第1章 「博麗神社」
???「ねぇ」
誰かの声がする。
ルナ「んん・・・zzZ」
???「ねぇ、起きてくれないかしら?」
まただ。誰だろう?
ルナ「むにゃ・・・だぁれ・・・?」
???「少しだけお話しましょ?」
聞き覚えのない声だ。
ルナ「はぁい・・・zzZ」
???「やっと起きた。ご機嫌いかが?」
私は何者かの声にやっとこさ起きる。
ルナ「うにゅ、あなたはだぁれ〜?」
私がまどろみの中、目を開けると目の前には紫色のドレスを着たいかにもスタイルの良い女の人が立っていた。でも、周りが薄暗いせいか顔の表情がはっきりと窺えない。
???「私?私は・・・八雲紫というの。初めましてかしらね?」
ルナ「八雲紫ちゃん?」
表情の見えないその女性は自らを「八雲紫」と自己紹介してきた。
ルナ「あ、うん!初めましてだね!よろしく〜♪」
私も挨拶をし返す。なんだか不思議な感じの女性だなぁ。
紫「ふふ♪突然だけど、あなたは”幻想郷”ってご存知?・・・知らないかしら?」
ルナ「ぬ?幻想郷??」
幻想郷・・・?聞いたことない所だなぁ。どこかの地名かな?
紫「幻想郷というのは、忘れ去られたものが辿り着く場所なの。いないとされるモノが存在する世界。妖の類いも・・・」
ルナ「おおーそうなんだ?不思議な世界なんだね〜」
なんだか現実とは違う感じがして興味を引かれる。
紫「あら、興味があるという顔ね?ふふ、私もあなたに興味があるの」
ルナ「ふぇ?私に?」
紫という女性は何か意味ありげな笑みを浮かべてる・・・そんな風に見えた。
紫「せっかくだから色々と聞いても良いかしら?」
ルナ「うん、いいよ〜♪」
元気よく答える。
紫「じゃあ、あなたの性別を教えてくれるかしら?」
ルナ「見ての通り女の子だよ〜♪」
紫「次にあなたの名前はなんというのかしら?」
ルナ「私はね、岩崎ルナっていうよ〜っ♪」
と、愛想良く言ってみた。
紫「ルナちゃん。ふふ、良い名前ね」
ルナ「えへへ、ありがと〜♪」
褒められた。ルナは照れながらニコっと笑う。
紫「あなたは・・・お人形は好きかしら?」
ルナ「うん!大好きだよ〜♪可愛いお人形いっぱい持ってる!」
そう、私の部屋には可愛いお人形がいっぱい置いてある。寝る時も可愛いお人形と一緒。
紫「そう、それは良かったわ。そうこなくっちゃね」
ルナ「ふぇ?どうして〜?」
?どういうことだろう?と疑問を浮かべるルナ
紫「ふふ、そんなこと聞いてどうするのかって顔してるわね?”備えあれば憂いなし”というでしょう?これはあなたを示す大事なモノですもの。しっかりと管理しなくては、ね?」
ルナ「それってどういう事〜?」
ルナがその言葉の意味を問おうとしたその時──
博麗神社前〜 博麗神社前〜・・・
紫「あら、そろそろ時間のようですわよ?時間というものは本当に早く過ぎてしまいますわ」
え?時間って?
ルナ「ねぇ待って!紫ちゃんはどうして私に話しかけてきたの??」
こっちも聞きたいことはたくさんある。
紫「ふふ、もしかしたらまた会えるかもしれませんわね。楽しみにしてますわ」
紫はそう言い残すとルナの問い掛けに答える事無く、暗闇の中へ消えていった。
ルナ「え、ちょっと待っ──」
─ガタンッ!
