第5話 始まり編 『ソードブレイカー』



「此処は!?」
葉月達が到着した場所は地下施設に建設された巨大な組織だった
「ようこそ、ダークエンジェル本部へ」
「衣緒!お前…なんでこんな所に」
葉月達を待っていたのは他でもない葉月の実の兄
東衣緒その人であった
「まーなんて言うか、成り行きと言うか
 僕は羽山さんの代わりにここで代理司令官をやってるんだ」
「代理…司令官?」

「おんや〜新顔かい?」
「玉藻の前!?」
「はふ〜新しい戦士さまですかぁ〜」
「マ…マウまで!?」
葉月の前に現れたのは一見玉藻の前に瓜二つの女科学者と
ゴーグルをつけ、作業用のつなぎとスパナを持つ褐色の女の子
こちらはマウにそっくりであった。

「お嬢様、ご紹介します
 ダークエンジェル所属、オーガニックテクノロジーの第一人者
 天才科学者である八神卯月博士と
 メカニック担当の自称発明家のマリアムさんです」
「はふー知美さん自称発明家は余計ですぅ〜〜」
マムが泣きながら知美に媚び売った

「ほほーーなるほど〜ふむふむ
 うーん、文化レベルは既にAランクだなぁ
 ちゅーか、ウチからの技術流用が結構あるな〜
 そう言えば、あの何とかって子供がウチの技術を持ち去ったらしいしなー
 たしか、今は何とかヤーマとか名乗ってるんだっけ?此処では
 それにしても、このマシンいいな〜
 さっきのオヤジライダーも同じのに乗ってたけど」
「こらこら」
卯月博士がオーバーマシンを嘗め回すように観察するおじ様の
首の後ろを摘み上げた
「あんはん…こんなけったいなカッコしてはるが
 ははーん成る程な〜あんはんが(ニヤリ)」
「こら離せこんちくしょー
 気安く摘んで良いと思ってるのかーー」
じー
「うっ」
卯月博士にじーっと見つめられるおじ様…
「(俺この人苦手だ…何か歯向かえない…
  ちゅーか、何故にこんな所に来てまでも女科学者に睨まれなあかんのよ)」
「あんはん、オーガニックテクノロジーって知ってるか?」
卯月博士はおじ様を離し、質問を始めた
「…オーバーテクノロジーの事だろ
 まー正しくは、エスタニアテクノロジーかな〜
 南極兵器とも言うが」
「…何かよく分からんが、あんはんの世界じゃそう呼ぶみたいやね」
「いや、それは違うな
 そもそもそのオーガニックテクノロジーだっけ?
 それは某国から流れてきた技術が劣化したもんだろうーよ
 もっとも、これだけ復元してさらにオリジナルを混ぜてるんだから
 ある意味凄いちゃ凄いけどな」
「は〜ん、じゃあんはんはもっとごっつい技術を持ってると
 そう言う事やな」
卯月博士が挑戦的な眼差しでおじ様を挑発する
「…ちゅーか、俺を誰だと思ってるんだ
 天下に名高い大天才科学者!レムリア・ハーヴィット博士とは
 この俺様のことだぜ!」
バババーーん
とばかりかっこつけるおじ様だったが…
「それって誰?」
総突っ込み
「だから田舎の辺境世界は嫌いなんだおーー(滝涙)」
「おじ様ってそう言う名前だったんだ〜」
葉月は違う方に感心していた
「いえ、お嬢様、旦那様はおじ様って名前です(きっぱり)」
知美が葉月の肩を叩き、めがねを光らせ言い切った
「あるいは、クマちゃんです!」
知美の威嚇は続く
「と…知美分かった分かったから怖いよ(汗)」
葉月を脅えさせる知美…

「あの…知美さん?」
「いけませんよ旦那様、もしも旦那様の正体を知られたら大変な事になります
 十分注意して下さい
 名前は人間名前までとして下さいっ」
「はい…」
こう言う時の知美には誰も逆らえないのだった



