連載小説
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第7話 ヴィヴィオ怒涛の激走!
慎吾「おーおー、いい登場の仕方じゃねーか、やる気満々ってとこか」

ゆいはヴィヴィオをスタートラインに並べた後、厳しい表情で降りてきた。
ゆいは普段見せることはほぼ100%ないほどの厳しい顔をしている。

慎吾「よく来たな、そうそう、お前の名前は?」
ゆい「・・・成実ゆい」
慎吾「覚えとくぜ。俺の名は知ってるとは思うが・・・庄司慎吾。んじゃさっそく始めるとすっか」

慎吾はそう言った後、中里に目線を向けた。

慎吾「見てろよ毅、お前が勝てなかった相手に俺が勝つとこを」
毅「後で大恥かいてふてくされてろ」
慎吾「あーん?」
毅「いいから走れ」

ゆたか「ゆいお姉ちゃん・・・」
みなみ「傲慢な相手・・・何するか分からない、心配」

2人はマシンに乗り込み、エンジンをかけて吹かした。
これから多数のギャラリーの中を走り抜けていくこととなる。
ナイトキッズはほとんど支持されてないし応援もされない

毅「カウントは俺がやる」

中里が2台の前に立ち手を上げた。

毅「カウント行くぞー!10秒前!」

この掛け声と同時に、2台のマシンのエンジン音が鳴り響いた。
同時にスタートライン付近のギャラリーの緊張も高まった。



















GO!

2台はサイドブレーキを下ろしてスタートダッシュを決めた。
と思われたが、パワーで勝っているはずの慎吾のEG6が後ろについた。

毅「またそれか、慎吾・・・秋名のハチロクと同じ負け方をしそうだな」

ゆい「後ろについた・・・今までのライバルとは違う」
慎吾「後ろからじっくり見させてもらうぜ・・・どんくらいプレッシャーに耐えられるかをな」

まず2台は第1コーナーに入っていく。

慎吾「おーおー、いい突っ込み・・・どっかのヘタレS13とは違うぜ」

慎吾も後に続いてドリフト進入をしていく。いわゆる「Fドリ」をかます。

ゆい「FFであの動き・・・ただ者じゃない」

バックミラーを覗きながら、少しずつプレッシャーを感じつついるゆい。

ゆいのヴィヴィオはこの時90馬力にまでチューンされているが、それでもEG6の185馬力とは実に倍の差がある。
軽さと4WDの特性、そしてダウンヒルである事である程度はカバーできるが、それでもパワーの差は出る。
今回は前までとは違い、自分よりも性能が高いマシンが後ろから一気に迫ってくるのだ。プレッシャーを感じずにはいられない。

慎吾「さあ、第2コーナー・・・」
ゆい「・・・っ」

プレッシャーを感じていてもゆいの走りには乱れがない。しっかりとブレーキングドリフトを決める。

慎吾「さすがなもんだぜ・・・だが、俺のEG6でならついていけるペースだ、だがたまに冷や汗かきそうだぜ」

だが、まだゆいの走りは限界とは呼べないものだった。まだ少しの余裕があった。
2台もつれたまま第3コーナーへ突入していく。

池谷「来た!」
樹「先輩!対向車です!」

慎吾「・・・対向車か」
ゆい「・・・っ!」

対向車とは丁度コーナーで2台とすれ違った。
ここでゆいはセンターラインをはみ出さない単線ドリフトを決めた。

慎吾「すげぇ!あれは難しいっ!軽自動車とは言えセンターラインをはみ出さないドリフト・・・対向車とのすれ違いでも全く乱れない!こいつものすげぇうまい!とんでもねぇくわせもんだぜ!」

ここで若干慎吾とゆいの差が開いたと思われたが、慎吾のEG6はパワーの差を利用し一気にストレートで差を詰める。

ゆい「く・・・っ!」

ここのストレートで、慎吾はゆいのヴィヴィオの真横に並んだ。

ゆい「・・・!」

抜かれたかと思われたが、慎吾はノーズを引っ込め再び後ろについた。

ゆい「?」
慎吾「分かったか、抜く気になればいつでも抜けるってことがよ!オラオラもっと焦ったほうがいいぜ!ガンガン攻めてみろぉ」

慎吾は後ろからパッシングをして挑発をする。

ゆい「まずい・・・」

これを機にゆいはペースアップを図る。
4つ目のコーナー。慎吾はゆいの走りのわずかな変化に気づく。

慎吾「うぉ、さっきよりも更に鋭い突っ込みするようになりやがった・・・ちょいとこっちもあげねーとな、パワー差があるとはいえこのままじゃ離されちまう」

慎吾の走りにも変化が現れ、ドリフトアングルが浅くなり立ち上がりでスピードを稼ぎ始めた。
5つ目でゆいは更にペースアップ。慎吾も必死でついていく。

慎吾「ちっ、とんでもねぇくわせもんだぜ、そこまでやられちゃまぐれじゃねえ!俺は毅のように甘くはない!要は勝ちゃいいんだよ!どんな手を使ってでもだ!」

勝つために手段を選ばない慎吾。当然ゆいは慎吾の企みになどこの時点では気づいていない。ペースアップに集中している。

6つ目のコーナーに突っ込んだときだった。

慎吾「悪く思うなよ、ヴィヴィオが鉄くずになるだけだ!」


ガァン!

