Interlude---001

私はこの仕事は好きではない。
人を殺すことは私にとって不快以外の何でもない。
しかし、好き嫌いと向き不向きはまた別物だ。
私は人を殺すことに長けている。殺し合いで負けることはない、と自分の中で確信できる実力が自分の中にある。
そんな私が―――――嫌いだ。

あの日。
王にその才能を見出され、三人で国を豊かにする。そして私たちの愛するものを守る。そんな誓いを立て、そのために戦っていた時は、まだ人を殺していても今のような気持ちを抱くことはなかった。私の愛するものを守っている、そんな実感があった。
自分の殺しを正当化し、自分で消化することができていた。

今、私がやっていることは、違う。
そう感じる。
目の前にいる愛しい彼らを騙し、戦場に送り、殺しをさせる。私はそんな最低な上司をしている。
やめさせなければならないのに、彼らのやさしさに甘えている。

一通り話を終え、私は彼らに背を向けタバコを取り出す。
タバコに火をつけて、天井を仰いだ。煙が薄く中を舞う。

マトは普通のエラム人よりも強い。勝つためにはマトよりも強い相手をぶつけなければならないのは至極当然のことだ。マトを放置すれば民間人が大勢犠牲になる。しかも数が多い。私だけでは到底手におえない。国を狙われた時に私が席を外していたらそれこそ一大事だ。だから彼らを向かわせなければならない。
私の判断は合理的だ。最善の手のはず。
しかし……私はどうしても彼らには戦わせたくなかった。
私情だ。私情で多くの人を見殺しにはできない。仕方のないことだ、と毎日自分に言い聞かせている。
そんな私が―――――嫌いだ。

話が終わり、彼らは部屋を去る。
今の私の大切なもの。私が戦う理由の一つである彼ら。

生きててよかったよ、フェルディ。
私は心の中でそう思った。
21/08/08 15:13更新 / Catll> (らゐる)

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