「じゃクマはんでええな」
「クマはん…いや、あんたにおじ様とは確かに呼ばれたくはねーが」
「これ見てみぃ」
ガバっ
卯月博士はシートに隠された1台のバイク?をおじ様に見せる
「これは…」
がさごそ
「間違いない、発掘ヴィマナだ…
 コアは…見た事無いタイプだなぁ…」
おじ様はそのボロボロのバイクを念入りに調べた
「あの…おじ様…それ」
葉月は指差したのはおじ様が抜き出したコアであった
「ギゼムの…」
「はふ?葉月たん知ってるの?」
「あ…うん
 前に、一度だけ見た事がある
 多分それと同じ物だと思う」
葉月は本の世界の旅の記憶を辿っていた
そう、それは葉月が機械の世界の本で出会ったロボット
ギゼムの心臓部とよく似ていたのだった
「うーん」
おじ様は腕を組み少し考える…そして
「葉月たんっイヴから何か与かってる物ないかな〜」
葉月はおじ様いや、おじ様が憑依するクマのぬいぐるみを指差した
「いや…俺じゃダメだし
 出来れば(小声で葉月にだけ聞こえるように)
 イヴのアイテムか、それに代わる何かが必要なんだ」
葉月はポケットから、リリスから与かったララの入ったディスクを取り出した
「これじゃダメあな〜リリスから与かったんだけど」
「…一応借りてみるね」
「あっおじ様、その中にはララが入ってるから壊さない様にね」
「ララ?
 キキとララ?いやそれ違うか…」

おじ様はコアにララのディスクを繋げてみた…すると
ブオーン
「動きよった」
卯月博士が目を見開いて叫んだ
「なーる、なる
 なるほどね〜このコアはそう言うシステムだったんだぁ〜」
おじ様は一人で納得している

「お久しぶりです、葉月」
コアを中継してボロボロのバイクから声する
「ララ…ララなのか?」
「はい、葉月元気そうで何よりです」
「ララ…うん、元気だよ」
葉月の目には涙が溢れていた
そう、リリスやイヴの匂いが残る者との再会
それは葉月にとって尊い物であった

「あのさーこのバイク俺が改造していい?」
おじ様がやる気まんまんと言うか、既に始めていた
「まー直せるならええけどな」
「はふ〜でもマムが何回やっても全く動かなかったんですよ〜」
「何か知らんが、この子らにはウチらの知らない何かがあるみたいやな」




数時間が経過した
その間に葉月達は天使会とダークエンジェルの戦いの話を聞かされた
「ボクも一緒に戦わせ欲しい!」
葉月は大きな声で衣緒達に迫った
「ボクにはこの世界を守る義務があるんだ!」
「…なんであんはんがそこまで言い切るかは知らんが
 あんはん、自分が普通の女の子っちゅー事忘れたらあかんな
 少々剣術と古術覚えてても、あいつらには通用せんわ」
卯月博士の言葉に無言になる葉月…
「そうだよ葉月、ここは僕らにらに任せてよ」
衣緒が優しく葉月を励ました
「なら!
 どーしてボクにこんな話をした!」
「…もし黙っていれば、葉月の事だから
 一人で戦いかねないから…」
衣緒は葉月の兄、葉月の気持ちはよく分かっていた

「お前なら戦士に目覚めると思ったが、どうやら
 買い被っていたようだな、我々は」
唐突に現れたのはさっきのオヤジライダーであった
「ジーク帰って来てたんだ」
衣緒は少し照れくさそうにオヤジライダーに言った
「あぁ早く衣緒の顔が見たかったからな」
オヤジことジークは衣緒を腕で抱きしめ優しく微笑んだ
衣緒はジークの腕に抱かれ嬉しそうであった
…ホモ?

「ボクは戦士になんてならなくたって戦える!」
葉月はジークに挑発的に言い放った
「ムリだな」
ジークは衣緒から手を離し、葉月を睨みつけた
「戦士でなければ戦えない
 お前が今まで何をして来たかは知らないが
 これは遊びじゃないんだ
 子供はさっさと家に帰って寝るんだな
 知美、さっさと連れて帰れ」

「出来ません、私はお嬢様と旦那様意外の命令は聞きません」
知美はめがねを光らせジークに反論した
「春川さん〜」
知美とジークの間で揺れるバカ兄衣緒
「お嬢様には自分で道を選ぶ権利があります
 私はお嬢様が選んだ道にただ従うだけです」
ジークと知美の睨み合いは続いた

