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第2章 「幻想郷」
ルナ「きゃあっ!?」
突然の眩い光でルナの視界は一瞬で包まれた。目も開けられないほどの光の中でルナは、自分に何が起きたのか分からず、ただじっとしている事しかできなかった。数分の後、やがて光が収まってくるとルナはその瞳をゆっくりと開いた。

ルナ「あれ・・・ここは?」
ルナはゆっくりと辺りを見渡した。サンサンと輝く太陽、その太陽に照らされて輝く湖、生い茂る緑の木々・・・さっきと何も変わらずの風景だった。

ルナ「確か・・・あの子をここまで追いかけてきて・・・近づいたらピカッと光って、それで・・・あ!さっきの子は・・・!?」
どこを見てもさっき見た、あの2頭身の生き物の姿はどこにもなかった。

ルナ「うーん・・・何かの見間違い・・・?それとも幻だった・・・のかな?」
ルナの首を傾げ、数分の間自分の見てたものは現実のものだったのかと悩んだ。

ルナ「うむむ・・・悩んでもしょうがないや。そろそろバスも来るだろうし、もう帰ろうかな?」
ルナはそう言うとその場を後にしようとしたその時──


ガサガサ ガサガサ


ルナ「うん?」
近くの草むらが異様に揺れていたのである。


ガサガサ ガサガサ


ルナ「何かいるのかな??狸かな?それともうさぎ?」
ルナは、それが気になってがさがさ揺れている草むらの方へゆっくり歩み寄っていった。草むらまであと数歩の距離まで近づくと、草むらの中から何かがぴょこんと飛び出してきた。その正体は──

ルナ「・・・え?」
現れたのは、暗めの茶色い髪の毛に赤色の巫女服を着て、手にはお祓い棒を持った可愛らしい2頭身の生き物だった。

ルナ「かかか・・・可愛いーーーー♪♪」
予想外に可愛いものの登場にそれを見つめながらルナの目がキラッキラ輝く。その生き物もルナの方を見つめながら様子を窺っている。
2人は、お互いにその場から動かず視線を合わせること数秒。

???「おい!何ぼさっとしてんだ!?」
ルナ「ふえっ!?」
いきなり大声が聞こえ、ルナは声のした方へ視線を向けると金髪の少女がこちらに駆け寄ってくる。するとその少女は

???「お前!人形が出てきたのになんで何もしないんだよ!?」
ルナ「え?ええ??」
ルナはその言葉の意味が理解できず困惑する。そんなルナの様子を見ると金髪少女はこう尋ねてくる。

???「ん?お前・・・人形の事を知らないのか?」
ルナ「そこにいる可愛い子の事?」
ルナがそう答えると金髪少女は困ったような顔をした。

???「あー・・・もしかして、外から来たのか?」
と頭をかきながらそう問いかけてくる。

ルナ「う・・・うん、まぁ・・・そんな感じかな・・・?」

ルナが答えると金髪の少女は、小さくため息をつくと巫女服の生き物へ視線を向けた。

金髪少女「いいか?目の前にいるあいつが人形だ。ある日、いきなり現れて好き勝手暴れてやがる」
ルナ「お人形が暴れる?何それ可愛い!」
金髪少女「おいおい(汗」
あの巫女服のお人形が暴れるのだろうか?あんな可愛いのが多少暴れたっていいんじゃないかなって思うルナ。

金髪少女「草むらなんかから飛び出して攻撃してきたりするんだ」
ルナ「へぇ〜」
金髪少女「自分も人形を持っていれば対抗できるんだがお前は・・・持ってるわけないか」
と、2人でそんな会話をしてると巫女服のお人形がぴょんぴょんを飛び跳ねた。自分を除け者にされて怒っているのだろうか、手に持ったお祓い棒をブンブンと振っている。

ルナ「ん?どうしたのかな?」
金髪少女「おっと!今はそんなこと話してる場合じゃないみたいだな。習うより慣れろだ!」
すると金髪少女は、どこからか正八面体の形をした綺麗な黄色の宝石みたいなものを取り出した。

