連載小説
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5
 ボスの部屋を出ると、僕たちは一回上に上がった。エージェント居住階だとジャッキーに教わった。ジャッキーに僕の部屋だといわれ入った部屋の先は、高級ホテルのような一室だった。あらかた部屋の中にあるもの、部屋の構造を教わると、「じゃあ私隣の部屋だからまたわからないことあったら聞きに来てね〜」と言って自室に戻ってしまった。
 おそらく一階層に部屋は4つ、廊下に4つのドアがあったのでそうだと考えられる。僕はエレベーター側から見て左奥の部屋なので、隣―――――つまり左手前がジャッキーの部屋だろう。エージェントはほかに2人ということか。マルセルと…あと一人は誰なのだろうか。
 あまり人とかかわるのは得意ではないと思っていたが、心が少し踊ってしまっている。よくないよなあと思いながら、だだっ広い部屋の中にあるベットに倒れた。
 しばらくベットの上でぼーっとしていると、ドアをドンドン叩く音が聞こえた。気になったのでドアの方に向かい、開けると三人が部屋の前にいた。
そこにはジャッキーとマルセル、そしてもう一人…ゴスロリの服を着た僕を同じ身長くらいの女の子がいた。肌は白く、黒髪ツインテールが特徴的で、かわいらしい服装とは対照的に鋭い目つきをした女の子だ。
「ようフェルディ!邪魔するぜぇ〜」
マルセルはそういうと僕のことなど構わずづかづかと僕の部屋へと入ってきた。確か下で会った時は3時間走ってくるとか言ってたけどもう戻ってきたのか………
僕は何が何だかわからず、ジャッキーに助けを求める視線を送ると、ジャッキーは肩をすくめた。
「私もさっき急にマルセルに呼び出されてね。フェルディのことが気になりすぎてランニングからすぐ戻ってきたみたいで……。みんなで新人の顔合わせをしたいって言ってきかなかったの。疲れてるところ急に来てごめんね。」
ジャッキーはそう言って僕の部屋に入ってきた。
一方ゴスロリの子は…………
「………………」
無言で僕の方など気にも留めず、そそくさと僕の部屋に入ってきた。
いったい何なんだ…………
扉を閉め、部屋に戻ると、ジャッキーとマルセルは僕のベッドの上に座ってくつろいでいた。ゴスロリの子は机の前にある椅子に座っている。僕だけが立っている状態だった。部屋主は僕なのに。
そんなことを考えていると、マルセルは一拍手をたたいた。
「さあ、平社員がそろったところで!自己紹介をしてもらおうか新人君!」
マルセルがそういうと、三人みんな僕の方を見て僕の言葉を待った。
人数が少ないとはいえ、注目が集まるところでしゃべるのは緊張する。
「………えっと……フェルディです…よろしく……」
「……………」
「……………」
「……………」
沈黙。三人とも僕の方を見たまま静止していた。僕は何か間違ったことを言っただろうか。
僕が不安に駆られていると、沈黙を破るようにマルセルから怒号が飛んできた。
「ぅおおおおおおいっ!!!!そんだけかよっ!!!!」
「フェルディはそんなしゃべるのが得意じゃないから許してあげてよ!初対面だし!」
ジャッキーがフォローを入れてくれる。
マルセルはそれもそうか〜とぼやく。ゴスロリっ子は相変わらず黙ったままだ。
「じゃあ俺がインタビューをしていこう!生まれは……ってみんな知ってるか。」
僕がロブエ族ってのはそんなに有名なのか。僕まだそこのゴスロリっ子に何も言ったことない気がするんだけど。
「そうだなぁ〜……じゃあまあフェルディの前に俺たちが自己紹介するか!」
「そうだね!それがいいよ!」
マルセルの提案に同意を示すジャッキー。ゴスロリっ子は………めちゃくちゃいやそうな顔してる。表情の変化を初めてみた。
マルセルは咳払いをして、自己紹介を始める。
「じゃあまず俺から!まあさっき会ったから知ってると思うが名前はマルセルだ!趣味はトレーニング!故郷はカルトヴェリだ!呼ばれたら余程用がない限りはついていくぞ!何かあったらいつでも声をかけてくれ!」
マルセルは胸を張って元気に言った。
「じゃあ次は私かな…。マルセルと同じで名前は知ってると思うけど改めて。私の名前はジャクリーヌ。ジャッキーって呼んでね。私はボスに拾われた戦争孤児だから故郷はわからないけど…私にとってはエラムが故郷みたいなものだね。趣味は楽器!サックスを吹いてるよ!フェルディもやりたくなったらいつでも言ってね!教えるから!」
ジャッキーも元気に答えた。笑顔がとてもまぶしい。
そして、最後……ゴスロリっ子の方に目を向ける。
だが彼女は明後日の方向を向いて何も話そうとしない。
しばらく待っていると、マルセルはしびれを切らしたのか、ゴスロリっ子に自己紹介を促す。
「何をしてるんだ!あとはリーナ、お前だ!」
そういわれると、ゴスロリっ子はまたいやそうな顔をした。
すると、ゴスロリっ子は小さな声で一言だけ発する。
「………レイラ」

