連載小説
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29
僕の嫌な予感は見事的中した。

無限に飲まされ、潰された。最後の方はもう記憶がない。僕はベッドの上で目が覚めると、ジャッキーが隣で寝ていた。

冷蔵庫にあったお酒がなくなると、「買い足してくる!」とかいってめちゃくちゃ買ってくるんだもんこの子。治安が悪すぎ。

隣で寝ているジャッキーの顔に髪がかかっていたので、髪を避けて、顔を見えるようにする。ぐっすり寝ている。かわいい。

僕はベッドから立ち上がり、自分の部屋に戻ろうとすると、ベッドからジャッキーがゆっくりとおきあがる。

「あぁ……おはよう、フェルディ……」

ジャッキーは目をこすって、眠たそうに洗面台に向った。

「じゃあ、僕そろそろ戻るから……」

「あ、うん。夜はお付き合いありがとうございました。用意が終わったらエントランス集合ね」

ジャッキーの横顔を眺める。僕は昨日の夜の光景がフラッシュバックした。少し心臓がどきどきする。ジャッキーは何も気にしていないみたいだが、僕はいまだに気になってしまう。ジャッキーが触れたときの背中の感触がいまだに残っているみたいだ。

「………それじゃ」

僕は足早にジャッキーの部屋を出た。



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なんやかんやで、無事本部ビルに戻ってくることができた。

車の中では、ジャッキーと次はみんなでどこに行きたいかを話していた。今までの元気のないジャッキーではなく、普段通りの活発な女の子に戻っていた。

僕は安心した一方で、少し不安でもあった。

やはり、何かためこんでいるのでは――――。

ジャッキーはその話題に触れることはなかったので、僕も特に言及することはしなかった。

ビルに戻ると、たまたま一階入り口で、マルセルとリーに鉢あった。

「お、お戻りかいお二人さん」

「はい!ただいま戻りましたであります!」

ジャッキーはマルセルに元気に敬礼をして返した。マルセルもその様子を見て、心なしか安堵したような顔になる。

「俺たちは入れ替わりで今から任務だぜ……次から次へとよく湧くよなあ……」

「ほら、愚痴言ってないで行くよ」

リーはマルセルの背中を勢いよく叩く。気持ちのいい音がした。

「いって!まてよ〜〜〜」

マルセルはリーについていった。そして、入り口には僕とジャッキーが取り残された。

「……じゃあ、今日の訓練は私とフェルディだけだね」

「……そうだね」

僕たちは、マルセルとリーを見送った後、自室へと戻った。







昼から、例の武道場でボスとの訓練を行うことになっていたので、僕とジャッキーは武道場でボスを待っていた。しばらくすると、ボスが現れる。

「お、待たせたね〜。二人とも無事でよかった。おじさんうれしいよ!」

ボスは相変わらずのテンションだ。

「ボス……ううん、アレクおじさん。稽古の前に一つお願いがあるんだけど」

ジャッキーはそんなボスの様子には一切反応せず、ボスの方へ一つ足を進める。

「……久しぶりだな、そう呼ばれるのは。なんだい、ジャッキー。何でも言ってごらん」

ボスも少し空気が変わる。なんだか、お父さんのような優しい声だった。

「………図書室の『保管庫』。閲覧権をください。」

ジャッキーはそういうと、深々と頭を下げた。ボスは目を見開いて、ジャッキーを見る。驚いているようだ。

「………一応聞くけど、急にどうしてだい?あそこはそう簡単に入れる場所じゃない、っていうのは昔話したと思うけど。」

ボスは重苦しい空気で、ジャッキーに理由を尋ねる。

『保管庫』とは、例の閲覧権がないと入れない場所のことだろうか。ジャッキーも急にどうしたのだろう。

僕もボスも、ジャッキーの答えを待つ。

「………『片割れ鋏』……そして、父に会いました。」

「…………え?」

僕は何が何だかわからず、口から声がこぼれた。『片割れ鋏』?父?会った?どういうことだ……?