金髪少女「私の人形を貸してやるから実際にやってみな!」
ルナ「え?あなたお人形持ってるの?・・・でも、やれって言っても私どうしたら・・・」
金髪少女「安心しろ!私が教えてやるからさ」
少女の心強い後押しにルナは覚悟を決めた。

ルナ「う、うん!私やってみる!」
金髪少女「そうこなくっちゃな!ちなみにこいつの名前は”まりさ”だ!思いっきりやれ!」
金髪少女から正八面体の宝石を受け取り、ルナは目の前の巫女服人形に向かい合う。

ルナ「いっけぇ!まりさ!」
ルナの投げた宝石は、放物線を描きながら飛び、やがて輝き始め、その形は巫女服人形と同じくらいの2頭身のお人形に変化した。その姿は”まりさ”を貸してくれた少女と同じ見た目だった。その光景を見て

ルナ「わぁ!すごーい!」
金髪少女「感動してる場合じゃないぞ!さぁ、何でもいいから指示を出してみろ!そしたらその通りに人形が動いてくれるから」
ルナの前に居るまりさ人形は、箒をぶんぶん振ってやる気満々な様子。その様子を見てルナは指示を出した。

ルナ「よし、まりさ!攻撃!」
まりさ人形は、ニッ!と口角を吊り上げると地面を蹴って飛び上がった。そして箒を構え、巫女服のお人形へ向けて技を放つ。
放たれた橙色の粒弾は真っ直ぐ巫女服人形へ飛んでいき、いくつか着弾する。巫女服のお人形は、まりさの攻撃を受けたが何ともなさそうな様子で再び構えをとった。

ルナ「おお、すごいすごい!」
ルナは思わず拍手をした。

金髪少女「おい、拍手してる場合じゃないだろ!次、反撃が来るぞ!」
ルナ「ふえ!?」
金髪少女に警告された通り、巫女服の人形が赤い粒弾を放ってくる。ルナは咄嗟に回避するように指示した。

ルナ「危ない!?避けてーっ!」
しかし、指示が遅れたためまりさ人形は、粒弾をいくつか食らってしまう。

ルナ「あわわっ!?大丈夫かな!?」
そんなルナの心配を余所にまりさ人形はむくりと立ち上がる。

金髪少女「あんな程度の攻撃、大したことないぜ」
と、金髪少女は笑ってみせる。

金髪少女「よし、次だ次!」
ルナ「う、うん!まりさ、攻撃だー!」
ルナの指示にまりさ人形は再び動き出す。巫女服人形も立ち向かう様に飛び上がった。
まりさ人形は先程と同じ、橙色の粒弾を放つ。相手も負けじと赤い粒弾を放って、互いの弾を相殺させる。

ルナ「負けるなぁ!まりさー!」
まりさ人形は、空中へ飛び上がり、力を溜める動作を行うとさっきよりも大きい弾を発射した。巫女服人形も粒弾を放つが、まりさ人形の弾の勢いを止めることは出来ず、そのまま巫女服人形に直撃する。
まりさ人形の攻撃を食らって、巫女服人形は後方に大きく吹っ飛ばされる。

ルナ「おお、倒した!?」
金髪少女「へへっ、さすが私の人形だな!」
様子を見てるルナの隣で金髪少女は、よくやったとまりさ人形を褒めた。
だが、そんな二人を余所に離れた所で吹っ飛ばされた巫女服人形はむくりと立ち上がる。

ルナ「えっ!まだ倒しきれないの!?」
金髪少女「なかなか手ごわいな。お前じゃ倒しきれないか・・・?」
ルナ「う、うーん・・・(汗」
金髪少女「仕方ない・・・私が代わりにやるしか」
ルナ「でも、あのお人形から全然敵意を感じないんだけど・・・今の戦闘でどっちも傷ついてるし、できればこれ以上は戦わせたくないんだけど・・・」
ルナがそう話し出したその時、赤い巫女服のお人形は、ただ真っ直ぐにルナの方を見つめた。

