ダニールに別れの挨拶を言い、僕とリーは車に乗り込んだ。
「ダニールと何を話してたの」
「……『個の生存より集団の生存を優先せよ』だって。難しいことをいうよな…」
「あ〜〜………」
リーはなるほどね、といった感じの空気を出す。彼女も同じ話をされたことがあったのだろうか。
「まあ、あいつの言ってることは間違ってはないんだよね。一番やっちゃいけないことはボスを含めてこのT型生命体対策本部の人間全員が全滅すること。奴らのことを知る人間が一人もいなくなると、なにをどうすればいいかの伝え手がいなくなるから。どうしてもデータだけではどうしようもできないこととかあるからね」
「……そうかもしれないけど」
「うん。フェルディの言いたいこともよくわかる。私たちは、そういう気持ちも含めて、だからこそ、強くいなきゃいけないんだよ」
「………」
やはり、結論は強くあること、か。
強ければ、負けることのない力をつけることができれば、こんなことを悩む必要もなくなる。
改めて、僕は強くなろうと決心した。
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ダニールと会ってから一週間が経った。毎日訓練をして、みんなとの稽古をして、僕もそれなりには動けるようになってきた。みんなには「成長が速い」と賛辞を受けるが、これは多分ロブエ族だったからだろう。
「フェルディ、あとで私の部屋に来るように」
ボスとの掛かり稽古がおわり、僕はボスに呼び出された。
稽古が終わり、自室に戻りシャワーを軽く浴びた後、僕はボスの部屋へ向かった。
ドアをノックし、「失礼します」と声をかけてボスの部屋へ入る。
するとボスは机の横で手を後ろで組んで僕に背を向ける形で立って待っていた。
「来たか」
ボスは振り向き、僕の方へと向き直る。ボスの机の上には1メートルほどある長めの箱……ケースが置いてあった。箱は黒く、持ち運び用の取っ手がついており、金の装飾が施されていて、いかにも高級な感じがした。
「ダニールからブツが届いたからな。お前に渡す。大事にしろよ」
僕は箱の前に立ち、その荘厳さに固唾をのんだ。
「………開けてもいいですか?」
「ああ。私も見ておきたいしな」
「まだ見てないんですか?」
「ただの受け渡し人が持ち主の前に見る奴があるか。お前が1番最初だよ。作製者のダニールを除けばな」
「…………なんか緊張しますね。」
「お前の相棒なんだ、そんなに緊張することはない。銘は『霧切』だそうだ」
僕はケースの両端の留め具を外し、ケースを開いた。中からは黒色の鞘に納められた刀が出てきた。
「刀……か。ジャッキーのものに似ているな。いちいち見透かした奴だなぁ……」
「………見透かしている、ですか?」
「いや、関係のない話だ。気にしないでくれ」
ボスの言葉はよくわからなかったが、言われた通り気にしないでおく。
刀を取り出し、鞘から刀身を抜き出す。刀身の長さは地面から僕の腹のあたりまであり、割と長い。真っ黒に輝く刀は、禍々しいオーラを放っていた。
「このビル内ではケースに入れずに持ち運ぶ必要はないが、ビルの外へ持ち出すときは必ずケースに入れて持ち運ぶこと。これは守るように。市民の要らぬ混乱を招きかねないからな。」
「わかりました」
「私からは以上だ。今後の個人での訓練で使って慣れていくといい。あ、私やその他の人との模擬戦では使っちゃダメだよ、おじさんそんなキレッキレの刀で
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