14
僕はシミュレーション訓練を終え、一人で食堂で夕食を取り、自室に戻った。
シミュレーション訓練で模擬吸血鬼と戦ったが、防戦一方で、全く手が出なかった。
僕はいつになったら彼らのように戦えるようになるのだろうか。
僕はベッドで物思いにふけっていると、ドアのインターホンが鳴った。ドアの方に歩いてドアを開けると、いつもの三人が僕の部屋の前で待ち構えていた。ジャッキーとマルセルが両手に何か入ったポリ袋を持っている。レイラは二人から一歩離れたところにいた。なんだか不機嫌そうだ。
「…どうしたの」
僕が尋ねると、マルセルがすごいにこやかな顔で、右手のポリ袋を掲げた。
「何ってそりゃ…『歓迎会』だよ」
とても嫌な予感がした。
////////////////////////////////////////////////////////////////////
三人はまた僕の部屋にずかずかと入り込んで、思い思いの場所に座る。
「歓迎会って……今から何をするつもりなんだ。一応、明日は朝九時から予定があるんだけど」
「ん?あぁ、リーから聞いてる。ダニールのところに行くんだろ?大丈夫大丈夫、12時にはお開きにするからよ」
「ところでフェルディはシャワーは浴びた?」
「まだだけど…」
「じゃあ先に浴びてきなよ。歓迎会はその後で。シャワーが浴びれなくなるかもしれないからね…フフ!」
ジャッキーが何やら怪しい笑みを浮かべるので怖くて仕方ないが、言われた通りにシャワーを浴びることにする。
「…………ハァ……」
レイラが深いため息をついたのには気付かなかったふりをした。
シャワーを浴びて、着替えてシャワールームを出ると、床にたくさんの缶と瓶が置かれていた。
「これは……」
「酒だよ、酒。お前が来てからまだやってなかったろ?せっかくみんな非番だしな、やれるうちにいろんなことをやっとかねえとな」
そういうと、ジャッキーは使い捨てのプラスチックコップを取り出し、中に茶色の液体を注ぎ込む。
「治安悪……」
レイラが呆れたようにつぶやく。あの茶色の飲み物はそんなに治安の悪い飲み物なのか。というか、治安の悪い飲み物って何?
ジャッキーが一人ひとりにその飲み物を渡していく。全員にコップがいきわたると、マルセルがコップを掲げる。
「じゃあ皆さん!グラスを掲げてッ!!」
マルセルが号令をかけると、二人もそれに倣ってコップを掲げる。僕もみんなの真似をしてコップを掲げた。
「では!フェルディの入隊と我々の出会いと今日まで生きて酒を飲めることを祝してッ!!乾杯っ!!!!」
「「かんぱ〜〜〜ぃ!」」
各々がグラスを交わし、茶色の液体を一気飲みする。
僕も真似をして中の液体を一気飲みする。
が、むせかえった。なんだこれ、すっごいのどが焼けるように熱い。ジャッキーとマルセルが大爆笑する。
「ははははははっ!!ノリがいいなあフェルディは!!酒飲むのは初めてだろ?そんなに急がなくてもいいぞ!!」
「これはウイスキーって言ってね、アルコール40度くらいあるやつだからね!ゆっくり飲むといいよっ」
よく見ると、みんなコップの中のウイスキーはそんなに量が減っていない。飲む仕草をしただけだった。
「……やられた…」
レイラの「治安が悪い」という言葉の意味がやっと分かった。これは治安が悪い。
「まあこの『歓迎会』はここからだ。次はガチで一気飲みしてもらうからな」
「じゃあまず何からやる?」
「そうだなぁ〜…まあ王道にババ抜きでもやるか!負けたやつは一気飲み!」
「………負けたくな〜〜〜〜……」
「この前はリーにボコされたからねぇ〜、負けないぞ〜〜!」
こうして、治安の悪い歓迎会は始まった。
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////
「ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………」
マルセルが死にそうな呻きをあげながら床に横たわる。
午後十時半。『歓迎会』が始まって2時間が経とうとしていた。
マルセルが4回。僕が2回。ジャッキーが1回吐いた。僕のトイレはゲロ臭くて仕方ない。この後の部屋のことを考えるとすごく憂鬱になる。あの臭いはしっかりとれるんだろうなぁ…。
「マルセル、死んだね」