ルナ「ん?どうしたのかな?」
ルナはその様子を見て、どうしたのだろうと首を傾げる。金髪少女は巫女服人形の様子に、違和感を感じてるようだ。
金髪少女「おい、気を付けろ。なんか様子が変だ。何か企んで・・・」
次の瞬間、巫女服人形はタタタッとルナの方へ走ってきて、彼女の足に抱きついた。

ルナ「え?え?」
ルナはいきなりの出来事に戸惑っていた。足元を見ると巫女服人形は、足に抱きついたまま嬉しそうな笑顔で頬擦りをしている。

ルナ「これってどういう事〜?」
金髪少女「おいおい・・・まさか、お前に懐いたのか?」
ルナは、足に抱きついていた巫女服人形を抱き上げる。ルナの腕の中で巫女服人形は幸せそうな表情をしていた。

ルナ「様子から見ると・・・私の事を気に入ってくれたのかな?」
金髪少女「おかしいな・・・。普通の人形は封印の糸を使わなきゃ言う事を聞かないはずなんだが・・・」
ルナ「わぁ、近くで見るともっと可愛いなぁ♪」
金髪少女はルナに抱かれている巫女服人形を見つめ、次にルナへ視線を移す。

金髪少女「その人形が特別なのか・・・?いや、お前が・・・なのか?」
金髪少女は、頭をぽりぽり掻いて少し悩んでいる様子。

金髪少女「うーん・・・よく分からんな」
ルナ「にゅ?」
金髪少女「まぁ、分からない事をぐだぐだと考えてもしょうがない。とりあえず、博麗神社で色々教えてやるからついてきな!」
ルナ「博麗神社?・・・あ!」
ルナは、その言葉を聞いて何か思い出したようだ。そう、彼女が少し前まで見て回ってた神社だということを。

金髪少女「おっと、自己紹介が遅れたな!私は霧雨魔理沙っていうんだ」
ルナ「魔理沙ちゃん!私は岩崎ルナっていうよ♪よろしくね〜♪」
魔理沙という少女は、まりさ人形を抱き上げて元の大きさに戻すと鞄にしまう。そして二人は互いに自己紹介をした。
その後、ルナと魔理沙は山道を下り、博麗神社の境内まで戻ってくる。そこでルナは、ふと拝殿の方へ視線を向けた時ある事に気付く。

ルナ「あれ?あれれ?」
ルナが見たものは、博麗神社の拝殿が綺麗になってたことだった。他にも鳥居や母屋、境内のすべてのものが綺麗になっていた。

ルナ「おかしいなぁ・・・確か結構古かったような感じだったんだけど・・・こんなに綺麗だったかな?」
ルナがそう拝殿を見ながら不思議そうに考えていると魔理沙から声を掛けられる。

魔理沙「おい!何突っ立ってるんだ?」
ルナ「あ、ごめんね!すぐ行く〜!」
ルナは、慌てて魔理沙の方へ駆け寄っていく。魔理沙に案内され、母屋の中へ入っていき、ある部屋の前までやってくる。

魔理沙「こっちだこっち」
そして勢いよく襖を開け、中へ入っていく魔理沙に続いてルナも入っていく。

ルナ「お邪魔しまーす」
ルナは魔理沙に手招きされ、部屋に入ると中には巫女服を着た緑髪の少女がいた。

緑髪の少女「あ、魔理沙さん、お客さんですか?」
魔理沙「おう!」
ルナ「あ、こんにちわ〜♪(わぁ、可愛い巫女さんだなぁ〜)」
緑髪の少女「こんにちわ♪どうぞこちらへいらしてください」
ルナ「わぁ、ありがとうございま〜す♪」
ルナは緑髪の少女に促され、居間の席に座る。その後、出されたお茶で一服するルナ。れいむ人形は、ルナの隣で藤原煎餅を食べている。

