連載小説
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同時刻、魔法の森にあるアリスの家にて…

アリス「…で、ここでこの公式を使って…。」
アリスの家にチルノ、大妖精、ルーミアの三人が来ており宿題をしている。アリスは三人にわからないところを教えてる…正確には、大妖精はほとんど自分で解けておりアリスはチルノとルーミアに教えてる。(主にチルノ)

チルノ「なるほど、解けた!あたいったら天才で最強ね!!」
アリス「えぇ、そうね。」
自慢気にいつもの最強宣言をしてるチルノに、笑みを浮かべて頷くアリス。大妖精は静かに「アリスさんの教え方が上手なだけじゃあ…」と思ったが、敢えて口には出さず
大妖精「アリスさんって、教えるのが上手ですね。先生に向いてそうです。」
と言った。

アリス「先生?」
チルノ「おぉ!アリスが先生ならきっと優しい先生だな!慧音先生はめちゃくちゃ厳しいし、アリスの生徒になりたい!」
ルーミア「そーなのかー!」
アリス「慧音が聞いたら、めちゃくちゃ怒りそうね…。」
実際話を聞かれてたらどうなったか、想像ができたようで苦笑いする。その後「先生かぁ…」と、そう呟いて考え始める。
チルノとルーミアは期待の目をアリスに向けており、大妖精は微笑んでる。
アリスはその視線に気づいたのか、クスッと笑い
アリス「考えておくわ。」
と言った。

チルノ「やったー!!もう先生確定決定ね!!」
ルーミア「そーなのだー!」
まだ先生になるとは言ってないが、二人とも喜んでいる。その事を言おうとしたが言いづらい上、チルノのおかしな日本語とルーミアの似たような台詞を聞けば「教えるの、骨が折れそう…。」と思った。

アリス「さ、宿題も後もう少しで終わるわ。終わったら、今焼いてるケーキを皆で食べましょ?」
チルノ「ケーキ!よーし!あたいにかかれば、宿題なんて秒で終わらせられる!!」
ケーキと聞いて、俄然やる気を出す一同。アリスのサポートもあり、宿題はあっという間に終わった。



アリス「先生かぁ…。」
美味しそうにケーキを食べてるチルノとルーミアを見ながら、そう呟く。隣にいる大妖精がアリスを見上げる。
大妖精「考え中ですか?」
アリス「えぇ……興味はあるわね。でもあなた達がここに来て、勉強を教えたことも何度かあるけど…ちゃんと先生らしいこと、できるかしら…。」
自分が先生らしく、生徒全員に向き合い知識と教養を与えられるかどうか不安に思っている様子。

チルノ「大丈夫、アリスなら絶対いい先生になれるわ!あたいが保証する!」
今の話を聞いていたようで、立ち上がって得意気に言う。

大妖精「そうですよ。それにチルノちゃん、アリスさんに勉強教わってから前より成績よくなったんですよ?」
チルノ「大ちゃん!あたいは元々天才!!ほら、爪ある脳は鷹を出すって言うでしょ!」
アリス「何、そのめちゃくちゃなことわざ…。」
チルノ「とーにーかーく!あたいが天才ってこと!」
ルーミア「そーなのかー?」
チルノ「そーだよ!」

アリス「…ふふ。」
恐らく三人がいつもしているであろうやり取りを見て、微笑むアリス。何故だかわからないが、チルノの言葉で自分ならできるかもしれない、そう思い始めるアリスであった。








アリス「それじゃあ、気を付けて帰るのよ。」
チルノ「うん!」
ルーミア「なのだー!」
大妖精「お邪魔しました。」
三人が帰っていくのを見送り、姿が見えなくなるまで遠くまで行くのを見ると、玄関の扉を開けて自分の部屋へ行く。

上海人形「シャンハーイ。」
どこからか上海人形が現れて、浮いてアリスの近くまで行く。
アリス「あら、シャンハイ。」
笑みを浮かべて近くに来た上海人形を抱くアリス。上海人形も、嬉しそうな表情を浮かべている。そして、何かを言いたそうな目でアリスを見上げる。

