連載小説
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第15話
"ありとあらゆるものを消滅させる程度の能力"

名前のとおり、消滅の能力。消滅させようと思えば、存在、傷、記憶、なんだって消滅させることができる。
私…狗神がしてきたことを、そのまま具現化させたような能力だ。

なんでこの能力が、私に?この能力を手に入れたとき、そう思ってた。だけど、答えは案外単純な物だった。


"私という存在を消すため"


昔から嫌だった、自分自身が。なんで私は狗神なのか?みんなと同じ人間が良かった、もっと普通でいたかった、もう誰も殺したくない…ずっとそう思ってた。それは、数千年経った今でも変わらない。
でも、この能力を手に入れて……背中を押された感じがした。これでやっと、苦しみから解放される……
私の狗神の本能さえ消せば、私の存在ごと消える。

あとは……


目の前の大切な人を、ここから追い出すことかな。
見たくないよね、消えるところなんて。私だって、悲しい顔は見たくない。だから…人知れず…消えたい…。

これが、私に与えられた…最初で最後の試練……













2人は折れた剣と日傘を交えている。互いの力は互角、剣と日傘は動かない…
椿が幽香の傘を弾き、幽香は後ろに下がって距離をとる。
椿「はぁっ!!」
追い打ちをかけるように幽香に複数の弾幕を放つ。幽香はそれを飛んでかわし、幽香がいた地面から植物が生えて幽香のところまで伸びる。
幽香「…!」
幽香が手を椿に向けると、植物が一斉に椿に向かう。
前みたいに捕まえる気…?残念だけど、もう引っかからない!!

椿「はぁぁぁっ!!」
白炎でこちらに伸びてきた植物を消滅させる。幽香はさらに弾幕を放ち、地上に降りる。
椿「なら、こっちも…!」
能力が合わさった弾幕を放ち、幽香の弾幕を消滅させる。そこから幽香に向かって走り、刀で攻撃を仕掛ける。
幽香「…!」
一発目はかわしたが、すぐに次の攻撃が来る。

速い……!さっきの動きといい、今の攻撃といい……かなり戦い慣れてる…
隙を見て傘の先から光線を放つ。椿は素早くそれをかわして、距離を取り構え直す。
前までの椿と思わない方がいいわ…!

幽香「はぁっ!!」
椿に急接近し、渾身の力で傘を振り下ろす。
椿「…!」
ギリギリかわす。傘が地面に当たった際、轟音をたてて地面が広範囲に砕ける。あれだけの力で叩きつけたにも関わらず、傘は無傷だ。

椿「あれだけの力があったなんてね…」
幽香「えぇ…これが本気よ。本気なんて、今まで出したことなかったけど」

幽香「私は嬉しいわ、椿。」
椿「え…?」
幽香が日傘を構える。

幽香「こんなに強い人と会えたのは初めてよ…。紫達や博麗の巫女を、1人で倒すくらいの強さ…確かに、止められる人なんかいないかもしれない。けど、だからこそ…」
勢いよく踏み込んで、椿に急接近する。

幽香「本気で闘える!!」
傘を横に振って攻撃する。椿は後ろに下がって攻撃をかわす。
幽香「逃がさないわ!!」
椿に向けて複数の弾幕を放って追い討ちをかける、椿は白炎を飛ばして、弾幕を消滅させる。

幽香「…?」
幽香があることに気づく。先程から椿は、自分に対して能力を使ってない。自分が放った遠距離の攻撃のみ、能力や弾幕を使用してる。自分に攻撃するときは、能力を使わない通常攻撃のみ。
…試してみようかしら

幽香「なら、この数を消せるかしら!?」
先程よりも多い弾幕を、椿に放つ。椿は白炎で弾幕を消す。だが…

椿「…!」
幽香がいない。恐らく後ろ…霊夢が同じ手を使っていたからわかる。そう思って、白炎を出そうとしているが…

幽香「はぁっ!!」
幽香は傘で椿を殴り飛ばした。椿は殴られることは寸前で気づいていた、白炎は出す暇はあったが…椿は出さなかった。
幽香「…やっぱりね。」
立ち上がる椿を見ながら話す。
幽香「椿、あなたが能力を使うとき…必ず「飛び道具が飛んできたときだけ」よね。私に接近して攻撃するときとか、私の直接攻撃には能力を使わなかった……使ったら、私が消滅するからでしょう?」

椿「…そうだよ。」
再び刀を構えながら答える椿。幽香は弾幕を出す体制になり
幽香「悪いけど、それを利用させてもらうわ…!」
再び大量の弾幕を椿に向けて放つ幽香。椿は先程と同じくらい、白炎で弾幕を消滅させる。白炎が無くなった頃には、幽香の姿も無くなってる。
幽香はまた、椿の背後にいた。

これで、終わりよ…!