緑髪の少女「所でどうしたんですか?何かありました?」
魔理沙「まぁ、色々あってな。実はな──」
魔理沙は、さっきあった事を簡単にまとめて話すと緑髪の少女は、ぽんと手を叩いて何か理解したような様子で話し始める。

魔理沙「──というわけなんだ」
緑髪の少女「ふむふむ・・・なるほど。それでルナさんをこちらまでお連れしたということですね」
ルナ「なんか色々起きちゃって全然分からなくて・・・えへへ」
緑髪の少女「そう言う事でしたら説明は私に任せてください!」
魔理沙「よっ!」
ルナ「おお!(ぱちぱち」
今までの経緯を聞いた緑髪の少女は、任せてと言わんばかりに自らの胸にポン、と拳をぶつけた。

魔理沙「ああ、説明は苦手だからな。そうしてくれるとすごく助かるぜ!・・・楽も出来るしな」
呆気からんと笑う魔理沙に対して緑髪の少女は苦笑いを浮かべる。コホンと咳払いすると少女は話し始めた。

早苗「私は、東風谷早苗といいます」
ルナ「早苗ちゃん!私は岩崎ルナって言うよ〜、よろしくね♪」
早苗「はい、宜しくお願いします♪」
ルナと早苗は自己紹介をした。

早苗「ここは、ルナさんの住んでる所から結界で隔離された場所で幻想郷というのですけど・・・」
ルナ「幻想郷・・・?どっかで聞いたような・・・ん〜・・・あ!」
早苗「どうかされました?」
ルナ「あ、ううん!なんでもないよ〜」
早苗が言った言葉に何か引っかかるものを感じ、少し考えた後、ハ!っと思い出したルナ。そう、夢の中で話しかけてきた女性が言っていた”幻想郷”という言葉だった。

ルナ「ここが・・・その幻想郷?」
早苗「はい、そうなりますね。ルナさんは、何かの拍子にこの幻想郷へ迷い込んでしまったものと思われます」
ルナ「ほえ〜」
魔理沙「まぁ、早苗もその外から来た人間なんだぜ?」
ルナ「へ?そうなの〜?」
早苗「はい、私も元々ルナさんと同じ、外からやってきたんです」
ルナ「わぁ、同じだね♪」
早苗「ですね♪」
魔理沙「おいおい(汗」
なんだか気の合いそうな2人。

早苗「ととっ、話を戻しますね。その幻想郷なんですが今、この世界にはなぜか人形で溢れかえってます」
早苗は困ったような顔で口を開く。
ルナ「お人形って・・・この子の事?」
ルナは、隣で藤原煎餅を食べていたれいむ人形を抱き上げ、早苗の前に出す。

早苗「はい、そうです」
ルナ「魔理沙ちゃんも持ってたよね?さっき子と戦ってたし」
魔理沙「そうだな」
早苗「春頃からでしょうか?各所でいきなり現れ始めたんですが、未だにその原因は分かってません」
ルナ「そうなんだぁ、いっぱいいるんだぁお人形・・・」
ルナの頭の中では、あちこちからお人形が出てくるドリームワールドが展開されていた。

早苗「あまりの人形の数に私たちも対応しきれてない現状です」
ルナ「(ほわわ〜♪♪)」
魔理沙「・・・どうしたんだ?おーい」
ルナ「ふぁ!?」
魔理沙がルナの顔の前で手を振るとルナはやっと我に返る。

魔理沙「大丈夫なのか?疲れてるのか?」
ルナ「へっ!?ううん!大丈夫!」
早苗「それでとりあえず結界を強めて外の世界には影響が出ない様にしている筈なんですが・・・ルナさんが迷い込んでしまった以上、完全ではなかったようですね」
ルナ「結界??」
早苗「しかも厄介な事に結界が強いままだとルナさんは元の場所に戻れないはずなんです」
ルナ「えええーーーっ!!!?」
れいむ人形「!?」
ルナは声をあげて驚いた。その声にれいむ人形がビクッと驚いた。

