結局3階のトイレも混んでいた。
僕は仕方なく三階のトイレに並んで、用を足した。
外に出て、リーが待っているであろう場所へ向かったが、リーがいない。どこにいるのかしばらく歩いて付近を回ったが、見当たらなかったので、チャットで居場所を聞こうとしたところ、通知が入っていることに気が付く。それはリーからのチャットで、「めんどくさい奴から絡まれてる」「早く来て」「お店の隣の路地裏」と三件連続で書かれていた。
急いでその場所に向かうと、そこには二人の男ともう一人、誰かが横たわっていた。不穏な空気だ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
男が何かを言い、手をあげようとしていた。横たわっているのは女の子っぽかった。しかも見覚えのあるゴスロリだ。
(……もしかして…………!)
僕はギリギリのところで男の腕を掴み上げる。間一髪だった。
「あ……?誰だてめぇ……」
男が振り返り、僕を睨みつける。体格は僕より一回り大きかったので、凄味はあったが、僕はそんなことより目の前の光景に戦慄した。
ジャッキーが倒れている。おぼろげな瞳でこちらを見上げていた。
「……ふぇ………るでぃ……?」
一瞬、僕は何が起こったかわからなかった。気が付くと、僕の目の前で男が倒れていた。右手の拳が痛む。衝動的に男を殴っていた。
「………ぐぁ……いてぇなあおい!!殺すぞ!!」
男が起き上がってこようとするのを僕は顔面を踏みつけることで抑える。言葉にできない感情が僕の胸の内でぐらぐらと煮えたぎっていた。
「………僕の台詞だよ……殺す」
奥にいたもう一人の男が僕に襲い掛かる。右手にはナイフが握られていた。
「死ねええええ!!!」
そのナイフが僕に届くことはなかった。僕の背後から人が現れ、その人が男のナイフを躱し、みぞおちに拳を入れる。
銀髪の長髪の女。ジャッキーだ。
「かはっ……!」
ナイフを持った男は項垂れ、その場に倒れこむ。
「よくわかんないけど…この人たち誰?」
「僕もわかんない」
「うおっ、何だこの修羅場……てかリーじゃねえか!おいおいおいおい大丈夫か??お前鼻から血ぃ噴き出してるぞ!!」
ジャッキーとマルセルが到着したみたいだった。マルセルはリーの元へ駆け寄り、体を起こした。
「くそっ…!覚えてろよ………!」
僕の足元にいた男は僕が足をどかした隙に、もう片方の男を肩に担いでその場を離脱した。いかにも雑魚キャラって感じだった。
「リー……大丈夫?」
「………うまく…はなせないけど……まあ…」
「何があったんだよ……?」
「……なんぱ、されて………つよめに……ことわったら……このしまつ…」
うわぁ…といった感じの表情をみんな揃って浮かべていた。
「とりあえず通報するか」
マルセルが携帯を取り出そうとしたところを、リーが止める。
「……いい…せっかく……ここ来たのに………いまから……じじょうちょうしゅう………とか……わたしは……いや……ぶふっ」
リーは鼻血を出しながら言う。ジャッキーとマルセルは顔を見合わせ、声をあげて笑った。
「ははは!見た目ヤバそうだから心配したけど全然元気そうじゃねえか!」
「リーらしくて安心したよ……いったん車に戻って処置したら、またお店回ろっか!」
マルセルはリーをお姫様抱っこして、そのまま表に出た。ジャッキーもそれに追随する。僕は、周りに散らかっていたリーが買っていたものを拾い、駆け足で三人を追いかけた。
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