___________________
私はいつも一人だった。
私は最強の吸血鬼と謳われていた母と人間の父の間に生まれた。といっても、母が吸血鬼という話は私が10歳になるまで知らず、私は普通の人間と同じように生きていた。
母が日光を浴びても、人間の血を吸わなくても全く問題のない吸血鬼であったからか、はたまた人間と吸血鬼のハーフであったからかはわからないが、私は吸血鬼であったが吸血鬼であるということを感じずに普通の人間と同じように生活していた。
途中までは。
8年経った今でも鮮明に覚えている。私が10歳の誕生日を迎えた時の話だ。当時友達だった女の子から誕生日のお祝いに教室でクッキーをもらった。とてもうれしかった。私がそのクッキーを食べようとしたとき、同じクラスの男の子がその男の子の友達と遊んでいて、私にぶつかってきた。私はクッキーを落としてしまった。私の友達の女の子は遊んでいた男の子たちに謝罪を求めていた。男の子たちは応じなかった。それどころか、その男の子たちは女の子の誹謗中傷を言い始めた。
そして。ある子が放った一言。
「そもそもそんなクソまずそうなクッキーにいちいちキレてんじゃねえよブス」
私はこの言葉が許せなかった。その子は私から見てとてもかわいいと思っていたからか。もはや話題がぶつかってきたこと以外に向いていたからか。何が理由かはわからないが、その一言に腹が立った私はその言葉を放った男の子に詰め寄り、平手打ちをお見舞いした。
つもりだった。
平手打ちをした後、私の目の前の男の子に首はなかった。彼の首から血飛沫が舞う。響く悲鳴。彼の血を浴びながら、私は唖然と立ち尽くしていた。振り向くと、クッキーをくれた女の子は私をまるで幽霊でも見たかのような顔つきで見ていた。歩み寄ろうとしたら、
「近寄るな……バケモノっ………」
と拒絶された。私はその場で泣き崩れてしまった。さっきまで私の誕生日を笑顔で祝ってくれた子に『バケモノ』と言われたことが、ショックだった。
その言葉を皮切りに、周りの子供たちは私を叫んで、怒鳴ってののしり始めた。騒ぎを聞きつけて駆け付けた先生たちに取り押さえられ、私はそのまま警察に連行された。その日は両親に会うこともできず、取り調べを受けた後は独房に入れられ、汚いベッドで一晩を明かした。
次の日。朝起きると看守から私に一通の手紙をもらった。かわいらしく、宛名のない封筒であったので不思議であった。中を開いてみると、その中には二枚の写真と一枚の紙。そして。
一本の歯と一本の指が入っていた。
歯をみて、指を見て直感した。なぜなら、この指についている指輪は私の父がつけている指輪にそっくりで、この尖った犬歯は母のものにそっくりだったからだ。恐る恐る手紙を読む。
『拝啓、イーリア様
昨日の暴動を受け、私はとうとうかの最強の吸血鬼の居場所を知ることができました。
あなたのお母様を。とうとう。殺すことができました。
私は吸血鬼であろうと正当防衛でのみ殺すことにしています。
あなたのお母様は私が何を言おうと私を殺そうとすることはありませんでした。
吸血鬼の鏡ですね。
ただ、私が次はあなたの娘、つまりはイーリア様を殺すと申し上げましたところ。
夫婦共に私に向かってきましてね。
実に美しい親子愛で。
お父様は人間でいらしたのに、実にもったいない命の使い方をしていらっしゃいました。
次はあなたのお命を。
敬具 X』
写真には殺した両親の遺体がうつっていた。
そのあとのことは詳しく覚えていない。気が
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想