11月19日(曇)
まさか、こんな日が来るなんてね………
椿「…………」
ソファに座って、何かを考えている。だけど、耳が垂れててうつ向いてて、明らかに元気のない顔をしている。
幽香「………」
椿の隣に座って、椿の肩に手を置く
幽香「どうしたの、椿。元気無さそうだけど……何か、悩み事?」
椿「………」
うつ向いたまま、口を開く
椿「…なんだか、昔の事を思い出しそうでさ…」
幽香「昔の事…?」
この間椿が「昔、誰かと一緒に夕日を見ていた」と、言っていたことを思い出す。もしかしたら、あの日から昔のことを少しずつ思い出しているのかもしれない…
椿「思い出そうとすると、なんだか嫌な気分になるよ……でも、思い出さなきゃいけない気がする…」
幽香「椿………」
幽香は、静かに椿を抱き寄せた
幽香「…今、無理に思い出さなくていいのよ……ゆっくりでいいわ…。大丈夫、私が一緒にいるから…」
優しく微笑みながら言った。
椿「…ありがと…幽香……」
昼になり、昼食の準備をしている幽香。椿は先程よりは元気になったようだが、やはり気にしている様子…
椿「…………」
この間、夕日を見ていた時のことを思い出す。顔まではわからなかったけど、女性……幽香と同じくらいの身長だった。あの人が、私の過去と……関係ある人なのかな…そう考えるが、どんな関係だったかはわからない。でも、その人のことを考えると嫌な気分になる……でも、悪い人じゃないのはなんとなくわかる…
椿「……………やっぱ、なにも思い出せないや…」
わかるのは感覚だけで、ハッキリしたことは思い出せない。椿は、そのことを考えるのをやめようとした
……………………
……み……………………
……ぃ………が……
椿「…!?」
突然脳内に、誰かの声が途切れ途切れで聞こえてくる。それと同時に、この間出てきた人も映像として脳内に流れる。目の前に、あの人がいる…顔はハッキリ見えない
…空……オレンジ色っぽいから、夕方なのかな……
…泣いてるの…?途切れてて、何言ってるかわからないけど……
「………が再び目覚めた時……………辛く残酷な道ではなく、幸せな道を歩むことを…祈っています…!」
その言葉だけ、ハッキリと聞こえた
椿「………」
突然立ち上がり、何かに引き寄せられるように玄関へ向かう
幽香「椿…?」
様子が変だったことに気づいて、後を追う。玄関前に出た頃には、扉が閉まる音が聞こえ、幽香も靴を履いて扉を開けて外に出る。
幽香「…!」
そこは、白くて濃い霧のような物が広がっていた。椿が霧の中へ進んでいき、霧で椿の姿が消えかけている
幽香「椿…!どこ行くの!」
走って追いかける。まだ見えている椿の姿を
幽香「椿…!!」
すると椿が、その場に止まった。幽香もそれを見て止まる。
椿は、ゆっくり幽香の方を振り返った
幽香「…!」
椿の目の色、髪の色が変わっていて、顔になかったはずの痣…のような物がある。痣かどうかはわからないが…
幽香「椿…どうしたの……それ…」
椿は少し経って、口を開いた
椿「じゃあね…幽香……」
その言葉の後に、また霧が濃くなる…
幽香「!椿!!」
走って椿がいるであろう場所に手を伸ばす…が、何も掴めなかった。霧もゆっくりと消えていき……完全に無くなった時、そこに…椿の姿はなかった…
おわり
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