作者:銃太郎(SIG550)さん

葉月の世界 第17話 『図書館』


列車は漆黒の空間を貫く無限軌道をひたすら走りつづけている。
客室の窓から外を眺めても何も見えない。ただ無限の暗黒が広がっているだけだ。
それはまるで、胸の奥から溢れ出したボクの気持ちが全てを覆い尽くしているかのように思える。
二度と初美を離さない、命を賭けて初美を守ると固く心に誓ったのに…
ボクは自分が無力な存在だと思い知らされたんだ。
初美のおかげで不思議な力を使えるようになったけど、所詮ボクは人間だ、神には抗う事は叶わないのか…
ボクは今まで思い上がっていたのか?

リリスが言ってたっけ…外の空間は、世界と世界の間を埋める底知れない無限の闇。放り出されると二度と戻って来れないと。
初美をこの手に取り戻す事が出来ないのなら、ボクがこの世に存在する意味は無い。
いっそのことこの永遠の夜の深淵に溶けてしまいった方がいい…

そうさ、初美とボクを繋ぐ大切な刀、いつもボクに勇気を与えてくれた相棒は今は手元に無い。
リリスだってヤミの能力の源泉である帽子を失った。こんな状態で何が出来るって言うんだ!

悔しい!悔しい!悔しい!!

ボクのたった一つの望み、それは愛する初美とひっそりと暮らす事…他には何もいらない。
それは、ささやかな望みだと思っていた。だけどこの世のどんな望みよりも贅沢な、いや叶えてはならない禁断の欲望だったんだ。
創世のイブを独り占めするなんて、たかが人間のボクが許される事じゃないんだ。
だってそれは、ボクが宇宙を独り占めするのに等しい事なんだ!
太陽を手にしようとして神の怒りに触れ、炎に灼かれたイカロスのように、ボクも罰を受けるのだろうか…
世界を危機に陥れる災厄を招き入れ、為す術もないボクに初美を愛する資格なんか無いのだから。
でも…ボクは初美を…愛しているんだ。
初美は…ボクにとってはイブである前に、お姉ちゃん…いや、誰よりも大切な人なんだ。
たとえどんな罰を受けてもいい。もう一度初美に会いたいんだ!
例えこの身は地獄で永遠の責め苦を味わおうとも、ただ初美だけは無事で居てほしいんだ!

初美…ボクの大切な人

もう一度…会いたいよ…


「葉月さん、葉月さん?」

突然呼び掛けられてボクは我に帰った。
声の方に視線を向けると、琥珀が心配そうな表情でボクの顔を覗き込んでいる。

「悲しい目をして窓の外を眺めてるから…初美さんの事を考えてたんですね。」

琥珀が胸の谷間から白いハンカチを取り出してボクに差し出した。
どうやらボクは泣いていたみたいだ。頬に触れてみると、しっとりと濡れている。

「あ、ありがとう。」

ハンカチを受け取って涙を拭う。

「泣いてる葉月さんの顔、とても綺麗です。思わず見とれちゃいました。
あ…スミマセン!こんな時に不謹慎ですよね!
アタシったら何言ってるんだろ。」


琥珀がバツの悪そうな表情で頭を掻いた。
綺麗だなんて…そんな事言われても、今は突っ込みを入れる気分にもならないよ。
これがリリスなら頬を思い切りつねってやる所なんだけど、翡翠の手前もあるから流石にそれは出来ないな。

「ところでさ…翡翠はまだ機関車に居るのかい?」

琥珀のパートナーが居ないのを見つけたボクは、話を逸らすように彼女に質問した。


「あ、はい。翡翠は人間だった頃から大の鉄道マニアだったから…
運転台に乗るのは鉄オタの夢なんだそうです。」

そういえば、さっき翡翠は目を爛々と輝かせて機関車を隅から隅まで舐め回すように見ていたな。

「そんなもんなのか?ボクには解らないな。」

「趣味って他人には理解できない物ですよね。
アタシらが魂狩りになったのも、魂を駅に送り届ける時に列車が見れるからって、翡翠が志願したからですし。
葉月さんの趣味って何ですか?」

「え…趣味?…は…特に……
そういう琥珀は?」

「アタシはスポーツが大好きで、バレーと水泳ばっかりやってました。」

明るく答える琥珀。
そうか、その引き締まった身体はスポーツのお陰なんだ。
そういえば、琥珀は何となく雰囲気が体育会系なんだよね。
ボクに話す時の言葉使いが、部活の先輩に話すような感じだし、声も大きくてはっきり喋る。
ボソボソ話すボクとは対象的だ。