ルナ「ハッ!?」
バスが停車した振動で目が覚めるルナ
ルナ「こ、ここは・・・あ、そうだバスに乗ってたんだ」
今の自分の状況を認識する。バスの車内を見渡すとルナ以外の乗客は誰もいなかった。乗車した時はたくさん人が乗っていたのだが、どうやらルナが眠っている間にほかの乗客は途中の停留所で降りていったようだ。
運転手「お客さーん、終点ですよー」
と、運転手から声をかけられる。
ルナ「あ、はい!今降ります〜!」
運転手に促されてルナは手荷物を抱え、出口で運賃を支払うといそいそとバスを降りる。外に出ると夏の暑い空気が肌に触れてじわっと汗を掻く。ルナが降りるとプシューという音と共に扉が閉まり、バスが土煙を上げながら走り去っていく。停留所の周囲の木々では、蝉が忙しく鳴いていた。
ルナ「ここが博麗神社か〜、やっと着いたなぁ」
色あせた赤い鳥居を見上げながら少々くたびれた様子のルナ。それもその筈、ここまで辿り着くには鉄道の最寄駅から降りてもバスで2、3時間はかかる距離にある神社だからだ。
ルナ「次のバスは・・・、・・・午後4時の便かぁ」
バスの時刻表の欄を指でなぞりながら次にバスが来る時間を調べた。ついでに携帯で現在の時刻も確認する。
ルナ「今は12時40分だから・・・うん、十分見て回る時間はあるね!」
ここは、かなりの田舎なのでバスの発着数も指折り数えられるくらいに少なく、しかも数時間おきという。ちゃんと時間を確認しておかないと、もし乗り遅れたら大変。
ルナ「んーっ!っと、よし♪」
確認を終えると軽く伸びをし、抱えてた鞄を肩から斜め掛けに背負う。
ルナ「あ、ちょっとここで一枚(パシャ」
デジカメを取り出して、鳥居の前で一枚写真を撮る。
ルナ「じゃあ、さっそく見に行ってみようっと♪」
そして、鳥居をくぐって数十段あるであろう石段を軽い足取りで登り始めた。
普段はよく運動をしているから体力には自信がある。このくらいの石段は大したことない。休むことなく長い石段を登り切り、辿り着いた先にはいかにも古そうな神社があった。
ルナ「おおー、これが博麗神社かぁ。何かありそうな雰囲気!」
ルナの目がキラキラ光る。少しの間、その感動に浸る。境内を見回すとルナ以外の人間の姿はどこにも見られない。やっぱり管理する人が誰も居ない廃神社なんだろう。
ルナ「あ、神社に来たんだからお賽銭を入れてお祈りしなきゃ!」
鳥居の所から拝殿までまっすぐ伸びる石畳の上を通り、拝殿の前までやってくる。そして、ポケットから財布を取り出すと小銭入れの中身を見る。
ルナ「ご縁があるようにって事で五円玉五円玉・・・あれ?今はないや。じゃあ、思い切って500円玉を入れよ〜っと♪」
小銭入れから500円玉を取り出すと目の前に置いてある、あちこちが痛んだお賽銭箱にお賽銭を投げ入れる。ルナが投げ入れたお賽銭はチャリーンと良い音を立てながらお賽銭箱の中へ収まる。そして、拝殿の軒下から吊るされている鈴をシャランシャランと鳴らすと2回お辞儀をし、2回拍手してからお祈りをする。
ルナ「何か良いことが起きますように〜っと♪」
お祈りを済ませると最後にお辞儀をする。このお祈りで後々思いもよらぬ事が起きようとは今のルナは知る由もなかった。
ルナ「じゃあ、他を見て回ろうかな♪」
さっそくカメラを手に境内の中を見て回った。
ルナ「これはいかにも古そう!(パシャ)あ!あっちのも写真に撮ろう!(タタッ」
古ぼけた神社の拝殿を始め、その拝殿に隣接する母屋、水の枯れた手水舎、ひびの入ってるボロボロの古い灯篭や狛犬の石像、何も掛かってない絵馬掛所などなど色んなものを写真に撮った。
時間を気にせず写真を撮りに歩き回ったルナは、さすがに疲れてきたので少し休憩することにした。良い感じに木を見つけるとその木の根元に座る。真っ青で雲一つない空からはサンサンと太陽の光が照りつけていた。