ゆい「っ!?」

慎吾はコーナーに突っ込んだヴィヴィオの後ろからバンパープッシュをかけた。つまりぶつけたのである。
これによりゆいのヴィヴィオはバランスを崩し、大幅にスピードダウン。

ゆい「っく・・・!!」

ゆいはスピン状態のヴィヴィオを必死にコントロールし、どうにかぶつけず元の体勢に戻していく。
この隙に慎吾のEG6は前に出た。

慎吾「っへへ、どうだ、オシャカだろ・・・ん?」

慎吾のEG6のバックミラーにはヘッドライトの光が映り込んだ。間違いなくゆいのヴィヴィオのものだ。
ゆいは360度ターンをし何事もなかったかのように走り始めたのである。

慎吾「っく、絶対偶然だ・・・」

慎吾はこのやり方で前に出られるという推測をしており、このまま逃げ切れば勝ちだと思っていた。
だが、ゆいの心情的な変化が慎吾から勝利を遠ざけていった。

ゆい「わざと当てたな・・・絶対に負けない、あんたみたいなクズな走り屋には!」

ゆいは勢い良くアクセルを床まで踏みつけた。
90馬力のパワーを4輪に伝えアスファルトを蹴る。
ステアリングを握る手にも力がこもっていた。ゆいは完璧にキレていた!

慎吾「まあいい、このまま行けば俺の勝ちだ!」

慎吾は更にペースを上げて逃げ切ろうとするが、ゆいは慎吾の走りを超越するほどの走りをし後ろから追い上げた。

ギャラリー達「うわわっ!」


グァキィーン!

ゆいはリアをガードレールにぶつけ、その反動を利用して振り返しでコーナーをクリアしていった。
慎吾のバックミラーに映るヘッドライトの光はどんどん大きくなる。

ギャラリーA「げぇ、あいつ今モロにガードレールにぶつけなかったか!?」
ギャラリーB「キレてるぜ、あのドライバー!」

慎吾「マジかよ、そんなバカな・・・ヴィヴィオが差を詰めてくるぜ!これ以上ペース上げるのは無理だ」
ゆい「前を走らせたりはもうしない・・・」

ゆいは強引にインにノーズを突っ込んだ。


随分マシになった気はするがまだなんかヘンだ
ちなみにガードレールが二重になってるけど落ちたら死ぬぞっていうサインである


慎吾「まさか、さっきの仕返しでぶつけてくる気か!?」

この慎吾の推測は外れた。ゆいの得意技である溝落としでインから前に出た。

慎吾「しまった、肝心なとこでアンダーを出しちまったぜ!それにしても今のコーナリングはなんだ!?」

そしてゆいは慎吾に今まで見たこともないような鋭い走りを見せる。

慎吾「げぇ・・・あいつ、キレてる!?ちっ!」
ゆい「・・・・・・・」

ゆいはコーナー出口でボディとガードレールとの間から火花を散らしながらも、慎吾の追随を許さない走りで徐々に
引き離していく。
テールランプの光が少しずつ小さくなる。
ゆいの板金の金額は大きくなる

慎吾「俺が抜かれるなんて・・・理解できねんだよ!」

一方、スタートライン付近では

ゆたか「ゆいお姉ちゃん心配だなぁ・・・」
みなみ「無線連絡が何も無い・・・事故してたら連絡あるはずだから」
ゆたか「そ、そうだよねっ」

啓介「どういう結果になるかな」
涼介「俺には分かるぜ、勝つのは・・・」

そして2台は、ヴィヴィオ先行の状態で短いストレートに差し掛かっていた。ストレートエンドにある最終コーナーを
クリアすればゴールとなる。

慎吾「こっちから仕掛けたバトルじゃねーか!このまま負けたら俺はチームの中で笑いもんだ!例え引き分けに持ち込んでも
俺の面子は保って見せるぜ!」

慎吾はゆいのヴィヴィオの横にギリギリノーズを入れた。

慎吾「このバトルの結果は・・・ダブルクラッシュと行こうぜ!」

ゆいがコーナーに突っ込んでいくと同時に、慎吾は自分のEG6をヴィヴィオのドア部分に突っ込ませようとステアリングを切り込む。
しかし、ゆいの突っ込みは思った以上に速く、追いきれなかった。
EG6のフロントウインドウからヴィヴィオの姿は消えていた。

慎吾「!!」
16/02/21 00:00更新 / マグナム
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