レイラは呟きながらウォッカとかいう透明なお酒を口に運ぶ。こいつ全然吐きそうにない。強すぎだろ。
「マルセルは最初の勢いだけだからね〜…」
ジャッキーは缶のお酒を飲む。さっきジャッキーは一回やってるのになんだか元気そうだ。
「ジャッキー一回やったのに元気そうだね…」
「?戻したらリセットだよ!まだ全然いけるけどもう少しゲームしちゃう?」
「いや……遠慮しとくよ」
かくいう僕は、1時間に一回くらいのペースでやった。正直もう限界だからずっと水ばっか飲んでいる。
「そういえばさ…ジャッキーは、あの鍛冶職人にあったことある?」
「ん?あぁ…まああるけど…」
ジャッキーは僕の問いに対して歯切れの悪い返事を返した。
「…苦手なの?」
「…う〜〜ん………そんなことはないんだけど…なんか無駄に優しいんだよね……優しすぎるっていうか…」
「へぇ〜〜……あのジジイ、ジャッキーに恋してるのかな?」
レイラが茶化すように言う。レイラも酔っているのか、普段しないような茶化しを入れる。
一方のジャッキーは、ううんと首を横に振る。
「そういう感じじゃないんだよね。なんかお父さんみたいな心配してくる。『嫌な男は周りにいないか』とか、『心配事はないか』とか『欲しいものがあったらいえ』とか、『困ったら何でも俺にいえ』とか…」
「やっぱ恋してんじゃん!!色目使うジジイなんだなあいつ!!」
レイラはげらげら笑いながらまたコップにお酒を入れる。レイラがヤバい奴に見える。
「う〜〜〜ん、そうなのかなぁ…」
ジャッキーは納得いかない様子で手元の缶のお酒を一口飲む。
レイラの方から「とびだせ!チャッピーちゃん!!」というかわいらしい声と爆音のBGMが流れてくる。
「リー、そのゲーム好きだねぇ」
「チャッピーが可愛すぎるんだよぉ……もうこの子無しじゃやっていけない……見ろ!この愛くるしいあざとすぎる可愛さ!」
レイラはスマホ画面を見せつけてくる。リスのような小動物が部屋の中で座っている画像だった。
「確かに可愛い……」
「お!フェルディわかってんね〜〜!フェルディもやろう!今!スマホゲームだから簡単にダウンロードできるし!」
レイラは僕のスマホを取り上げ、何か操作すると、スマホを投げ返してきた。画面を見ると、アイコンが増えている。チャッピーと書かれたそのキャラクターの顔が描かれたアイコンだ。試しにタップしてアプリを開くと、先ほど聞いた音声と全く同じ音声が流れてくる。
「まあ最初はチュートリアルにそってやれば大体わかると思う。わかんないことがあったらいつでも聞いて!」
「フェルディ捕まっちゃったね〜〜〜…」
ジャッキーが隣から哀れみの混じった笑顔を向けてくる。まあでもちょっと気になったし、全然苦ではなかった。
「レイラはゲームが好きなんだね…」
「リーって呼んでよ。なんかフェルディだけ呼び方違うのなんか変だし」
僕とジャッキーは顔を見合わせた。そして二人で笑ってしまう。
「え!?なんでそこで笑うの!?!?いいじゃん別に!!」
「うんうん、いいこといいこと、飲み会やって正解だったな〜って!」
「なにそれ!!も〜〜〜!!!なんか恥ずかしくなってきた!!帰る!!」
レイラ……リーは立ち上がり、大の字に寝転がって動かないマルセルに一発蹴りを入れる。
「おいマルセル!!起きろ!!!もう帰るよ!!お開き!!」
「……ぅ〜〜〜〜…蹴んなよ……やばい吐きそう…」
あ“あ”〜〜〜〜〜〜〜とリーは叫んでマルセルに肩をかして無理やり立たせた。
「おら帰るぞ!男だろ歩けや!!」
「ぅぅ〜〜〜〜〜〜〜」
リーはマルセルを引きずる感じにドアの方に連れ出す。そして、ドアの手前で立ち止まった。
「……まぁ、ハマったら私の部屋、来なよ。沢山グッズあるし。」
そう言い残して、リーはマルセルと一緒に部屋を後にした。
「リーと仲良くなれたみたいでよかったね!私は嬉しい!!」
ジャッキーの方を向くと、歓迎会で出たごみを片付けていた。それに気づき、僕も一緒に片づけをする。
ごみを一つの袋にまとめたところで、ジャッキーはドアの方に向かう。
「玄関前にごみを出しておけば明日には掃除のロボットが回収しておいてくれるから。じゃあ私もそろそろお暇するね。明日頑張ってね!」
ジャッキーも部屋を出て、部屋の中は僕一人。とても眠かったので、歯磨きだけして、僕はベットの中に入った。
トイレの掃除は……まあ、また今度やろう。