水筒に入れおいたお茶で喉の渇きを潤し、持っていたハンドタオルでふき出てくる汗を拭う。
ルナ「はふぅ〜・・・いっぱい写真を撮ったなぁ。やっぱり来て良かったぁ」
ルナは、たくさんの写真が記録されているデジカメを見つめる。普通の人は、大抵写真に撮らないであろう古い物でもルナの目には写真に撮りたい良い被写体として映る。
ルナ「お外は暑いけど、木陰は涼しいね〜っ」
境内は太陽の日が差してとても暑いが、時折吹き抜ける風が汗をかいて湿った肌を撫でるように吹くのでそれがとても心地よい。
ふと、携帯で時間を確認する。気付くと時間は午後2時を回っていた。
ルナ「ふむ、もうちょっとだけ時間あるね。どうしようかなぁ?・・・あ、そういえば、境内の脇に裏山の方へ続く道を見つけたけど、あの先は何かあるのかなぁ?」
休憩を終えた後、鞄を手に境内の脇にある裏山へ続く道を歩き始めるルナ。途中まではある程度道として整備されていたけど、段々と草木が生い茂る獣道っぽくなってきた。耳には、草が風に擦る音、蝉や鳥の鳴き声しか聞こえてこない。
ルナ「ん〜、やっぱこの先は何もないかな?戻ろうかな」
と来た道を引き返そうとしたその時──
ルナ「わふっ!?」
一陣の風が吹き、ルナの被っていた麦わら帽子が飛ばされる。
ルナ「あ!帽子!」
風に飛ばされた帽子は、ふわっと舞いながら少し離れた草むらの上に落ちた。ルナは帽子を拾おうとし、草むらに近づく。そして、帽子に手をかけた時、それと同時に何か小さいものがルナの視界に映る。
ルナ「ん・・・っ?あれ・・・なんだろう?」
ルナが目を凝らしてみると背丈は2頭身くらいと小さい。小動物というわけではなく、人の形をしたお人形っぽい見た目。バスの中で見た夢に出てきた女性になんとなく似てる気がする。ルナが不思議そうに見つめていると──
???「・・・!っ」
ルナの視線に気付いたのか、お人形っぽいそれはルナの方へ振り向いてこちらの様子を窺ってるかと思えば突然、逃げるように草木の間を抜けて走り去っていく。
ルナ「あ、待ってー!」
気になったルナは、帽子を被ると急いでお人形の後を追いかける。草木が茂る山道での追いかけっこ。その最中、途中途中でルナの事を待ってくれてるが、まるでついて来てと言ってるかの様子だ。ある程度の距離まで近づくとその度にお人形はまた走り出す。
ルナ「はぁ・・・はぁ・・・っ、どこまで行くの〜・・・っ!」
森の中は、蒸し暑く吹き出る汗が止まらない。その後、お人形を追いかけ走り続けること数分。やがてルナは森の奥にある湖に辿り着くが、その近くでお人形を見失ってしまう。
ルナ「あれ、見失っちゃった・・・。どこ行ったのかな?」
と、辺りの草むらを探していた時、湖の畔で佇んでいるお人形を発見する。
ルナ「あ、いた!」
ルナは少しの間、草むらからお人形の様子を窺っていたが、お人形は畔で佇んだまま動かない。意を決したルナは、走って荒くなった息遣いを深呼吸して整えると湖の畔に居るお人形にゆっくりと近づいていく。3mほどの距離まで近づいた時、お人形はルナに気付いてニコっと笑った。そんな風に見えた。
その瞬間、カッ!と眩い光がルナの視界を瞬く間に包んだ。
ルナ「きゃあっ!?」
ルナは眩い光に耐えることが出来ず、思わず目を閉じた。すると耳にどこか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
???「ようこそこちら側の世界へ 幻想郷はすべてを受け入れます それはそれは残酷なことですわ・・・」
第1章 「博麗神社」END
誰かの声がする。
ルナ「んん・・・zzZ」
???「ねぇ、起きてくれないかしら?」
まただ。誰だろう?
