Page.1『始まり〜永遠の旅人〜』
エピソード現代世界:葉月
2004年8月20日更新




雨が降る続く…
予報では5日続いた雨は今日には止むそうだ
ボクは雨は嫌いじゃない
部屋の中、降りしきる雨を窓から眺めるのが好きなんだ
ただ何もせず、ただ何も考えず
雨がボクの心の汚れを落としてくれるのを
願っていたのかもしれない…

初美は子供の頃から赤い傘を差し
雨の中、かっぱを着て長靴を履き遊ぶのが好きだった
それをボクは部屋の窓から見ている
ただそんな時間が好きだった

子供の頃ボクは病弱だった事もあり、あまり外では遊ばなかった
逆に初美は何時も元気いっぱい走り回ってたっけ

そんな懐かしい思い出をただ繰り返す…
明日、初美は16歳の誕生日を迎える
それが何を意味するのか、その時のボクには知る由もなかった


子供の頃、将来を語り合った事が一度だけあった
初美は何故か将来を語ったりしない
でも一度だけ…
もしも16歳になったら私をお嫁さんにしてくれる?
そう冗談で言われた事があった
ボクはそれを今でも本気にしてる
ボクは初美をお嫁さんにしたい…
いや、離したくないんだ
ずっと、ずっとボクだけの初美で居て欲しいんだ


後少しで初美の誕生日になる…
ボクの中の胸騒ぎはどんどん大きくなる

衣緒の部屋でボクは初美のビデオを流していた
初美の高校祝いのビデオだ
春に撮った、そう高校の制服を買ったその日に撮影したビデオだ
「初美もっとセクシーなポーズとってよ〜」
ビデオの中の初美は凄く可愛く、何度も何度も見返した
初美は何処にも行くはずがない…ずっとボクの側に居てくれる
結婚なんてさせない!
例え…例えそれが許されない愛だとしても

あれは、今から1週間前の出来事だった



----------1週間前
ボクはお風呂に入ろうと服を脱いでいた
その時初美が先に入ってる事に気づかず…

お風呂のノブを開けるとそこには全裸の初美が居た
何時もボクが妄想する初美の本当の裸がそこにある
ボクは見惚れた…なんて綺麗なんだって
次の瞬間、初美は笑顔でボクにおいでと合図する…
ボクは、はっとなり部屋に逃げ帰る

初美の裸が頭から離れない
あのまま一緒に居たらきっとボクは初美を…
そんな事を思いならがも、ボクの右手は股間に伸びていた
何度押さえてもボクの欲望は止まらない
あの日から、何度初美を思い
一人寂しい夜を過ごしただろうか…
好きだ、抱きしめたい…抱きしめたいんだ…
その日3度の絶頂を向え、ボクは眠りについた



あれから1週間、初美の顔をまともに見る事が出来無い
そんな中、初美は男と会いキスをしていた
ボクは雨の中、ただそれを見つめるしかなかった…
初美から貰った、赤い傘は地面に落ち濡れていた…
きっとこれは罰だ
何も出来無い、何も変える事の出来無いボクへの報いなんだって
そう言い聞かせる事で、ボクはボクの中の
どす黒い感情を押さえるしかなかった…


----------最後の晩餐
まさかそれが初美と過ごす最後の夕食になるなんて思いもしなかった…
初美は何時もの様にボクの作った夕食を食べる
ボクは間が持たず、会話を切り出す
「初美、明日は誕生日だね」
初美は手話で16歳と示す
「うん、16歳だね
 明日はパーティーしないと
 早く帰って来てね」
ボクがそう言うと、初美は席を立ち
手話で「さようなら」…と

「さよならって…
 おやすみなさいの間違いだろ」

あの言葉の意味をボクが知るのは…



-------そして1時間前
あと1時間で12時を迎える
そんな時、初美は今日貰った手紙を読もうとしていた…
「こんなにボクが思ってるのになんで初美は!」
ボクは必死で初美を止めた
ボクだけを見つめて欲しい
男からの手紙なんて何で読むんだよって
その時、ボクは勢いで初美が持っていたペーパーナイフで
初美の手首を傷つけてしまう
「ごめん初美、今包帯取って来る」
もう自己嫌悪でいっぱいだった
ただ、初美を誰にも取られたくない
ボクだけのもので居て欲しいだけなのに…





初美のビデオが止まった…
何度目かはもう忘れた
ただ、初美を目に焼き付けておきたかった
ボクは謝りたくて…一言言いたくて
初美の部屋へ向う階段の一段一段が重たく感じていた

雨が既に止んでいた事すら、ボクは気づいていなかった…


この扉を開けると大変な事が起こる、
どう言う訳か、ボクはその事を知っていた…

初美の部屋
初美の匂いが染みこんだ部屋
何度も初美の目を盗んでは、初美の匂いを感じた部屋
ボクが家の中で一番好きな部屋

ベットに初美は横たわる
手首には包帯を巻き
胸元が大きく開いたネグリジェを着て…

その時のボクには何時ものドキドキはなかった
もしも初美が誰かの物になるのなら
その時はボクの手で…そんな事すら思っていた

ボクは初美の横に座り
髪の毛を触り
キスをしようとした

そう…初美の16歳の誕生日の最初のプレゼントが
ボクの…

その時だった
時計が12時を指したその時
「葉月ちゃん」
初美の唇が動いた

「初美喋れるのか!!!!」
ボクの驚きが先か、その瞬間
初美の体は光り輝き出す

初美の体が宙に浮いたと思うと
その輝きは更に強くなる
ボクはそれをただ呆然と見つめるだけ
「初美!!」
声にならない声で叫ぶ

目の前が光で視界が奪われる
まるで太陽を見てるかのように…
次の瞬間
ボクは一瞬気を失ったのか
床に倒れこんでいた

薄れ行く意識の中
初美が消えるのを確かに見た
そして…砕け散るのを

ボクは家中を探した
「初美!初美!初美!!」
だが何処にも居ない…
初美は何処にも居ない
ボクは知っていたんだ
こうなる事を…
初美が居なくなってしまう事を…
なのにどうして…どうして

初美!!!!!