魔理沙「驚きすぎじゃないか?」
早苗「仕方ないですよ。結界を司っている霊夢さんも異変を解決するために出払っていますし・・・」
ルナ「うむむ・・・そっかぁ(汗」
ルナは、やっと今の自分が置かれている現状が理解できた様子。

ルナ「このままじゃ帰れないとなると・・・これからどうしたらいいのかな?」
全然知らない異世界にいきなり放り込まれたルナに色んな不安が圧し掛かる。そんな時に魔理沙が明るい口調で口を開いた。

魔理沙「ま、そんな不安がることはないぜ!」
ルナ「魔理沙ちゃん?」
魔理沙「私がパパっと解決してやるからさ」
ルナ「おお!魔理沙ちゃんカッコいい!」
魔理沙「だからお前は、ここで早苗とお茶でもすすってな!」
ルナ「えー、私も何かやりたいよ〜!」
駄々をこねるルナ。

魔理沙「なんだ、お留守番じゃ不満か?」
ルナ「待ってるだけは嫌だもん〜」
早苗「ルナさん・・・」
魔理沙「やめとけやめとけ。お前に出来る事なんて・・・」
っと、魔理沙はそう言いかけた時、何か思いついたかのようにニヤっと口角を吊り上げた。

魔理沙「・・・いや。それなら私がお前を試してやるぜ」
ルナ「え?」
早苗「魔理沙さん?一体何を・・・」
魔理沙「さっきついてきた人形がいるだろ?そいつを私の人形と戦わせるんだ」
ルナ「えええ!この子と!?」
魔理沙の突然の提案にルナは、れいむ人形を自分の後ろに隠した。

魔理沙「・・・とは言ってもお前は初心者だからな。準備ぐらいはさせてやるよ。準備が整ったら教えてくれ」
魔理沙はルナを見て余裕綽々な様子。

ルナ「う、うーん・・・」
魔理沙「逃げるのはナシだぜ?」
ルナは悩んでいた。成り行きだったとはいえ、さっきの戦闘ではこの子を傷つけてしまった。自分が元の世界に戻るためにこの子が傷ついてしまっていいのかどうか・・・。

ルナ「どうしようかな・・・」
後ろに隠したれいむ人形を見つめながら悩むルナ。そんな様子を見たれいむ人形は、大丈夫!と言っているかのように元気そうに手に持ったお祓い棒を振っていた。

ルナ「いける?大丈夫?」
人形を見つめるルナの目には、人形がコクリと頷いた様に見えた。

ルナ「えへへ・・・うん!じゃあ、やろうか!」
と、意気込むルナ。そんなルナを見て魔理沙は

魔理沙「へへっ、そうこうなくっちゃ面白くないぜ」
魔理沙もやる気まんまんな様子。ルナたちは勝負のため、母屋の外に出て拝殿の前に対峙する。早苗は、そんな二人の様子を見守っていた。

魔理沙「よし!手加減はしないから全力で掛かってきな!」
ルナ「望むところだよ!いくよれいむ!」
魔理沙が人形をくり出すとれいむ人形は勢いよくルナの腕の中から飛び出していった。

ルナ「れいむ!攻撃!」
ルナの言葉にれいむ人形は弾幕を放った。

魔理沙「まりさ!陰の気力だ!」
まりさ人形はピンク色の粒弾を放ってれいむ人形の弾幕と相殺させる。

ルナ「く・・・っ!」
魔理沙「どんどん行くぜ!まりさ、陽の気力だ!」
怯んだルナを尻目に魔理沙は矢継ぎ早にまりさ人形に指示を出す。広い範囲に散らされた粒弾がれいむ人形を襲う。

