ヤミと帽子と本の旅人〜ショートストーリーズ〜
作者:零亜さん
1章 剣の少女 「はっ!!」 少女の掛け声と共に振るわれた刀の刃が“それ”を断った。少女の周りには無数の死体がある。しかしその死体はけして横たわっているわけではない。 誰が想像するだろうか・・・・本来は動くことなどあえりえない死体達は少女目掛けて襲ってくるのだ。しかし少女は臆する事なく襲い来るその死体達を日本刀で斬っていった。 斬られた死体達はその箇所からあふれ出る光に包まれ、消えていった。 最後の一体を倒し、辺りを見回す。死体達の襲撃を受けたのはたまたま林の中だったため人に見られることはなかった。 深いため息をつき少女はここに来る前のことを思い出す。 「ほんっっっっっとぉぉぉぉぉぉ〜〜〜にいいの葉月?」 大きな帽子を被った金髪の少女は念を込めいった。 「構わない。」 葉月と呼ばれた少女は呟く。 帽子を被った少女、リリスによればこのセカイは葉月のいる世界とはいわゆる「平行世界」であり「もし〜なら」という過程が存在するのだ。 「それでも・・・行く。」 葉月はそういいこのセカイに降りて来た。 そして葉月は降りて来た。その直後この死体達と出くわし戦うはめになったのだ。 「少なくとも・・・ボクのいた世界にはこんな奴等はいなかった。」 それは確かだ。死体が人を襲う、ということが報道されれば大騒ぎになっている。 「!」 視線。葉月はすぐに振り向いた。そして葉月の瞳に移ったのは・・・・・朱い月。そしてその朱く彩られた月明かりに照らされる一人の銀髪の美女。 「!?」 美女を見た葉月は言葉を失う。 彼女がかもし出しているのは殺意ではない。敵意でもない。それはただの“威圧”である。決して“人”という小さい枠で収まることなどないであろうその偉大性が葉月にはわかる。 葉月は彼女に向け構えを取る。その行動を取ったのは自分の意思ではない。本能だ。葉月の持つ防衛本能が葉月にそうさせたのだ。 そして静寂があたりを包んだ・・・ |