僕には娘がいる。
もう何年あっていないのだろうか。
あの愛おしい彼女の声を。後姿を。髪を。笑顔を。
思い出せば思い出すほど。
僕は彼女が嫌いになる。
僕はある諸事情によってSCP財団のDクラス職員となった。そしてある実験の被験者となることになった。なんでも最近収容したSCPの効果確認をしたいだとか。僕には実験の被験者になるかどうかの選択肢はなく、否応なしに被験者となった。
僕は防音室に連れられ、椅子に座らされた。別の職員たち(上官)は僕を椅子に座らせ、僕の目の前に謎のレコードを置いたのち、すぐさま防音室を出て行った。防音室の中はおよそ六畳程度の広さ。壁はコンクリートの打ちっぱなしで、時計がかかっており、その時計の下には物の受け渡し用の二重窓のような作りになっている金庫のような見た目の窓が埋め込まれていた。職員が出て行ったその後、すぐに放送がかかる。
「目の前のレコードを再生してください。」
僕は言われたとおりにレコードを流す。題名は…『全ての救われ得ぬ人々へ』、か。
「再生が終了したら、レコードを再生機ごと時計の下の扉を開けて中に入れてください。」
「わかりました」
僕はそう反応し、
「……カルト宗教にでもありそうなレコードだな。」
と、皮肉を言いながら再生ボタンを押した。
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
レコードから流れてきたのは、人間の叫び声。男とも女ともいえない。ただ叫び声だとしかわからない、何とも不気味な音声が流れた。
三十分後。やっとレコードから流れていた叫び声が止まった。
「何だったんだ…」
僕は、指示を受けた通りにレコードを扉の中に入れ、扉を閉じた。
そして、異変に気付く。
椅子に座った瞬間、触覚を除く全ての五感に不快感が走った。目の前には原爆で焼かれた人々の死体が映し出され、カブトムシの甘臭い気持ちの悪い臭い、人々の悲鳴が聞こえ、口の中は土の味で充満した。
「おええええええええっっ!!」
僕はその幻覚を五感で感じるとともにそのまま床に胃の中のものを吐いた。何だ。何なんだ今のは!?
まるでこの世の終わりのような世界を体験した。口の中には胃液の酸の味とくさみが口の中に残る。すると、ライムのいいにおい、さわやかな花畑が見え、涼しく心地よい風を感じた。
まるで先ほどとは真反対のように。
「なんなんだよ本当に……」
僕が呆然と立ち尽くしていると、どこからか放送が聞こえる。
『D-19662。今、扉の中にあなたの娘の写真を入れておきました。扉を開いて写真を確認してください。確認したら写真をもとの状態に戻して扉を閉めておいてください。』
うっ
「おえええええええええええっっ」
また吐いた。火薬のような味がする。爆弾を投下するドローンの軍団が見える。腐った卵のにおいがする。なめくじが全身に這っている感触がする。気持ちが悪い。
『どうしましたか?』
「ぅえっ……喋らないでください…あなたの声を
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想