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乱立するビル。ビルの合間を縫うように動く人々。その光景はまさに繁華街であるということを物語っていた。

エラム連邦の中でも有数の繁華街ランチバーク。

僕たち4人は街に到着すると、駐車場で車を降り、人の波に従いながら街の中を練り歩いた。

「じゃあ車の中で決めた通り、みんなが行きたい店を順番に回っていくことにしよう!」

ジャッキーが元気に、勢いよく手をあげて言った。

「じゃあまずは私から!そこのカール・マクセルの本店に行こう!メンズもレディースも両方あるから男子勢も楽しめるよ!」

カール・マクセル。有名な服のブランドだ。

昨日、あの雑誌を借りておいて正解だったということを改めて実感する。車の中でそれぞれが行きたいところを話し合ったのだが、なんとか話題についていくことができた。もし雑誌を借りていなければ一人だけ置いていかれて話が進んでいたことだろう。

歩いて数分、僕たちはカール・マクセルのビルの目の前に着いた。

「よっし!今日は買いますよ〜〜〜!!」

「フェルディ!俺たちも服を見に行こう!!メンズは2,3階みたいだ!!」

マルセルも結構はしゃぎ気味で、急ぎ足でエレベーターの方へ向かった。気が付いたらジャッキーの姿も消えていて、僕とリーだけが取り残されてしまっていた。

「………行っちゃったね」

「…………はぁ……」

リーが重くため息をつく。こっわ。

「私はジャッキーを探してくるから、フェルディはマルセルを追いかけて。そうね…1時間後にここに集合ってことにしよう。いい?」

「そうだね、じゃあ僕はマルセル追っかけるよ」

「うん。じゃ、またあとで」

僕とリーは入口で別れ、僕はマルセルを追った。







マルセルと一緒にお店の中を回る。マルセルは楽しそうに鏡を見ながら自分に服をあてがって、似合うかどうか品定めをしていた。

僕はポケットの中に、金属の棒状のもの……『簡易転移装置』があることを確認する。

昨日の夜、部屋に戻った時に、自室の前にでかい段ボールの箱が置かれていた。段ボールの側面には「フェルディ」と書いてあった。何かと思い、自室で段ボールを開封すると、そこには大きな金属製のケースのようなもの、手のひらサイズのちいさな金属の筒、そして一枚の紙が入っていた。紙を開いて内容を見る。

要約すると、これは『簡易転移装置』というものだそうだ。ケースの中にものを入れ、この金属の棒に着いたスイッチを三秒以上長押しすると、その金属の棒の元にケース内のものを移動させることのできる装置らしい。用途は基本自分の得物をいれておいて、緊急事態にいつでも取り出せるようにするというものだった。

確かにこれは便利で、非番の時など任務外で外出した時にいざとなったらすぐに得物を取り出せる。紙の一番下に小さく「がんばってね! キリル」と書かれていた。どうやらキリルさんが作ったものだったみたいだ。何でもやり遂げてしまうあの人は本当にすごいなあと改めて感心した。



「フェルディ!ちょっとちょっと!!」

名前を呼ばれ、はっとする。マルセルがこっちに来てほしいと手招きしている。店の雰囲気が落ち着いているためか、いつも大声で会話するマルセルも呼び声が控えめだ。

マルセルの元に向かうと、マルセルが両手に服を持って首をかしげた。

「どうしたの」

「いやぁ……これどっちか買おうかと思ってるんだけど。どっちがいいかなぁって……」

「えぇ……僕そういうおしゃれとか疎いから……」

僕の今の服は白シャツと黒スキニーだ。特に何も考えなくてよく、まあそれなりに
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