作者:銃太郎(SIG550)さん
おでこちゃん伝説 1 |
昔々ある所に一人の少女が住んでいました。その少女は、特長のあるその広いおでこから “おでこちゃん”のあだ名で呼ばれていました。 おでこちゃんには両親がいません、というより生まれてすぐに捨てられていたのをある夫婦に拾われて、 我が子のように育てられたのでした。 もう一つ、おでこちゃんは言葉が喋れませんでした。 声が出ないというより、むしろ喋らないようにしているようでした。 おでこちゃんはすくすくと育ち、人懐っこい笑顔と大きなおっぱいが魅力の美少女になりました。 14歳になる頃、おでこちゃんは頻繁に家を空けるようになりました。 彼女は、ひそかに自分のファンクラブ“おでこちゃん同盟”を結成して自ら会長に納まっていたのです。 おでこちゃんは、自分がモデルになって“おでこちゃん官能写真集”を出版しました。 それはたちまち大ベストセラーになり、おでこちゃんは莫大なお金を手に入れました。 その資金で中古のビルを買い取って、そこをおでこちゃん同盟本部にし、 地下の秘密工場で会員第1号山口君のクローンを大量に作り始めました。 実はファンクラブとは仮の姿、実体は世界制服を企む秘密結社で、 クローン山口はその戦闘員だったのです。 クローン山口は着々と増え続け、最終的には500体を数えるようになりました。 おでこちゃんはクローン山口を使って写真集や、自分が主人公のHな同人誌を あちこちの巨乳美少女好きが集まるイベントで売りさばき、 集めた資金でクローン山口を侍らせたハーレムのような暮らしをしていました。 おでこちゃんは税金対策の為に同盟を有限会社にしていたのですが、 その派手な暮らし振りから所得をごまかしているのではないかという噂が流れ、 その噂を聞き付けた国税庁が内偵に乗り出しました。 そしておでこちゃんが、地下の秘密工場でクローン山口を作っているという情報を得た国税庁は、 ついに強制捜査を行うことになりました。 いよいよ決行の日、捜査官が踏み込もうとしたその時、 おでこちゃん同盟本部のビルが突然大音響とともに爆発し、粉々に崩壊してしまいました。 そしてその瓦礫の中から、おでこちゃんがまばゆい光を発しながら中空に浮かび上がり、 呆然とする人々の目の前で何処かへ消えてしまったのでした。 その日はちょうどおでこちゃんの16歳の誕生日でした。 こうして秘密結社おでこちゃん同盟が何をしようとしていたのかは永遠に謎となり、 クローン山口も全員死んだと思われていました。 しかし、クローン山口は何処かで生きているという噂が人々の間で囁かれ始め、 巨乳美少女おでこちゃんの伝説とともに今も言い伝えられているのです。 〜ある世界に伝わる伝説より 「本当にこの世界に初美がいるんだな?」 「間違いおまへん、この世界にある“おでこちゃん同盟”の会長が イブの嬢ちゃんやっちゅうわいの見込みに狂いはあれへん。」 「まあ、その名前からしてイブに間違いはなさそうね〜」 とある本の世界の大都会に現れた、変態・小悪魔・エロオヤジのズッコケ三人組…バキュン(銃声) もとい、葉月・リリス・ケンちゃんの三人、この町にあるという“おでこちゃん同盟本部”を探して 雑踏のなかを歩いていた。 「それにしても賑やかなとこね〜。いい男がいっぱい。 いや〜ん!このお店かわいい小物がいっぱい〜、ねぇ葉月ぃ、ちょっと覗いて行こ?」 「だめだよリリス、ボク達は遊びに来たんじゃないんだからね。」 「ちょっとくらいいいじゃな〜い。