僕とジャッキーは約束通りエントランスで待ち合わせ、表に回されていた車に乗る。二人乗り終えると、自動的に車が発進した。
車の中は少し独特な雰囲気だった。ジャッキーは黙ったまま車窓から外を眺めていた。
いつもは移動中は一緒になる人と話しながら現地に向かっていたため、移動時間が長く感じる。
「…………あのさ」
「……どうしたの?」
ジャッキーは話を始めるかと思いきや、また黙り込んでしまった。
「………ごめん、なんでもない……」
「………そう」
車の中の雰囲気はいいものではなかった。
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カイオワ、バスク街。街並みはカルトヴェリとは少し違う感じの建物が多いが、雰囲気は割と似ている街だった。エラムの手が入った街はどこもこんな感じになるのかもしれない。
カイオワと言えば、リーの故郷だ。かつてはエラムと敵対関係にあったと聞いている。
僕たちはバスク街のホテル前に止まった車を降り、そのまま二人でチェックインを済ませた。
「じゃ、用意ができたらエントランスで。昼間のうちに大体の現地を回って土地勘を掴んで、夜にマトのところに突撃しよう。」
ジャッキーと軽く打ち合わせをしたのち、僕たちはそれぞれ与えられたルームキーの部屋に入る。
「………ジャッキー、どうしたんだろう」
僕は部屋に入って、扉を閉めた後、一人で呟いた。改めてジャッキーの様子が少し変だ。僕は、いったいどうすればいいんだろうか。
そんな気持ちが僕の胸の中で悶々としていた。
エントランスに行くと、既にジャッキーがスーツに着替えて待ち構えていた。
「一応だけど、転移装置とか色々は持ってるよね?」
「うん、持ってきてあるよ」
「OK。なんか小型化されるとぱっと見でいろいろ持ってきてるかどうかわかんないからそこは不便だね〜……じゃあ、街の方を見て回ろうか!」
ジャッキーは気丈に振舞っている。今はいつものジャッキーに見えるが……。
僕たちはそのままホテルを出て、街並みを見て回った。
「あ!フェルディ!待って、ここ見よう!」
ジャッキーは不意に止まって、テンション高めに建物を指さす。そこでは絵画の展示会をやっているみたいだ。
「え……任務中だけど、いいのかな…?」
「大丈夫大丈夫、任務さえこなせば基本何やってても問題ないから!ね、行こ?」
僕はジャッキーに引っ張られ、展示会の中へと連れられた。
ジャッキーも元気がなかったし、少し気晴らしが必要なのかもしれない。僕はそう思うことにし、展示会についていくことにした。
中はあまり広くないが、二階にまたがって展示物があったので割と作品は豊富だった。受付のおじいさんと少し話したのだか、その人が描いた絵のようだ。なかなか独創的で、不気味な絵が多い。中にも人が少なかったので、あまり有名な画家というわけでもなさそうだ。
僕とジャッキーは順路に沿って作品を見て回った。
「ジャッキーって、こういう油絵見るの好きなの?」
「う〜ん、そういうわけでもないけど……なんとなく見たくなって!ほら、人もいないし、なんか落ち着けそうだな〜って」
そういう割には、割と絵に食いついている。今見ている絵は……誰かが叫んでいる絵だ。やはり不気味だ。
「すごいね……あのおじいちゃんには世界がこうやって見えてるのかな」
心なしか、ジャッキーが少し元気そうで安心した。
続い
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