「うにゅ…葉月の趣味は〜…オナ…」

【むにー!】

突然隣でうたた寝をしてたリリスがあらぬことを口走ったので、ほっぺたを思い切りつねってやった。。

「いひゃ〜いはるひ〜ひゃめへ〜…むにゃ…ふひ〜…すやすや…」

つねられても起きないし(汗)緊張感の欠片もない緩んだ顔で寝やがって。
向かいで琥珀が必死に笑いをこらえてる。

「リリスってキミ達魔族の上司にあたるんだろ?
魔界でもこんななの?」

「はい。リリスちゃん様は普段はとっても無邪気な方なんですよ。」

「そうなんだ…キミ達が魔界から逃げたい気持ちが解る気がする…(汗)
ていうかボクがリリスから逃げたい…」


「でもリリスちゃん様は葉月さんが居るから安心して眠れるんだと思いますよ。」

「そう…かな?」

「そうですよ!それに、葉月さんもリリスちゃん様と話してる時はとても楽しそうですよ?」

楽しそうに話す琥珀の声が、押し黙ったままの乗客たちで満席の車内に響き渡った。
屈託のない彼女の笑顔がボクには眩しすぎる。

「琥珀には楽しそうに見えるのか?まあコイツのお陰で退屈はしないかな。」

「というか、アタシにはお二人がお互いを必要としあってるように見えるんです。
何かお二人を見てるとアタシらも勇気が湧いてきます。何故だか解んないんですけど…
大丈夫です!イブさん、いや初美さんには必ず会えます!」

「大層な自信だね。だと良いんだけど…」

「あ、ごめんなさい!アタシ勝手にベラベラと…翡翠からよく言われるんです、琥珀ちゃんは楽観的過ぎますわ、って。
でもアタシの勘って結構当たるんです!それで何度も翡翠を救って来たし、魔界のモンスターに襲われた時も、アタシが駆けつけなかったら喰われてたと思います。
あの日、朝から胸騒ぎがしてたんです。
で放課後になって益々嫌な感じが強くなって…
もしや翡翠に何かあるんじゃないかと思って、部活を脱け出して彼女の家へ駆けつけたら、見たことも無い気持ち悪い生き物が翡翠を食べようとしてたんです。
何とか翡翠を助けたんだけど、その時リリスちゃん様が現れて魔獣もろともアタシらも魔界へ引き込まれてしまって…」

「本当にすまない!コイツのせいでキミ達は…」

ボクは未だ眠っているリリスの鼻をぎゅっとつまんだ。


「謝らないで下さい葉月さん。悪いのはアタシなんです!あの時部活をサボって翡翠と一緒に帰っていれば避けられたかもしれないんですから。」

「ありがとう、琥珀はいい人だね。君のその謙虚でいて前向きな所、嫌いじゃないよ。」


「アタシも葉月さんのクールなのにとても繊細なとこ、好きっす!
あ、でもアタシ、今は人じゃなくて悪魔ですけどね!アハハハハハ」

体育会系らしい豪快な笑い声が車内にこだまする。
こんな明るい子と居るから辛い事も乗り越えて来たんだな。
翡翠は幸せ者だよ。


[その頃翡翠は、幸せそうに運転席(機関車は自動運転だが、雰囲気を出すために付いている)に座っていた。]

「あ〜ん、憧れの機関車の運転台に乗れるなんて夢のようですの!
魔界に来て良かったですの。人間界では女子高生が機関車になんて乗れませんものね!

第二閉塞、進行ー!!」

[運転士を気取って信号の指差確認をする翡翠だった]

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「間もなくーヤミの図書館ー ヤミの図書館ー。停車時間は三分です。お降りの方はお忘れ物ございませんようお支度願いまーす。」

某アニメキャラによく似た車掌がやって来て停車駅を告げた。
程なくして列車がガクンと前後に揺れた。どうやら駅に着いたみたいだ。
窓の外に目をやると、今まで真っ暗だった景色が薄ぼんやりと明るくなっている。
ぽつんと灯る街灯の光に照らされたプラットホーム。その向こうに広がっているのは見覚えのある景色だ。
沢山の本を収納した大きな本棚が幾つも並ぶ巨大な空間。
紛れもないヤミが管理する図書館だ!
ボクの脳裏に初美を追ってここへ迷い込み、管理者のリリスと出会って様々な世界を旅した日々が蘇った。
しかし、三分停車では感傷に浸っている暇はない。
ボクと琥珀はリリスをたたき起こして引きずるように列車から降りた。