葉月は真面目さんなんだからぁ。 たまにはショッピングで気晴らししなきゃ。 葉月も女の子なんだから、こんなかわいいアクセとか買っておしゃれしなよ〜。」 「ボクはそんな物に興味はない。 それにボク達この世界のお金持ってないじゃないか。」 「そ〜んなのリリスちゃんの能力でどうにでもなるわよ〜。 だ・か・ら葉月もいつもセーラー服着てないで〜もっと可愛い服買お? 葉月なら〜スタイルいいから露出度の高い服でも似合うわよ〜。」 「そうでっせ葉月姐さん。へそ出しルックとかぱんつが見えそうなくらい短いスカートとか ヒップハングのジーンズにYバックの見せパンとか。 裸まつりやー、わてもうたまらんわー!」 ケンちゃんがそう言い終わるや否や葉月の手が彼をわしづかみにして、 近くにあったコンビニの燃えるゴミの箱に投げ込んだ。 「わー!何すんねん。わいはゴミやないっちゅうねん。 怒るでしかし!」 横山やすし風に喚くケンちゃんを無視して歩き出した二人だったが、 リリスはあちこちの店をよそ見している間に、 足の早い葉月に置いてけぼりを喰らってはぐれてしまった。 「もぉ〜、葉月ったらリリスちゃんをほったらかしにして一人で行っちゃうなんて〜、 わがままなんだから〜。ぷんぷん」 その時、背後から声がした。 「ごめん、リリス、一人で先に行っちゃって。」 リリスが振り返るとそこには何処から出したのか ケンちゃんの入った鳥籠を右手に持った葉月が立っていた。 「葉月ぃ〜、もう、心配したじゃない。」 「悪い、人が多すぎて見失っちゃったんだ。それよりリリス、さっきのお店、覗いてみようか? 欲しい物があるんだ。」 「どうしちゃったの?さっきは興味ないって言ってたのに〜。」 「気が変わったんだ。たまにはボクもおしゃれしてみようかなって。」 「それでこそ女の子よ〜。葉月もやっとおしゃれ心が目覚めたのね〜。 これもリリスちゃんのおかげね。感謝しなさい。」 「そんな事より早く行くよ!」 「あ〜ん待って〜」 というわけでショッピングを始めた二人だった。 《数時間後》 「ねぇ葉月〜、まだ買うの〜?」 両手一杯に紙袋を提げたリリスが疲れた顔で不平を言う。 「当たり前じゃないか。」 「だって〜下着に服にコスメにアクセにバッグに水着に…もう充分じゃないの〜。」 「まだ靴を買ってないよ。」 「あの〜これ以上持てないんですけど…」 「ボクは刀とケンちゃんで両手が塞がってるからリリスが持ってくれないと。 あ、それから美容院行ってカットしてもらわなきゃ。」 「えぇ〜葉月その髪切っちゃうの〜? 大切にしてたのに勿体ない〜。 ていうか今日の葉月ヘンよ〜。なんか葉月じゃないみたい。」 そう言いながらリリスが葉月の髪を引っ張ると 髪がまるごと取れてしまった。 「ひぇ〜!ってヅラ?あんた一体何物よ〜!」 「ふふふ、ばれてしまっては仕方が無い」 ニセ葉月が顔のマスクを剥がすとそいつは男だった。 「さらばだリリス。」 いきなり逃げ出すニセ葉月。 「こら、待ちなさいよ〜!葉月を何処にやったのよ〜」 叫びながら追い掛けるリリス。 しかし、ニセ葉月は路上に停めてあった車に乗り込んで逃走してしまった。 「もぉ〜逃げ足の早いヤツね〜。 で・も・このリリスちゃんから逃げられると思ったら大間違いよ。」 そう言うとリリスは近くに駐車していた車のドライバーに向かって、 スカートの裾をちらちらまくり上げながら言った。 「ねぇ〜ん、おじ様ぁ、リリスちゃんを乗せてくんない? ねぇ〜いいでしょ?お・じ・さ・ま」 「へへへ、おねえちゃん、おじさんとドライブしたいのかい?」 