Final
この施設で目覚めて、1ヶ月くらい経っただろうか。あの日の…二つの選択肢。
化け物になってでも、約束を果たす
人間のまま、この施設で死ぬ
あの人は…化け物の体になっても、娘さんには会いたかったはず……それでも、最期に…私に全てを託した。
ほとんどの記憶を失った私は、当然…家族も、家族の暖かさも……忘れてしまってる。忘れてるはずなのに……なんで、あの時涙を流して、娘さんのことも任せてくださいって言ったのか…わからなかった。
けど、今ならハッキリわかる…"感覚"が残っていたんだ…。何千年経って、記憶を失くしても…それだけは失くしてなかった。
だったら…答えは1つ。
化け物になってでも、約束を果たす。
その決断をしてから…施設にある人肉…化け物を、全て喰らった。不思議と、苦ではなかった…。
適合者の特徴は、能力を持つ者を喰らえば、力が増大される…。今、体の底から力が溢れてくる……この施設の壁くらい、平気で破壊できそうだ。恐らく屋上から飛び降りても死なないだろう。
力は十分に得た。だが……まだやるべきことが残ってる。それは……
イヴ「……」
2階のある部屋の前に。その部屋は……以前、悍ましい"何か"を感じた場所だ。中には、凶暴な何かがいる…だけど、今はそんな物に怯んだりしない。イヴは扉を開けて、中に入る。
中は、他の部屋に比べて広い…悪魔因子と思われる物が試験管に入っており、机の上に置かれている。そして、目の前には…大きなカプセルが。その中から、強い力……適合者特有の"闇"が感じ取れる。
イヴ「…出ておいでよ。」
イヴが体から闇を出す…それに反応したのか、カプセルにヒビが入る。
ヒビがどんどん増えていき…内側からカプセルが破壊される。中から、3mくらいはある人型の化け物が現れる。
化け物「ガアアァァァ!!!」
化け物は奇声を上げ、体から闇を出す……イヴが出してる闇とほぼ同じくらいだ。
イヴ「こんな化け物がいたなんてね……さ、化け物同士仲良く遊ぼうか(殺り合おうか)?」
イヴの右目が変色……適合者特有の『漆眼』と、ドラゴンの紋章が現れる。
それを見た化け物は、イヴに襲いかかる。
イヴ「おっと」
バク宙で化け物の攻撃を軽々とかわす。化け物は追撃をかけてくるが、バク宙でかわしたり、化け物を飛び越えて避ける…
イヴ「ほら、こっちだよっと」
化け物の目の前に着地した際、化け物の顔目掛けて横から蹴りを入れる。化け物が少し仰け反るが、反撃を繰り出してくる…今度はバク転でかわし、最後にバク宙で机の上に着地。
化け物「………」
化け物は静かに、イヴを睨む。いは楽しそうな顔で化け物を見てる。
イヴ「どうしたの?まだ一発も当たってないじゃん。攻撃しないと、当たるものも当たらないよ?」
その言葉がわかったかどうかは知らないが、化け物は腕に闇を纏わせる。そのまま、イヴに殴りかかる。
イヴは違う机に飛び乗り、先ほどまで自分が立っていた机がバラバラに砕かれている。
再び攻撃を仕掛けてくるが、闇は一定の力のまま…これが最大なのだろうか?
イヴ「闇の使い方が下手だなぁ。いい?闇ってのはね…」
イヴが化け物に急接近し
イヴ「こう使うんだよ。」
ドスッ
闇でできた…ドラゴンの尾が、化け物の頭を貫いていた。
化け物「」
化け物は、力なくその場で倒れた。
イヴ「…やれやれ、この程度の敵に怯えてたのか…私は。」
化け物に近づき、顔を近づける。
イヴ「明らかに不味そうだね…まぁいいや。」
イヴ「よし、出るかな…」
そう言って、一階の壁の前に立つ。言い終わると、全力で壁を殴る…すると、壁が砕け、破片が飛ぶ。
イヴ「……」
外を見るのは……久しく見るような…そんな感じだった。鋼色の空が広がっており…廃墟となった建物が見える。
イヴ「…脱獄犯とか、こんな気分なんだろうなぁ…さてと、これからどうしようかな」
「あ…あの……」
すぐ近くから、声が聞こえる。声が聞こえた方を見ると…小さな女の子がこっちを見てた。
イヴ「……」
一目見てわかった、あの人の娘だと……
「あの…ここに、お母さんが入院してて…お母さん、知りませんか…?」
この子は、母親から何も聞かされてなかったのだろう…毎日様子を見に来てて、偶然私が壁を突き破るのを見た…そんなところだろう。
でも…こんな小さい子に「お母さんは死んだ」なんて言ったら……どうすればいいんだろ……ここまで面倒を見てくれてた人は、いるだろうけど、きっと心に深い傷を負うに違いない。
「………」
そうだ……いいこと思いついた…。
「…あの」
イヴ「殺した。」
「…!」
少女が目を見開く…
イヴ「殺したよ、ここにいた人達…もちろん、あんたの母さんも。」
「………」
静かに涙を流す少女。
イヴ「絶望した?それとも悔しい?憎い?…そんな感情があるなら、私を殺すことだね」
そう言って、その場から離れていく……
これでいいんだ。これで……
約束したけど…あんな現実、あの子には重すぎる……だから…
私を殺すために、強く生きて…
あれから10年の年月が経った。
あの時の少女…「イルゼ・ニコル」は15歳になり…悪魔をこの世から消すための機関「悪魔対策機関」に所属していた。
イルゼ「…」
イルゼは、悪魔のデータの中から、イヴの情報を見ている。
「相変わらず、仕事熱心だな。」
イルゼの近くに、機関の男性が来る。
「イヴ・グレモリー…か。確か、共食いを繰り返して力をつけてる、SSレートの悪魔だったな。半適合者なのに、尾核を出せる…」
イルゼ「…えぇ。この間奇襲を仕掛けましたが…まさか、仲間がいるとは思いませんでした。片方は人間、片方は悪魔ではありませんが、異能者…。」
「そいつ等のおかげで、こっちの兵が重傷を負わされる上、対魔武器も破壊される…次仕掛けても、きっとそいつ等はいるだろうな。」
イルゼ「関係ありませんわ…」
立ち上がり、どこかへ向かって歩く
イルゼ「必ず…仇をとってみせる……!」
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17/05/24 22:05更新 / 青猫