「お客さん!待って下さい!ここは生身の人間が降りてはいけない所ですよ!」

車掌が慌ててボクを呼び止める。

「ええっ!?では機械の体でなければこの図書館には入れませんの?」

機関車から降りてきた翡翠が驚いた様子で言う。ていうか、そういう問題じゃないだろ…

「ふわぁ〜…葉月は大丈夫よ〜、このリリスちゃんの知り合いだから。」

「なら良いんですが…くれぐれも気をつけて下さいよー!。」

発車の汽笛が鳴ると、空間に大きな黒いトンネルが開いた。
心配げな表情の車掌(といっても顔はよく見えないをだけどね。)を乗せた列車は、漆黒の空間へと吸い込まれて行った。

「ここがリリスちゃん様が管理なさっていらっしゃる図書館なんですの!
とても大きくて、ずーっと上の階まで本がぎっしりなんですのね。一体何階まであるのかしら!素敵ですわ!」

図書館の中心の吹き抜けを見上げて感激した翡翠が本棚の方へ歩いて行く。

「待て!!戻るんだ!!」

突然、本棚の陰から物凄い速さで黒い物体が飛んできた!

「危ない!」

ボクが駆け出すよりも早く、琥珀が翡翠に駆け寄って抱きかかえ、間一髪で黒い物体を交わした。

「危なかった…もう、翡翠ったら、勝手に一人で行動するなといつも言ってるだろ!」

「あう〜ごめんなさい琥珀ちゃん。
葉月さん、あれは一体何ですの?」

「あれは狩人だ。図書館を侵入者から守ってるんだ。」

狩人はヤミの帽子を大きくしたような姿をしているけど、帽子の下に一本の胴体があって、その足にあたる先端に鋭い鎌が付いている。
常に図書館内部を飛び回っていて、その大きな一つ目で侵入者が居ないか監視しているんだ。

「あの鎌にやられたらズタズタに切り刻まれてしまう。気をつけろ!」

「でも〜このリリスちゃんのそばに居れば安全よ。
何と言ってもあたしはこの図書館の管理者だもの。うふ。」

自信満々のリリスだったが、その自信は次の瞬間脆くも崩れ去った。
上の方から何十体もの狩人が襲って来たんだ!


「いや〜ん!何で〜?あたしはリリスちゃんなのに〜。」

「危ないリリス!とにかく逃げるんだ!」

ボク達4人は本棚の隙間を全速力で走った。
しかし狩人達は物凄い勢いで追ってくる。

「こら〜!!来るな〜!!あたしはヤミのリリスちゃんよ〜!!」

リリスが狩人に向かって叫ぶ。でもそいつらは全く追跡を止めようとしない。

「ていうかさ、帽子とマントを着てないとヤミと認識されないんじゃないのか?」

「あ〜!そうだった!ジョウくんはフライアの手下に取られたんだった〜!
どうりで何かスースーすると思った〜…ってそうじゃなく〜、あれが無いと狩人が言うこと聞かないないのよ〜、どうしょう〜?」

「え!じゃアタシらどうなるんですかー?!」

「もちろん狩人の鎌でみじん切りに〜…ってそんなのいや〜ん!」


でもよく見ると、狩人達は一定の距離を取って追ってくるだけで、襲撃してくる様子はない。
とことん追い回して、疲れて動けなくなった所で一気にカタを付けるつもりだな。
リリスと翡翠はもう息が上がって苦しそうだ。
こんな時に刀があれば…
【バキッ!】

突然ボクの視界から図書館が消えて、次の瞬間体が固い床に叩き付けられた。

「痛ったー…何だよー。ここはどこだ?」

「痛〜い、もう〜誰よ〜、こんな所に落とし穴開けたのは〜」

「翡翠、怪我は無い?」

「ええ、琥珀ちゃんも無事でよかったですわ。」

「どうやら全員落ちてしまったようだな。それにしてもなぜ落とし穴が?」

「コゲちびの悪戯ね!あたしを落とすつもりで床に仕掛けをしたたのよ〜。
あの子ったら〜図書館のあちこちにこんなトラップを仕掛けてんのよ〜。
も〜リリスちゃん何度引っかかったか知れないんだから〜!あのチビスケ、見つけたらお仕置きしてやるんだから〜!ぷんぷん!」