「いま出て行った車を追い掛けて欲しいのぉ〜。 お・ね・が・い お願い聞いてくれたらリリスちゃんいいことしてあげる〜。」 「本当かい、おねえちゃん、だったら乗りな。」 中年男を色仕掛けで垂らし込んでリリスは追跡を開始した。 「本当におでこちゃん同盟に連れていってくれるんだろうな。」 街中を走る車の後部座席で葉月は、運転席の若い男に向かっていぶかしげに言った。 「ご心配なく。間違いなくお連れしますよ、東 葉月さん。」 「どうしてボクの名を?貴様、何者だ!」 といいつつ刀に手を掛ける葉月。 しかし、一瞬早く隣に座っていた同じ顔をした男が葉月のこめかみに拳銃を突き付けた。 「おっと、おかしなまねすると頭に風穴が開くぜぇお嬢さん。」 「そういう事ですからおとなしくしていて下さいね。フフフフ」 運転席の男が不気味に笑った。 葉月はリリスとはぐれた後、この男達に突然声を掛けられたのだ。 「あなた、おでこちゃん同盟をお探しでしょう? でしたら僕たちがご案内いたしましょう。」 「何故それを?」 「雰囲気ですよ、雰囲気」 あからさまに胡散臭い二人だったが、葉月の勘が何かを告げていたので、 だまされたふりをして付いていくことにしたのだった。 (やはり、こいつら何かある。 それにこの胸騒ぎ、竹の砦に行った時と同じだ。 やはりイブの力か?) 車は郊外のとある豪邸の中へ入って行った。 葉月は地下の広い部屋へと連れて行かれた。 そこは沢山の機械が並び、何かの工場のようだった。 その奥に一人の赤いスーツを着て、銀縁のメガネを掛けた、意地悪そうな中年女が立っていた。 「よく来たな東葉月。歓迎するわ。」 「おでこちゃん同盟の会長に会いに来た。 初美は何処だ。」 「まあ、そうあせるな。まず私の話を聞いてもらう。」 女が横柄に言った。 「お前には我々に協力してもらう。 お前の事は調査済みだ、その能力も、リリスと一緒にイブを探して居ることもな。」 「なぜそれを知っている!リリスはどうしたんだ!」 葉月の詰問を無視して女は続けた。 「お前にはその能力でリリスを殺してヤミの帽子を奪ってもらう。 そしてこの世界の男どもを権力から追放するのを手伝うことになる。」 「何だと!」 抜刀しようとした葉月は、女が手にしている物を見て凍り付いた。 「これを見な。」 それは一冊の本だった。タイトルは【おでこちゃん官能写真集】。 そして表紙は紛れも無いイブの悩ましいヌード写真だった。 「初美!」 「こいつをこうすれば」 女は一本の鎖を取り出して、本をぐるぐる巻きにした。 「か、体が動かない…」 「この鎖には私のソーマが込められているの。 こうして本に巻き付ければ本と同じソーマを持つお前は封印されて動けないのだよ。」 「お前は一体何者だ?なぜリリスを狙う?」 「言い忘れたけど私の名はスキュア、この国の大臣よ。 ある者がお前達のことを教えてくれてね。こうして罠を張ってお前達が掛かるのを待ち構えていた訳さ。」 「大臣がヤミの帽子を奪ってどうするんだ。」 「知れた事、全宇宙の支配者になって金と権力を独占するのだよ。 先ず手始めに女だけでこの世界を征服して、愚民どもをアリのように働かせて贅沢な暮らしをするのよ。 もうすぐリリスもここへ来る事になる。 どう、私に手を貸せば金も権力も思いのままよ。」 「ボクにはそんな事をしている暇は無い。初美を探さなくちゃいけないんだ!」 「お前は全宇宙の金と権力が欲しくないの? そうすれば恋人なんかに依存しなくても生きていけるのだよ。 