僕とリーはホテルに戻ると、リーが今から打ち合わせをすると言って、リーと一緒に僕の部屋へ入った。
「よし……まず、これを渡しておく」
リーは僕の部屋に入りベッドに腰掛けると、ポケットから小さな黒く丸い球体を出してきた。
「………これは?」
「盗聴器。さっきの男の部屋に仕掛けておいた。イヤホンジャックがあるでしょ?そこにイヤホンをさせば家の音が聞こえる」
リーは一緒にイヤホンも手渡してきた。実際にさして音を聞いてみると、なんだかごそごそと音が聞こえる。そして、さっきの男の溜息が聞こえてきた。
「……盗聴器、仕掛けてたんだ。気付かなかった…」
「足元の段ボール裏にね。超小型だから気付かれることはまずないかな」
「へぇ………でもどうして?そんなに怪しかった?」
僕の質問にリーはうなずく。
「あの公園にはたくさんホームレスが私たちを見てたけど……あの男だけ視線が違った。あの男は何か私たちを警戒してる感じの目つきだった。私はそれに気づいたから、あの男に声をかけたの」
そんなことに気が付いたのか……すご……。
「それに、あいつの部屋の臭い。あの男はどこのホームレスも同じって言ってたけど、あの臭いは異質だよ。死体を隠してるかもね」
「やっぱあの臭いは異常だったよな……」
「で、しばらくあいつの様子を監視する。期間は3日。私は現地の公園に行って聞き込みをする振りをしながら監視する。フェルディはホテルで盗聴器から聞こえる音を聞いてて。巻き戻しとか早送りとかはスマホの………このアプリでできるから。私たちが普通のジャーナリストじゃないことには気が付いてただろうから、黒だったらたぶん数日で行動を起こすと思う。3日で行動を起こさなかったら、あの男の言っていた通りのアスド公園に行く。盗聴器は録音できるから、一日に一回会話音声を確認する。ぞっくりとはこんな感じ」
「わかった…とりあえず、しばらく僕はホテルで盗聴器の管理をすればいいんだね」
「そう。じゃあ打ち合わせはこれで終わり。私は自室に戻るから。……あ、あと、スマホの電源ボタンを5回連続で押すとSOSが出せるから、一応教えとく。もし私から来たらその時は、よろしく」
リーはそう言って僕の部屋を出た。
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午後8時を回って、僕はシャワーを浴び、再び盗聴器に耳を傾ける。特に動きはない。
この作業は思った以上に精神的にきつい。なにもないものをずっと集中して聞き続けるのにはなかなかに体力が必要だ。
やっぱりそんな怪しくないんじゃないかとか思い始めたとき。
盗聴器から会話が聞こえてきた。昼間の男と……女だ。誰だろう。
「急にどうしたの、呼び出したりして」
「昼間にコーカサスのパシリに目を付けられた。ここを出よう」
「………嘘…」
黒だ。急いでリーにメッセージを送る。すると、間もなくリーが僕の部屋にやってきた。
髪型がツインテに戻っている。
「イヤホンを抜いて。そうしたらスピーカーに切り替わるから」
僕は髪型に目を引かれていたので、ハッとして急いで言われた通りイヤホンを抜く。黒い球から会話が聞こえてくる。
「奴らから10万むしりとったから、これを使って別の町へ逃げよう」
「逃げるって……いつ?どこに?」
「別の工業団地だ…ホームレスのいそうなところにしよう。コーカサスを出て……そうだな、次はカイオワに行くか。カイオワも郊外はそこまで国の
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