そう思って、椿目掛けて傘を振り下ろす…
















だが、先に椿の拳が飛んできた。
幽香「…っ!?」
傘が当たる前に殴り飛ばされる幽香。
椿「…同じ手は食わないよ、幽香。」
倒れてる幽香に向かって走り出す。
椿「このまま、一気に畳み掛ける!!」
半分体を起こしている幽香に拳を振り下ろす。
椿「…っ!?」
だが、先に幽香の蹴りが入り、少し飛ぶ。
幽香「世の中…そう、うまくはいかないわよ…!」
2人とも武器を持ってない状態で立ち上がる。

お互いに一歩も引けない、大切な人が関わっているから。
本当は、こんなことをしなくても…何か他に方法があったはず、2人はそう思っていた。だけど、方法なんて見つける時間なんてない。もうこの方法しか残されていない、2人はそれに気づいていた。
だからこそ………

2人「わあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

本気で戦う…


























霊夢「…ん……」
文「あ、目が覚めましたか!」
霊夢「…ここは…?」
見慣れない天井が広がっていて、自分が何故ここで倒れているのかがわからなかったご…すぐに思い出した。

霊夢「そうだった、ここに来た椿を止めようと……痛っ!」
文「無理しちゃいけませんよ、まだ怪我が治ってないんですから……」
起き上がろうとした霊夢を寝かせる文。寝転がった状態で文を見る霊夢

霊夢「…椿は…?」
文「…この先の扉に入ったと思われます。けど、安心してください」
文は扉を見る。いや、扉の向こうを見ようとしている…そんな目だった。

文「…頼もしい人が、椿さんを連れ戻しに行きましたから」
















扉の向こうでは……お互い全力を出してぶつかり合い、倒れている椿と幽香がいた。だけど、終わるわけにはいかない。ここで諦めるわけにはいかない。2人を動かしているのは、それぞれの「強い意志」のみ……
再び武器をとって、立ち上がる…

幽香「…もう、ほとんど力が残ってない……あなたもそうでしょ?椿……」
椿「……っ……」
静かに頷いた。それを見た幽香の手に、植物が集まっていく。それがだんだんと、カードの形になっていく……

幽香「"これ"で、決着をつけましょう」
椿「…うん」
椿の右手に白炎が集まり、カードの形になる。


2人「幻想」
2人のカードが強く光り始める
そして………













椿「『狂神白夢想』!!!」

幽香「『花鳥風月、嘯風弄月』!!!」






















2人のスペルカードがぶつかり合い、完全に消えてしまった…
だが、まだ2人は立っている。体力はかなり消耗して、立っているのがやっとの状態だろう。

幽香「…ま…だ……!まだ…終わってない…!終わらない…!!」
傘を杖の代わりにして、ゆっくりと椿に歩み寄る。
幽香「一緒に…帰るまで…終われ…」

その時、後頭部に衝撃が走る
幽香「っ………」
そのまま気絶し、その衝撃を与えた…八雲紫に抱きかかえられる。

紫「恨まれ役は、1人で十分でしょ?」
椿「…紫お姉さん…」
紫「ふふ…その呼ばれ方、久しぶりね…。」
静かに笑みを浮かべる紫。
紫「1週間と少し会ってないだけなのに、何年も会ってない感覚だったわ……ごめんなさいね、止めるのが遅くなって…スキマから見てたけど、回復が遅くなって…」
椿「ううん、こっちこそごめんね…」

紫「いいのよ、椿ちゃん。けど、一つ約束して…」
少し寂しそうな目で椿を見る紫

紫「必ず…「椿ちゃん」として、戻って来て…」
それだけ言うと、スキマを開いてその中に入る。入ると、スキマが無くなり、完全に1人になった。


椿「……ごめん……その約束は、守れないや…」
右手から白炎を出して、それを自分自身に当てようと、ゆっくり自分の体に近づけて行く…
だが、後ろから気配を感じた。
椿「…!」
紫か、知ってる人かと思い振り返る…だが、そこには見慣れない少女がいた。
椿「…誰…?ここにいたら危ないよ…?」
「…あなたは、十分すぎるほど自分に立ち向かいました。もう…休んでもいいんですよ」
その少女から光が現れる。その光は、椿に向かってゆっくり飛んで行く

椿「…あぁ、そっか…。君は……」
その光が、椿を包み込んだ…





現在ノ修復率……100%…
修復完了シマシタ…

つづく
16/10/17 20:09更新 / 青猫
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