ドカーン!!!!
地下秘密基地に大きな衝撃が走った
「なんなんや!」
「はふーーー爆発ですか〜〜」

「フフフ思った通りだったよジーク」
煙の中から現れたのは先ほどの機械獣の男
そう、天使会の使徒の一人
「道案内ご苦労さん」
「くっキサマどうやって此処が!!」
「その娘に発信機をつけておいたのさ」
「なんだと」
ジークは葉月を見た

「え?何?」
葉月は体をガサガサすると発信機が落ちた
「だから首を突っ込むなと言ったんだ!」
ジークは怒りを露にした
「まぁいい、此処は我らがテリトリー
 ここをお前の墓場にしやる!焼き鳥ヤロウ!!」
ジークは使徒との戦闘に突入した
しかしその戦いは熾烈で既に基地の機能は大半が破壊された
「ちょっとジークさん〜〜
 こんな所で本気に成らないでよ〜〜
 まだローンがたくさん残ってるんだよーーー」
衣緒の心配はあさっての方向を向いていた

「ハヅたんこっちこっち」
おじ様は完成したバイクに葉月を乗せ非難した

「おじ様…ボクも戦いたい
 そうだ、このバイクがあればヤツとだって!」
「ムリやな」
おじ様の改造したバイクのサイドカーに飛び乗った
卯月博士とマムだったが
「このバイク、いやオーバーマシンは戦士じゃなきゃ
 本来の力は発揮でけへん
 あんさんじゃムリや」

「それでもボクは…ボクは…」
葉月は涙を浮かべ肩を震わせていた
するとその時バイクからララが語り出す
「リリスから前に聞いた事があります
 葉月は大いなるソーマを宿してると
 それはイヴの加護による物ではなく
 本来、葉月自身が持つ力だと」
「ボクの中にまだ力があると…」
葉月の目に光が戻りつつあった

「…俺は反対だな
 ハヅたんには普通の女の子として生きて欲しい
 それに、俺はハヅたんの夫だぜ
 可愛い嫁さんを危険な目に合わせる訳にはいかない…」
「おじ様…」
葉月はおじ様の言う事に逆らえない
逆らえないが
「だから、俺が一緒に戦うなら手を貸すよ」
「おじ様!
 う〜〜んおじ様だ〜〜い好き〜〜」
葉月は嬉しさのあまりおじ様を抱きしめた
「あぅ〜〜ぐるじぃー死ぬー」

「で、どないするつもりなんや
 葉月はんの旦那はんであるクマはんには何か考えでもあると?」
卯月博士は嫌味ったらしく言った
「あれ、何かさっきのオヤジライダーが持ってた武器
 あれって何かしらの特殊デバイスだろ
 多分ウチから流れたNBデバイスの流れを組んでる筈だから
 あれって他に使われてないの無いの?」
卯月博士はおじ様の言葉に少々疑惑を感じたが、従う事にした
「あれはレイブレイド
 ダークエンジェルの専用の武器
 まぁエエとりあえず、一つ新しいのあるわ
 ほれっ」
何処から出したのか、卯月博士はレイブレイドを葉月に渡した
「何これ?…(ソーマの力は感じないけど…)」
葉月は不思議そうにそれを見つめた
「展開してみぃ
 そう、腕にマウントして、それは弓なんや」
卯月博士は葉月の左腕に装備させ、説明した
「こうやるの?」
葉月がレイブレイドを展開した瞬間だった
「な!なんだこれ!」
葉月の体から溢れんばかりのソーマが溢れる
「…やっぱりな、それが引き金になったんだ」
「あれ?なんでや?何で展開してるんに
 額に天使の刻印が出ないんや?」

「とりあえず、ハヅたん行くよ!ララも準備はいい?」
「はい、システムオールグリーン
 葉月を専属の戦士として登録
 マシン名はいかがしますか?」
「フフフ、ハヅたん!」
おじ様と葉月の目と目が合う
「うん、ナイトファントム!!」
「はい、オーバーマシンナイトファントム起動します」

