この世界は嘘に満ちている。
私がこの世界の嘘に気付いたのは年端もない少女だった頃。そう、あの日―――あの監獄から出た日のことだった。監獄から出て、監獄の外の話を聞かされた時。私は唖然として言葉も出なかった。
監獄から出て、私は姉との再会を果たした。姉は、今の私のご主人様に頼んで私をあの監獄から救い出したと言った。姉は私を救い出してくれた恩に報いるため、しばらくご主人様の片腕として働くことを決めたということもその時に聞いた。私は普通の生活に戻っていいと、姉からもご主人様からもそう言われた。だが、私は姉だけが働くことは違うと感じ、私も同様に働くことを決めた。
――――――私の身の上話はこの程度にしておいて。
彼―――フェルディとの会話を終え、私は図書館を物色する……いや、物色するフリをする。
現在のエラムの戦力の主軸といっても過言ではないこのビルには、主戦力なだけあって様々な技術や叡智が集まっている。ここのものは何度見ても目をみはるばかりのテクノロジーが詰まっている。まるで科学館にでもいるかのようだ。
まあ、それはそれとして。
今夜はとても有益な情報が手に入った。早く帰ってご主人様に報告しよう。きっと喜ばれることだろう。
私は図書室を出て、エレベーターに乗った。
ご主人様の夢。それはこの嘘にまみれた世界で、現実不可能に近しいものだったが、とても尊いものだった。
ご主人様のために。姉のために。そして、私のために。
私はご主人様の片腕として。今日も働く。
[5]
前編へ [6]
続編へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想