〜アレンside〜
――気が付くと、僕は知らない世界にいた。何もない、ただただ闇が広がるだけの世界。英知の結晶とまで謳われた天使でさえも知らない…そんな場所。
「ここは、どこ…?」
僕はあの時確かに自らの心臓をナイフで貫いた。死んだ、ハズなのに。
何故?どこ?ここは。ここにも君はいない。君がいない世界なんていらないのに。どうして。神様。
君の所へ行きたい。のに。神の悪戯ですか…?それとも、やっぱり許されなかったのでしょうか…?
もう嫌だ…君がいない世界になんかいたくない。君と一緒にいたい。
助けて…誰か僕を。君のいるところへ。連れていって。誘って。ねえ…誰か…。
突然、光が落ちてきた。どこか懐かしい光。まるで君がいるかのような安心感を覚える。
反射的に上を見上げる。するとそこには…
僕の愛した君がいた。
君の慈愛に満ちたその瞳を見た途端、視界が霞んだ。喉の奥から込み上げてくる何か。
涙で顔を濡らしている姿を君に見られたくなくて思わず俯く。
「…っ。…ぅっ…。」
ただひたすらに嗚咽を漏らした。声を抑えながら。
「…会いたかったっ。ずっと、シエルを殺めたあの時からっ…ずっと…!」
なぜだろう。声が震える。
唐突に目の前にいる君の存在があやふやなものに感じ、不安になったのかもしれない。
僕は君を抱きしめた。強く。ただ強く。存在を確かなものにするかのように。
君が抱きしめ返してくれたことに安堵を覚える。
「もう…シエルから離れたくない…っ」
そう言った僕は、君の反応を待たずに君の腕の中で深い眠りについた。
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