ルナ「むにゃ・・・だぁれ・・・?」
???「少しだけお話しましょ?」
聞き覚えのない声だ。
ルナ「はぁい・・・zzZ」
???「やっと起きた。ご機嫌いかが?」
私は何者かの声にやっとこさ起きる。
ルナ「うにゅ、あなたはだぁれ〜?」
私がまどろみの中、目を開けると目の前には紫色のドレスを着たいかにもスタイルの良い女の人が立っていた。でも、周りが薄暗いせいか顔の表情がはっきりと窺えない。
???「私?私は・・・八雲紫というの。初めましてかしらね?」
ルナ「八雲紫ちゃん?」
表情の見えないその女性は自らを「八雲紫」と自己紹介してきた。
ルナ「あ、うん!初めましてだね!よろしく〜♪」
私も挨拶をし返す。なんだか不思議な感じの女性だなぁ。
紫「ふふ♪突然だけど、あなたは”幻想郷”ってご存知?・・・知らないかしら?」
ルナ「ぬ?幻想郷??」
幻想郷・・・?聞いたことない所だなぁ。どこかの地名かな?
紫「幻想郷というのは、忘れ去られたものが辿り着く場所なの。いないとされるモノが存在する世界。妖の類いも・・・」
ルナ「おおーそうなんだ?不思議な世界なんだね〜」
なんだか現実とは違う感じがして興味を引かれる。
紫「あら、興味があるという顔ね?ふふ、私もあなたに興味があるの」
ルナ「ふぇ?私に?」
紫という女性は何か意味ありげな笑みを浮かべてる・・・そんな風に見えた。
紫「せっかくだから色々と聞いても良いかしら?」
ルナ「うん、いいよ〜♪」
元気よく答える。
紫「じゃあ、あなたの性別を教えてくれるかしら?」
ルナ「見ての通り女の子だよ〜♪」
紫「次にあなたの名前はなんというのかしら?」
ルナ「私はね、岩崎ルナっていうよ〜っ♪」
と、愛想良く言ってみた。
紫「ルナちゃん。ふふ、良い名前ね」
ルナ「えへへ、ありがと〜♪」
褒められた。ルナは照れながらニコっと笑う。
紫「あなたは・・・お人形は好きかしら?」
ルナ「うん!大好きだよ〜♪可愛いお人形いっぱい持ってる!」
そう、私の部屋には可愛いお人形がいっぱい置いてある。寝る時も可愛いお人形と一緒。
紫「そう、それは良かったわ。そうこなくっちゃね」
ルナ「ふぇ?どうして〜?」
?どういうことだろう?と疑問を浮かべるルナ
紫「ふふ、そんなこと聞いてどうするのかって顔してるわね?”備えあれば憂いなし”というでしょう?これはあなたを示す大事なモノですもの。しっかりと管理しなくては、ね?」
ルナ「それってどういう事〜?」
ルナがその言葉の意味を問おうとしたその時──
博麗神社前〜 博麗神社前〜・・・
紫「あら、そろそろ時間のようですわよ?時間というものは本当に早く過ぎてしまいますわ」
え?時間って?
ルナ「ねぇ待って!紫ちゃんはどうして私に話しかけてきたの??」
こっちも聞きたいことはたくさんある。
紫「ふふ、もしかしたらまた会えるかもしれませんわね。楽しみにしてますわ」
紫はそう言い残すとルナの問い掛けに答える事無く、暗闇の中へ消えていった。
ルナ「え、ちょっと待っ──」
─ガタンッ!