アリス「…ふふ、そうね。今度は、あなたに勉強を教える番ね。」
そう言うと上海人形を机の上に座らせて、机の上にあるスケッチブックを手にとって、上海人形と向かい合うように座る。


私には、もう1人教え子がいる。
そう、上海人形のこと。実はこの子…自立人形なのよ?最近、漸く完成してね…私が操らなくても動けるようになったわ。
私にとってこの子は、本物の家族同然の存在よ。

アリス「4+2=?」
上海人形「シャンハーイ!」
両手で持っているペンで、上海人形の手前に置いてあるメモ帳に「6」と書く。

アリス「そう、正解!よくできたわね。」
嬉しそうな笑みで上海人形を見る。まるで、自分のことのように喜んでいる。

長い間夢見ていたことが、自律人形を作ること?それもあるけど…正確には「人形と、お話がしたい」よ。シャンハイはまだ、話すことが出来ないけれど…もう少しで話せるようになるわ。話せるようになったら、私の名前を呼んでほしいわね…。



アリス「全問正解、偉いわ!シャンハイ、あなたはとても賢」

ドオオオオオオオォォォォォォォン!!!!!


アリス「…!?」
上海人形の頭を撫でようと手を伸ばした時、外で轟音が鳴り響いた……。アリスの手は止まり、二人とも窓の方を向いて外を見ている……

アリス「…なに、今の音…。」
明らかに普通ではない音に対して驚き、警戒している。
上海人形「シャンハーイ…。」
アリス「大丈夫よ、シャンハイ…。」
不安そうな表情を浮かべてる上海人形を抱き寄せて、部屋から出るアリス。




















アリス「なに、これ………。」
外に出て、音がした方へ進んでいくと……妖精達の死体が地面に転がっている。しかも、どれも頭部が無い……。

アリス「一体、誰が……もしかしたら、まだ近くにいるかもしれない…。」
そう言い終わると、周りの茂みから複数の物音が聞こえる。恐らく、妖精達を殺害した犯人だろう…そう思ったアリスは、複数の人形を出す。

茂みから、複数の天使が現れアリスに拳銃を向ける。
アリス「…アンタ達ね、犯人は……何者なの?」
前方にいる天使を睨み、人形達を自分を守るように囲わせる。

「…Angel」
前方にいる天使がそう答える。
アリス「天使?天使にしては、随分と物騒なことをするのね。目的は何…?」






















「Die」


一斉にアリス目掛けて発砲する。
アリス「…っ!話すつもりはないということね…!」
人形達は放たれた弾幕を防ぎつつ、天使に攻撃を仕掛けていく。天使達も距離をとりながら人形に対して発砲をする。

アリスはもう一体人形を出す。人形は弓矢を構えており、前方で人形と戦っている天使に向けて矢を放つ。
矢は天使の額に見事命中し、貫通する。

アリス「まずは一体……!」
前方の天使は倒れたと思い、次の天使を狙おうとする。




ドォンッ!!


アリス「っ!!」
放たれた弾幕が、アリスの左太ももを貫く。痛みに顔を歪めながら、左太ももを押さえる…
前を向くと、先程の矢が命中したはずの天使がこちらを向いており、煙を上げてる銃口をアリスに向けている。

アリス「頭射ぬかれても…生きてるなんて……!」
恐らく、この場にいる天使達全員そうだろう。他に弱点があるかもしれないが…正直、弱点を見つけるよりも殺されてしまう方が先だろう。

アリス「なら……!」
人形全員が、爆弾を持つ。持った状態で天使達に密着する。
天使達は人形を振り払おうとするが、離れない。人形を引き剥がすので手一杯なことを確認すると、何とか立ち上がり片足を引きずりながら上海人形と共に、その場から逃げる………。


ドオオオオオオオォォォォォォォン!!!!!





