リリスってずっとコゲちびの悪戯に悩まされてたんだな。
そういえばボクが初めて図書館に来た日に、花火の悪戯で黒こげにされたっけ。
図書館に居る間中コゲちびはリリスをからかっていた。
ボクの前では不思議とおとなしかったんだけどね。
ボクが座ってお茶を飲んでると、よく膝の上に乗ってきて眠ったりしてたんだ。

「でも、狩人さんたちは追って来ないみたいですわ。
落とし穴のお陰で私たち助かったのではありません?」

「あ〜そっか、ここは図書館とは別の次元のよくわからない空間だからね。
狩人の管轄は図書館と本の世界の中だけだから、ここまで追って来れないのね〜。
それにしても何でコゲちびのヤツ、異次元に通じる穴を開けるなんて力持ってんのかしら?」

リリスが腰をさすりながら解説した。

「これからどうする?ケンちゃんを探して元の世界に戻りたいんだけど。」

「でも、外に出ると狩人が襲って来るわよ〜。」

「ワタクシ達が囮になりますわ。その隙に葉月さんはケンちゃんさんという方をお探し下さい。」

「でも、それでは翡翠と琥珀が危険だよ!」

「構いません!アタシらも葉月さんのお役に立ちたいんです!だから早くケンちゃんを見つけて下さい!」

二人の悪魔が真剣な瞳でボクを見つめる。
しかし……二人で大丈夫なのか…

「じゃあ〜あんた達囮よろしく〜!さ、行くわよ葉月!」

「ああ、待てリリス…」

リリスがボクの手を引っ張っる。
リリスが空中に浮かんだので、そのまま穴の外に出てしまった。

「来るぞ!伏せろ!」

すかさず狩人が襲撃してきた!穴の周りで警戒してたようだ。


「出でよ!屠龍!呑龍!飛龍!」

翡翠が魔獣を償還して狩人と戦っている。
琥珀も長い鞭で狩人を懸命に防いでる。

「葉月さん!さあ!早く!行って下さい!!」


「すまない!」

ボクとリリスは二人に礼を言うと、図書館の中心部にあるヤミの居住空間に向かって走り出した。
翡翠、琥珀、どうか無事で居てくれ!



ボクとリリスは階段をいくつも駆け上がって図書館の階層を登って行く。そしてついに…

「ハアハア…はひ〜やっと着いたわ〜…もうダメ…膝が大笑いしてる〜」

「リリス、へたりこんでないでケンちゃんを探すんだ!」

「もう〜葉月といい琥珀といい元気ね〜…リリスちゃんはか弱い女の子なんだからもっと大切にしなさいよね〜!」

「誰がか弱いって?冗談言うな。殺しても死なないクセに!
早くケンちゃんを見つけて琥珀達を助けに行かなきゃ!
おーい!むちむち黄色まんじゅう!居るかー!!居たら返事しろー!!」


ボクが大声で呼びかけるが、本に声が吸収されるのか、遠くへは届かないみたいだ。
もう一度呼びかけて耳を澄ませてみる。

「誰が黄色まんじゅうやねん!葉月姉さんでっか?
来たらあかん!早よ逃げとくんなはれー!」

奥の方から声が聞こえる。
声の方へ歩いて行ってみると、
そこに居たのは鳥かごに入ったケンちゃんと、それを手に持った見慣れない年増女。
しかもその女、ヤミの帽子とマントを着ている。

「お前は誰だ!」

「フフフフフ、よく来たな、東葉月!私の妨害工作にもめげないとは大したものだ。褒めてやろう!
我が名はフライアだ。覚えて置くがいい。」

このオバサン、エラそうな態度でムカつく!

「お前がフライアか、初美を返して貰おう!」

「それは出来ない相談だねぇ。
よく見るがいい。」

フライアが顎で右奥を指し示した方向を見ると、外見は初美にそっくりだが、身長は10センチ程の小さな女の子が眠っていた。


「一体これは…」

「ヴォータンが東初美を此処へ連れてきた途端に、あんなに小さくなってしまったのさ。
つまりあれはダミーという訳だ。
人間のくせに偽物を掴ませて神を欺くとは生意気な小娘ねえ。
さあ!本物のイブの居場所はどこ!教えなさい!」
根性悪そうな目でボクを睨むフライア。
中等部の時に居た、社会科の女教師の目にそっくりでムカつく。
(授業中にその教師の間違いを指摘してやったのを根に持って、たびたびボクに意地悪をしてたヤツだ。
この手のイジメには負けたくないので無視してたんだけど、ある時初美にポロッとその話をしたんだ。そしたら次の日、その教師は急に学校を辞めてしまったんだ。
一身上の都合という理由だったけど、一体何があったんだろう?)
ますますムカつく!
ガンの飛ばし合いなら負けない!睨み返してやる!
「そんな事ボクが知るか!!」

