確か、少し肌寒く、どこか切なくさせる、そんな10月の半ばだった。
何気なく歩き慣れた道を歩く。秋は好きだ、どこか凛としていて、
首筋を撫でるように抜ける風に身震いする、そんな万人はどうと思わ
ないことですら、今、この空虚な僕には刺激に感じられた。
丁度1ヶ月前、僕は3年もの間付き合っていた彼女が不慮の事故により他界した。
それから。僕の景色は...
色彩 が 消えた。
彼女がトラックに轢かれた。
その報せに何度も耳を疑い、何度も何度も何度も、返って来るはずもない
メールを送った。だが、トーク画面を表示し続ける液晶には、どれだけ待っても
白い既読の2文字は付くわけがなかった。
わかっていたはずだった。死ぬ、命が消える、ということは本当で、現実で。
でも、いや、信じたくなかった、認めてしまったら自分の中で彼女が遠くへ行ってしまう気がしたから。
不意に鳴り響く固定電話の音、ふと夢から覚めたかのように意識が覚醒する。
母親からだ。要件は、薄々気が付いていた。
受話器を取り耳へ。
「母さん?」
「○○、彼女さんが亡くなったって。」
僕が恐れていた、最も聞きたくなかった、遠ざけたかった情報が、脳内へ入り、理解せざるを得なくなる。
その瞬間、僕の視界は歪み、頬を伝い、大粒の涙が零れ落ち、止まらなくなった。
僕しか居ない部屋、悲しみに打ちひしがれた、嗚咽と叫び声が響き続けた。
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