シミュレーション訓練で模擬吸血鬼と戦ったが、防戦一方で、全く手が出なかった。
僕はいつになったら彼らのように戦えるようになるのだろうか。
僕はベッドで物思いにふけっていると、ドアのインターホンが鳴った。ドアの方に歩いてドアを開けると、いつもの三人が僕の部屋の前で待ち構えていた。ジャッキーとマルセルが両手に何か入ったポリ袋を持っている。レイラは二人から一歩離れたところにいた。なんだか不機嫌そうだ。
「…どうしたの」
僕が尋ねると、マルセルがすごいにこやかな顔で、右手のポリ袋を掲げた。
「何ってそりゃ…『歓迎会』だよ」
とても嫌な予感がした。
////////////////////////////////////////////////////////////////////
三人はまた僕の部屋にずかずかと入り込んで、思い思いの場所に座る。
「歓迎会って……今から何をするつもりなんだ。一応、明日は朝九時から予定があるんだけど」
「ん?あぁ、リーから聞いてる。ダニールのところに行くんだろ?大丈夫大丈夫、12時にはお開きにするからよ」
「ところでフェルディはシャワーは浴びた?」
「まだだけど…」
「じゃあ先に浴びてきなよ。歓迎会はその後で。シャワーが浴びれなくなるかもしれないからね…フフ!」
ジャッキーが何やら怪しい笑みを浮かべるので怖くて仕方ないが、言われた通りにシャワーを浴びることにする。
「…………ハァ……」
レイラが深いため息をついたのには気付かなかったふりをした。
シャワーを浴びて、着替えてシャワールームを出ると、床にたくさんの缶と瓶が置かれていた。
「これは……」
「酒だよ、酒。お前が来てからまだやってなかったろ?せっかくみんな非番だしな、やれるうちにいろんなことをやっとかねえとな」
そういうと、ジャッキーは使い捨てのプラスチックコップを取り出し、中に茶色の液体を注ぎ込む。
「治安悪……」
レイラが呆れたようにつぶやく。あの茶色の飲み物はそんなに治安の悪い飲み物なのか。というか、治安の悪い飲み物って何?
ジャッキーが一人ひとりにその飲み物を渡していく。全員にコップがいきわたると、マルセルがコップを掲げる。
「じゃあ皆さん!グラスを掲げてッ!!」
マルセルが号令をかけると、二人もそれに倣ってコップを掲げる。僕もみんなの真似をしてコップを掲げた。
「では!フェルディの入隊と我々の出会いと今日まで生きて酒を飲めることを祝してッ!!乾杯っ!!!!」
「「かんぱ〜〜〜ぃ!」」
各々がグラスを交わし、茶色の液体を一気飲みする。
僕も真似をして中の液体を一気飲みする。
が、むせかえった。なんだこれ、すっごいのどが焼けるように熱い。ジャッキーとマルセルが大爆笑する。
「ははははははっ!!ノリがいいなあフェルディは!!酒飲むのは初めてだろ?そんなに急がなくてもいいぞ!!」
「これはウイスキーって言ってね、アルコール40度くらいあるやつだからね!ゆっくり飲むといいよっ」
よく見ると、みんなコップの中のウイスキーはそんなに量が減っていない。飲む仕草をしただけだった。
「……やられた…」
レイラの「治安が悪い」という言葉の意味がやっと分かった。これは治安が悪い。
「まあこの『歓迎会』はここからだ。次はガチで一気飲みしてもらうからな」
「じゃあまず何からやる?」
「そうだなぁ〜…まあ王道にババ抜きでもやるか!負けたやつは一気飲み!」
「………負けたくな〜〜〜〜……」
「この前はリーにボコされたからねぇ〜、負けないぞ〜〜!」
こうして、治安の悪い歓迎会は始まった。
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////
「ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………」
マルセルが死にそうな呻きをあげながら床に横たわる。
午後十時半。『歓迎会』が始まって2時間が経とうとしていた。
マルセルが4回。僕が2回。ジャッキーが1回吐いた。僕のトイレはゲロ臭くて仕方ない。この後の部屋のことを考えるとすごく憂鬱になる。あの臭いはしっかりとれるんだろうなぁ…。
「マルセル、死んだね」
レイラは呟きながらウォッカとかいう透明なお酒を口に運ぶ。こいつ全然吐きそうにない。強すぎだろ。
