Page.14『少女と朝日と迷子の子猫〜歴史の肖像』 エピソード原始時代:クィル 2006年4月6日更新 |
「なんなんだこいつらは!!」 突如として葉月達を襲ってきたのは、巨大な恐竜であった。 「あたしに聞かれても知らないわよぉ〜」 リリスは葉月の後ろに脅えながら隠れて嘆いている。 「て言うか、こんな時代に初美がいるワケないだろ!」 葉月は次々に襲い掛かる恐竜の群れを、 切っては捨て切っては捨てを繰り返していた。 「はぁはぁ…流石にもう襲ってこないだろ…」 息を切らしながらも無傷の葉月。 周りには20体以上の恐竜の死骸が転がっていた。 「いや〜流石姉さんっワイが見込んだだけの事はあるぅ」 一件落着したと見て葉月の頭部に陣を構えるケンちゃんだったが 次の瞬間リリスに鷲掴みにされ責任を押し付けられるのだった。 「あのねぇあたし達はイブを探してるのよ、イブを! それをこんな恐竜の時代の本選んでどーすんのよ! 役立たずのお馬鹿インコが!! こうしてやる!こうしてやる!!」 リリスにより、まるでボロ雑巾の様に絞られるケンちゃん… 「姐さん・・・まぢ、死んでしまうぅ」 「はぁ…それにしても、なんなんだこの世界は… 恐竜の居た時代にしては、植物の生態系が現代に近い感じだし… ん?まさか、ジュラシックパークとかってオチじゃないよな?」 葉月は回りの状況から、ここは科学技術により生み出された恐竜の島か 何かと思ったのだが… 「う〜ん、残念 ここはねぇ〜葉月の時代からぁ〜遡る事20万年前ってとこかしら」 リリスが眼鏡をかけ、突然出した巨大な辞典を読みながら説明する。 どーやら、図書館世界の大雑把な情報が記された辞典らしいが。 「・・・・・・ ・・・・・・・・・・」 葉月は少し考えた… 「ちょいまて、20万年前に恐竜なんているワケないだろ!」 「え?あぁそうか、葉月の時代だと、そう言う事になってるんだ。 残念っ 実は、恐竜は絶滅なんかしてないんでーーす」 リリスが少し自慢気に語るも 「・・・・頭痛くなってきた… とりあえず、ここには初美がいないなら、次だ次 まったく、この世界に来てからボクの学んできた現実がどんどん 崩れて行くじゃないか・・・・ぶつぶつ」 葉月は頭を抱えながら、フラフラと歩き出したのだが… ドスンドスン 遠くから地鳴りの様な音が近づいてくる… 「なんだよ、あれ・汗」 葉月が見たのは、遠くからでも分かる巨大な恐竜だった。 「あれって…ティラノザウルスじゃん」 葉月は口をあんぐりさせて硬直した。 「なんでティラノザウルスが20万年前に生存してんだよ!!」 葉月は両手で頭を掻き毟り、この非常識な世界を呪った。 「葉月ぃ〜違うわよん あれは、ヴァルドルゼアサウルス 歴史上、究極の肉食動物と呼ばれた動物なのよぉ〜 ティラノザウルスなんて、あいつにかかれば赤子同然。 ガンダムだって勝てるかどーか(笑) ちなみに、あれが大きくなるとゴルドラストラセイスモになってぇ その大きさは、なんと300メートルを越えてしまうの! そう、かの映画ゴジラのモデルとなった恐竜なのよんっ 恐ろしいでしょう〜」 「リリスもう、いい 帰る」 葉月はリリスの説明を強引に止め、帰るぞと睨みつける。 「はははは・・はい・汗」 リリスがこの世界から帰還するモーションに入った瞬間 ケンちゃんが叫ぶ。 「大変でっせ〜〜あのでっかいヤツ、女の子を追っかけてまんがな!」 「女の子? って、まて人間が居るのか!? まさか、初美じゃ!!」 葉月はそう言い出すと、恐竜に追いかけられている人間の元へと 走っていってしまった・・・ 「・・・姐さん、どないしますか・汗」 「・・・いんじゃない、ほっとけば 葉月なら、ガンダムどころかエヴァンゲリオンにだって勝てるでしょ」 葉月の初美の執念を半ば呆れるリリスとケンちゃんであった。 グギャーーーー!!!! 巨大な恐竜の叫びが辺りにこだまする。 「初美を返せ!!!!」 葉月の刀が最強の恐竜に向け放たれる。 