みんなしばらく彼女の言葉を待つが、次の言葉はない。
「うぉぉい!!それだけかよ!」
大きな声で沈黙を破ったのはマルセルだった。
マルセルは後頭部をくしゃくしゃして、仕方ない、と言って話し始めた。
「レイラ……リーはカイオワの生まれでカイオワの元軍人だ。俺より強くてな、その才能を見出されてカイオワがエラムの支配下になった後にこの部署に配属されたってわけだ。軽く言うと。見てわかると思うけどゴスロリとかそういうゴリッゴリのメンヘラっぽいやつが好きでな、というかオタク気質で、こいつの部屋には」
「おいマルセル余計なこと言うなぁぁぁぁ!!!!!!」
ゴスロリっ子………もといレイラは先程の小さな声からは想像もつかないような大きな声でマルセルの声を遮る。白い顔がまっかっかだ
「黙ってたら余計な事ばっかしゃべろうとして……ゆるさん……」
声は割と落ち着いた女性の声って感じだ。見た目の偏見みたいなのもあってもっと甲高い声を想像してたけど……意外。
「まあまあ……リーはね、仲良くなるまではなかなかしゃべってくれないけど人見知りだから……しばらくしたら仲良くなってたくさんしゃべってくれるよ。そのうちみんなでゲームやろ!ね!リー!」
「………まあ……そのうち…」
レイラは何かをあきらめたような顔と声でそう呟いた。
「よし!顔合わせも済んだしそろそろ戻るか!じゃあなフェルディ!また明日だ!!」
マルセルはそういうと、ベットから立ち上がり部屋を出て行った。
「……………」
続くようにレイラが部屋を出ていく。威嚇するような目つきで一瞬僕を見たが、すぐ何も気にしてないみたいな涼しい顔に戻った。耳は赤いままだったが。
なんかかわいい。
二人を見送った後、ジャッキーが僕に近づいてくる。
「ふふっ…二人ともいい子でしょう?」
ジャッキーは嬉しそうな顔で僕に尋ねてくる。
「まあ………とても個性的な人たちだ。悪い人ではなさそうだったな…」
僕は正直に感想を述べた。
ジャッキーはそれを聞き、さらに嬉しそうに笑う。
するとジャッキーは僕に背を向けてドアの方に向かう。
「仲良くなれそうでよかった!私たちの仕事は仲が悪い方が向いてるかもしれないけど……そんなのつまらないし…ただでさえ辛いのに……もっと辛くなっちゃうからね。」
ジャッキーの声はなんだか寂しそうだ。
ジャッキーはそんな言葉を残すとドアの一歩手前でくるりと僕の方に向き直り、足をそろえ、ピンとしたきれいな姿勢で、凛々しく美しい笑顔で敬礼をした。

「では!フェルディ、また明日!『我らが未来に光あれ』!」
21/08/08 15:15更新 / Catll> (らゐる)
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■作者メッセージ
遅くなりました。
テスト期間だったのでなかなか触れなくて…
夏休みに入るので、今よりは更新頻度が増えるように精進していきます。
ゆっくりお付き合いください。

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