなかった
扉の向こう側に来たのでは?と思っていた…
子供が踏み込む事の出来無い、大人への扉の向こうへ…


「とりあえず〜ここら辺でどーでっかー」
ケンちゃんが重たい本をくわえ飛んできた
「いいわねぇ〜じゃ早速」
「ん?」
葉月はある本が目に入った
「この本は?」
「あぁそれね、確か魔術師の国の本だったわね〜
 まー何と言うか、案外葉月の感が当るかもね〜
 じゃこの本にしましょ」
リリスはお気楽に言う
「ちょい待ちーその本からは何も〜」
「と言う訳でレッツゴー」
「ちょっと、リリス何を?」
リリスは葉月の手を取り本に重ね合わせると、本が輝き出した
「うわーーーー」




「あーあ…行ってもーた
 その本は前にワテが探しに行った本やさかい
 行ってももうムダ〜やっちゅーに」
ケンちゃんのため息が図書館世界にこだました…








此処は…狭間の世界?
いや違う、あの時とは違う
そうか、ここがケンちゃんの言ってた別の世界…
此処から始まるんだ、ボクの初美を探す旅が








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