連載小説
[TOP][目次]
6







2階に降りて、警戒してる様子で周りを見回す。
イヴ「…………」
3階よりも荒れてる……恐らく、3階よりも化け物が多いに違いない。それに、2階に来るのは初めて…何があるかもわからない。今まで以上に慎重に進む必要がある。
そう思ったイヴは、ナイフを手に取り、慎重に進んでいく……











2階の部屋を見てみる…一番最初に入った部屋は、医療器具のような物が複数置かれている。検査をするところなのだろうか…?だけど、何の検査に使うかはわからない、もしかしたら実験に使っていた可能性もある…。
その他にも、毒のような色の薬品などもある……これが悪魔因子?それとも、別の薬品…?何にしても、触らない方がいい…。
そこから違う部屋にも入るが…どれも似たような部屋ばかり。化け物も図体いるが…こちらには気づいていない。
…あの化け物達が、元人間と思うと……ゾッとする。…恐らく、投与されて正常なのは自分だけ、ならば…このことを周りに言うべきだろうか?いや、もし自分が適合者と知られれば…きっと、ロクな扱いはされないだろう。体を解剖され、悪魔因子に適合した全てを見られて…まるで、実験材料のような扱いをされる…
そうなるくらいなら、黙っていた方がいい……

次の部屋を調べようと、扉に手をかけた時……その手が止まる。
…今まで感じたことのない何か"がある……全身がピリピリ来る……何もわからないが、これだけハッキリと言える





"この部屋に入れば、きっと死んでしまう…"








キャアァァァァァァ


イヴ「…!悲鳴!?」
女性の悲鳴が聞こえた…きっとこの階にいる。
イヴは急いで悲鳴が聞こえた方に走る。かなり遠い方から聞こえた…場所はわからない……はずだった。
悲鳴が聞こえた方から、何か…気配のようなものを感じる。近づくにつれて、どんどん気配が濃くなっていく……こんな感覚は初めて…だがイヴは、そんなことは考えない…早くその場所へ行くことしか、考えてない。





近い!この曲がり角を曲がった先だ…!
気配がかなり強い…曲がり角を曲がる。そこには……
イヴ「……!!」

化け物が人を喰らってる姿があった……
喰われている人は、化け物かと思った…だが、化け物みたいに顔面崩壊していない。目は変色しているが…
その人が、イヴに気づく…

「…た……す…………け……」
イヴ「!!」
助ける……この化け物を殺さなきゃいけない…!けど、コイツも元は人間…!でも、このままじゃこの人が……!
…いや!コイツはもう人間じゃない…ただ人間の形をしてるだけの化け物だ!だから、殺したって……

震える手で腰のナイフを抜く…呼吸も段々と荒くなる……強く歯を食いしばり、目つきが鋭くなる


人殺しにならないら…!!

イヴ「あああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
叫んで走り出し、化け物の首目掛けてナイフを振る。化け物の首を切り、切った箇所から血が吹き出て……力なく倒れる。
イヴ「ハァ…ハァ………」
死んだ化け物をじっと見ている……本当に死んだかどうか……
死んだとわかれば、喰われていた人に近づく
イヴ「大丈夫ですか…!?」
その人は弱々しい顔でこちらを見る。
「…ありが…とう………けど……私は…もう…長…く……は……」
その人の腹部を見ると、酷く喰い散らかされている……正直、助かるような怪我ではない。
「…あな…た…に……頼み……」
そう言って女性は、力無く震える手を懐に持って行き、ラッピングされた小さな箱を出す。

「これ…を……むす…めに……」
イヴ「…っ……わかりました……必ず渡します…娘さんのことも、任せてください…っ…!」
涙を流しながら、そう返事をした。その返事を聞いた女性は、安心した顔で………静かに息を引き取った……

























この施設で目覚めてから、10日が過ぎてしまった……恐らく、17日くらいだろうか……
イヴ「…………」
食料が尽きて、空腹状態が続く…。あれから脱出場所も食料も探したが、どこにもない。情けない話だ、あの時……娘さんのことも任せろって言ったのに…飢え死にしそうだなんて……。
鏡を見ると、力無くベッドに転がってる自分の姿が見える。右目は変色したままだ…
…私も、あの化け物と同じ、化け物……どうせ生きる目的も無い、なら…いっそこのまま死んでしまおうか…。……けど、約束しちゃったし……どうしよ…
そう考えていると、何かに気づく…

…なに…?どこからか、いい匂いがする…美味しそうな…
体を起こして、周りを見回す。
どこ…?どこにあるの…!
勢いよく部屋から出て、匂いを辿って走る。もう走る体力も残ってないと思ったが……

きっと、私でも食べられる物だ…!そうに違いない!!まだ正気の人がいて、食べ物を持ってる…!少し分けてもらおう!!

イヴは、陸上選手のような速さで階段を駆け下り、廊下を走る。これも、投与された悪魔因子の影響なのだろうか…
近い!この先に…!!
2階に辿り着き、部屋の扉を開ける。この部屋は入ったことない…いや、そもそもこんな部屋あったのだろうか…
イヴはそんなことは気にせず、匂いの元を辿る。
イヴ「どこだ…どこにある…!」
匂いを辿っていくと、大きな扉の前にたどり着く。そこを開けると、中は……冷凍室だった。中だと思われるものが、大きな袋に入って吊り下げられてる。

イヴ「これ…全部……肉……!」
かなりの量がある。これだけあれば、まだ生きられる。そう思ったイヴは、近くの袋に手をかける。
かなり大きい上、重い。本当に、長く生きられそうだ…そう思って、中を開ける



イヴ「…!」
袋の中には…バラバラになった人間が入っていた。死体の目が、こちらと目が合う。
普通、こんなのを見ると驚愕する…だが、そんなことはしてない…ただ…目の前にある物が人間の死体とわかっていても……美味しそうな食肉にしか見えなかった……
イヴ「…なん…で…………美味そう……」
疑問と、欲…どちらもあらわれている。人の肉を美味そうだと思う…何故…?












"尚、適合者にある一定まで食事を与えなかった場合、禁断症状が発生する。禁断症状が発生した適合者は、生き物すべてを食べ物と認識して、襲う。無論、人間もその対象に入るため、食事は毎日与えること。"




イヴ「…!!」
適合者のことを思い出して、我に帰る。自分が気づかない内に、人の肉を手にとっていた…
イヴ「…っ!!!」
人の肉を投げ捨てる。重たい音が、冷凍室に響く。
イヴ「…いや…だ……こんなの……」

イヴ「こんなの…食べたら…!人間じゃなくなる……!!」
食料を目の前にし、涙を流す…。もう、体は化け物……だが、人間を食べれば、心まで化け物になってしまう。
どうすればいい……どうすれば………



約束を守って、化け物になってでもここから出るか…
人のまま、ここで死ぬか……



イヴ「ら…私は……」


→Next
17/05/20 20:27更新 / 青猫
前へ 次へ

TOP | RSS | 感想 | 目次