ベットに力なく横たわる母の細い手を、僕はぎゅっ
と握りしめている。
その手からはかつての力強い母の面影は消え失せて、
今では寂寥すら感じさせる。
僕は何も言えず、ただその重苦しい空気と格闘を続け
ている。
「ちょっと飲み物買ってくるね」
母は何も言わない。
椅子から立ち上がり、病室のドアをゆっくりと開ける。
僕は逃げるように自販機へ。
1ヶ月
そう主治医は言った。
人はあまりにも辛いと声は出ないのだと実感した。
命は儚い。短くて、簡単に失われてしまうもの。
そう分かっているはずだった。
なのに、どうして、こんなにも涙が出るのだろう。
6畳ほどの診療室に少年の嗚咽が残響を残すかのように
響いた。
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