ボクは初美の部屋に戻って来た
さっきあの瞬間まで、此処に初美は寝ていたのに…くっ
初美のペーパーナイフを手に取る
「お姉ちゃん」
堪えていた涙が出てきた

だがその時だった




ふわふわふわ〜
「はー間に合わんかったー
 またリリス姐さんにどやされる〜
 もう12時過ぎてしまっとるやないけー
 は〜あかん
 イヴの嬢さん16になってもうたいんかいっ」
それは黄色い太った鳥だった
いや鳥なのか疑問に思うほど、ふっくらしていた
ボクが瞬間的にそれが何かを察した
「初美を何処へやった!!答えろ!」
ボクはそれを握り締め、手にした初美のペーパーナイフで脅していた
「まちーな、暴力反対〜」
そのふとった鳥の話によると、初美は別の世界に行った…と
今度は違う世界で初美を探すんだと
ボクは自分も連れて行くように脅した
そいつの話によると、ボクはイヴのソーマを浴びたから
移動が出来る…と
イヴのソーマ、初美が発していたあの光の事だとボクは感じた
同時に、何故かボクは過去に同じ体験をしたデジャブを感じていた
そう、初美を追い何度も何度も同じ事を繰り返した
そんな事を思っていた

その時だった、初美のペーパーナイフが輝き出したのは
「どーやら、そのペーパーナイフにも
 ぎょうさんソーマが吸い込まれてまっせ」
その時、それがどう言う意味なのか…ボクには分からなかった…

「ほな、行きまひょか〜」
ふとった鳥はボクの頭の上に乗るとボクを案内した

「ちょっと待って」
ボクはそこに残された初美の包帯を手に取った
何故か血は消えていた
ボクはそれを自分の左足に巻きつけると
意を決した
それは子供の頃からの初美のおまじないだった
左足に初美が包帯を巻いてくれると元気になれた
何故だか分からないけど、凄い力が湧いて来た
だからボクはここに誓う
必ず初美を探し出す
必ず、ボクが初美を見つけ出すんだ
そして言うんだ…
今度こそ、言えなかったあの言葉を…

「ねーさん…ははーん
 な〜る程、イヴの血液を含んだ物は…ククク」
ふとった鳥は薄ら笑いを浮かべていた




----------地下鉄
「こっちでっせ〜」
鳥の名前はケンちゃんと言うらしい
他にも色々言っていたが、ボクには興味が無かった
「本当にこの先に初美が居るんだな」
「まー居るちゅーか、探さんといかんのですが
 とりあえずは、ワテらは狭間の世界を通り
 リリス姐さんの待つ図書世界へ一端」
「御託はいい、この先に初美へ続く道があるなら
 進むだけだ…そう、先へ進むだけなんだ」
「でわま〜ここでっせ〜」
ケンちゃんが示した空間は虹色の輝きを放っていた
ここから始まるんだ
ボクの長い初美を探す旅が
今度こそ、今度こそ初美を…

















-----------狭間の世界
「なんだ此処は、何も無いじゃないか」
ボク達は何も無い暗黒宇宙に迷い込んでいた
「だーかーらー
 ワテらはヤミやあらしまへんから〜
 この空間を抜け無いと〜移動はできへんさかい」
その時だった、恐ろしい殺気を感じたのは
「何か居る!?」
「へ?…ゲ!
 あれはーバグじゃあらしまへんかー
 なんちゅーこっちゃー
 そうか、姉さんが浴びたイヴのソーマ目当てに
 エライこっちゃー」
その存在は、青いヘビの姿をした怪物だった
「クワーーー」
それはボクら目掛けて襲ってくる
「あきません、逃げなあかん〜って
 ここから反れたら何処の世界に落ちるかわからんー
 なんとしても此処は〜ってどーやってー」
その時だった、初美のペーパーナイフが輝き出す
「そやっ、イヴ嬢さんのアイテム目当てなら
 イヴ嬢さんのアイテムで追い返せばえぇんや〜」
ボクは念じた、力が欲しい初美を見つけ出す
誰にも負けない力が!
それを受け初美のナイフが変化する
「へ?姉さん今何を??」
ケンちゃんの驚きを尻目にナイフは刀へと姿を変える
次の瞬間だった、ボクはそれを抜刀し
怪物を一刀両断

「おっどいた〜凄いやんかー姉さん
 見直したで〜こりゃ、イヴの嬢さん
 思ったより早く見つかるかもしれへんな〜
 ほな、気を取り直していきましょか〜」
お気楽なケンちゃんは再びボクの頭に陣取った…

ボクは初美の形見のこの刀に誓う
必ず探し出すと


そしてボクの本当の旅が始まった

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