「ほーう、あくまでしらを切るつもりか?
勘違いするな、私は相談しているのではない。
私の後ろを見ろ!」

「フェンリル!」

「は…葉月…何故ここへ来たのだ…」

フライアの背後の床に横たわるフェンリル。とその隣に銀色に輝く甲冑を身に付けたヴォータンが胡座をかいている。
その周りを沢山の狩人がぐるりと取り囲んでいる。

「この帽子とマントを手に入れたからには、ヤミの力は私の物だ!
つまり私は図書館世界の権力を全て握ったということさ!
狩人も私の意のままに動かせる。東葉月!お前の生殺与奪の決定権も私の手にあるのだよ。
アッハハハハハ」

憎たらしい高笑いだ。ますますいけ好かないヤツだ。

「ヴォータンはお前の王様だろ!?裏切るつもりか!」

「戦いしか能のない男など不要だ。たかが人間の小娘一人にてこずって、なにが王よ!
こんな無能な男に支配されてるアスガルド族は不幸なのさ。
無能な王に騙されて戦いに駆り出され、多くの者が傷つき、一族は多大な損失を被った。
だから代わりに私が支配者になって愚かな人民を解放してやるのだ!
そして争いの無い平和な世界を作るのだ!」

「そんなのお前らの内輪の問題じゃないか。なぜこの図書館世界まで巻き込むんだ!」

「そんな事も解らないのか?
全く人間はバカばかりだな。
では教えてやろう。その争いの元になったのがヤミ・ヤーマであり、その彼が作ったのが図書館世界だ。
争いは原因があるから起こるのだ。
即ち!争いを無くすためには、争いの原因となる物はを除去されねばならないのだよ。
だから私は図書館を手に入れた。争いを生む存在を永遠に葬り去る為にな!」


「なんて奴だ!ていうか言ってる事が矛盾してないか?
争いを無くすと言ってるフライアが一番争いを生んでるじゃないか!」

「まったく無知蒙昧だな。これだから人間は下等生物なのだよwwwwwwwwwww」

厨房みたいにwで笑いやがってムカつく!

「これは至高にして神聖な理想に基づく革命なのだよ。
私にはこの次元に理想の楽園を建設するという究極の目的があるのだ。
そのためなら少々の犠牲はやむなし!
私に従わない者は神聖なる理想に敵対する邪悪な存在だ!よってこれは断固排除されねばならないのだ!
お前も私の革命に協力しなさい。そうすれば高いポストをあげてもいいわ。イブとも暮らせるようにしてあげる。」

「絶対にお断りだ!
自分勝手な理屈並べ立てやがって!
何が神聖なる理想だ!ただ自分が好き勝手したいために殺戮をするのを正当化してるだけじゃないか!
人間界にも理想の楽園を築こうとした奴が何人も居た。しかし出来上がったのは楽園とは程遠い生き地獄だったんだ。
ボクはそんな理想なんか興味は無いんだ!」

「葉月〜何大声だしてるの?」

リリスが今頃のこのこやって来た。

「あ〜!あたしのジョウ・ハーリー勝手に着てる〜!返して〜!!」

リリスがフライアにずかずか歩み寄る。

「待てリリス!行くな!」

「おやおやこれは元ヤミのリリスさんじゃありませんか。
お会い出来て光栄ですわ!」

案の定フライアはリリスを捕まえて腕をねじ上げた。

「いやん痛〜い!やめて〜!この人怖〜い(棒読み)」

って、全然こわがってるようには見えないリリス。一体なに考えてるんだ!

「これを見るがいい!」

フライアがマントの下から取り出したのは、ボクの刀だった!

「貴様!」

「ハハハハ、私は伝説のノートゥングを手に入れた。後はイブのソーマを残らずいただけば私は無敵になるのだ。
さあ!リリスの首を斬られたくなかったらイブをここに呼びなさい!」

リリスの喉元に刀を突き付けるフライア!
しかしリリスは意外にも緊張感がない顔をしてる。

「ねえ〜オバサマ、あなたジョウくんが全然似合ってないわよ?
リリスちゃんが着た方がぜったいかわいいんだけどな〜。」

「黙れ!小娘!なら貴様から切り刻んでやるわ!」

フライアがリリスの喉に刀を突き立てた!

「止めろ!!リリスー!!」


つづく

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