連載小説
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〜同時刻、別の場所にて〜

リベル「ん〜!此処のクレープ美味しい!」
フィールドの中でスイーツ店を見つけて、そこで購入したクレープを食べ歩きしている。
リベル「この都市って、実在する場所をモデルにして作られたんだよね?このイベントが終わったら、行ってみようかな♪」
クレープを食べ終えて、生地を包んでいた紙を少し離れたゴミ箱に投げ入れる。綺麗な放物線を描いてゴミ箱の中に入り、「ナイスシュート!」と言うリベル。

リベル「さーて、そろそろ行動再開しようかな〜。もうそろそろ一人くらい減った方が、盛り上がるんじゃないかな〜♪」
軽く背伸びした後、サラッと恐いことを言って歩き出す。































ベリアル「漸く見つけたぞ。」
リベルの後方から声が聞こえ、足を止めて後ろを向く。そこには、最初に棄権したはずのベリアルがいた。
リベル「…あれ〜?最初に棄権した子じゃん!どうしたの?迷子?」
フードで隠れていない口が笑みを浮かべており、陽気そうにベリアルに話しかける。
リベル「しょーがないなぁ、お姉さんがスタッフエリアまで連れてってあげ」
ベリアル「芝居はよせ、お前が誰かくらいわかっておるわ。」
リベルがベリアルに歩み寄ろうとしていたが、発言を遮られると足を止める。
ベリアル「その妙な布切れで顔や気を隠したり、名前を偽り芝居をしても無駄じゃ。このワシが何万年お前と過ごしたと思う…抜けきってない癖で、誰なのかわかるわい。」
リベル「………。」


ベリアル「…ある日、お前が行方を眩ました…分身を置いて誤魔化しておるが、ワシは本体と分身くらい見分けがつく。何かあったのかと思い、ノエルにお前のことを尋ねた……まさか、あんなことが起きたとはな…。」
軽く空を見上げながら、ノエルから聞いた話を思い出しているベリアル。

ベリアル「どうやらワシは、人を見る目が衰えてしまったらしい…あんな奴を面白い奴と勘違いしてしまった……奴の仲間と家族を殺したのは、復讐か?」
リベル「…半分正解、もう半分は〜…あの子達が法で裁けない悪い子になる前に、芽を摘んだの。取り返そうとしてたみたいだけど、ロクドウが用意した仲間と家族そっくりな偽物にまんまと騙されたっぽいね。ロクドウが偽物をもう消したって言ってるから、アイツの周りにはもう何も残ってない状態かな〜。」
リベルが人差し指から、緑色の炎らしきものを出して見せる。

リベル「魂のエネルギーってさ、他のエネルギーと引っ付けちゃうと5分もしない内に混ざって、完全に一つになっちゃうんだよ〜?だから、ワタシが殺したことを知った時点で助けることは不可能だったって訳…今から何かしても無駄だよ、ワタシの能力…魔王様なら知ってるでしょ?」
ベリアル「…他の奴は…この件について何も知らんのか?」
炎を消して、横を向いてゆっくりと歩き始めるリベル

リベル「うん、そうだよ?何も知らないのに中途半端に関わって、笑えるよね?しかも、中立って…マジで草生えるね〜」
ベリアル「…ワシが居合わせれば、少しは変わっていたかもしれん…大変な時に居てやれなくて、すまなかったな…。」
リベルがベリアルに背中を向けて、静かに歩き始める。

リベル「魔王様は、なーんにも悪くないよ〜?ただ、他の奴等が誰も悪くないって言うなら…ワタシがしてることも、悪くないよね♪」





ベリアル「お前がやってることを止めるつもりはない、悪いとも思わん。じゃが…ノエルは悲しそうな顔をしておったぞ。」
リベル「…!」
その発言で、足を止めるリベル。

ベリアル「ノエルは事情をすべて知っておるから、止めはしなかったのじゃろう。表情は変わらんが、どこか悲しそうじゃった…本当は、お前にこんなことをしてほしくなかったのではないか?」
リベル「………。」
ベリアル「…お前が果たすべきことはやったはずじゃ、後のことはお前が所属する組織の連中に任せて、戻ってやれ…。必要なら、ワシの能力で事が起きた後の記憶を消してやる。」
リベル「…フフ…ハハハ……」
静かに笑いながら、ベリアルの方を向きゆっくりと歩み寄る。