葉月達はオーバーマシンで戦場へ向かった
「…しかし、あのマシンを完全に直してしまうあのクマはんといい
 天使の刻印無しにレイブレイドと契約してしまう葉月はんといい
 あの二人ほんま何もんなんや?」
「きっと天から使わされた〜女神様なんですよ〜」
マムは嬉しそうに言った
「天使を越える者…女神ねぇ
 まーうちらは見守るしかできへんな」
「はい」



「くそっ、何故だ何故やつに当らん!!」
ジークと使徒の熾烈な戦いは続く
「既にこの基地も機能は失った
 ついでにお前との決着も此処で付けさせて貰うよ!
 不死身のジーク!!」
使徒の一撃がオーバーマシンを貫きジークに直撃する
「あれは!?」
知美は衣緒を守りながら戦闘領域に残っていた
そんな知美だったが、使徒の攻撃に驚きを隠せない
「カピラの閃光…」
「ほほー女戦士よ、これを知っているのか?」
使途は知美に向かい自信たっぷりにその秘密兵器を見せ付けた
「くっ…離れろ知美…お前でもあれには…くはっ」
ジークは左腕を失い口から血を吐き出し満身創痍となっていた
「…ジークさん」
知美のめがねが光った
「ジークさん!ジークさん!」
衣緒は知美の側を離れ、ジークの元に駆けつけた

「はははは
 不死身のジークも所詮人の子
 神の怒りには勝てますまいて」
使途は勝ち誇った様に大声で笑だす

「しかたありませんね
 春川知美、貴方の体完全に私がもらい」
「まったーーーーー!!」
「旦那さま、それにお嬢様も」
「待たせたね知美!
 ボクは闘う、人間として戦士として」
葉月の表情に躊躇いは無かった
「はいお嬢様!」
「知美さん、早くあのオヤジの手当てを
 ちょびっとならギフトの使用を許可するから」
おじ様は知美にジークの手当てをする様に指示を出した
「はい、旦那様」

「ん?やはり目覚めたか娘
 いや…天使の刻印が無い?
 …戦士ではないのか?」
使途は葉月を睨みつけた
「いくよおじ様!ララ!」
葉月はナイトファントで機械獣に突撃した
「くっ小娘が!舐めた事を!」
「うおおおおおお!!!」
ドカーーーーン!!再び天井は大きな爆煙を上げる
地上に戻って来たオーバーマシンの葉月達と
機械獣に乗る使途
「くぅ!小娘!それにそのマシン…
 ただのオーバーマシンとは違うな」
「フフフそりゃそーだろっ
 ヴィマナ技術の本家本元のクマちゃんが組みなおしたんだからな」
おじ様の言葉虚しく戦闘は始まる
「おいっ、少しは俺の話聞けよお前ら」

葉月のレイブレイドから無数の光の矢が機械獣を襲う
「ちぃーー当らない!」
「ふはははは、何処を狙ってるんだ!小娘
 いかに強い力とて、当らなければ意味が無いわ!」
機械獣の攻撃を交わすナイトファントム事、ララ
「回避とシールドは私に任せてください
 葉月は攻撃に集中して下さい」
「分かってる!さっきからそうしてるけど
 何であたんないんだ!」
葉月の攻撃は全て使途に交わされていた

「うーん…葉月たん弓道ってやった事ある?」
「へ?無いよそんなもん
 授業でも普通やらないだろ」
汗をたらすおじ様
「そりゃ当らんわ!
 構え方が悪い、腰が引いてる
 顔が可愛すぎ!」
「おじ様…それ関係ありません」
ララの突っ込みの汗を落とすおじ様
「だって可愛いんだもん、めっちゃ可愛いんだもん」
葉月は照れてもっととんでもない方向に矢を飛ばしてた
ドカン
「ちぃ!こっちの行動を呼んだのか!
 甘く見すぎていたか!
 こうなったらこっちも本気だ!」
何故か葉月の一撃が命中していた
「愛の力だね」
葉月とおじ様は見つめ合ってお約束の親指を立てるポーズをとる
「理解不能…」
ララは理解に困っていた