ドスン さしものティラノザウルスもどきも、葉月の敵ではなかった。 「そうだ、はつ・・・・・・・み?」 襲われていた人間の方を向く葉月だったが、 そこに脅えながらうずくまっていたのは、尻尾が生えた猿人であった。 「・・・・(人間じゃないじゃないのか)」 葉月は頭をかきながら、その猿人に手を差し伸べる。 「もう大丈夫だよ」 猿人は葉月の方を見ると、笑顔を向け葉月に抱きつく。 「あ、ちょっまっ・・・・・ キミ・・・女の子なのか?」 猿人はよくみると、肉体の2割にしか毛はなく、 立ち方などを見ると、現代人に近い感覚すら覚えた。 20万年前と言えばネアンデルタール人が生息していた時代。 しかしながら、この猿人はより現代人に近いクロマニョン人に酷似していた。 当然葉月の知っている世界の歴史のどの本にも記載されていない、 見たことの無い猿人種である事は間違いないようだ。 その猿人は可愛い顔立ちの少女で、歳は7歳〜10歳くらいに思えた。 言葉を話す事は出来ない様だが、葉月の言っていることは理解している様に感じた。 葉月はもしやと思い、ケータイの待ち受け画面の初美を猿人の少女に見せた。 「この人を知らないか?」 葉月はジェスチャーで初美を知らないか?と尋ねる。 猿人の少女は首をかしげ、やはり知らないようだ。 「そうか・・・そりゃそーだよな 20万年前だもんな…クロマニョン人すら誕生してないんだし いるワケないか…」 しょげる葉月の下に、リリス達が来た。 「はづき〜帰ろうよ〜やっぱり、此処にはおでこちゃん居ないと思うよぉ」 リリスのあまったるい誘いをウザく思いながらも 葉月は少し疑問を思っていた。 「まてよ・・・確か本で読んだことがある。 人類の祖はアフリカに生息した一人の猿人の女性がその祖だと… そう、ミトコンドリア・イブ… ひょっとして、この子がそのミトコンドリア・イブなんじゃ…」 と思いつつも、考えすぎか〜と言う感じで、リリスの肩を叩き 帰ろうと言う目を向ける。 その時、猿人の少女が、葉月の腕を取り何処かに連れて行こうとする。 「なんだよ・・・え?お礼がしたいって?」 葉月は猿人の少女の言葉が分かったのか、 それは恐らく、言葉を話さない初美との意思の疎通で培われた 読唇術の一種なのかもしれない。 葉月達一行は、猿人の少女に連れられ、洞窟へと付いた。 「え?これを食べろって? くんくん なんか、美味しそうな匂い はむ」 葉月は猿人の少女が持ってきた果実をひと噛みすると、歓喜の声をあげる。 「凄く美味しい! パクパク もぐもぐ 桃でもないし、メロンでもない…なのに、凄く甘くてそして・・・懐かしい味 あれ・・・・ボク、この味どこかで・・・・」 葉月は目から涙が零れ落ちていた。 そうそれは、子供の頃泣き止まない葉月の為に、初美が持ってきてくれた果物の味だった。 葉月はその美味しい果物を何処を探しても見つからなかった事を覚えていた。 「そうか・・・そうだったのか」 葉月は、その時の果物がこの時代で採れたモノだと気付いた。 その瞬間、やはり此処に初美がいたのでは??と核心に迫った。 だが、その時だった 葉月達の頭上が暗闇に覆われる。 「なんだ?いきなり夜に・・・」 葉月はそう言うとリリスが葉月の肩を叩き、あっちあっちと指を指す。 葉月はリリスの指した先を見ると・・・なんと、山程の大きさの恐竜が 葉月達の頭上へと忍び寄っていた。 そう、先ほどリリスの説明していた超巨大恐竜である。 恐らくは、葉月が倒した恐竜の親ではないかと思われる。 「うな〜〜〜〜〜でか過ぎっ!!」 葉月の大声で、巨大な恐竜のアギトが葉月達を襲う。 「えぇぃ 強制退室ぅ〜〜〜」 リリスがそう言う刹那、恐竜から火炎放射が起こった! ぶしゅ〜〜〜〜〜〜〜 間一髪、本から飛び出した葉月一行だったが、 お約束の如くケンちゃんの尻尾に火が残っていた… 「あちちちちちち〜〜〜〜〜〜」 火を消そうと走り回るケンちゃんだが、思わずつまづいてしまい 今まで入っていた本をあろう事か、焦がしてしまったのである。 