ルナ「あわわっ!れいむ避けて!!」
だが、指示が遅れたため、れいむ人形は粒弾をいくつか食らってしまい吹っ飛んでしまう。

ルナ「ああっ!」
魔理沙「まだ始まったばかりだぜ?ほら、早く来いよ!」
れいむ人形は少し離れた所で倒れている。

ルナ「れいむ!大丈夫!?」
そんなルナの呼びかけにれいむ人形は、むくりと立ち上がりお祓い棒を振り回している。

ルナ「まだまだいけそうだね!」
早苗「ルナさん、人形に技の指示を出してください!」
ルナ「え?技?」
ルナの言葉に早苗は頷いた。れいむ人形はルナの指示を待っている。

ルナ「・・・うん!れいむ、こっちも陰の気力だ!」
ルナの指示にれいむ人形は複数の粒弾を発射した。

魔理沙「うおっと!」
まりさ人形は回避行動をとるが、数発被弾した様子。

ルナ「どうだぁ!」
魔理沙「へへっ、やるなぁ!。いけ!陽の気力!」
体勢を立て直したまりさ人形はまた広範囲に粒弾を放つ。

ルナ「陰の気力!」
れいむ人形も負けじと粒弾を放った。放たれたお互いの粒弾はいくつか空中で相殺したが、まりさ人形が放った粒弾が多かったので相殺されなかった粒弾がれいむ人形に命中。被弾する中、れいむ人形はなんとか攻撃に耐えていた。

ルナ「あう・・・やばいよぉ・・・!」
れいむ人形はなんとか持ちこたえたがダメージが蓄積したせいか、少しふらふらしている。

魔理沙「お、お疲れの様子だな?そろそろトドメと行くか!」
ルナ「まずい・・・!このままじゃ・・・!」
魔理沙はトドメの指示をまりさ人形に出した。まりさ人形は技の威力を上げるため力を溜めていく。

魔理沙「トドメだ!陽の気力だ!」
まりさ人形は粒弾を放つ。さっきよりも粒弾の数も大きさも違う。まともに食らえば一たまりもない。放たれた粒弾は広範囲かられいむ人形に向かって飛んでいく。

ルナ「(まずい・・・私が・・・私がなんとかしなきゃ・・・!!)」
その時ルナは──

ルナ「れ、れいむーーーっ!!」
ルナの叫びに呼応、れいむ人形はお祓い棒を持ち直して構えた。そして、れいむ人形の周りに六角形の結界が張られ、それに触れた粒弾をすべて消滅させた。

魔理沙「な、何っ!?」
魔理沙は驚いて一歩後ずさりした。

早苗「こ、これは・・・!」
早苗も今の光景を見て驚いている様子。

ルナ「いけ!れいむ!」
れいむ人形は、ルナの掛け声に地面を蹴ってまりさ人形に急接近した。

魔理沙「くっ・・・!返り討ちにしてやれ!」
まりさ人形は弾幕を放ち、返り討ちにしようとする。しかし、れいむ人形は怯まずにまりさ人形へ向かっていく。

ルナ「今だ!」
れいむ人形は、放たれた粒弾を紙一重のところで次々とかわしていき、まりさ人形に肉薄、そしてそのままの勢いで体当たりする。体当たりされたまりさ人形は後方へ吹っ飛ぶ。

魔理沙「ああっ!?」
ルナ「れいむ!トドメの幻覚弾だぁ!」
吹っ飛ばされたまりさ人形へ間髪入れずにれいむ人形は、陰の気力より威力のある弾を撃ち込む。れいむ人形の攻撃をまともに食らったまりさ人形は、そのまま地面に落下、ゴロゴロと転がって倒れた。戦闘不能になったのか起き上がらない。

魔理沙「なん・・・だと・・・!?」
魔理沙は思いもよらぬことに驚きを隠せないようだ。

ルナ「やった!やったぁ♪」
二人での初めての戦いは、見事に白星で飾れた。ルナは駆け寄ってきたれいむ人形を抱き上げ、初勝利した喜びを分かち合う。れいむ人形もなんだか嬉しそう。