「マルセルは最初の勢いだけだからね〜…」
ジャッキーは缶のお酒を飲む。さっきジャッキーは一回やってるのになんだか元気そうだ。
「ジャッキー一回やったのに元気そうだね…」
「?戻したらリセットだよ!まだ全然いけるけどもう少しゲームしちゃう?」
「いや……遠慮しとくよ」
かくいう僕は、1時間に一回くらいのペースでやった。正直もう限界だからずっと水ばっか飲んでいる。
「そういえばさ…ジャッキーは、あの鍛冶職人にあったことある?」
「ん?あぁ…まああるけど…」
ジャッキーは僕の問いに対して歯切れの悪い返事を返した。
「…苦手なの?」
「…う〜〜ん………そんなことはないんだけど…なんか無駄に優しいんだよね……優しすぎるっていうか…」
「へぇ〜〜……あのジジイ、ジャッキーに恋してるのかな?」
レイラが茶化すように言う。レイラも酔っているのか、普段しないような茶化しを入れる。
一方のジャッキーは、ううんと首を横に振る。
「そういう感じじゃないんだよね。なんかお父さんみたいな心配してくる。『嫌な男は周りにいないか』とか、『心配事はないか』とか『欲しいものがあったらいえ』とか、『困ったら何でも俺にいえ』とか…」
「やっぱ恋してんじゃん!!色目使うジジイなんだなあいつ!!」
レイラはげらげら笑いながらまたコップにお酒を入れる。レイラがヤバい奴に見える。
「う〜〜〜ん、そうなのかなぁ…」
ジャッキーは納得いかない様子で手元の缶のお酒を一口飲む。
レイラの方から「とびだせ!チャッピーちゃん!!」というかわいらしい声と爆音のBGMが流れてくる。
「リー、そのゲーム好きだねぇ」
「チャッピーが可愛すぎるんだよぉ……もうこの子無しじゃやっていけない……見ろ!この愛くるしいあざとすぎる可愛さ!」
レイラはスマホ画面を見せつけてくる。リスのような小動物が部屋の中で座っている画像だった。
「確かに可愛い……」
「お!フェルディわかってんね〜〜!フェルディもやろう!今!スマホゲームだから簡単にダウンロードできるし!」
レイラは僕のスマホを取り上げ、何か操作すると、スマホを投げ返してきた。画面を見ると、アイコンが増えている。チャッピーと書かれたそのキャラクターの顔が描かれたアイコンだ。試しにタップしてアプリを開くと、先ほど聞いた音声と全く同じ音声が流れてくる。
「まあ最初はチュートリアルにそってやれば大体わかると思う。わかんないことがあったらいつでも聞いて!」
「フェルディ捕まっちゃったね〜〜〜…」
ジャッキーが隣から哀れみの混じった笑顔を向けてくる。まあでもちょっと気になったし、全然苦ではなかった。
「レイラはゲームが好きなんだね…」
「リーって呼んでよ。なんかフェルディだけ呼び方違うのなんか変だし」
僕とジャッキーは顔を見合わせた。そして二人で笑ってしまう。
「え!?なんでそこで笑うの!?!?いいじゃん別に!!」
「うんうん、いいこといいこと、飲み会やって正解だったな〜って!」
「なにそれ!!も〜〜〜!!!なんか恥ずかしくなってきた!!帰る!!」
レイラ……リーは立ち上がり、大の字に寝転がって動かないマルセルに一発蹴りを入れる。
「おいマルセル!!起きろ!!!もう帰るよ!!お開き!!」
「……ぅ〜〜〜〜…蹴んなよ……やばい吐きそう…」
あ“あ”〜〜〜〜〜〜〜とリーは叫んでマルセルに肩をかして無理やり立たせた。
「おら帰るぞ!男だろ歩けや!!」
「ぅぅ〜〜〜〜〜〜〜」
リーはマルセルを引きずる感じにドアの方に連れ出す。そして、ドアの手前で立ち止まった。
「……まぁ、ハマったら私の部屋、来なよ。沢山グッズあるし。」
そう言い残して、リーはマルセルと一緒に部屋を後にした。
「リーと仲良くなれたみたいでよかったね!私は嬉しい!!」
ジャッキーの方を向くと、歓迎会で出たごみを片付けていた。それに気づき、僕も一緒に片づけをする。
ごみを一つの袋にまとめたところで、ジャッキーはドアの方に向かう。
「玄関前にごみを出しておけば明日には掃除のロボットが回収しておいてくれるから。じゃあ私もそろそろお暇するね。明日頑張ってね!」
ジャッキーも部屋を出て、部屋の中は僕一人。とても眠かったので、歯磨きだけして、僕はベットの中に入った。
トイレの掃除は……まあ、また今度やろう。
21/09/14 23:42更新 / Catll> (らゐる)