ルナ「ハッ!?」
バスが停車した振動で目が覚めるルナ
ルナ「こ、ここは・・・あ、そうだバスに乗ってたんだ」
今の自分の状況を認識する。バスの車内を見渡すとルナ以外の乗客は誰もいなかった。乗車した時はたくさん人が乗っていたのだが、どうやらルナが眠っている間にほかの乗客は途中の停留所で降りていったようだ。
運転手「お客さーん、終点ですよー」
と、運転手から声をかけられる。
ルナ「あ、はい!今降ります〜!」
運転手に促されてルナは手荷物を抱え、出口で運賃を支払うといそいそとバスを降りる。外に出ると夏の暑い空気が肌に触れてじわっと汗を掻く。ルナが降りるとプシューという音と共に扉が閉まり、バスが土煙を上げながら走り去っていく。停留所の周囲の木々では、蝉が忙しく鳴いていた。
ルナ「ここが博麗神社か〜、やっと着いたなぁ」
色あせた赤い鳥居を見上げながら少々くたびれた様子のルナ。それもその筈、ここまで辿り着くには鉄道の最寄駅から降りてもバスで2、3時間はかかる距離にある神社だからだ。
ルナ「次のバスは・・・、・・・午後4時の便かぁ」
バスの時刻表の欄を指でなぞりながら次にバスが来る時間を調べた。ついでに携帯で現在の時刻も確認する。
ルナ「今は12時40分だから・・・うん、十分見て回る時間はあるね!」
ここは、かなりの田舎なのでバスの発着数も指折り数えられるくらいに少なく、しかも数時間おきという。ちゃんと時間を確認しておかないと、もし乗り遅れたら大変。
ルナ「んーっ!っと、よし♪」
確認を終えると軽く伸びをし、抱えてた鞄を肩から斜め掛けに背負う。
ルナ「あ、ちょっとここで一枚(パシャ」
デジカメを取り出して、鳥居の前で一枚写真を撮る。
ルナ「じゃあ、さっそく見に行ってみようっと♪」
そして、鳥居をくぐって数十段あるであろう石段を軽い足取りで登り始めた。
普段はよく運動をしているから体力には自信がある。このくらいの石段は大したことない。休むことなく長い石段を登り切り、辿り着いた先にはいかにも古そうな神社があった。
ルナ「おおー、これが博麗神社かぁ。何かありそうな雰囲気!」
ルナの目がキラキラ光る。少しの間、その感動に浸る。境内を見回すとルナ以外の人間の姿はどこにも見られない。やっぱり管理する人が誰も居ない廃神社なんだろう。
ルナ「あ、神社に来たんだからお賽銭を入れてお祈りしなきゃ!」
鳥居の所から拝殿までまっすぐ伸びる石畳の上を通り、拝殿の前までやってくる。そして、ポケットから財布を取り出すと小銭入れの中身を見る。
ルナ「ご縁があるようにって事で五円玉五円玉・・・あれ?今はないや。じゃあ、思い切って500円玉を入れよ〜っと♪」
小銭入れから500円玉を取り出すと目の前に置いてある、あちこちが痛んだお賽銭箱にお賽銭を投げ入れる。ルナが投げ入れたお賽銭はチャリーンと良い音を立てながらお賽銭箱の中へ収まる。そして、拝殿の軒下から吊るされている鈴をシャランシャランと鳴らすと2回お辞儀をし、2回拍手してからお祈りをする。
ルナ「何か良いことが起きますように〜っと♪」
お祈りを済ませると最後にお辞儀をする。このお祈りで後々思いもよらぬ事が起きようとは今のルナは知る由もなかった。
ルナ「じゃあ、他を見て回ろうかな♪」
さっそくカメラを手に境内の中を見て回った。
ルナ「これはいかにも古そう!(パシャ)あ!あっちのも写真に撮ろう!(タタッ」
古ぼけた神社の拝殿を始め、その拝殿に隣接する母屋、水の枯れた手水舎、ひびの入ってるボロボロの古い灯篭や狛犬の石像、何も掛かってない絵馬掛所などなど色んなものを写真に撮った。
時間を気にせず写真を撮りに歩き回ったルナは、さすがに疲れてきたので少し休憩することにした。良い感じに木を見つけるとその木の根元に座る。真っ青で雲一つない空からはサンサンと太陽の光が照りつけていた。