「はははは喰らえ!神の光を!!」
「避けてハヅたん」
使途から放たれた一撃を間一髪回避した葉月達だったが
ちゅどーん
葉月達が避けた方向の山が爆発し炎上を始めた
「な…なんて威力」
「解析完了
 あれは発掘された遺産兵器と推測
 危険度レベル7」
「危険度レベルってなにさ!」
葉月が分からないから少し怒り口調でララに問いた
「レベル7ちゅったら国家崩壊レベルやな」
おじ様が淡々と説明した
「…それってヤバイじゃん」
「そだね、何とか破壊しないと…
 (なんて言うか…あれ見覚えがって言うか…
  間違い無く大昔造ったアレだよな…アレ(汗)
  何でこんな所に発掘されてんだ?
  …ん?そうか!)
 ハヅたん!とりあえず、一旦地上に降りて」
「地上の方が被害が大きくなるんじゃ」
「大丈夫、あれはチャージに時間がかかるから
 連射は出来無いんだ、さー早く」
「うん分かった」
葉月はナイトファントムで地上に降りた
「ララ、次のチャージまでの予測時間は?」
「はい、3分25秒と推測されます」
「うーん、出力のわりに時間が長いな
 所詮完全復元が出来て無いって事か
 葉月たん、とりあえず今のハヅたんだと
 その武器は使いこなせないから、新しい武器作るよ」
おじ様はナイトファントムから降り、地面に向かい手を当てた
その瞬間魔方陣の様な物が浮かび上がりそこから鉱石が出現した
「おじ様?今何を?」
「ん?あーこの地上は恐らく旧エステファーン大陸の残骸の上に存在するんだ
 だから、オリハルコンの元をかき集めれば精製できると思ってね」
「言ってる意味が分からないんだけど…」
「オリハルコン、あらゆる物質の中でも最高の強度を持つ物質
 しかし、その存在はこの地上ではまだ確認は」
ララは再びおじ様の行動が理解出来なかった
「ちゅー訳で、これならイヴの刀に匹敵する武器になれる
 あっそうそう、これを使うともっとイイ感じになるかもねー」
「おじ様?この変な気持ち悪い人面枝は何?」
「ん?あーこれね、さっきパクって来たヒヒイロカネ
 こいつは霊因子の伝達が強くいから、きっと凄い事になるよ〜」
「…なんだか懐かしい…
 おかあさん…
 今、由利子さんは感じた気がする」
そうなのだ、おじ様がダークエンジェルから持ち出したこのヒヒイロカネこそ
葉月の実の母親である由利子が埋葬された倉木の山の神木から採取した物だったのだ
それが今葉月の手に渡ったのは偶然なのか必然なのか
だが葉月がそれを知るのは、まだ先の事であった



一方地下施設では
「ジークさんしっかりして下さい、こんな体じゃもう」
ジークを心配する衣緒だが
「ジークさん残念ですが、肉体の中枢機能の大半が失われてます
 一度失われた身体機能はもう二度と戻ることはありません」
知美はめがねを光らせながら淡々と語る
「でも…春川さんが治療してくれなかったら今ごろ…」
衣緒は知美に涙を流しながら感謝していた

「しかし解せんな…天使の力に治癒能力はあっても
 あれ程までの力は無い…春川知美…ただの戦士やないな」
卯月博士は知美に疑問を感じていた
「はふーー大変です〜〜ヒヒイロカネが燃えてしまいましたぁ〜」
「なんやて!くはーーあの炎上やと、もう完璧燃えてしまっとるやん」

「大丈夫です、由利子様の思いは葉月お嬢様に届いています」
「春川…さん」
「東くんも、そう思うでしょ」
知美は笑顔で衣緒に言った
「うん、僕もそう思う」

「だがヤツは倒せない…何故ならヤツもまた我々と同じ…
 うっ…」
ジークは何か言いかけて気絶した
「ジークさん!」
「大丈夫よ東くん、気を失っただけだから
 …後は頼みましたよ旦那様、お嬢様」








「手を翳すんだ、そしてイメージするんだ」
葉月はヒヒイロカネとオリハルコンを持ち、
おじ様の指示で何かを始めていた
「そう、もっと強く念じるんだ!」
「うぅ…はっ
 この感覚…あの時の」
葉月の回りに虹色の光が集まる、それはまるで蛍火の輝きの如く美しい
葉月は思い出した、初美を追い
初めて狭間の世界でイヴの刀を手にしたときの事を
「分かる…今ひとつに」
葉月はヒヒイロカネとオリハルコンの鉱石を合わせた
その瞬間!
眩い光はあたりを照らす

