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 目が覚めると、炎が空を焼いていた。
寝ていた体を起こすと、自分は森の中にいるのだとわかる。木々が生い茂っていた。立ち上がろうとして、体が重いのを感じる。思うように体が動いてくれない。意識が徐々に覚醒し、今自分がなぜ森の中で寝ていたのかを思い出す。
村の人々にリンチされていたのだ。

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 僕はとある農村で生まれ育った。名前はない。父親は誰かわからず、母は『むらのおきて』を破ったらしく処刑されたそうだ。
 母が処刑されてからは村長の家に預けられたが、『むらのおきて』を破った女の子供であったため、扱いはよくなかった。
 朝起きて、一日中薪割りをして、日が沈めば眠る。眠る場所は家の外の屋根のある地べたで、自分で火を起こして暖を取っていた。与えられる食は朝と昼にパン一つずつ。あとは雑草や虫をとって食べていた。
 服は腰に布切れを巻いていた。村長やほかの村人が巻いているようなきれいなものではなく、泥にまみれたうすぼろの茶色い布切れだ。擦り切れて腰に布が巻けなくなったときに、誰かのおさがりのような布がもらえる。その程度のものだった。
 友達はいない。あまり人と話すこともなかった。村長やその家族に命令されたり、村の子供たちにいじめられることはあったが、およそ人と何か対話するということはなかった。寝るときに聞こえてくる村長の家の会話を耳にしているときは、少し、家族というものがうらやましくなった。
 18の歳になると成人の儀式があり、村長に連れ出されて僕も儀式に参加させられた。夏場の炎天下、対岸から5mほど離れた崖の下に川があり、その崖を飛び越えるか、崖を降りて川を泳ぎ、崖を登って対岸へ行くか、いずれにせよ道具を使わず対岸へたどり着けば大人としてこの村で生きていけるという儀式。儀式は昼頃から始まり、僕と同じくらいの背丈の村人が次から次へと対岸に渡る。

 僕は、対岸へたどり着けなかった。
 崖を降りて川を泳いで渡るところまではできたが、崖を登りきることができなかった。仕方なく川岸を歩いて別の道を通ってスタートに戻ったころには、そこにいた村の人たちは誰もいなくなっていた。夕日が僕を嗤っている、そんな気がした。

 次の日の夜、日が沈んで眠りにつこうとしたときだった。
 誰かの声が聞こえる。村長と何人かの男の声だ。気になって、僕は家の壁に耳を当て、会話を聞いた。
「例の子供だが、もう必要なくなった」
「え!!じゃあ…」
「ああ。殺そう」


逃げた。例の子供が誰だかはわからないが、僕のことだろうと感じた。
村の民家とは反対の、森の中に逃げる。
ただただ走った。
後ろから声が聞こえる。
「いたぞ、森に逃げようとしてやがる!!」
「追え!!」
火を持った村人たちが後をつけてきていた。
振り返らず一生懸命逃げていると、走る僕の背中を蹴られた。顔から転び、鼻を挫いた。
肩をつかまれ、あおむけにされたかと思うと、顔に拳が飛んできた。殴られた直後は何が起こったかわからなかったが、徐々に頬に伝わる痛みとともに殴られたことに気づく。歯が何本か地面に転がっていた。
村人の一人が僕の腹の上に馬乗りになり、それを火を持った村人三人が囲む。火を持った村人たちの顔はよく見えないが、馬乗りになってきた男の顔は見えた。昨日の儀式で対岸に渡った子供の一人だった。
「やっとだ…!やっとてめえを嬲り殺すことができるッ!!」
その男の顔はとても楽し
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