ボスの部屋で解散し、僕は自室に必要そうな荷物を持ってエントランスでリーと合流する。
「武器は……持ったみたいだね」
僕の左手に持つケースを見てリーはそう呟く。
「そういうリーは……それ、ギターケースみたいだね」
リーはギターケースを背負っていた。これ絶対ギターケースだよな…?
「まあ、私はダニールに頼んでケースをこの形にしてもらった。フェルディも頼めば好きな形にしてもらえるよ、たぶん」
「いや…僕はいいよ……それにしてもなんでギターケース?」
「…なんとなくかっこいいかなぁと………」
「…………」
「……スマホ持ったなら行くよ」
リーは僕の反応が気に入らなかったのか、つんとした感じに速足で出入り口の方へ向かった。
「あっ……」
僕も急いでリーへついていった。
貧困街ガラディーナ。貧困街って名前だから泊まる場所はひどいものを想像していたが、ホテルは高級感あふれるホテルに泊まることになったみたいだ。車のトランクからスーツケースを取り出し、ホテルの方へ歩く。周りは工場とマンションがたくさんあり、貧困街というよりは工業団地っぽかった。
「ここって本当に貧困街……?」
「工業地帯ガラディーナって言われるけど、それよりも貧困街の方が有名になって、貧困街って呼ばれるようになったみたい。いろいろな会社の工場がたくさんあるから、お偉いさんがよく来ることもあって宿泊施設は豪華な場所が多いよ。私たちが今から行く場所は本当の貧困街だから、楽しみにしてなよ」
リーが意地悪な笑みを浮かべる。不安を煽らないでくれ。
僕とリーはチェックインを済ませ、準備ができ次第ホテルのエントランスで合流するという話になった。僕は渡された鍵の部屋に行き手早くスーツに着替え、『霧切』が入ったケースと携帯を持ってエントランスへ向かった。リーが既にエントランスにいた。
「早いね」
「まあ着替えるだけだからね。じゃあ行こうか」
ホテルを出て、10分ほど歩くと大きな公園のような場所に着いた。公園の周りはボロボロの民家ばかりで、公園内は段ボールとビニールシートで作られた簡易的な小屋で埋まっていた。
「……ここが、公園………」
「ね?貧民街って感じでしょ。流石に公園内に街ができてるとそんな名前もつくよ…しかも何がすごいって、どの公園もこんな感じだからね」
「……子供たちはどこで遊んでるんだ…」
「基本子供を作る、家庭のある民衆は社宅、マンションに住んでる。マンション前に企業が管理してる広場があるから、そこで遊んでるみたい。企業が管理してるだけあって、ホームレスが住み着くことはないみたい」
「……うちのビルもカルトヴェリも現代的で綺麗なところだったからこういう感じのところはないものだと思ってた…」
「まあコーカサスもエラム連邦傘下だけど、ここはコーカサスの首都から離れてるからね。元々栄えてた国ってわけでもないし、エラムの恩恵を受けれたのは都市部とかほんの一部だけ。こういう場所はエラム以外は割とどこの国も残ってる」
エラム以外は、か。
「だからね、エラムの人間っていうと色々面倒だから、私たちは……そうだね、カルトヴェリから来た世界の貧民を調査しているフリージャーナリストってことにしよう。彼らは彼らの大変さを世界に発信しようとする人間に対しては割と優しいから」
面倒って、いったい何があるのだろう。まあ面倒なのはごめんだし、ここに来た目的の調査をしないといけないから、リーの意見に同意を示す。
「じゃあ入るよ。あくまで私たちはジャーナリストって感じで
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