「なんだ!からだが、動かない」
使途はその光で身動きが取れない

その瞬間、葉月の手には眩い光を放つ刀が生まれていた
「これは」
「そう、葉月の刀
 ハヅたんが生み出した新しい武器さ」
「初美の形見の刀なのか…?」
「ううん、それとは違う
 あれはイヴのソーマを持っていたけど、これは違う
 そう、これは葉月たんの葉月たんだけの刀」
「ボクのボクだけの刀?」
「うん」
「…分かった、やってみる
 いくよ!!」
葉月は刀に自分の力を込めたその瞬間葉月自身の体がより輝き出す
「あの時以上のソーマの力が測定されます…凄い」
コンピューターであるララですら驚きを隠せない
そうなのだ、これが東葉月の本当の力、本当の姿なのだ
「知ってるかい葉月たん、それがキミの力なんだ
 そしてそれがキミの能力なんだ
 物質を武器化させる力…ギフト(天恵)
 見せてもらうよ、我が女神王国の新たな女神王候補の力を」

葉月は一振りの刀を手に単身で巨大機械獣に戦いを挑む
「くっ小娘が!!」
「甘い!!」
葉月は機械獣オーガマシンの攻撃を全て斬り崩す
「分かったんだ、ボクの力を!」
葉月は地面に手を翳すと無数の岩石で出来た刃が敵を襲う
「なんだ!この技は!」
「ボクは自在に物質を武器化する能力があるのさ」
「なんだと!バカな!
 まさかキサマ!ギフト使いなのか!?
 くっ天使の刻印が無いのは、やはりキサマが女神だからか」
「そんなのボクが知るか!!!!」
葉月の一閃が大気を伝わり衝撃波としてオーガマシンに襲い掛かる
「くぅーー小娘!やはりキサマだったのか
 数ヶ月前に観測された神の使いを倒した娘とは!」

「アベル事件…そうさ、あの事件を収集させたのがこの葉月たんさ」
おじ様が空中に浮いたまま言い放った
「くぅーーーならばその力貰い受ける」
再びカピラの閃光が火を吹く!
「おじ様危ない!」
その瞬間、葉月はその巨大な光の柱を叩き斬った
そして、その手の刀は巨大に進化しており、その姿は正に神剣と化していた
「どうなってるんだ?」
「ハヅたん、それがキミのもう一つの能力!
 武器進化能力さ!」
「武器進化…?
 そうか、前に何度か…そうだったのか
 分かったよおじ様
 これで終わりだ!!天使会とやらの刺客よ!!」
葉月の一撃がオーガマシンを真っ二つに切り裂く
「バカな…この私が…ウリエルの称号をもつこの私が負けるだと
 くぅぅ
 小娘、覚えていろ、必ずお前を倒しその力我が物とする
 来い、我がオーバーマシンよ」
使途はオーバーマシンを呼び出した、
その時葉月の目にやつの額の天使の紋章が映った
「ヤツも…戦士なのか?」

「うーん、まさか敵にも天使の刻印を持つヤツが居るとはね
 あるいは、敵も同じ戦士なのか…
 最後に言ってたウリエルの称号ってのが気になるけど…
 まーいいや
 ハヅたん、お疲れさん」
「おじ様…は〜」
葉月はおじ様の顔を見た、瞬間おじ様の倒れ掛かった
「うじゅ〜ハヅたん、相当疲れたみたいだね
 そりゃそうか…でも、こんな幼い寝顔の子が
 まさかあんな戦いしてたなんて…
 ララ」
「はい、ではこちらに乗せて下さい」
おじ様はハヅたんを持ち上げてナイトファントムのサイドカーに乗せた
その時葉月の手はおじ様を抱きしめ離さなかった
「ハヅたん…ララお願いできる」
「はい、では自動操縦に切り替えます」
「あぁ…頼むよ」
葉月はおじ様を抱きしめたままサイドカーで眠りについた
その表情はとても穏やかで、まるで父親の腕枕で寝る子供の様だった

