あんなすぐに消えてしまう女を追い掛けて何の得が有るって言うの? 世界の果てまで追っ掛けて野垂れ死にするのが関の山よ。」 「金も権力もいつか消えてしまう。でも、ボクの愛はボクが死ぬまで消えはしない。 人が死の瞬間に持っていられるものは誰かを愛する気持ちだけなんだ。 沢山のお金も沢山の部下も死の恐怖を消してはくれない。 でも、ただ一人自分を愛してくれる人が側にいれば、幸せな気持ちで死は恐くなくなるんだ。 …死は全ての終わり、永遠の暗黒だよ。 でもボクの側に初美が居てくれるなら、ボクはそれを恐れはしない。 …ボク達のたどり着く場所が、たとえ凍てついた世界の果てだとしても、ボクは何も恐くはない。 そう、初美が側にいればそこが天国なのだから。」 確信に満ちた態度で葉月が言った。 しかしスキュアそれを鼻で嘲笑って言った。 「ふん、小娘風情が聞いたふうな口を。 私はね、男に振られ続けて来たのさ。だから愛なんて信じない。 だから世界中の恋人や夫婦を引き裂いて不幸にしてやるの。 そして皆をアリのように働かせて世界に復讐してやるのよ!」 「貴様、歪んでる」 「はははは、そんな強がり言ってられるのも今の内だ。」 スキュアが指を鳴らすと天井や床から無数の触手が伸びて、葉月の体をいたぶり始めた。 「うわっ!何をする、やめろ!」 「そいつにたっぷり可愛がってもらいなさい。そうすれば考えが変わるだろうさ。」 触手が葉月の敏感な所を激しく責め始めたので、思わず声が漏れる。 「やあぁ、うぁ…いっ…あ、あぁん…だめぇ」 「おやおや、いい声で鳴くこと。 しばらくそうしてなさい。私は仕事があるからまた後で見に来るわ。」 そう言い残すとスキュアは去って行った。 〜一方、リリス達は 「おねえちゃん、ほんとにただでいい事してくれるんだよね。 金取った揚句に警察にたれ込むなんてことしないよねえ。 なんせこの所そうゆうの多いからね、ていうか少女売 春?」 「心配しないで。リリスちゃんを信用しなさ〜い。」 「そんならいいけどさ。 ところであんた、なんであの車追い掛けてるんだい?」 「大好きな人を探してるの。」 「それって、彼氏かい?」 「まあ、そんなとこね〜」 「なんだい、彼氏持ちかあ。 まあ、こんなおっさんに惚れる若い娘なんていないわな。」 「あん、ちゃ〜んといい事してあげるから心配しないで。」 「ならいいけど… おっと、あのお屋敷に入って行ったぜ。」 「じゃあ、ここでいいわよ〜。 ありがと、おじさま。」 そういいながら車内のゴミを片付け始めるリリス。 「おねえちゃん、何してんだい?」 「何って、善い事〜。」 「おいおい、期待させといてそりゃ無いだろ。」 「リリスちゃんは〜Hなこととは言ってないわよ〜、じゃ〜ね〜」 そう言い残すと、買い物袋とゴミ袋を抱えてリリスはそそくさと車を後にした。 「おーい、待ってくれよー。ていうか、羊頭狗肉」 おっさんの声を尻目にリリスは、屋敷のフェンス越しに中の様子を伺った。 庭には大勢の学ランを着た男達が居て、戦闘訓練を行っていた。 「なんかただの豪邸じゃないみたいね〜。 それにあの男達、何で同じ顔してるのかしら〜。」 リリスは眉をひそめながら呟いた。 「でも、葉月のソーマを感じるから、この中に居ることは確かね〜。 それにしても、どうやって中へ入ろうかしら。」 リリスは腕組みして顎に手を当てて考えた。 「正面から侵入しても〜、か弱いリリスちゃんは、あいつらに捕まって〜 あんな事やこんな事されるかもしんないし〜 …ってちょっといいかも〜。」 