アリス「はぁ…はぁ…っ……!」
どれくらい走ったかはわからない…けど、天使達が追ってくる様子はない…。
近くの木に寄りかかり、息を整えている……左足から流れ落ちる血が、地面に生える草を赤色に染めていく……。
アリス「…早く…止血しないと……」
手持ちに止血できそうな無いため、アリスが着用してる長いスカートの裾を破り、撃たれた箇所に巻いて、ほどけないように結ぶ。
痛みはまだあるが、出血はかなり抑えられた…

上海人形「シャンハーイ……。」
心配そうな顔で、アリスの顔を覗き込む。
アリス「…心配してくれて、ありがとう。大丈夫よ……あなたは、必ず私が守る…。」
安心させようと、上海人形を静かに抱き寄せる。上海人形の顔を見ると、少しは安心したような顔になっていた…。

ふと顔を上げると、視界に気になる物が映った…上海人形もアリスが何かを見ていることに気づいたようで、同じ方向を向く。
アリス「…行ってみましょう……。」























その場所へ向かうと……地面が真っ直ぐ抉られた跡のような物が広範囲に続いており、周りの木々は消し飛ばされたような跡がある……。
まるで、巨大な光線を撃ったかのような………

…さっきの奴等がやった…というわけじゃなさそうね…。奴等の仲間?にしても、こんなに……

その時、空から物音が聞こえた…アリスは恐る恐る、その方向を見上げる……


































直感でわかった。ここを消し飛ばしたのは、あの空に浮いてる物体……そして、さっきの天使達とは、比べ物にならないほど強いと……。


その物体の中心に、光が集められていく。

アリス「…!!」
何をしようとしたのがわかった…だが、逃げるには遅かった…左足を負傷してるため、いつもよりも速く走れない……。

その物体は、アリス達目掛けて巨大な光線を放った……
アリス「!!!」

























ドン!



上海人形が勢いよくアリスに体当たりして、射線の外へ出す。
アリス「…っ!シャンハイ…!?」
地面に倒れ、上海人形の方を見る。上海人形は、笑顔をこちらに向けて、口を開く……。

上海人形「アリス…。」























「アリガトウ。」


































何も無い、すべて消し飛んだ光景をじっと見ている……。
アリスは静かに、空に浮く物体を見る…物体に付いてるメーターのような物が、ゆっくりと上昇していく…。

アリス「…っ!!」
そのメーターが何なのか、理解した…上手く走れないが、必死でその場から逃げ出した………。



アリス「はぁ…はぁ…っ!!」
ドシャアッ

石か何かにつまずいて、転けてしまう。ゆっくりと両手を地面について、上半身を起こして膝をつく。

アリス「はぁ…はぁ…っ……!」








今度は、あなたに勉強を教える番ね。

アリス「っ…はぁ…はぁ…!」

そう、正解!よくできたわね。

アリス「はぁ…っ……はぁ…!」

全問正解、偉いわ!

アリス「…っ………。」





























大丈夫よ……あなたは、必ず私が守る…。

アリス「…っ!!!」
ドン!!
右手で、思い切り地面を殴る。

アリス「なにが…なにが「私が守る」よ!!!自分の身すら守れてない上、守られてるじゃない!!!ふざけないでよぉっ!!!」
ドン!ドン!!

アリス「役立たず!!能無し!!」
ドン!!ドン!!ドン!!
ポタッ…

アリス「結局、1人じゃ何にもできもしない!!」
ドン!!
ポタッ…ポタッ












アリス「ただの弱虫よっ!!!!」

ドンッ!!!!




ポタ…ポタ…………

右手から血が流れ、殴った地面を赤く染める……そして…溢れ出る大粒の涙が、地面に生えてる草にこぼれ落ちる…。
自分が無力だから、何も出来ないから…家族とも呼べる大切な人が死んだ…自分に対しての苛立ち、何もできなかったことへの悔しさでいっぱいだった…。

アリス「…っ…シャンハイ……っ…ごめん…っ…ごめんねっ……。」
アリスは、今は亡き上海人形への謝罪の言葉を口にしながら、その場でうずくまった……。

つづく

20/05/25 17:36更新 / 青猫
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