まりさ「なんだよ、初めてのくせにやるじゃないか」
自分の人形を拾い上げてきた魔理沙はそう言いながら歩み寄ってきた。

ルナ「2人で力を合わせて戦った結果だからね♪ね〜っ♪?」
れいむ人形に笑顔でいうとれいむ人形もグッ!と親指を立てて答えた。

魔理沙「それならお前にも何かできるかもしれないな」
早苗「やりましたね!ルナさん!」
ルナ「うん♪」
魔理沙「じゃ、後は早苗に任せて私はもう行くぜ。霊夢に負けてられないからな!」
魔理沙は、そう言うと2人に背を向けて足早に境内の外へ飛び出していった。後にはルナと早苗が残された。

早苗「・・・行っちゃいましたね」
ルナ「だね〜」
魔理沙の後姿を見送った後、早苗が口を開いた。

早苗「私は、ルナさんに人形が懐いたことが気になるんですよね」
ルナ「私に?」
早苗が少し興味ありげな態度でルナとれいむ人形を見る。

早苗「はい!強化された結界を超えて越えてきたこともありますし、ルナさんには何かある気がするんです!」
ルナ「うーん、自分じゃよく分かんないけどね・・・えへへ」
ルナは、少し照れながらポリポリと頬をかいた。早苗は、何か思案した後、ルナにある事を提案をする。

早苗「そうだ!人里に人形について調べている人が居たはずなので、そこへ行けば何か分かるかもしれませんね」
ルナ「人里?」
早苗「はい、私はここのお留守番を頼まれているので一緒には行けませんが人形がいれば大丈夫です。あそこでは色々な情報が聞けると思いますし、まずは人里へ行ってみてはどうですか?きっとためになりますよ!」
ルナ「ほうほう・・・うん、分かったよ!じゃあ、人里へ行ってみるね!色々ありがとね早苗ちゃん♪」
早苗「いえいえ、どう致しまして♪」
ルナは人里への道を教えてもらい、早苗に礼を言うとれいむ人形をつれて、さっそく人里へ向かおうとした。石畳の上を走って鳥居をくぐろうとしたその時、早苗に呼び止められる。

早苗「あ、ちょっと待ってください!」
ルナ「んん?」
早苗が鳥居の下まで何かを抱えて駆け寄ってきた。
早苗「間に合ってよかった・・・!人形と一緒とはいえ、いきなり一人で山道を抜けるのは大変でしょうから使えそうなものを探してきたんです!」
ルナ「おお!さすが早苗ちゃん!」
早苗「はい、どうぞ♪」
ルナは、早苗から赤い糸のような束と色つきの箱を手渡された。

ルナ「なあに?これ?」
ルナが不思議そうに渡されたものを見ていると早苗が優しく説明してくれる。

早苗「一つは封印の糸と言って、飛び出してきた人形にこれを使って”封印状態”にしてから倒すと人形を仲間に出来るんです」
ルナ「へぇ〜、そうなんだ〜!」
早苗「もう一つは人形箱と言って、これは人形を仲間にした時に持ちきれなくなった人形を入れておくための箱です。これさえあれば、いくら人形を捕まえても大事にしまっておけますから、ぜひ活用してみてください♪」
ルナ「いいねぇ♪ありがとう!」
早苗「い〜え♪それでは、頑張ってくださいね!」
ルナ「うん、頑張るね!それじゃあ、行ってきまーす♪」

早苗に見送られながら神社を後にしたルナ。
全然知らない世界での冒険、一体どんなことが待ち受けてるのだろうか。ルナの頭の中はドキドキワクワクな事でいっぱい。期待に胸を膨らませて人里へと向かうルナは、とても軽やかな足取りで駆けて行く。もちろん、傍にはれいむ人形を連れて。



第2章 「幻想郷」END
16/08/08 22:35更新 / D.E.A
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