〜アレンside〜
夢を、見ていた。
大勢の人が行き交う街。誰かとすれ違う度振り返る。君なのではないか、と。けれど君はいない。
この中に君だけがいない。
あぁ、またか。また君と一緒に居れないのか。もう二度と会えない?
...嫌だ。そんなの...もう嫌だ...。
意識が戻ってくる。何かが、誰かの指が前髪に触れる感覚。徐々に覚醒してゆく。
うっすらと目を開けると君がいた。どうやら眠っていたらしい。
頭が冴えない中、今の状況を整理しよう。
まず、ここには僕と君の二人。そして僕の頭が君の腿に乗っている。
何か、おかしいような。確か、僕は君の腕の中で眠っていたはず。それが何故?
「君が中々起きなかったからね。...なんとなくかな...?」
恥ずかしそうに君は言う。
いつのまにか思っていたことが声に出ていたらしい。今になってようやく実感が湧きはじめた。
「あのさ、一つだけ言っていい?僕は...君が好きだ。
友人としても、恋愛対象としても。」
これだけは言っておきたかった。
悔いがなくなると言ったら嘘になるけど...拒絶されたっていい。僕はそれ相応のことをしてしまったから。
「僕も...同じだよ。
大好き。愛してる。」
君は確かにそう言った。
そして、静かに重なる僕と君の唇。しばらくの間離れなかった。一度離れたと思えば君の唇が吸い付いてくる。
舌が絡み合うのはとても自然な流れだった。
僕ら以外誰もいない、何もない世界に淫らな音が響く。
どれほど経っただろうか。長い時間キスをしていた。何度も、何度も。時折君の口から漏れる声に密かな興奮を覚えながら。
とても幸せだ。
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