真面目に考えろリリスちゃん。 「どうしたもんかしら、う〜ん」 眉間に皺を寄せて考え込むリリス。 そのまま10分が経過した。 「あぁ〜、そっか!」 突然リリスが叫んだ。 が、すぐに口を押さえながら身を屈めて、中の様子をうかがった。 しかし、ちょうど男達が射撃訓練を始めたところだったので、 リリスのマヌケな叫び声は、銃声に掻き消されて、気付かれずに済んだ。 「そっか〜、自分の能力を使えばいいんだ! リリスちゃんあったまいい〜。」 先に気付けよリリスちゃん… 「待ってて葉月〜、今助けに行くからね〜。」 そう言いながらリリスは空間の歪みの中に消えた。 「ああああっ…いっ、いくぅ…はあはあ」 薄暗い地下室に葉月の声が響く。 無数の触手が服の隙間から侵入して、 葉月の敏感な所を激しく責め立て続けるので、 葉月は何度も何度も登りつめていた。 そして、太い触手が葉月の口の中にまで入り込んで来た。 「む…むぐぅ、んんんん…んん…ううううん」 葉月は、理性を失わないように頭の中で必死に戦っていたが、 あまりの快感に、無意識に腰を激しく前後に動かしていた。 何度目かの絶頂を迎えた時、葉月の目の前に明るく光る人影が現れ、 それは次第に両手一杯に紙袋を抱えたリリスの姿になっていった。 「あ〜、葉月み〜っけ」 「うーうー(リリスー!)」 「何よ〜、一人でそんな事して遊んでたの? ずるいずる〜い。リリスちゃんも仲間に入れてよ〜。」 「うーうーうーうー(これが遊んでるように見えるか!)」 ズレた事を言って葉月を呆れさせるリリス。 ふと、横のテーブルに目をやると、鎖にぐるぐる巻きにされた【おでこちゃん官能写真集】が目に入った。 「何これ〜? はは〜ん、そういう事か。」 一目見て事態を理解したリリスは、口の中で何か呟いた後、 右の掌をかざすと、巻き付いた鎖が粉々に砕けて消滅した。 それと同時に、葉月を辱めていた触手も、跡形も無く消えて 葉月は床に崩れ落ちた。 「葉月大丈夫〜? 随分気持ち良さそうにしてたじゃない。 その分じゃ何回もイかされたみたいね〜」 「そ、そんな事ないよ。」 肩で息をしながら葉月は否定する。 「無理しちゃって〜。 葉月は毎日オナニーしてるから感じやすいんでしょ〜?」 「ボ ク は オ ナ ニ ー な ん か し な い!!!!」 ムキになって否定する葉月。 「いや〜ん、怒った葉月もかわいい〜」 リリスがはぐらかしたので、葉月はズッコケてしまった。 「ところでリリス、その荷物は何なのさ?」 「ああこれ? 葉月の偽者に買わされたの〜 このリリスちゃんを騙すなんて、許さないんだから〜 ぷんぷん」 「そいつ、ここの仲間か?」 「そうみたい。そいつを追っ掛けてここへ来たもの。」 「奴ら、リリスの帽子を狙ってる。 そのために、ボクを使ってリリスを殺させようとしたんだ。」 「ひっど〜い! この帽子はリリスちゃんの物よ〜 ぜ〜ったい渡さないんだから! まさか、葉月…」 身構えるリリス。 「大丈夫、ボクはそんな事しないよ。安心しな。」 「良かった〜。 あっ、そうだ〜! 葉月汗かいたでしょう? これに着替えて〜。」 リリスは、ごそごそと紙袋からピンクのキャミソールを出して 顔の前に広げて見せた。 「そんな物着るか〜!」 「もぉ〜、頑固なんだから〜 じゃあ、この口紅つけてみて〜。 この色葉月に似合うと思うの〜 新色なんだって〜。」 「いいよ、そんなの。」 「いいからいいから」 そう言いつつ葉月のスカートのポケットに無理矢理口紅を押し込むリリス。 