読切小説
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大きな君の木の下で
大きな木があった。とっても大きな木があった。




ある天気のいい日、僕は「大きな木のところへ行こう」と、思った。

風も無かったので、木に体を預けて、本を読もうとした。

僕は歩いて出かけた。




その大きな木が見えてきた。

ところが先客が居たようだ。

白くて緩めののズボンに、
白くて綺麗なシャツを着て、
白くて可愛いパーカーを着た、



白くて美しい少女がいた。

少女も本を読んでいた。

良い天気だったせいなのか、
久しぶりに歩いたせいなのか、

僕は疲れていた。

早く日陰に行って、休みたいと思った。

早歩きで大きな木に駆け寄った。

少女は少し驚いたが、すぐに本を視線を戻した。

日陰の多い方に座っている彼女の方に行きたいが、嫌がるだろう。

仕方なく、日陰の少ない方で立ったまま、本を読んだ。







風が少し吹いてきた。これでは本が読めない。

僕は本を パタン と閉じた。

反対側で パタン と聞こえた。

反対側で、立ち上がる音が聞こえた。

帰るのか、と思ったが、違った。



「あの、少しお話をしませんか?」



彼女は、小さい声でそう言った。

僕は断った。

「いいえ、もう帰るので」

「用事があるんですか?」と、少女は問いかけた。

「いや、ないけど」

「なら、私と……」

「分かった。じゃあ何か話そう」

「ありがとうございます。では、あなたはなぜここに来たのですか?」

「綺麗な場所だと、思ったから。君は?」

「えっと、まぁそんな感じです。ここなら休めそうだなって思って」

「そっか、疲れていたのか?」

「はい。とっても」

「そか、じゃあゆっくり休んでこうね。」

「そうさせて頂きます。もしかして、あなたも疲れていたのですか?」

「ああ、かなりな。」

「なぜなのか話してくれますか?」

「あぁ。」






「...思い...出せない」

「え?」

次に何を言うかを考えることもできず、体に力が入らなくなったのか、手に持っていた本を落とした。

白い少女は、僕の様子を窺いながら、そっと本を拾った。そして、本を僕に渡しながら、

好きな男の子に言われたの。「      」だってさ、もう遅いよね。





目を覚ますと、僕は病室のベッドに横たわっていた。すっと、視線を隣のベッドに向けた。

ついこの間、隣にいた幼い女の子がなくなったらしく、手紙や、花や、お菓子が、まだ机に置かれたままになっていた。

あの少女のキャンバスは、まだ白かった。だが僕もまだまだ青い、そして白い。

コトッと、1つの手紙が落ちた。拾おうと思いその手紙をみると、実に残酷なことが書いてあり、僕は拾うのを止めようか迷ったが、視界に入れたくもない内容だったので、拾ってすぐに遠くへやった。

青い空、白い雲。青い草。白い太陽、白い月。

窓から見える、大きな青い花を咲かし、幹が白い木には、

「生きて」という意味がこめられているそうな。
18/02/08 18:00更新 / 浮空

■作者メッセージ
彼らが持っていた本には、何も書いていなかったそうな。

「白紙・空欄」

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