目の前に、ずっと恨み、憎み続けた存在がいる……だが今日は、不思議と……それが無かった。
相変わらず、笑顔でこちらを見てる。笑顔だが……何故、私がここに来たか……知ってるはずだ。
イヴ「私服姿みたいだけど、今日はどしたの?999戦目でもしに来た?」
わかってて、そんな冗談を言う……真面目なのかふざけてるのか、よくわからない…。
イルゼ「えぇ…ですが、いつもみたいにではありません。」
イルゼも柵の外に出て、イヴと同じように座る。
イルゼ「…真実を聞きに来ました。」
イヴ「………」
その言葉を聞くと、笑顔が消える…。
イルゼ「…この間、妙な物が届きましてね…もうこの世にいるはずのない、母親からのプレゼントが、届きました。」
その届いたプレゼント……人差し指にある指輪を、じっと見る。
イルゼ「おかしいですよね…私を育ててくれた人が持ってたなら、もう私は持ってるはず……なのに、こんなに遅くに届いた。そこである可能性に気づいた……私の母親を殺した…いえ、私の母親の最期を看取った……あなたが、送ったんじゃないかと…。」
指輪から、目線を落として自分が考えてたことを話すイルゼ。イヴは、ただ真っ直ぐ見て、黙って聞いてた…だが、口を開く。
イヴ「…なんで、そう思うの?今まで、君のことを殺そうとしてた私が、送ったって。」
真っ直ぐ見たまま、イルゼにそう尋ねる。
イルゼ「……妙だと思いました。あなたほどの実力があって、本気を出してたら……私は、とっくに死んでたでしょう。でも、あなたはそうしない……いつも、子供の成長を見るかのような目をして…決まって"どこまで強くなったか、見てあげる"って言ってました……あなた、本気で殺そうとは思ってなかった……そんな人が、私の母親を殺すはずがない。」
言い終えた後、少しの沈黙……イヴは、空を見上げる………。
イヴ「…なんで、そんなことに気づくかな……死ねなくなったじゃん……。」
私は、イヴから聞いた……本当は、母親を殺したのではなく……守ろうとした、と。そこで、私のことは任せてと、約束を交わした。だが、自分の体の性質や、幼い私が母親の死を知ると、一生の心の傷を負うことになる……だから、"私が殺した"と嘘を吐いて、私を殺すために強く生きてもらう……それが、真実だと…。
イヴ「………ごめん…辛い思いをさせちゃって………。」
俯きながら、私に謝罪する。あれほど憎らしかった顔が……とても、優しい顔に見えた…。
イルゼ「…いえ…大丈夫です。」
相手が騙してたことより……自分が許せなかった。知らなかったとはいえ……私のためにここまでしてくれた人を、殺そうとしてたのだから………。
イヴ「…でも、これで……アイラさんも安心してるかな…」
アイラ…私の母親の名前だ。イヴは空を見上げる……その目は、まるで、天国にいる私の母親を…じっと見ているようだった。
イヴ「…アイラさん、見てる…?あんたの子供……こんなに強い子になったよ……。」
天国にいる…母親に向けて、そう言った……。
イルゼ「……これから、どうするんですか……?」
イルゼが、こちらを見て尋ねる。
イヴ「……近々、でかいものが動き出す……」
イルゼ「でかいもの…?」
空を見上げてるイヴに尋ねるイルゼ
イヴ「…悪魔因子投与実験をしてる奴らだよ。」
イルゼ「…!」
その存在は知っている……私達、悪魔対策機関が追ってる存在だ。まさか、この人も追っている…?
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