「それより…リリス」 顔を赤くして、おずおずと葉月が言う。 「ぱんつ、持ってない? びしょびしょで気持ち悪いからはき替えたいんだ。」 「ああ、有るわよ〜」 リリスは、床の上に何枚もぱんつをひろげた。 「なんでHなデザインのばかりなんだ?」 「だって〜、ニセ葉月の趣味だもの。」 「ボクはそんな趣味は無い!」 葉月は文句を言ったが、背に腹は替えられないので、 その中から一番シンプルな、黒のビキニぱんつを選んではき替えた。 「じゃあ、この濡れたぱんつはリリスちゃんが貰うね。」 リリスが床に手を伸ばすより先に、 葉月が神速でそれを空中に放り上げ、 愛刀の居合抜きでみじん切りにしてしまった。 「もぉ〜、葉月のいけず〜!」 すねるリリスを無視して、葉月は問う。 「何でこの本がボクの能力を封印してるって解ったの?」 「それはね〜、ある程度のソーマを持つ者がイブの遺物を持つと、 イブのソーマとシンクロして自分の意思でコントロール出来るみたいね〜。 だからイブのソーマを浴びた葉月の能力を封じる事も出来たのよ。 言うなればこの本は、イブの分身ってことね〜」 リリスは顎に右手の人差し指を当てながら言った。 「でも〜、そのことを本の世界の人間が知ってる筈無いんだけど。」 「誰かがボク達のことを教えたって言ってた。」 「そ〜ゆ〜事しそうなヤツというと〜、あいつしか居ないわよね〜。」 「アーヤか!」 「あはは、ばれちゃった?」 いきなり学ランを着たアーヤが現れた。 「アーヤ!なんでそんなことしたんだ!」 葉月が詰問する。 「退屈だったからね。 それにスキュアはリリスがパシリにするために創って忘れてしまった妖魔なんだ。 だけど、セイレンみたいに美人に創ってくれなかったから、 リリスに復讐したいって言ったんだ。 だから葉月達の情報を与えて、ケンちゃんにもこの世界のことを教えたのさ。」 「な〜んでわざわざそんなチンピラの手助けするのよ〜」 「彼女は自惚れ屋さんだから、頭を冷やさせてあげようと思ってね。 だって、葉月達があんな妖魔に負ける筈無いでしょ。」 その後アーヤは、この世界に伝わるおでこちゃんの伝説について長々と解説した。 「スキュアは、不思議な力を持つこのイブの忘れ物と、 クローン山口の末裔を使ってこの世界を征服しようと企んでいたみたいだね。 あ、もう行かなきゃ、じゃあねー。」 独演会を一方的に終えると、アーヤはどこかへ去って行った。 「あいつ、今度会ったらヤキね〜」 「ま、当然かな。ってリリスが原因じゃないか!」 「あはは〜、まあそう怒らずに〜(汗)」 その時、サブマシンガンを携えたクローン山口軍団が、 二人を包囲した。 「かかったなリリス、おとなしくしろ!」 「や〜ん、おんなじ顔がいっぱい。きも〜い!」 「伏せてろリリス!」 葉月はそう言うや否や、弾丸のような速度で クローン山口軍団に斬り掛かって行った。 「たああああ!!!」 敵が引き金に掛けた指に力を込める間もなく 葉月の剣がクローン山口を斬り倒して行く。 次々と倒され、消滅して行くクローン山口軍団。 瞬く間に葉月によって全滅させられてしまった。 「ボクはスキュアを倒す! リリスはここで待ってて。」 葉月はスキュアの居る部屋目指して駆け出して行った。 「あ〜あ、行っちゃった。 でも〜、あ〜んなにイかされて、感じやすくなってるって事は〜… ちゃ〜んす!ニヤリ」 「リリスちゃんのらぶらぶ大作戦発動〜!」 ベタなネーミングの作戦を思い付いて、一人悦に入るリリスだった。 <つづく> |