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第7話 2度目の君の胸を身に感じて
学園に吹く肌寒い風。太陽は顔を出していない。
ゼオライトは普段着の上にコートを羽織り学園に着ていた。
反面、アイオライトは普段のまま、防寒着など羽織っていなかった。

「おーい、ゼオライ・・・くしゅんっ!」
「おう、アイオライト。お前大丈夫か?」

突然アイオライトがくしゃみをしたので、ゼオライトが驚き、心配する。

「う、ううん、心配ないよ。ちょっとゴミが鼻に入っただけだよ。」
「ホントかよ?今日は寒いんだぜ。・・・てかゴミが鼻にってなんだよ」
「あ、鼻にゴミ、か。でも別にこれくらい平気だm・・・くしゅんっ!」
「強がんじゃねーって。とりあえず厚着しろ」
「・・・持ってない」
「なんだよっ」

そんな彼らの元に、また冷たい風が吹き付けてくる。

「くしゅんっっ!」
「おい、風邪引くぞ。俺のコートでよけりゃ貸すぜ」
「で、でも、それじゃゼオライト君が寒くなっちゃう」
「つっても、前泊まった小屋はボロいし暖炉も無いからな・・・」
「外にいると寒いね、中に入ろう」

二人は学園の中に入り、冷たい風から身を護った。
しかし暖房などは無く、暖かくは無かった。

「火も無いな・・・これじゃ暖まらないぜ」
「どうしよう・・・」
「防寒着になりそうなものも無いな、どうすりゃいいんだ?」

そもそも布すら無い。これでは寒いままだ。
防寒に使用できるのはゼオライトの着ているコートのみ。

「運動して暑くなりゃいいんじゃねぇ?」
「でも、運動って言ったって手合わせくらいしかここじゃ・・・」
「それは前やったしな・・・」
「それにソーマの翼の起こす風が結構寒いんだよね」
「そうか・・・」

このままではただ寒さに耐えくしゃみを出しまくるしかない。そこで・・・

「ゼオライト君、ちょっとコートの前のファスナー開いてくれる?」
「ん、これを?いいけど・・・」

ジーーー。とファスナーを開く。そこからゼオライトが着ている服が見える。

「これでどうすん・・・っ!?」

突然、ゼオライトの胸にアイオライトが飛び込んできた。
よく見ると、自分の上半身にゼオライトのコートを少しかけている。

「な・・・何してんだよ?」
「・・・これならゼオライト君も私も暖かいかなって」
「ま・・・まあ、お前がいいなら、別にいいぜ」

ゼオライトはコートをもう少しだけアイオライトの方に引いた。

「ホントにこれで暖かいのか?」
「うん、暖かいよ」
「でも・・・動けねぇぞ?」
「いいのよ、このまま冷風が止まるのを待つわ」
「いつ止むか分かんねぇぞ?」
「でも、止むまでこうしてるもん」
「・・・仕方ねぇな」

アイオライトを胸の中に抱いたまま、二人は外を見張った。

「・・・・ん」
「どうした?」
「なんか・・・安心する」
「は?」
「何だろう・・・ずっとこうしていたい気分・・・」
「な・・・ずっとはダメだぜ、俺が困る!」
「分かってるけど、何か・・・心地よくて」
「心地いい?」
「うん、前に泣いた時と同じ、温もりを感じる・・・心かな」
「・・・よく分からねぇけど、お前こうしていたいのか?」
「うん、していたい・・・けど、それはムリだよね。冷風が過ぎるまでで我慢するね」

それから幾分か経ち・・・日が顔を出し、冷風が温風へ変わる。

「おい、外が暖かくなったんじゃねぇか?」
「ほんと?・・・ちょっと残念だけど、それなら・・・」

アイオライトは、ゼオライトの胸から離れた。
体には温もりが残っている。

「2度もお前をこの胸で受けることになるなんてな」
「えへ、ごめんね、甘えん坊で」
「いや、男としてこういうのは受け止めなきゃな」

そして、外へ出る。気持ちの良い日の光を浴び、二人は寝転んだ。

「あの冷てぇ風、なんだったんだ?」
「分からないけど、とりあえずまた暖かくなってよかった♪」
「ああ、よかったぜ」
「あの、ゼオライト君、ありがとね」
「ん?なにがだ?」
「ほら、さっき私のこと胸の中に抱いてくれたこと」
「ああ。気にすんなよ」

ゼオライトはアイオライトに向かって微笑みを浮かべ、アイオライトも微笑み返した。
暖かな日差しを浴び、顔出す太陽が見守る中で、二人はそのまま夢の世界へと足を踏み入れて行った。
14/10/14 02:07更新 / マグナム
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