一方のボスは、何かを察したようで、深く溜息をつく。余り驚いている様子はない。

「…………そうか。会ったか……」

「はい。」

「断定できる理由は?」

「私の……幼少期のビデオを見せられました。そこには……私と、接触してきた人……父の姿。そして……母の姿がありました」

「………わかった。少し、考える。今日は二人で訓練をしてくれ。色々準備がある」

ボスは神妙な顔つきで場を立ち去った。

「……色々ついていけなかったんだけど。どういうこと?」

「………ごめんね。またフェルディに甘えちゃった。」

ジャッキーは僕の方を向いて謝ると、話を続ける。

「ランチバーグで、私がトイレを探せなかったって話。あれは嘘なの」

「…………」

「あ、トイレに行こうとしたのは本当なんだけど。一階に下りたらね、『片割れ鋏』と男の人に待ち伏せされててね。男の人が……『ジャクリーヌ。大きくなったな』とか言い出して。私はみんなを呼ぼうとしたんだけど、待ったをかけられて。」

「…………それで?」

「少し、外に出て散歩をしようって、外に連れ出されたの。『片割れ鋏』も攻撃してくる雰囲気はなかったから、相手の言う通りにした。そこで、ビデオを見せられたの」

「そこに、さっき言ってたのが映ってたんだね」

僕が確認すると、ジャッキーは頷く。

「そう。最初は偽造ビデオって線も考えたけど……嘘をついているようには見えなかった。最近、ずっとそのことが頭の中から離れなくて。心配かけてごめんね」

ジャッキーは元気なく微笑む。

でも、そりゃ考えて当然だ。敵対してた人間と一緒に急にお前の父親だという人が現れたら、それは困惑するだろう。

「ジャッキーって……お父さんと生き別れだったの?」

「……そっか。そういえば私、そこら辺の話してなかったね。」

ジャッキーは一息つくと、話を始める。

「私ね、小さい頃の記憶がなくてね。お父さん、お母さんの記憶がないの。そのビデオで私は歩いて普通に話してた。見た感じ5、6歳くらいかな。キリルさんの診断だと、戦争のショックで記憶がなくなったんだろうって聞かされてたけど……」

「………そうなんだ」

僕は物心ついたころからあの村にいた……気がする。もう子供のころの話だから、あまり覚えてはいないけど。

「そこに映っていたお母さん。私と同じ、白い髪の毛だった。ジャクリーヌって呼んでた。その時確信したの。これは……本物だって。」

「………それで、そのお父さんにはなんて言われたの?」

ジャッキーは顔を俯ける。自分の身体を抱くようにして、震えながら、ジャッキーは話した。

「…………一緒に暮らさないか、って。」

「………」

ずっと知らなかった父との再会。それに、今まで戦ってきた敵と一緒にいたのだ。当の本人のジャッキーも訳が分からないだろう。

「………なんて答えたの?」

「……答えられない、って言った。わかんなかったから。何も。そしたら、あの人、凄く悲しそうな顔してた……それで、『いつまでも待ってるから、気が変わったらいつでもおいで』って。」

「……………」

「それに………………私のお父さんも、お母さんも、多分、吸血鬼」

「………え?」

どういうことだろうか。ジャッキーはT型生命体じゃない。でもジャッキーの父親はT型生命だって……?

「ビデオに映ってた、お母さんの目、紅かったの。お父さんも……紅い。」

紅い目はT型生命体の特徴だ。T型生命体は、その能力を発動するとき、目を紅くする習性のようなものがある。稀に常時紅い目の個体もいるらしいが、その目をみたということは、つまりはそういうことだろう。

しかし、ジャッキーにはそのような様子は一切存在しない。どういうことなのだろうか。

ジャッキーは自らの両頬をパチンと叩き、いつもの笑顔を向ける。

「ごめん!もうこのことで悩むのはやめたんだった。よし、じゃあ訓練をしましょうか!」

「…………ひとつ、聞いていい?」

「ん?なに?」

ジャッキーは変わらず、輝かしい笑顔をしている。でも、僕の目には、無理をしているようにしか見えなかった。

「この話……僕に聞かせてよかったの?」

今までのジャッキーの様子から察するに、ジャッキーはこの話をできるだけ秘密にしようとしていたのだろう。しかし、今回僕の前でボスに話すことで僕にも話の内容がバレることになってしまった。

「……わたし、割とチキンだからさ。一人でボスにはこの話、できなかったと思う。でもさ、昨日、フェルディが頼っていいって言ってくれたから、早速頼っちゃった。ごめんね」

ジャッキーは顔の前で両手を合わせ、ごめん!とお茶目に謝ってくる。

「……こんなのでいいなら、お安い御用だよ」

ジャッキーは、優しい笑顔を浮かべる。

「………ありがとう」
21/11/04 22:50更新 / Catll> (らゐる)
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