水筒に入れおいたお茶で喉の渇きを潤し、持っていたハンドタオルでふき出てくる汗を拭う。
ルナ「はふぅ〜・・・いっぱい写真を撮ったなぁ。やっぱり来て良かったぁ」
ルナは、たくさんの写真が記録されているデジカメを見つめる。普通の人は、大抵写真に撮らないであろう古い物でもルナの目には写真に撮りたい良い被写体として映る。
ルナ「お外は暑いけど、木陰は涼しいね〜っ」
境内は太陽の日が差してとても暑いが、時折吹き抜ける風が汗をかいて湿った肌を撫でるように吹くのでそれがとても心地よい。
ふと、携帯で時間を確認する。気付くと時間は午後2時を回っていた。
ルナ「ふむ、もうちょっとだけ時間あるね。どうしようかなぁ?・・・あ、そういえば、境内の脇に裏山の方へ続く道を見つけたけど、あの先は何かあるのかなぁ?」
休憩を終えた後、鞄を手に境内の脇にある裏山へ続く道を歩き始めるルナ。途中まではある程度道として整備されていたけど、段々と草木が生い茂る獣道っぽくなってきた。耳には、草が風に擦る音、蝉や鳥の鳴き声しか聞こえてこない。
ルナ「ん〜、やっぱこの先は何もないかな?戻ろうかな」
と来た道を引き返そうとしたその時──
ルナ「わふっ!?」
一陣の風が吹き、ルナの被っていた麦わら帽子が飛ばされる。
ルナ「あ!帽子!」
風に飛ばされた帽子は、ふわっと舞いながら少し離れた草むらの上に落ちた。ルナは帽子を拾おうとし、草むらに近づく。そして、帽子に手をかけた時、それと同時に何か小さいものがルナの視界に映る。
ルナ「ん・・・っ?あれ・・・なんだろう?」
ルナが目を凝らしてみると背丈は2頭身くらいと小さい。小動物というわけではなく、人の形をしたお人形っぽい見た目。バスの中で見た夢に出てきた女性になんとなく似てる気がする。ルナが不思議そうに見つめていると──
???「・・・!っ」
ルナの視線に気付いたのか、お人形っぽいそれはルナの方へ振り向いてこちらの様子を窺ってるかと思えば突然、逃げるように草木の間を抜けて走り去っていく。
ルナ「あ、待ってー!」
気になったルナは、帽子を被ると急いでお人形の後を追いかける。草木が茂る山道での追いかけっこ。その最中、途中途中でルナの事を待ってくれてるが、まるでついて来てと言ってるかの様子だ。ある程度の距離まで近づくとその度にお人形はまた走り出す。
ルナ「はぁ・・・はぁ・・・っ、どこまで行くの〜・・・っ!」
森の中は、蒸し暑く吹き出る汗が止まらない。その後、お人形を追いかけ走り続けること数分。やがてルナは森の奥にある湖に辿り着くが、その近くでお人形を見失ってしまう。
ルナ「あれ、見失っちゃった・・・。どこ行ったのかな?」
と、辺りの草むらを探していた時、湖の畔で佇んでいるお人形を発見する。
ルナ「あ、いた!」
ルナは少しの間、草むらからお人形の様子を窺っていたが、お人形は畔で佇んだまま動かない。意を決したルナは、走って荒くなった息遣いを深呼吸して整えると湖の畔に居るお人形にゆっくりと近づいていく。3mほどの距離まで近づいた時、お人形はルナに気付いてニコっと笑った。そんな風に見えた。
その瞬間、カッ!と眩い光がルナの視界を瞬く間に包んだ。
ルナ「きゃあっ!?」
ルナは眩い光に耐えることが出来ず、思わず目を閉じた。すると耳にどこか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
???「ようこそこちら側の世界へ 幻想郷はすべてを受け入れます それはそれは残酷なことですわ・・・」
第1章 「博麗神社」END
16/07/31 11:30更新 / D.E.A