作者:銃太郎(SIG550)さん

ある日の東家


 ≫それは葉月が中二、初美が中三だった頃のある日の夕方だった≪
「ピンポーン」
東家の玄関のチャイムが鳴った。「こんにちはー、東さーん、宅配便でーす!」
「はーい!」
パタパタパタ
セーラー服の上からピンクのエプロンを纏った葉月が、夕食の仕度の手を止めてキッチンから元気良く駆けて来た。
サラサラストレートの長い黒髪が夕方の光の中でキラキラと輝きながら揺れ、甘いシャンプーの香りを辺りに漂わせて、
その姿はさながら幼妻…じゃない、エプロン姿の天使のようだった。
若草色の服を着て、黒い猫のマークの入った帽子を被った若いドライバーは、思いがけず現れた美しい少女の姿に思わず見とれ、
心の中であらぬ事を呟いた。
(惜しい!裸エプロンだったらよかったのに。)
これをうっかり口に出してしまわなかったのは、彼にとって幸運だった。
もし口走ろうものなら、初美に言い寄る数々の男たちをノシてきた葉月の鉄拳にボコられて病院送りは確実だったからだ。
「あ、東初美さんにお届け物です。ここにサインお願いします。」
彼は心の内を見透かされないよう努めて事務的に言った。
「はい、ご苦労様。」
ドライバーに手渡されたボールペンで伝票にサインしながら、葉月は怪訝な顔をした。
「初美に?誰からだろ。」ドライバーがそそくさと去った後の玄関で、葉月はそのみかん箱二つ分くらいの大きさの荷物をまじまじと見た。
「ヨ○○シカ○ラからだ。USBカメラとUSBハブとUSB延長ケーブル?
USBって何なのさ。狂牛病の事かな?あれはBSEか。狂牛病の毒蛇って変だものなー。
っていうか初美、何買ったんだー。」
パソコン用語の意味が全く分からないメカ音痴の葉月だった。
「まあ、いいや。初美が帰って来たら聞いてみよ。」
荷物をその場に置いて、葉月は夕食の仕度の続きをしにキッチンに戻って行った。

 ≫30分後≪
ガチャッ、バタン
玄関のドアが開閉する音がして初美が帰宅した。
「おかえりー、初美♪。あのさ…」
むぎゅー!
ダイニングから出迎えに駆けて来た葉月が言い終わらないうちに、初美が葉月にいきなり抱き着いた。
「は…初美 こんなところで。…ダメだよ(#^-^#)ポッ」
口では嫌がっていても顔はとっても嬉しそうな葉月。なんか目尻が下がっているように見えるのは気のせいかな?。
(あ、初美の胸がボクの胸に…。柔らかい…)初美の体温を感じながら、葉月の心臓は鼓動を早めていった。
(ああ、ずっとこうしていたい…。初美、ボクの大切な初美…。
キキキ、キスしてもいいのかな…)
感激に打ち震える葉月が初美を抱き締めようとした瞬間、初美はいきなり体を離し、葉月に向かってにっこり微笑むと、
足元にあった例の荷物を抱え上げ自分の部屋めがけて一目散に階段を駆け上って行った。
後には顔を真っ赤にして鼻の下をのばした放心状態の葉月が一人残され、一時間程そのままフリーズした状態で立ち尽くしていたのだった。

 その夜、初美は夕食に降りてこずに、一人で二階と一階を行ったり来たりして何やらゴソゴソやっていたが、
先程の抱擁の余韻に浸り切っていた葉月は、うわの空だったのでそれに全く気付かなかった。
そればかりか、フォークを逆さまに持っているのに気付かずに一生懸命にパスタを口に運ぶ恰好だけを続けるという一人コントを演じて、
片付けもそこそこに自室に引き揚げてしまった。

 ≫葉月の部屋≪
スタンドの薄明かりの中で、なにやら葉月の悩ましい声が響く。
「あ…あぁん、初美ぃ 好きだよ…ハァハァ」
あらら、葉月たん、我慢し切れずにベッドで始めちゃったようです。

 その頃初美の部屋の机の上にあるパソコンのモニタには、葉月の部屋の様子がくっきりと映し出されていた。
(葉月ちゃん、可愛いわ。今日も素敵よ。うふふ。
これでいろんな角度から葉月ちゃんの恥ずかしい姿を捉らえることが出来るようになったわ。p(^^)q)
にっこりほくそ笑む初美。

 かくして初美は、葉月の部屋にまんまと隠しカメラを設置するのに成功したのだった。
その後、その動画を記録したDVDはネット上で高値で取引され、初美は大金を手に入れた。
 そして、初美のパソコンには動画を保存する為の外付けHDDが増設され、学校の行き帰りにはMDの替わりに新たに手に入れた
iPodを聴くようになったのだが、メカ音痴の葉月はそれが何を意味するのか全く気付く事は無かったという。


〜初美のパソコンにはその後順調に葉月ライブラリが増え続け、それにつれて彼女の銀行口座の残高も順調に増え続けているらしい。
なお、葉月のトイレの音を記録したmp3ファイルが初美のHPからダウンロード出来ます。
URLは ttp://www.eve823.com/odeko…ウソウソ嘘だよー

END

なお、この物語はフィクションであり、実在するアニメ、ゲーム等とは一切関係ない…と思う(^_^;)

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By よっくん・K