「と、まーこんな感じかな〜」
おじ様の長い話に感動するレイカ
「うぅ〜感動しましたー
 凄いですぅ葉月さん本当に凄いですぅ〜〜〜」
「まー何だかんだ言って、敵の使途の中で天使の刻印を持つのは
 ウリエルだけだったんだけど…
 まーそんなこんなで、ハヅたんはここ数ヶ月間で
 13人の使途のウチ6人まで倒したんだよね〜
 まーそのウチ一人は裏切ってるから実質あと6人かな
 とは言え、ウリエルが出てこないところ見ると、
 あの時死んでる可能性もあるし…まー後5人って所かな」
「はー
 あの〜此間追い返したのも使途なんですか?」
「うーん、多分ね
 あーザコ達はただのザコだけどね」
「尊敬しちゃいます〜〜葉月さんっ」
「まーキミも負けないように頑張りたまえ
 もっとも、ウチの嫁は天下無敵だがなぁ〜
 ガーハッハッハッハ
 
 …
 そうそう、その後ハヅはんソードブレイカーと呼ばれる様になって
 幾つもの天使会の秘密基地を潰しまくるんだけど〜
 聞きたい?」
「はい、是非聞きたいです」
「じゃ何から話そうかな〜
 そうだ、あれを話そう、あの時は本当に大変〜」
おじ様のある意味自慢話はその後永遠に続いたそうな…



「ところで、レイカ何やってるんだ?」
「あっちでおじ様と意気投合してるみたいだよ」
ミコトはお茶すすりながら言った
「さぁ皆さん、今度は隠密奉行立花が始まりますよ〜」
早苗さんの一声でTVに釘付けになる
葉月、ミコト…3人の時代劇鑑賞会も永遠に続いたそうな
そうそう、アリスは疲れて葉月の膝の上で寝ちゃったみたいですな



「あの〜旦那様…そろそろなるるさんが…
 って聞いてないですよね(汗)」
「でも〜あの時のハヅたんがめちゃくちゃ可愛いの〜〜」
既に話が夜の話題に摩り替っていた事は言うまでもない
「はー旦那様…」
肩を落とし呆れる知美さんだった









おじ様地下秘密基地
「クククまさかこんな秘密基地を隠してたなんて
 バカ共が、ここをリリスちゃんの前線基地として乗っ取っ…」
「あーーーーー」
コゲリリスと地下に閉じ込めれていたなるるが顔を合わす
「あんたは!コゲちびならぬ、コゲリリス!!」
「お前はあの時のバカ人間!!」
どうやらこの二人何かしら因縁があるようで…
「ところで、此処からどうやって出るのよー」
コゲリリスがなるるに悪態をつく
「そんなのこっちが教えて欲しいデスよーー
 はふーーご主人様〜〜早く迎えに来て欲しいデス〜〜」

その後二人が発見されたのは…










-------------次回予告
デスデスデスぅ〜〜〜K子もとい、なるるデス!
やって来ましたお姉さまの住む世界へ!
はふ〜再びお姉さまに会えるなんてK子…もとい、なるる感動デスー
ナンデスかお姉さま…そのバカ女(リリス)もどきの女は!
キーーー許せないデスーーお姉さまは渡さないデスーーー

いよいよ始まるお姉さまとなるるの新たな冒険!
果たしてなるる達を待ち構える世界とは!
次回、本の旅人再びにイッツショー
つんつん
ナンデスか?
ゲっご…ご主人様
へ?なるるは、サブキャラだから少し大人しくしてろ
デスって…
そんなバカなーーーだってなるるが主役じゃ!
…って言うか、何でなるるの体こんなに弱いデスかーー
へ?お前五月蝿いからそれ位で丁度いいって
ご主人様のいけず〜〜これじゃお姉さまを守る事も出来無いデス〜

はーはー
こうなったら、勝手に目立ってやるデス!
へ?何コゲリリス…ふむふむ
あんたとは気が合いそうデスなクククク
ククーーーククククク

だから次回予告になってないって…(汗)


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セーラー服と日本刀
〜TVアニメ『ヤミと帽子と本の旅人』より〜