「なんて事するのよぉ〜〜〜修理するの大変なんだからねぇーー」 リリスが泣きながら本に移った火を消した。 「ちょっちまて、まさかとは思うけど… ボク達の居たページにもう、入れないとか言い出さないよな!」 葉月の予想は当っていた。 「あちゃ〜〜〜見事にコゲちゃってるわね・・・・」 「リリス!なんとかしろ!初美が居るかも知れないんだぞ!!」 葉月はリリスの両肩を掴み、ぶんぶんと前後に揺さぶった。 「えーとねぇ この本からはおでこのソーマは消えてるわん もう一回行った所で、どーせいないわよん」 やる気の無い声でリリスが言う。 「そんな・・・せっかく見つけたと思ったの・・・・・・・ あ!!あの子、あの子どーなったんだ!!」 葉月は猿人の少女を心配した。 「喰われたんじゃない しかたないわよぉあの子は、きっとそーなる運命だったのよ どの道、葉月が助けなきゃ食べられてたんだし」 葉月はリリスの言葉を薄情と思ったが、それが的を射ているゆえ 何も言い返せなかった。 肩を落とし、脱力感に襲われる葉月をリリスは励ました。 「ねぇ葉月ぃ さっきの時代にはいけなくても、 その後の時代には行けるわよ。そしたらさぁ ひょっとしたら、今度こそおでこちゃんに会えるかもしんないし」 リリスは半分適当に言いつつも、葉月がそうだよね!と やる気が戻ったのがなんだか少し嬉しくもあった。 「よし、じゃこの本にしよう!」 いきなり葉月はそこら辺にあった本を手に取り この本に行こうとリリスに笑顔を浮かべた。 半ば呆れながら、そんな適当にとった本におでこが居たら 世話無いわよと思いつつも、しょんげりした葉月を元気つける為にも その本の中に葉月を誘うのであった。 一方その頃、猿人の少女はリリスの強制退室に巻き込まれ 図書館世界へと来ていた。 猿人の少女は動物的感で葉月の匂いを探し出したが 時遅く、すでに葉月の姿はそこには無かった。 しょんぼりする少女にコゲちびが近づく。 二人は意気投合し、コゲちびの力で葉月達の入った本の世界へと 追いかけていったのだった・・・ ----------------------------原始時代の世界 葉月達が訪れたのは原始時代の世界。 巨大な朝日が昇りだすのを葉月達は、綺麗だなぁと思い見つめていた。 そんなおり、葉月達を突如原始人達が襲いかかってくる。 葉月は刀を抜き、原始人達に切りかかったが それをリリスが静止した。 「ダメよん葉月ぃ〜暴力だけじゃ、心は伝わらないのよん」 リリスはそう言い、原始人達へと魅惑のポーズを披露するのだが… 「あほらし」 呆れる葉月だったが… 突如原始人達のリリスを見る目が変わりだす… と、同時に皆がリリスに平伏す。 原始人の達の中央から一人の美しい少女が姿を現す。 その姿は褐色の肌をしており、現代人を思わせる見事なプロポーションで 胸ははちきれんばかりの豊満に満ちていた。 見た目は17.8歳に見えるそれはそれは美しい女性であった。 髪は黒のウエーブロングで、ワンポイントの華の飾りが良く似合っていた。 葉月はその美しさに、少し見とれてすらいた。 「始めまして、神様のお使いとそれを守護する戦士様 私の名はクィルと申します」 クィルと名乗った少女は、二人に深々と頭を下げる。 葉月達はクィルに連れられ、原始人達の集落へと誘われた。 原始人達はリリスを神の様に祀り上げるが、リリスはその気になっていた。 葉月は集落へと向かう一行から少し離れ付いていくのだが 何故か、クィルと名乗る少女は葉月から離れようとしなかった。 なお、ケンちゃんは神へのイケニエにされるべく、 逆さ釣りにされて捕獲されていたのだが… 葉月達にはすっかり忘れ去られていた。 クィルと名乗る少女は、葉月への愛の熱きまなざしを送っていたが 葉月もまんざら嫌そうではなかった・・・ 葉月達から離れ、コゲちびと猿人の少女は葉月を探すべく 行動を起しているのだが・・・はてさて、出会う事はできるのだろうか? NEXTpage⇒原始時代・中編 |