リベル「そういうお節介なところ、昔から変わらないねぇ…魔王様の人間らしいところ。ワタシよりも、人間らしい……。」
そして、ベリアルの目の前まで移動した。
























「無理よ。そんなこと、アタシが一番わかってる。」
フードから覗く、見慣れた緑髪の少女…彼女特有のハイライトのない瞳が、不気味に青く光り睨み付けている。

ベリアル「…っ!」
その少女が繰り出す蹴りをギリギリでガードし、バックステップで距離を取る。少女は色が完全に変色し、禍々しい神器となった剣と銃を取り出し起動する。それと同時に、ベリアルは黒炎に包まれた魔剣を出現させる。
発砲しながらこちらに迫ってきているのが見え、黒炎で銃弾を燃やす。距離が縮まり、お互いに何度も剣を交わらせる…


コイツ…前よりも速くなっておる……!一発一発、確実に仕留めようとしておるのがわかる…実戦の中でここまで腕を上げたのか…!
ベリアル「…っ!!」
僅かな隙を突かれ、膝蹴りが命中してしまい少し後退る。

今の力では対応できそうにないな…悪いが、10%くらい出させてもらう…!

「ははは、切り替えが早いところも結構好きよ…!」
ベリアルの力が上がったことに気づいたのか、笑いながらそう伝えてベリアルの攻撃に対応している。前の彼女なら、絶対に対応できなかったはずだ…

おかしい…確かに力は上げたはずじゃ…なのに、何故こっちが押されておる…

ベリアル「…!まさか!」
「気づくのが、ちょっと遅かったみたいね!」
急いで距離を取ろうとするベリアルに、追い討ちで発砲。うまく体を反らしてかすった程度で済んだ。だが…
ベリアル「…剣を交えた僅かな時間でワシと適合し、ワシの力を奪っていたんじゃな…!」
「そういうこと、そのお陰で体が自分のじゃないみたい…♪」
ベリアル「その能力の使い方、上手くなったみたいじゃな…じゃが、喜ばしくはないのぅ!!」






どれくらいじゃ…もう、力の40%は出しておる…じゃが、奪われてお互いに斬り合い撃ち合い…大したダメージを与えられてないな…
…ワシを倒せるかもしれない奴が、こんな形で現れるとはな…何故か、全く嬉しくないな…!

ベリアル「こんな攻撃を、チマチマ続けてもダメじゃな…!」
「なら、どうするつもり!」
ベリアル「こうするまでじゃ!!」
近距離で撃たれるが、怯まずそのまま少女の持つ銃を剣で弾く。銃は手から離れ、宙を舞う。
「…!ははは、バカね!もうその体勢じゃあ防御は間に合わない!!」
勝利を確信して剣を振り下ろす。ベリアルは防御をせず、自分の体を刃が通る前に一瞬で力を50%まで上げ、空いた左手で少女の腹部を貫く…。

「がっ…ぁ……!?」
ベリアル「……」
少女の剣がベリアルに届く前に、止まってしまう。

ちとやり過ぎたか…じゃが、死にはせんじゃろう。しばらくは動けないはずじゃ、このまま連れ帰る…

その時、少女が左手でベリアルの頭を掴み
ベリアル「…!コイツ、まだ!」
少女は少し刃が短くなってしまった剣を逆手持ちにして、刃をベリアルの目の横辺りにめり込ませる。


そして、そのままベリアルの目を切り裂いた。
ベリアル「あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙…!!!」
血が吹き出す目を両手で押さえており、少女も後退りして風穴が空いた腹部を押さえており

「はは…防御に力を回さなかったのが…仇になったね…!1ヶ月くらいで…治ればいいわね……」
腹部を押さえながら、ヨロヨロと移動してその場から離れる。






「…ダメージは…消せそうにないわね……ロクドウと合流する前に…傷は防いでおかないと………」








23/01/01 10:01更新 / 青猫
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