連載小説
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第14話
目の前の扉を開いた幽香。目の前の光景、空間を見回す……その空間を見て、何か思うことはなかった。いや、そんなことを思うより、この空間にいるであろう椿を探すことしか考えてなかった。
ふと、視界に白い衣を羽織った犬耳の妖怪が入る。後ろ姿だが、それが椿だということがわかった。
椿はゆっくりとこちらを振り返る。


幽香「…椿……!」
椿とわかれば明るい表情になる。それもそうだ、自分に初めて出来た「大切な存在」だから…
椿「幽香……」
だが、椿は明るい表情をしていない。幽香を見れば暗い表情になってしまう。
幽香は椿に歩み寄る。

幽香「心配したのよ、急に何処かに行ってしまうんだから……私がわかったということは、記憶が戻ったということね?」
椿「………」
幽香「みんなも心配してるわ、帰りましょう?」
幽香は椿の手をとって、出口に向かって歩こうとした。だが…椿はその手を振り払った。
幽香「…椿?」
椿は俯き、口を開く。

椿「…ごめん…帰れない………」
幽香は椿と向かい合うように立った。
椿「今帰ることは…できないよ……」
幽香「…じゃあ、いつになれば帰れるの?」
椿「…わからない………」
幽香「………」























幽香「いい加減にしなさいっ!!」

椿「…っ!」
幽香が椿に初めて怒鳴った。今まで怒鳴られたことがなかったため、驚いている。
幽香「いろんな人に迷惑をかけて、今帰れないなんて!ふざけないで!」
椿「………」
俯いたまま、口を開く
椿「幽香……狗神って、知ってる?」
幽香「狗神…?」

椿「遥か昔に存在してた、人々に一時の幸福を与え、その人々の全てを奪う悪霊だよ…」
そのまま話し続ける椿
椿「私の正体がさ…狗神だったんだ。この部屋に着いた時、私の小さかった頃から封印されるまでの過去を見た。それで、記憶も全部戻って…力もほとんど戻ってる。」
幽香「…力が全部戻れば、帰れるの?なら、待ってあげるわ。」
帰るのにそんなに時間はかからないと思うと、少し安心したような表情になる…が、椿は首を横に振った。

椿「待つんじゃなくて…今すぐここから出て行って」
幽香「なんで…?」

椿「……過去を見てわかったんだ。狗神らしいことをしなかったら、本能が暴走して人を殺す……しかも、何千年も私と狗神の力を切り離して封印されてた。最後の力が戻った時……



























世界が消滅する…」

幽香「……」
幽香は驚きもせず、黙っている。

椿「だから、今すぐに出てって…」
幽香「くだらないわね。」
椿「え…!?」
幽香の一言に驚いた表情で顔を上げる。

椿「くだらないって…世界が消滅するんだよ!?私の能力、もうわかってるんでしょ!?」
幽香「"ありとあらゆる物を消滅させる程度の能力"でしょ?」
椿「だったら…!」
幽香「だから、くだらないって言ってるのよ。」
幽香は椿に向き直る。

幽香「椿が暴走しても、私が止める。ただそれだけの話じゃない。」
椿「え…」
幽香の発言に驚いてばかりだ
椿「無理だよ!妖怪の賢者…紫お姉さんやレミィ達全員でかかっても勝てないんだよ、あの博麗の巫女も…!絶対無理だよ!」
幽香「無理でもやるのよ。というより、私は無理だなんて思ってない。」
椿「なんで……なんでそう思えるの?なんで私にそこまで……」
幽香は椿の手を取る。椿の両手を、自分の手で包み込む







幽香「椿の母親だからよ。」
椿「……!!」
幽香「私にとって、初めてできた大切な存在……理由なんて、それで十分すぎるくらいよ。」
椿「…」
幽香と霊華が重なって見えた、幽香の発言で霊華が言ってたことを思い出す。




"狗神……大好きですよ…っ…!"








大切な人…大好きな人………
だから、幽香も…霊華も………?
だったら、私は…


椿「…ありがとう、幽香。」
幽香「じゃあ」
椿「でも、帰らない。」
幽香「え…?」
幽香から少し距離をとって、狗神の刀を出現させる。
椿「理由は、幽香と一緒だよ。大切な人を守りたい、失いたくない……」
刀を手に取り、鞘から刀を抜く。折れた刀身が顔を出す…

あの時のまま…か………


幽香「そう……なら」
幽香は閉じた日傘をこちらに向ける。
幽香「力ずくでも連れて帰るわ!!」
椿は刀を構える。そして……















同時に突っ込んだ。



現在ノ修復率……99%…

つづく
16/09/24 21:37更新 / 青猫
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